ハイスクールD×D Yto   作:今日から禁煙

21 / 33
梅雨が明けて本格的な暑さが到来しますので皆様熱中症には十分注意してください。

第19話です。


第19話

強くなりたい

俺は約束したんだ

最強の兵士(ボーン)になるって

 

―〇●〇―

 

日中、多くの生徒の活発な声が響き渡るグラウンドもこの時間になればその喧騒が嘘のように静まり返っている。

 

昼間は太陽の光で暑いくらいのこの季節だが、日が落ちると肌寒さを感じる。

 

そのグラウンドの中央に木場とゼノヴィア、兵藤と紫藤イリナの四人がそれぞれ対峙している。

 

そんな四人の勝負の行く末を見守るべく、俺達は少し距離を置いた場所に立っていた。

 

中央の四人と俺達を囲むように紅い結界が周囲に張り巡らされている。

 

「では始めようか」

 

ゼノヴィアとイリナが羽織っていた白いローブを脱ぎ捨て、黒い戦闘服姿になった。

 

木場の挑発にゼノヴィアが乗っかる形で二人が手合わせをすることになったが、何故か兵藤までやる気になっていたため、急遽紫藤イリナも参戦することになった。

 

「祐斗、一誠。相手が聖剣だということを忘れないで」

 

最初はこの手合わせに否定的だったリアスだが、例の如く木場を止めることが出来なかったため、苦虫を噛み潰したような表情をしている。

 

「リアス・グレモリーの眷属の力を見せてもらおう」

 

木場の神器である【魔剣創造(ソード・バース)】によって複数の魔剣が創造されると、木場とゼノヴィアが同時に地面を蹴り、互いの剣と剣が火花を散らす。

 

「【魔剣創造】か。・・・確か『聖剣計画』の生き残りにその神器の使い手がいると聞いたことがあるが、キミのことか?」

 

余裕のあるゼノヴィアに対して木場の表情は憎しみに歪んでいく。

 

お互いに何度か剣をぶつけて、木場が吹き飛ばされる形でゼノヴィアとの距離を取る。

 

今の鍔迫り合いではっきりしたことが二つある。

 

スピードは木場の方が上だが、力はゼノヴィアに軍配が上がる。

 

(木場の敗けだな)

 

木場は聖剣憎さに本来の戦闘スタイルを見失っている。

 

木場が戦っている姿を見るのは初めてだが、その戦いぶりから全く『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』の特性を活かせていない。

 

騎士(ナイト)』の駒を身に宿した木場の最大の特徴はスピードにあって複数の魔剣を自在に操り、その数にものを言わせてスピードで相手を翻弄するのが本来の彼の戦闘スタイルのはず。

 

だが、今の木場はその数とスピードの利を全く生かせていない。

 

ただ力任せにゼノヴィアに斬り掛かり、いたずらに魔剣を消耗させているだけであり、完全にゼノヴィアの得意とする形になっている。

 

そんな簡単なことも分からなくなる程、頭に血が昇った今の木場ではゼノヴィアに勝てる訳もない。

 

事実、ゼノヴィアに斬り掛かる度に魔剣を犠牲にしていた。

 

「・・・その程度か、先輩」

 

それまで木場の攻撃を受けるだけのゼノヴィアだったが、満を持して聖剣を振り下ろす。

 

その攻撃を寸でのところで躱わす木場だったが、すぐさま二撃目を放つゼノヴィアに魔剣が砕かれる。

 

唯でさえ一撃もらえば即終了という緊張状態の中で、相手の得意とする形になってしまえば勝ち目などあるはずもなく戦況は完全にゼノヴィアに傾いていた。

 

リアス達は心配そうに戦況を見守っており、剣と剣とがぶつかり合う度に身体に力を籠めていた。

 

ゼノヴィアと木場の勝敗に見切りをつけた俺はもう一つの戦場に目を向ける。

 

そこでは兵藤と紫藤イリナが戦っているはずなのだが、二人の戦いは未だに始まっておらず、子供の喧嘩のように口論していた。

 

(なにやってんだあの二人)

 

元々、幼なじみであるらしいから積もる話もあるだろうが、傍らでギリギリの攻防が繰り広げられているこの状況でなんとほのぼのとした光景だろうか。

 

何度か激論が交わされたところで話し合いは決裂に終わったらしく紫藤イリナが聖剣を抜いて兵藤に斬り掛かっていく。

 

ようやく始まる。

 

伝説の龍をその身に宿した男の戦いが。

 

リアスやアーシアの話ではあのライザー・フェニックスをあと一歩のところまで追い込んだと聞いた。

 

以前は情けないことを言う兵藤に厳しい言葉を浴びせたこともあったが、俺自身ライザーと戦ってみて彼の強さが本物であることを身に染みて理解している。

 

だから信じられない、悪魔に為って一ヶ月足らずだった兵藤がライザーを追い詰めたことが。

 

無論、兵藤自身の底力やリアスへの想いもあるだろうが、やはり一番の要因はその身に宿す伝説の龍。

 

赤龍帝の籠手(ブーステット・ギア)

 

嘗て熾烈な争いを続ける三大勢力の戦争に介入し、大打撃を与えたほどの力を持つ龍を三大勢力の共闘によってなんとか封じ込めることに成功し、神器として数千年もの永きに渡って神をも滅することの出来る神滅具(ロンギヌス)として語り継がれてきた代物。

 

リアスの話では十秒毎に力を倍加させる能力があるらしいが、一体どれ程のものなのかと興味が尽きない。

 

本当にそんな無茶苦茶なことが可能で兵藤がそれを使いこなせるようになればまさに無敵であり、その名の通りに神を殺すことも可能になるだろう。

 

今のところその神器の力を一割ほども引き出せてないらしいが、将来性と意外性はリアスの眷属達の中でもNo.1と言ったところだろう。

 

だが、今俺達の目の前で繰り広げられているこの光景はなんだ。

 

聖剣を振り回す紫藤イリナから無様に逃げ回る兵藤の姿に目を覆いたくなる。

 

リアスは呆れた表情で額に手を当てて首を左右に振っており、朱乃は信じられないものを見たと口元に手を当てながら目を見開いている。

 

小猫は我関せずと言った感じで木場とゼノヴィアの戦いに目を向けており、アーシアだけが兵藤が攻撃される度に心配そうに身体を震わせている。

 

その光景はまるで子供の鬼ごっこである。

 

(・・・俺はあいつに何を期待していたんだ)

 

いくら聖剣が相手でももう少し戦い方があるだろう。

 

あれでは名門グレモリー家の次期当主の『兵士(ボーン)』として失格だ。

 

他のみんなは四人の手合わせに夢中になっていたが、木場とゼノヴィアの方は結果が見えたし、兵藤もこんな調子なのでもうここに居る意味はないと思い、踵を返す。

 

《Boost!》

 

グラウンドに背を向けた瞬間、この場にいる誰の者でもない声が結界内に響く。

 

気に掛かり、再びグラウンドに目を向けると、紫藤イリナと正面から向き合う兵藤の左腕に紅き籠手が発現しており、その宝玉が光輝いていた。

 

周囲を眩く照らしたその光が弱まっていくと、光の中から左腕を突き出した兵藤が自信満々な表情をして立っていた。

 

「なんだ・・・今のは?」

 

木場と対峙していたゼノヴィアが怪訝な表情でその光の発現元に目を向ける。

 

「紅い籠手?・・・まさかお前が!?」

 

兵藤の左腕に発現した紅い籠手を目にしたゼノヴィアが驚愕の表情を浮かべている。

 

年若い教会の人間にすらその存在を認知されている。

 

世界においてその存在を知らぬ者はいないだろう。

 

赤龍帝(ウェルシュ・ドラゴン)

 

「【赤龍帝の籠手(ブーステット・ギア)】に【魔剣創造(ソード・バース)】・・・成る程、リアス・グレモリーには面白い眷属が揃っているようだ」

 

ゼノヴィアは兵藤に気を取られているようだが、その隙を木場が見逃さずに斬り掛かるが、彼の剣はゼノヴィアに届くことはなかった。

 

それにしてもゼノヴィアはいい動きをしている。

 

木場が不調であることを差し引いても彼女は強い。

 

聖剣使いに選ばれただけではなく戦闘経験もかなりあるのだろう。

 

力任せで荒削りなところも多いが、将来有望な教会戦士であることは間違いなく、今回の任務を任されるだけのことはある。

 

『Boost!』

 

ゼノヴィアに気を取られていると、再び兵藤の神器が輝き始める。

 

「朱乃、あの声は?」

 

先程から聞こえてくる兵藤ではない者の声が気になり、隣にいた朱乃に訪ねてみた。

 

「あれが一誠君の神器に封じられた赤龍帝の正体ですわ。名はドライグ」

 

朱乃の話では兵藤の神器は自らの意思を持っているらしく、神器の覚醒にはそのドライグとの対話が必須ということだった。

 

俺がドライグの声を聞いたのは二回、つまり兵藤の力は既に四倍になっているということだ。

 

「一誠先輩が厭らしい顔をしています」

 

いよいよ兵藤の反撃が始まるかと思っていたところに小猫の言葉が聞こえていたので兵藤の表情を窺うと、確かにだらしない顔をしていた。

 

「おそらくあれ(・・)をやるつもりです」

 

先程の無様な姿ではなくなったが、紫藤イリナに遊ばれている兵藤。

 

それにしても小猫の言うあれとは一体なんだろうか。

 

「覚悟しろよイリナ」

 

兵藤が天高く左腕を突き上げると、神器が更なる輝きを放つ。

 

『Explosion!!』

 

兵藤の表情に自信が漲っており、どうやら倍加とやらが完了したようだ。

 

いよいよあのライザーと互角にやり合った兵藤の力が明らかになる。

 

「剥ぎ取りゴメン!」

 

・・・・・・・・・はぁ?

 

「『洋服破壊(ドレス・ブレイク)』・・・それが一誠先輩の使おうとしてる技の名前です」

 

呆れた表情で言い捨てる小猫と苦笑いする二大お姉様に顔を赤くして俯くアーシア。

 

どうやら四人はその技がどんな結果をもたらすか知っているようだ。

 

というか誰にだって容易に想像出来てしまうだろう。

 

そんな欲望丸出しの技名を名付ければ。

 

聞けば兵藤が『洋服破壊』を使うのはこれが初めてではないようで、ライザーとのレーティングゲームでも使用してライザー眷属の女性陣の服を吹き飛ばしたらしい。

 

失念していたが、あいつは学園でも有名な変態三人組の一人だった。

 

久しぶりに再会した幼なじみでさえそういう対象で見てしまっても何ら不思議ではないが、節操が無さすぎる。

 

気合いの入った表情に一抹の不安を感じるが、兵藤の動きが格段に良くなっている。

 

「私の動きに付いてきた!?なんで急に!?」

 

スケベ根性の為せる技かもしれないが、いくらなんでも変わりすぎ、紫藤イリナも兵藤の変化に戸惑い、動揺して動きを止めてしまった。

 

嫌な予感がした俺は念のために紫藤イリナとゼノヴィアの脱いだ白いローブを拾いに行く。

 

「よっしゃ!ここだっ!!『洋服破壊』!!!」

 

左腕を大きく振りかぶり、物凄いスピードで紫藤イリナに迫っていく兵藤。

 

兵藤の攻撃が紫藤イリナに当たると思われた瞬間、彼女が咄嗟に身を屈めた。

 

「あ」

 

勢いが止まらない兵藤はそのまま前方へ進んでいくと、二人の手合わせを観戦していたアーシアと小猫のもとへ突っ込んでいき、二人の肩に兵藤の手がそれぞれ触れてしまった。

 

アーシアと小猫も急なことで反応が出来ず、俺もローブを拾いに行っていたため二人の側にいなかった。

 

刹那、アーシアと小猫の制服が弾け飛ぶ。

 

女性の最期の砦でもある下着すらも容赦なく。

 

アーシアの慎ましくも成長途中である胸部と餅のように白く柔らかそうな臀部。

 

小猫の薄く、如何にもマニア受けしそうな胸部に成長を願わずにはいられないシミ一つない臀部。

 

そして一度も男の欲望を受け入れたことのないキレイな十番目の穴が露になる。

 

そう、二人は美しい夜空のもとで生まれたままの姿を晒してしまった。

 

二人の裸体を目にした兵藤が厭らしく表情を崩し、鼻血を噴き出している。

 

「いや!」

 

アーシアが羞恥心で身を屈めてしまうが、しゃがんだことで彼女の丸みを帯びた臀部が更に強調されてしまった。

 

小猫は胸部と大事な部分を隠して無表情で兵藤を睨み付けていた。

 

「兵藤」

 

まさに瞬間移動の如きスピードで拾ったローブをアーシアと小猫に羽織らせてあげて、沸き上がる怒りをぶつけるべく兵藤に近づいていく。

 

その怒りのレベルはライザー戦の比ではなく、アーシアを苦しめ、レイナーレの命を奪ったドーナシークと対峙した時と同等にまで膨れ上がっていた。

 

「一思いに殺ってやる」

 

ドーナシークの時と唯一違うのは、今の俺が悪魔であるということであり、容易に兵藤の命を絶つことが出来る術を持つということだ。

 

この時ばかりはアジュカの言葉も頭から消えていた。

 

「せ、先輩!?こ、これには事情が!」

 

兵藤が正座して両手を地面について俺に命乞いをしてくる。

 

自分でも信じられないくらい力が溢れてくるのを感じる。

 

今の俺なら神を殺せるだけではなく、星を破壊することすら可能だと思わせるだけの力が宿っていた。

 

「立て」

 

右腕に魔力を籠めて振りかぶり、左腕でいつまでも立ち上がろうとしない兵藤の胸ぐらを掴んで無理矢理立ち上がらせる。

 

「死ね」

 

振り上げた右拳を兵藤に向けて振り下ろす俺に躊躇は一切なかった。

 

「ダメですぅ!ユーさん!」

 

あとは兵藤に向けて振り下ろすだけの右腕にアーシアが縋りついてくる。

 

「待ってください先輩」

 

小猫も背中から俺の腰に手を回して止めてくる。

 

「止めるなアーシア、塔城ちゃん」

 

右腕をアーシアに捕まれ、腰を小猫に押さえられたため、このまま兵藤を殴れば二人にも被害が及ぶので胸ぐらを掴んでいた左腕に魔力を籠めてフェニックスの業火で消し炭にしてやる。

 

魔力での攻撃ならアーシアにも気付かれないだろうし、もしバレてもまだ魔力のコントロールが上手く出来ないと言い訳も出来る。

 

「魔力を籠めるのもダメですぅ!私は大丈夫ですからぁ!」

 

心の中で善からぬことを考えているとアッサリバレてしまった。

 

何故バレた?

 

「先輩また心の声が漏れてます・・・それに」

 

小猫に言われてまた悪い癖が出てしまったことを後悔する。

 

「それに一誠先輩は既に意識がありません」

 

そういえば先程までジタバタと抵抗していた兵藤がいつの間にか静かになっていたので様子を見てみると、小猫の言った通り口から泡を噴いて気絶していた。

 

このまま覚めることのない眠りにつかせてやろうとも思ったが、涙ながらに懇願するアーシアに免じて今回だけは許してやろうと兵藤の胸ぐらから手を離すと、糸の切れた人形のように地面に崩れ落ちた。

 

「気持ちは分かるけどやり過ぎよ、ユー」

 

事態を傍観していたリアスが俺達に近づいてきてその場を収めてくれた。

 

「ごめん」

 

リアスにとっても大事な眷属である兵藤を一瞬でも本気で殺そうと思ってしまったことを詫びる。

 

当の兵藤は端のほうでアーシア達に囲まれ、介抱されていた。

 

「私こそ貴方とアーシアに謝らなければならいないわ。下僕の不始末は王である私の責任、ごめんなさい」

 

頭を下げて謝罪するリアスに頭を上げるようにいうと、先程までの毅然とした態度ではなくモジモジとして気恥ずかしそうに俺を見ている。

 

「私が他の男に裸を見られても怒ってくれる?」

 

そう言って頬を紅潮させながら上目遣いを向けてくるリアス。

 

そのギャップに心を奪われてしまったのは言うまでもない。

 

「あ、当たり前だろ」

 

顔に熱が帯びるのを感じてリアスから視線を外すが、一瞬目にした弾けるような笑顔を見せる彼女がとても愛らしくなった。

 

「今代の赤龍帝は面白いことをするな!」

 

甘い雰囲気を醸し出す俺とリアスの耳に木場と対峙しているゼノヴィアの声が届き、そちらに視線を向けると剣を交えながら楽しそうに笑う彼女の姿があった。

 

そんなゼノヴィアと対照的に相変わらず苦々しい表情でゼノヴィアに向かっていく木場が居た。

 

因みに紫藤イリナと兵藤の手合わせは俺の介入もあって紫藤イリナの勝利に終わった。

 

「よそ見をしている余裕があるのかい?」

 

創造した魔剣で一直線に向かっていく木場の攻撃をいとも簡単に弾き返すゼノヴィア。

 

「あるよ」

 

挑発したはずの木場だったが、逆に素っ気ない返答をされ更に顔を歪ませている。

 

本来二人の力量にほとんど差はないが、心のありようでここまで結果が違うものかと思い知らされる。

 

「ならば僕の魔剣とキミの聖剣、どちらの破壊力が上なのか勝負だ!」

 

禍々しいオーラを放ち、現れたのは巨大な一本の魔剣だった。

 

その瞬間に勝負は決した。

 

ゼノヴィアも落胆したように嘆息している。

 

「選択を間違えたな」

 

木場の魔剣とゼノヴィアの聖剣がぶつかり合う。

 

巨大な刀身が宙を舞い、地面に突き刺さる。

 

言うまでもないことだが、折れたのは木場の魔剣だった。

 

その結果に激しく動揺するが、ゼノヴィアが聖剣の柄頭で木場の腹部を深く抉る。

 

「先輩、次はもう少し冷静になって立ち向かってくるんだな」

 

吐瀉物を吐いて崩れ落ちる木場を見下すように吐き捨てると、こちらへ向かってくるゼノヴィア。

 

悔しそうにゼノヴィアを睨み付けながら立ち上がろうとする木場だったが、身体に力が入らずに地面に這いつくばる。

 

「リアス・グレモリー、先程の話、よろしく頼む」

 

リアスにそう伝えると、ゼノヴィアは俺の方を向く。

 

「キミは私と彼の手合わせの結果が最初から分かっていたのに何のアドバイスもしなかったのは何故だ?」

 

怪訝な表情を浮かべて俺に問いかけてくるゼノヴィア。

 

「頭に血が昇った奴に何を言っても無駄だし、キミがあんなに強いと思わなかったから」

 

俺の答えに目を丸くしたゼノヴィアは忙しなく視線を泳がせて動揺する。

 

どうやら褒められることに馴れていないようだ。

 

動揺しているゼノヴィアに紫藤イリナが声を掛けると冷静さを取り戻す。

 

「センスはあるようだが、それだけでは限界がある。リアス・グレモリー、下僕をしっかり鍛えることだな」

 

意識を失っている兵藤と悔しそうに這いつくばる木場を一瞥して踵を返すゼノヴィア。

 

「・・・一つ忠告しておこう。『白き龍(バニシング・ドラゴン)』は既に目覚めているぞ」

 

足を止めて振り返り、ゼノヴィアがそう告げると、リアスの表情が歪む。

 

『白き龍』?

 

俺は聞き覚えのないワードに首を傾げるが、ゼノヴィアはじっと俺を見ていた。

 

「いずれ出逢うだろうが、今のままでは絶対に勝てないだろうね」

 

そう告げてこの場を後にするゼノヴィア。

 

紫藤イリナも頭を下げてゼノヴィアの後を追おうとしたが、ローブを忘れていると伝えると、この間のご飯のお礼だと言ってそのまま貸してくれた。

 

―〇●〇―

 

「とにかく聖剣相手にこのくらいで済んで良かったわ」

 

腕を組み、瞑目しながら今回のことを振り返るリアス。

 

アーシアの治療のおかげで回復した木場と兵藤もそれぞれに思うところがあったようで顔を伏せている。

 

俺はアーシアを労うように頭を撫でてあげながらリアスの言葉に耳を傾けていた。

 

「今回のことで痛感したと思うけど、一誠は圧倒的に実戦経験が不足してるわ。だから相手の力量を推し量ることが出来ないの。さっきの手合わせもあと一回、いえ二回倍加していれば勝機は見えたわ」

 

確かに兵藤の場合は勝負を急ぎすぎたというところはあるかもしれないが、その根底には女性の裸体への興味、もっと言えば胸部への執着心が原因であるとも言えるのであって、そこをなんとかしなければ同じ事を繰り返すことになるだろう。

 

亀のように小さくなってリアスの話を聞いている兵藤だったが、今回の敗戦はさすがに堪えたようで端から見ても落ち込んでいるのが分かる。

 

聖剣使いとはいえ、幼なじみの女の子に負けたのだからそれも無理はない。

 

(ほとんど俺の責任でもあるが・・・)

 

元気だけが取り柄の兵藤が静かだと他の眷属達にも影響を及ぼす可能性がある。

 

以前リアスが言っていたが、兵藤は既にグレモリー眷属のムードメーカー的な存在らしい。

 

「待ちなさい!祐斗!!」

 

女性を慰めることには慣れているが、男に声を掛けることはなかったためどうすればいいのか迷っていると、リアスの怒鳴り声が聞こえたのでまたかと思い、そちらを向く。

 

「私のもとを離れるなんて許さないわ!あなたはグレモリー眷属の『騎士(ナイト)』なのよ。『はぐれ』になってもらっては困るわ。留まりなさい!!」

 

既に立ち去ろうとしている木場に対して、王として留めようとするリアス。

 

(もっと言い方があると思うがね)

 

だが、今の木場には逆効果だということが彼女には分からない。

 

自分の非を認め、謝罪するなど成長をみせる彼女だが、眷属への接し方は未だに変わっておらず、頭ごなしに意見を押し付けることがある。

 

リアスからしてみれば当たり前のことも他の眷属達には理解出来ないこともある。

 

育ってきた環境や培ってきた考え方の違いは如何に悪魔に転生しようと簡単には変えられるものではない、況してや負の感情を抱く者なら尚更である。

 

「・・・今の僕があるのは同志たちのおかげです。だからこそ、彼らの恨みを魔剣に込めないといけないんだ」

 

それだけ言うと、木場は闇夜に消えていった。

 

「祐斗・・・どうして・・・」

 

俯き、悲痛な表情を見せるリアスの肩を何も言わずにそっと抱き寄せる。

 

彼女は強くもあるが脆い。

 

(・・・恨み・・・本当にそれだけか木場・・・)

 

胸に額を寄せて涙するリアスの頭を撫でながら、木場の消えていった闇夜を見つめていた。

 

―〇●〇―

 

「今宵は夜も更けてきたのでここまでに致しましょう」

 

俺が朱乃に合図を送ると、彼女も頷いてこの場は解散となった。

 

アーシアの治療で回復したとはいえ、歩くのが辛そうな兵藤を送っていくと言ったが、考えたいことがあると言って一人で帰っていった。

 

その表情は何かを決意したようにも見えた。

 

家に帰る前に部室によってアーシアと小猫は制服に着替える。

 

部室には部員それぞれの制服がストックされているようだ。

 

アーシアからローブはどうしたらいいか聞かれたので、また二人と会うこともあるかも知れないので洗濯しておこうと家に持ち帰ることにした。

 

いつもの五人で家路へ着くも誰一人として声を発する者はいなかった。

 

だか、それぞれが何を考えているかは明らかであり、自分に何が出来るのかを考えていた。

 

「リーア『白き龍』って一体なんだ?」

 

道中で朱乃と小猫と別れたところでゼノヴィアの言っていたことをリアスに聞いてみた。

 

白龍皇(バニシング・ドラゴン)

 

兵藤に宿る【赤龍帝(ウェルシュ・ドラゴン)】と並ぶ伝説の龍であり【赤龍帝】と共に三大勢力に大打撃を与え、三陣営を恐怖のどん底に突き落とした存在で【赤龍帝】と一緒に神器に封じられ、こちらも世にも十三種のみ現存する神滅具(ロンギヌス)として現代まで語り継がれる代物。

 

【赤龍帝】と【白龍皇】は二天龍と並び称されており、三大勢力が戦争しているど真ん中で覇権争いを始めたことから三大勢力にとっては忌むべき存在だという。

 

【赤龍帝】の十秒毎に倍加の能力とは真逆で【白龍皇】の能力は十秒毎に相手の力を半減させるとういう化物じみた能力を有しており、二天龍は常にライバルとしてその時代、時代で争ってきたという。

 

「つまり、その【白龍皇】を宿した者が既に存在していて近いうちに兵藤の前に現れると?」

 

ドラゴンは争いを引き寄せると冥界では語り継がれており、その象徴こそが二天龍なのだと言われているようだ。

 

「その可能性は十分あるわね。今代の【白龍皇】がどんな人物なのかは知らないけど、ゼノヴィアの口振りからして一誠より強いことは間違いないわ」

 

そう言って頭を悩ませるリアス。

 

堕天使の暗躍から聖剣問題、更には【白龍皇】の襲来とくれば、それも当然で自分の管轄する街で次から次へと事件が起これば項垂れたくもなるだろう。

 

とはいえ、いつ現れるかも分からない『白き龍』のことよりも今は確実に進展しつつある聖剣問題の方が重要であり、それに関与している木場が気掛かりだ。

 

今後、木場がどんな行動を取ろうとしているのか?

 

兵藤の言っていた一人で考えたいこととは何なのか?

 

(この事件、まだまだ終わりそうにないな)

 

すっかり忘れていたことだが、担任教師が妻子持ちであるか、朱乃に聞くのを忘れていしまったため、試しにリアスに聞いてみると独身だという答えが返ってきたので放心状態の後に発狂した。

 

その姿をみたアーシアが慌てて【聖母の微笑み(トワイライト・ヒーリング)】で回復させてくれたが、心の傷までは癒すことが出来なかった。




第19話更新しました。

すこし前から原作主人公のギャグ化が止まりません。
意図してそうしてる訳ではないんですが、主人公に光を当てようとするとどうしても落とす人物が必要になるのでそうすると彼になるんですよね。

決めるところでは決めてくれる原作主人公なのでこれからに期待してます。

内容のほうは教会戦士二人との手合わせでしたが、主人公の視点で全部書いたので意外と楽でしたね。
原作では木場がメインともいえる話ですが、教会戦士二人もいますので楽しいですね。

早く冥界に行きたい・・・

読んでくださる方、コメントをくれる方、誤字・脱字の修正をしてくださる方ありがとうございます。

ではまた次回。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。