ハイスクールD×D Yto   作:今日から禁煙

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書き上げてから何度も見直すんですが、誤字・脱字の修正が必ず上がってきます。

第20話です。


第20話

 

お前がどう思ってるかは知らない。

でも俺はお前のことを仲間だと思ってる

だから俺は仲間のお前を放ってはおけない

 

―〇●〇―

 

「お義母様、どこかお出掛けなんですか?」

 

朝、いつも通りにアーシアとリアスという極上の美女二人を両脇に侍らせながら目を覚まし、いつも通りに二人がベッドの上で口論を始めて、いつも通りに着替えを済ませて、いつも通りグッタリしながら一階のリビングのドアを開けると、キャリーバッグを傍らに置いた母ちゃんが新聞を広げながらコーヒーを飲んでいた。

 

「父ちゃんが仕事で北海道に行くから、一緒に行こうと思ってね」

 

母ちゃんは自分の興味がある場所に父ちゃんが仕事で行くときにこうして一緒に行くことがあり、年に何回か家に居ないことがある。

 

本州が梅雨入りしてジメジメしているなかで梅雨のない北海道に行けるということで、年甲斐もなくウキウキしていた。

 

「誰が年寄りだって!」

 

不覚にも心の声が漏れてしまい、母ちゃんの愛のムチが頭部に炸裂する。

 

「どのくらいの期間いかれるのですか?」

 

二人にとってこうして悶絶する俺の姿は見慣れたもので、あのアーシアさえ心配してくれることはなく、 席に着いて母ちゃんと話をしていた。

 

「ニャ」

 

涙目で頭部を摩る俺の側に黒歌がすり寄って来てくれた。

 

もはやこの家で俺の心配をしてくれるのは黒歌だけだ。

 

そんな黒歌を抱き上げて、頬擦りをしたり、お腹を撫でてあげたりと、存分に甘やかしてあげた。

 

「ユーさん、叩かれたところ大丈夫ですか?」

 

黒歌に夢中になっていると背後から声を掛けられたので振り向くと、そこには聖母の如き笑みを浮かべたアーシアがしゃがみ込み、目線を合わせて頭を撫でてくれた。

 

「ユー、黒歌。ご飯を食べましょう」

 

アーシアの優しさに思わず抱き着こうとしていると、美の女神ことリアスが手を差し出してくれたので、その手を握って立ち上がった。

 

二人は俺を見捨てたのではなく、俺より母ちゃんを優先しただけなのだ。この家では至極当然なことである。

 

「それでは二人共、家のこととユウのことよろしく頼むからね!」

 

そう言い残して母ちゃんは父ちゃんの待つ北海道へ旅立った。

 

最近特に思うことだが、母ちゃんの中での俺の年齢設定はどうなっているのだろうか?

 

「一週間もお義母様が居ないなんて寂しいですぅ」

 

登校途中にアーシアが母ちゃんの不在を悲しんでいた。

 

リアスもそうだが、二人は本当に母ちゃんのことが好きなようで、特にアーシアは本当の親の顔を知らないため母ちゃんにその面影を重ねているのかも知れない。

 

「そうね。でもお義母様とお義父様は本当に仲がいいわね。私達もあんな夫婦になれるといいわね、ユー」

 

腕を絡めながら俺に体重を預けてくるリアス。

 

(こらこら朝から何を言い出すんですかこの娘は?)

 

歩きながら可愛らしく頭を肩に乗せてくる。そんなことをすれば右にいる人物が黙っているはずがない。

 

「部長さんばっかりずるいですぅ!私もユーさんと結婚しますぅ!!」

 

案の定それを見ていたアーシアもリアスに対抗するように腕を絡めて体重を預けてくる。

 

両手に花という状態で周りから見ればこの上なく羨ましい状況なのだが、当の本人である俺からすれば困惑の極みである。

 

極上の素材が積極的に調理されることを望んでいるにも関わらず、今後のことを考えて躊躇ってしまう。

 

優しさとは時に鋭利な刃物にも勝ると言われるが、俺も二人の心に大きな傷を残す前に決断しなければならない。

 

「あらあら、でしたら私は三番目ですわね」

 

誰が見ても羨ましい状況をよそにシリアスなことを考えていると、今度は背中から腰に手を回されて耳元で甘く囁かれる。

 

「朱乃さん?なにをしてらっしゃるので?」

 

その行動を理解出来ない俺へ自慢の胸部を惜しげもなく背中に押し当てて、ズボンのベルトをカチャカチャとイタズラしてくる朱乃。

 

だが、これでリアスが発狂してこの場は収まると、安心していた。

 

「もう仕方ないわね朱乃ったら。順番よ」

 

・・・違うよリアス。どうして今日に限ってそんなに友好的なんだい?この間のように襟を掴んで引き摺ってもいいからこの状況をなんとかしてください。

 

右にアーシア、左にリアス、後ろに朱乃という駒王学園の誇る最強3トップの破壊力に為す術もなく、されるがままになっていると、前方に救世主ともいえる人物が姿を現す。

 

その救世主は俺達の姿を捉えると、その場で俺達を待っていた。

 

もはやその人物に全てを託すしかない。

 

「天下の往来でなにをしているんですか(けだもの)

 

・・・違うぞ小猫。人によってはそのジト目はご褒美になるかもしれないが、今の俺が望んでいることはそういうことではないのだよ。

 

「とにかく、他の方の迷惑になるので離れたほうがいいと思います」

 

これ以上打つ手がないと愕然としていたが、後輩である小猫の常識的な一言により三人は顔を見合わせて、今更顔を赤くして俺から離れた。

 

「塔城ちゃんには牛乳と羊羹を一週間分贈呈しよう」

 

正気に戻って赤面する最強3トップからようやく解放された俺は、救世主である小猫の頭を撫でながら今回の報酬を提示する。

 

「一年分なら今後も助けてあげます」

 

小猫は交渉上手なようでこちらの痛いところを的確に突き、報酬を釣り上げようとしてくる。

 

「卒業まででどうだ?」

 

最強3トップをその場に置き去りにして、学園への道を歩きながら交渉を続ける。

 

「分かりました。それで手を打ちましょう」

 

大企業同士の経営統合ばりに固い握手を交わす俺と小猫を、最強3トップは不思議な顔で見ていた。

 

―〇●〇―

 

授業が終わり、二年生の区画にアーシアを迎えにいく。今日はアーシアと一緒にバイトの日だ。

 

「あれ?珍しい」

 

もうすぐアーシアのいる教室に着くところで、橙色の髪を三つ編みにした眼鏡っ子に声を掛けられる。

 

「桐生」

 

彼女の名前は桐生藍華といい、歳は一つ下の二年生であり、アーシアや兵藤のクラスメイトである。

 

半年くらい前までよく彼女に付きまとわれていたことがあったので、その性格は熟知している。

 

一言でいえば、女性版の兵藤といっても差し支えないだろうが、彼と違うのはその実行力だ。その彼女がアーシアの親友であることにとても危機感をつのらせている。

 

事実、アーシアが家で大胆な行動に出る場合は大抵、この娘が絡んでおり、彼女を発信源としてリアスや朱乃、そして母ちゃんと回ってきて実行に移すというのが一連の流れのようになっている。

 

「アーシアを迎えに?」

 

厄介な人物に遭遇したと思い、引き返そうと思ったが、時間の関係もあったので彼女にアーシアを呼んでもらうことにした。

 

「アーシア!旦那様が迎えに来たよ!!」

 

教室に入ってアーシアに声を掛ければいいものを、廊下から大声で叫ぶ桐生に俺は顔を手で覆い、項垂れる。

 

一瞬にしてクラスの男子生徒から敵意を向けられてしまい、困惑していると顔を真っ赤にしたアーシアが桐生に背中を押されてやって来た。

 

「お、お待たせしましたユーさん」

 

誰だってクラスメイト全員の前であんなことを叫ばれれば動揺してしまうのは当然であり、それが学園生活二ヶ月足らずのアーシアであれば尚更である。

 

「先輩先輩」

 

後ろからアーシアの肩を掴んで子供の電車遊びのようにして俺に近づいてくると、ニコッと笑顔をみせて俺を呼ぶ。

 

「今日のアーシア勝負下着なんで、可愛がってあげてくださいね」

 

小さくもなく、大きくもない普通のトーンで話す桐生に、廊下で俺達の様子を窺っていた全員が一斉にアーシアを見る。

 

「き、桐生さん!!」

 

珍しく大きな声を出すアーシアにすこし驚いたが、あんなことを言われれば当然かと納得する。だが、このような姿の彼女は部活や家では見たことがなく、これ程までに無邪気なアーシアを見たのは初めてかもしれない。

 

俺やオカ研の連中と一緒に居るときの彼女も楽しそうに笑っているが、やはり同世代の友人にしか与えられないものがあるのだと実感した。

 

アーシアが遠慮をしているとは思わないが、やはり出逢いが出逢いだっただけにその辺りは少し複雑な想いもあるのかもしれない。

 

彼女からしてみれば俺は命の恩人であり、好意を寄せる相手であって、友人とはまた別の存在なのだ。

 

二人のやり取りを見ていて、改めてそんなことを考えると、なんだか無性に寂しい気持ちになった。

 

「もう知りません!行きましょユーさん」

 

そう言って俺の手を引くアーシアをニヤニヤして見ながら桐生は眼鏡の奥を光らせていた。

 

アーシアに手を引かれたまま学園を出てグランデまで向かう道中で、彼女から桐生に対する愚痴を何度となく聞かされたが、その表情はとても楽しそうに見えた。

 

「ユーさんは桐生さんと知り合いなんですか?」

 

俺と桐生のどのやり取りを見てそう思ったのかは分からないが、半年前くらいからの付き合いだと話すと、どういう付き合いなのかと詰め寄られてしまった。

 

その後も学園での出来事を話していると、アーシアから兵藤の様子が変だったという話を聞いた。

 

あいつが変なのはいつものことだと思ったが、確かに桐生がアーシアを呼んだ時も姿を現さなかったので不思議に感じていた。

 

大方、昨日の負けが尾を引いているだけで、時間が経てばいつも通りに戻るだろう伝えた。

 

―〇●〇―

 

グランデに到着してお互いに着替えてそれぞれの持ち場に着くと、下準備の段階から厨房は戦場と化していた。

 

開店時間になり、店がオープンすると、次から次へと厨房にオーダーが寄せられてくる。オーダーを確認しながら一つ一つ丁寧に、されど素早く調理して料理長に引き継いでいく。その料理は料理長のOKが出ると、次々にホールスタッフの手により客に提供されていく。

 

(今日はボリュームのある料理が多く出るな)

 

フライパンを振りながらそんな事を考えるが、理由は明らかだった。

 

アーシアが出勤しているからだ。彼女が出勤する日は常連客に加えて若い男達が殺到するから大忙しだ。

 

店のHPには相変わらず怪しげなコメントが乱立している。

 

それほどまでにアーシアの存在はグランデにとって大きくなっており、客足を左右する程までになっていた。

 

(クサレ外道どもめ)

 

不特定多数の野郎共への怒りをフライパンに込めた料理を皿に盛り付けて料理長にチェックしてもらうと、見事に作り直しを言い渡されて雷を落とされた。

 

心が乱れると、料理の味も変わってくるらしい。

 

これも勉強だ。

 

「ユーさん、ちょっといいですか?」

 

頭に痛みを感じながら料理を作り直していると、珍しくアーシアが厨房に入ってきた。

 

ホールでなにかあったのかと思い、料理長の顔を見ると、行けと目で合図されたので彼女の後ろを付いていく。

 

前を歩いているアーシアが少し震えているように見えたので声を掛けようとしたが、その理由がすぐにわかった。

 

「アーシアは仕事に戻っていいよ」

 

不安そうな表情をする彼女の背中を撫でてあげる。どんな理由があるにせよ、いきなり自分に剣を向けた相手が目の前に現れれば誰だって怖くなるだろう。

 

「でも・・・」

 

躊躇する彼女に目線を合わせて頭を優しくポンポンしてゆっくり頷くと、アーシアも納得して仕事に戻っていった。

 

(さてと)

 

アーシアが仕事に戻ったのを見届けると、彼女を震えさせた原因へと近づいていく。

 

「・・・お前らなにしてんだ?」

 

ホールに出ていくと、料理長に雷を落とされたことを常連客に揶揄られたが、それを軽くあしらって目的のテーブルまで行くと、そこには兵藤と小猫と一緒に昨日まで険悪だったはずの紫藤イリナとゼノヴィアが座っており、更には木場まで同席していた。

 

「彼らが食事をご馳走してくれると言うんでね」

 

ゼノヴィアが楽しそうにそう言うが、仲良く飯を食う間柄でもないだろ。

 

「この店の料理がとても美味しかったので、一誠君にお願いしたんです」

 

ありがたいことを言ってくれる紫藤イリナだが、俺の知りたいのはそういうことではない。

 

「兵藤、ちょっと来い」

 

俺は兵藤だけを呼び出して外に出る。

 

「お前が何を考えてるかは知らないが、この事をリーアは知ってるのか?」

 

そう聞くと、押し黙って俯いてしまった。相変わらずバカ正直なやつだと呆れてしまう。嘘でも知っていると言えば俺から言うことは何もないというのに、ここで黙ってしまってはリアスに無断でなにかやろうとしていることがバレバレである。

 

そんな真っ直ぐなところも兵藤の良いところではあるのだが、あの紫藤イリナとゼノヴィアが関わっているとなれば話は別であり、そこに木場も居るなら尚更だ。

 

「俺、木場のために何かしてやりたくて。でもバカだからどうしていいか分かんなくて、そしたら偶然あの二人に会って」

 

仲間想いなのはよくわかったが、事がことだけに勝手な行動を取るのは危険だと思ったが、冷静な小猫まで兵藤と行動を共にしていると聞いて少し驚いた。

 

「・・・リーアに説教される覚悟はあるんだな?」

 

兵藤の目から強い意思を感じた。その覚悟があるなら俺から言うことはなにもない。

 

「わかった。だが、命だけは賭けるな。危なくなったら直ぐにリーアに相談しろ」

 

そう言って踵を返す俺の背中に深々と頭を下げる兵藤。

 

「それともう一つ」

 

あることを思い出して兵藤に向き直る。

 

「お前、金持ってるんだろうな?」

 

俺が何を言っているのか理解出来ていない兵藤に、この間あの二人が食べた飯の量と金額を伝えると、血の気が引いて真っ青になった奴がいた。

 

「先輩・・・ツケできます?」

 

もはや正気を失った兵藤がアホなことを聞いてくる。

 

「できるかそんなもん!!」

 

兵藤を蹴飛ばして店内に戻ると、何故か生徒会の匙君も加わっていた。

 

(一体この面子でなにやらかそうとしてるんだか)

 

奇妙な六人組を一瞥してアーシアに視線を向けると、こちらを気にしながらも一生懸命働いていた。

 

俺も戻って仕事を再開すると、六人組の席からとんでもない量のオーダーが入り、厨房の勢いが更に激しさを増していく。

 

紫藤イリナとゼノヴィアに加えて今日はあの小猫がいるのだ。おそらくあの三人だけでこの間の倍は食べるだろう。

 

というかこのままの勢いでオーダーが入ったらこっちも死んでしまう。

 

六人組のテーブルのオーダーを全て調理し終えると、既に厨房スタッフ達も疲労困憊でぐったりとしていた。

 

厨房が一段落したのでこっそり六人組の様子を見に行くと、テーブルの下で財布を広げた兵藤が涙目になりながら木場や匙に目配せをしていたが、二人から無視されていた。

 

(哀れ兵藤)

 

その瞬間、兵藤と目が合ってしまい、なんとも言えない表情をしていたのが印象的だった。

 

結局、飯を食い終わるまでに二時間程掛かり、そこから話を始めたものだから六人組は閉店間際まで席を占領していた。

 

俺も時々隠れて様子を見ていたが、思いの外冷静に話し合いが為されていたので少し驚いた。

 

なにせ兵藤側には木場もいるので一触即発な雰囲気になってもおかしくないと思ったが、双方にとって有意義な提案を兵藤がしているようで、木場も静かに聞いていた。

 

たまに匙が嫌そうな顔をしていたのは見なかったことにしよう。

 

そうしている内に六人組の話し合いが終わり、兵藤に最後の審判が下される時が来る。

 

俺は六人組のテーブルの伝票を確認すると、低価格が売りであるグランデでは見たことのない金額が記されていた。

 

(明らかに0が一つ多い)

 

どうするのかとテーブルの兵藤を注視していると、突然誰かと携帯で会話を始め、ホールスタッフに呼ばれた料理長が兵藤に携帯を渡されて話をしていた。

 

不思議に思っていると、どうやら話がまとまったようで兵藤達は店から出ていった。

 

「オーナーの部活の後輩だったらしくてオーナー持ちだ」

 

戻って来た料理長に話を聞くと、兵藤が電話していたのはリアスだったようで、兵藤はリアスに泣きついたようだ。

 

(あのバカ)

 

リアスに知られたくないと言っておきながら、当の本人に泣きつくとは。一体どんな脳ミソしてるんだか、呆れてものも言えん。

 

(どうなっても知らんぞ)

 

事が露見した時は仲裁に入ってやろうとも思ったが、リアスから何か聞かれたら全て見たままを伝えよう。

 

もはや兵藤がどうなろうと知ったことではない。

 

―〇●〇―

 

閉店時間になり着替えを済ませてホールでアーシアを待っている。

 

アーシアとバイトが一緒の日は掃除や雑務は免除されており、彼女と一緒に帰ることが俺の仕事だ。

 

一緒に住んでいるのだから掃除や雑務もすると言ったのだが、いくら俺が一緒でもこれ以上遅くなるのはダメだと料理長に言われてしまった。

 

「お待たせしましたユーさん」

 

アーシアが着替えを済ませて来たのでスタッフ達に挨拶をして店を後にする。

 

「辛くなかったかアーシア?」

 

二人で並んで歩きながらバイトでの出来事を聞いてみると、彼女も俺の言わんとしていることを理解したらしく苦笑いをする。

 

「少し怖かったですが、ユーさんが気を使ってくれたので」

 

アーシアは少しと言うが、二人の姿を見ただけで身体が震えるということは相当な恐怖心を抱いているに違いないだろう。

 

気丈に振る舞う彼女にどう声を掛けていいのか俺には分からなかった。

 

「厨房のほうも大変だったのではないですか?」

 

アーシアは最後まで兵藤達の席に料理を運ぶことはなかったが、他のホールスタッフ達が忙しそうに厨房とホールを行き来する姿を見て気に掛けていたようだ。

 

俺はその時の厨房の様子を彼女に話すと、改めて労いの言葉をくれた。

 

優しいアーシアは兵藤の財布の心ことも心配していたので本当のことを伝え、リアスに何か聞かれても包み隠さず話すように言うと、不思議そうに首を傾げていた。

 

「そういえばお義母様からメールで写真が送られて来たんですよ」

 

アーシアが楽しそうに携帯を操作すると、画面にどこかの牧場で競走馬と触れ合う母ちゃんの写真が何枚も写し出されていた。

 

よく思い出してみると、今朝母ちゃんが熱心に見ていたのは競馬新聞だった気がする。

 

「こっちはお義父様と一緒に写ってるんですよ。本当に二人共楽しそうです」

 

おや?父ちゃんは仕事で北海道に行っているはずでは?何故に二人楽しく牧場巡りをしている?

 

画面を見ながら疑問に思っている俺とは対照的に、アーシアは何度もスライドしながら写真を楽しんでいた。

 

家に帰ると電気が着いており、リアスが先に帰って来てるようだった。

 

「リーア・・・その格好は?」

 

家の中に入るとリアスが出迎えてくれたのだが、その姿に度肝を抜かれた。

 

「少し恥ずかしいけど、似合うかしら?」

 

リアスが素肌にエプロンのみを着用して現れ、裾をヒラヒラさせながら顔を紅潮させていた。

 

さすがに下着は身につけているだろうと思ったが、彼女がその場でクルッと回ったことで、何一つ無駄なものを纏っていない美しい背中と肉付きの良い臀部が露になった。

 

更には背中と腰辺りに下着で締め付けられた跡が残っており、その赤い跡に目を奪われてしまった。

 

(似合う、いや似合い過ぎる)

 

女性の裸体の黄金比率で有名なミロのヴィーナス像も真っ青になるほどの傑出した肉体を白いレースの付いたエプロンで包みながら、上目遣いでこちらを見るリアスの姿に今この瞬間、この世に彼女以上に美しい女性がいるのかと思わず喉を鳴らしてしまった。

 

「・・・わたしも・・・」

 

今にも男の本能が目を覚ましそうな中で背後からシャツの裾を引かれたので振り返ると、翡翠色の瞳に涙を溜めたアーシアが何かを言っているが、声が小さくて聞き取れなかった。

 

「私も着替えて来ますぅ!!!」

 

彼女の声を聞き取るために耳を近づけた瞬間、鼓膜を破られるのではないかと思うほどの大声で叫んだアーシアが、乱雑に靴を脱ぎ捨てて物凄い速さで自室に消えていった。

 

突然の出来事にバランスを崩すが、リアスに支えられたお陰で転倒は免れた。

 

「ユー、大丈夫?」

 

現在、リアスに支えられている訳だが、背中に大きく柔らかなものが当たっている。

 

「リーア、なんでそんな格好を?」

 

彼女のお礼を言って自分の足で立つと、改めて服装について訪ねてみる。

 

「ジメジメして気持ち悪かったから涼しい格好がいいかなと思って」

 

アッサリとそう答えるリアスだが、だからって裸エプロンは刺激的過ぎる。

 

「似合う?」

 

再びファッションショーのようにクルリと回る。だから、色々見えてるから。

 

「リーアはどんな格好をしても似合うよ」

 

そう伝えると嬉しそうに身を捩らせるリアス。

 

これ以上判断力の鈍る前にリビングに入っていく。おそらくアーシアもリアスと同様の格好をしてくるだろうから、その前に少しでも心を落ち着けておこうとソファに腰を下ろす。

 

父ちゃんと母ちゃんが不在のため、二人の暴走を止められる人物がいないので、今以上に行き過ぎた行動を取らないように、心を鬼にして厳しく言わなければならないと立ち上がって振り返る。

 

「・・・ど、どうですか?」

 

リアス同様裸エプロンで登場したアーシア。スポーツの世界には分かっていてもどうにもならないものが存在すると言われるが、俺は今それを体験している。

 

裸エプロンで現れると分かっていても、目の前で恥じらう少女の姿に太刀打ち出来ずに力なく横たわる。

 

「あら!似合うじゃないアーシア!」

 

リアスとアーシア。全くタイプは違うが絶世の美少女といえる二人が同じ格好をしてじゃれあっている。

 

そんな絶景を見て何も感じない男がいるとすれば、そいつは男として不能か、別の趣味の奴だけだろう。

 

話をしなければならない。これから一週間三人だけで生活していかなければならないのだ。

 

「二人共、とりあえず座ろう」

 

急に真剣な表情をする俺に、不思議そうに顔を見合わせてからソファに座る二人。

 

「リーア、アーシア。その格好とても似合ってる」

 

素直な感想を伝えてあげると、嬉しそうに手を合わせる二人。

 

「しか~し!明日から露出度の高い服は禁止!!」

 

俺は腕組みをして二人にそう告げる。そうしないと俺の身が持たない。

 

「なっ!?なんでよ!?」

 

予想通りリアスが反抗してくる。身を乗り出して言ってくるものだから、豊満な胸部が上下に弾む。

 

(動くな!大事なスイッチが見えてる!)

 

口ではダメだと言いつつ、そこに目線が行くのは男の性だ。

 

「理由はなんですか?」

 

アーシアもテーブルに手を突いて抗議してくる。彼女の場合は慎ましい胸部ではなく、丸みを帯びた臀部が左右に揺れている。

 

どちらも眼福・・・ではなく目に毒だ。

 

理由は単純に俺が我慢出来ないからであるが、それをそのまま伝えるのは二人を助長させるだけなので絶対言えない。

 

もし口にしてしまえば、両親が帰ってくるまで確実にリアスとアーシアは大人の階段を登ってしまう。

 

無論、その導き手となるのは俺なのだが。

 

普段母ちゃんは二人に積極的になれ、などと軽口を叩いているが、俺には現実的なことしか言わない。

 

今まで女性付き合いに関して何も言われたことはないが、リアスとアーシアを大切に想うばかりに二人との付き合い方にはよく口を出してくる。

 

つまり、両親の不在中に二人と事を為したなどと知れれば命の危機である。

 

それだけは絶対に避けなければならない。

 

「これまで母ちゃん一人でやってくれてた仕事を一週間とはいえ、三人で分担するので大変だからです!」

 

理由になっていないのは自分でも分かっているが、なんとか勢いで誤魔化せないかと頑張る。

 

「理由になってない気もするけど、ユーの言うことにも一理あるわね」

 

俺の勢いだけの0回答に何故か納得してくれるリアス。

 

「確かに慣れない家事は大変ですぅ」

 

なんか知らんが、良い流れになってきた。

 

「俺とアーシアにはバイトもあるからリーアの負担が掛かってしまう」

 

本当に一週間の生活の話になってしまっているが、これはこれでいい。

 

「分かったわ。これからは自重するわ」

 

なんと勢いだけで乗り切ることが出来てしまった。世の中最後は勢いが大切だと痛感していた。

 

「でも、折角たくさん用意してくれたのに申し訳ないですぅ」

 

おや・・・アーシアがおかしな事を言っている?

 

「それは言っちゃダメ!」

 

アーシアが慌てて口に手を当てる。

 

成る程、裏で糸を引いていた人物が居たわけだな。

 

目を細めてリアスを見ると、明らかに動揺してる。

 

「リーア。怒らないから本当のことを言いなさい」

 

形勢逆転。今度は俺が身を乗り出してリアスとアーシアに詰め寄る。

 

明後日の方向を向いて意地でも本当のことを言わないらしい。

 

「何も言わないか、うん、なら俺は寝るよ。おいで黒歌」

 

俺達のやり取りを静かに聞いていた黒歌を抱き上げて部屋に向かう。

 

「そう、なら私達も」

 

ホッとした様子で後を追って部屋について来ようとするリアスとアーシアを手で制する。

 

「どうしたのユー?」

 

俺の行動に首を傾げる二人を一瞥する。

 

「・・・隠し事をする二人とは一緒に寝ない」

 

黒歌に頬擦りをして部屋に向かう。

 

「な!?」

 

俺の一言に驚愕するリアス。

 

「そんなぁ!」

 

見なくても分かるほど、落ち込んでいるアーシア。

 

リアスとアーシアの背後にいる人物については大方予想出来るが、ここは心を鬼にして二人が折れるのを待つ。

 

最近アジュカ先生の言い付けを破ってばかりだが、時には仕方がない。

 

「わかった!・・・わかったからそんなイジワルしないで!」

 

リアスがついに折れて、急にしおらしくなってきた。アーシアも今にも泣き出しそうな顔をしていた。

 

心が痛むが、毅然とした態度でソファに座って二人の話を聞くと、やはり母ちゃんが絡んでいたようで、一週間分のコスプレ衣装を用意して行ったらしい。

 

「・・・話は分かったよ」

 

小さくなって事情を話してくれた二人は本当に反省しているようだ。

 

「イジワルしてごめんね」

 

二人の姿になんだかすごく申し訳なくなったので、謝罪して頭を撫でてあげると、涙目になった二人から抱きつかれてしまった。

 

そこで俺は思い出した。リアスとアーシアが未だに裸エプロン姿であることを。

 

二人は謝罪しながらいつもより強く抱きついてきたため、身体の至る所に彼女達の肉体が密着している。

 

(気持ち良すぎて昇天しそう)

 

その後、俺達はいつも通りベッドで一緒に眠ることになったが、二人の距離がいつも以上に近かったことは言うまでもない。

 

こうして俺達三人と黒歌だけの激動の一週間が幕を開けた。




第20話更新しました。

突然ですが、皆さんはHSDDのどのキャラが好きなんですかね?
筆者は断然ヴェネラナがお気に入りです。
彼女の若い頃をメインに据えた作品を書こうかと思うほど好きです。登場シーンは多くないですが、何故なんでしょうね。不思議です。

内容のほうはもはやギャグですね。
投稿しようか迷ったほどの中身のないものになってしまいました。すみません。
原作と話が前後しているのは間違った訳ではなく、意識的に書いてます。
ちゃんとコカビエルまでたどり着きます。ただ、余り早く彼と出会ってしまわないためにこういう書き方にしました。

読んでくださる方、コメントをくれる方、誤字・脱字の修正をしてくださる方ありがとうございます。

ではまた次回。
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