第22話です。
ありがとうみんな
遂に決着をつけたよ
僕達はエクスカリバーに勝ったんだ
―〇●〇―
「!?」
大地が揺れる・・・まさにそんな感覚だった。
圧倒的な何かがこの地に降り立った。
(家の方角!)
自宅の周辺から不気味な気配を感じる。
(リアスとアーシア。それにフリードと・・・誰だ?)
覚えのない二つの気配。だが、その一つから感じる気配はドス黒く濁っており、絶望感さえ漂わせていた。
この者の放つプレッシャーはあのライザー・フェニックスの比ではなかった。
噴き出す汗も二の次に、俺は走り出していた。
(リアス、アーシア。無事でいてくれ!)
何故、これ程までの気配を今まで感じることが出来なかったのかは疑問だが、悠長に考えている時間もない。
(木場と兵藤はどうした!朱乃と小猫は!?イリナやゼノヴィアは!!)
最悪の事態が頭を過る。それほどまでにこの気配の持ち主は危険だ。
「そんなに急いでどこに行くんだ?」
常人には認識出来ない程のスピードで走っている俺に声を掛けてくる男がいた。
その男の声に思わず足を止めてしまった。
男はガードレールに腰を掛けながら空を見上げていた。
「そんなに急いでいたら、美しい星々たちも見れないだろう?」
不思議な雰囲気を纏う男だ。頭ではリアス達のところへ急がねばと分かっているのだが、身体がこの男に引き寄せられる。
月灯りに照らされた美しい銀髪、清潔感を漂わせる白いシャツに漆黒を連想させる黒のジャケットとズボン。
(・・・人間ではない?)
何より男の醸し出す雰囲気が、普通の人間とはかけ離れていた。
(堕天使?・・・いや、悪魔か?)
得体の知れない目の前の男に警戒する。
「そう警戒するな。あれだけ旨い料理を作る男に興味があるだけだ」
口振りからすると、店の客のようだが、それだけではないのは明白だ。
「それはありがとうございます。申し訳ありませんが急いでいますので、今度はバイト中に声を掛けてください」
会釈をして再び走り出そうとしたが、リアス達の気配を見失ってしまい、自然と舌打ちをする。
もう一度気配を探すが、俺が探知出来る範囲には居なかった。
「お前の急いでいることとは関係ないかも知れないが、この先の公園に女が一人倒れていたぞ」
ニヤリと笑みを浮かべながら俺に向かって言葉を投げてくる。
「黒いボンテージのような戦闘服を着た、栗毛の女だ」
間違いない紫藤イリナだ。彼女の特徴と一致する。
男の話では出血も酷く、意識もない様子だったようだ。
そんな状態の女性を発見しながら、その場に放置してきた目の前の男に怒りを覚えるが、今は男に文句を言っている場合ではなく、一刻も早く彼女のところへ急がねばならない。
男を一瞥すると、嫌な笑みを浮かべていたが、こちらに敵意は無いようだったので、紫藤イリナが倒れていると言っていた公園に急いだ。
その間もリアスとアーシアの気配を探っていたが、やはり発見することは出来なかった。
公園に着いて周囲を見渡すも、彼女の姿を見つけることは出来なかった。だが、地面の土になにかを引き摺ったような痕が残っており、所々に血液らしきものが付着していた。
「イリナ!?」
その痕を追って行くと、ドーム型の遊具があり、その中に彼女が横たわっていた。
すぐに彼女に駆け寄り、上半身が露になっていたので制服の上着を羽織らせてあげ、意識を確認すると僅かだが反応があった。
「すぐに病院に連れていく」
イリナを抱き上げようとすると、腕を捕まれた。その力は瀕死の女性のものとは思えないほど強かった。
「びょ・・いん・・・・・・ダメ」
掠れた声で肩で息をしながら強い拒否を見せるイリナ。
「命に関わるぞ!」
こんな状態になってまで拒否すると言うことは、おそらく彼女達は非合法な手段でこの国にやって来たのだろう。そのため、素性がバレると厄介なことになるのだろうが、今はそんなことを言っている場合ではない。
無理矢理抱き上げようとするが、意地でも言うことを聞かないイリナ。
余程、本国に迷惑を掛けたくないらしい。なんという忠誠心の強さだ。アーシアもそうだが、この年代の少女達にここまでさせる教会とは、一体どんな組織なのだろうか。
(そうだ!アーシアだ!)
俺はアーシアの【
「アーシア!」
家の中には電気が点いており、もしかしたらアーシアが居るかも知れないと、玄関のドアを開けたが中には誰も居なかった。
俺は今は使われていないリビングの隣の部屋のベッドにイリナを寝かせると、処置剤一式とタオルを持って部屋に戻る。
意識の朦朧としている女性の衣服を脱がせることには躊躇したが、身体の至るところに出血があり、早く処置しなければ大変なことになると思ったので、断腸の思いで衣服を脱がせた。
温かいタオルで彼女の全身を清拭してから処置を始めた。
時折、消毒液が傷口に滲みたのかビクッと反応することがあったが、額の比較的小さい傷は大きめの絆創膏で処置して胸部と腹部の傷には包帯をしっかり巻いた。太腿から脹ら脛にかけても細かい傷が複数あったので、まとめて包帯を巻いた。
傷口が炎症を起こして熱が出る可能性も考慮して、枕の替わりに大きめの保冷剤を用意した。
(あとはアーシアにお願いすれば、傷が残ることもないだろう)
いくら教会戦士と言っても女の子。顔や身体に傷を残るようなことは避けなければならない。
(さすがに服は着ないとな)
一息吐いてイリナを見ると、素肌に包帯のみを巻いたミイラ男ならぬミイラ女のようになっていたので、パジャマを借りようと部屋を出た。
イリナの体型を考えると、アーシアのパジャマでは下半身はサイズが合うかも知れないが、上半身は少しキツイかもしれない。
リアスは・・・ダメだ。彼女はまともなパジャマを持っていない。
結局、自分の部屋から新しいTシャツと短パンを持ってきてイリナに着用させた。彼女の着用していた黒い戦闘服とシンプルな可愛らしい下着をネットに入れて洗濯機を回した。
その後、キッチンへ行き、イリナが目を覚ました時に少しでもなにか口に入れたほうがいいと思ったので、簡単ではあるが、玉子粥を作って彼女の眠る部屋に戻った。
三十分くらい部屋を離れていたが、目を覚ますことなく眠っていたようだ。時折、なにかに魘されるように身を捩るが、すぐに規則正しい寝息を立てる。
そんなイリナを見ながら、彼女の負った傷のことを考えいた。
(あの傷を見る限り彼女が一方的にやられたのは間違いない。だが、そんなことが有り得るのだろうか?・・・仮にも教会という巨大な組織から、正式に聖剣奪還という大任を拝したほどの戦士だ。イリナの実力は定かではないが、ゼノヴィア程ではないにしろ、それに近い実力を持っていると見ていいだろう。況してやイリナは聖剣を任されていた。そんな彼女が手も足も出ない相手・・・)
そこまで考えて、ふと思考を止めた。
一人だけ心当たりがあったからだ。
(あの強烈なプレッシャーを放っていた存在)
聖剣エクスカリバーを有した教会戦士を歯牙にもかけない程の力を持った者が居たとしたら・・・その者がリアス達と対峙していたとしたら・・・
(まずいな)
事態が次のフェイズに移行しつつあるなかで、最も強力なカードが相手側にあることを悟った。
(もしリーアが冥界に援軍要請をせず、自分達だけで決着をつけようとしているなら・・・)
最悪のシナリオが頭に浮かぶ。
(・・・全滅・・・)
リアスは少しずつではあるが、王として着実に成長していることは間違いない。だが、土壇場での経験が少ないのは、普段の彼女を見ていても分かる。
リアスは優しい、その優しさが王として成長を妨げているのも事実だ。いずれ、状況に応じた冷静な判断が出来るようになるだろうが、現段階でそれが出来るかと聞かれれば不明だ。
だが、敵は彼女の成長を待ってはくれない。リアスが自分自身で気づくしかない。
(リーア、みんな)
部屋の中から見上げた月は真円を描き、輝いていた。
―〇●〇―
僕がバルパーとフリードを追ってこの場所に着いたとき、部長達は冥界の番犬と称されるケルベロスと対峙していた。
そのうちの一匹が逃亡しようとしていたので、動きを止めるため神器を発動した。
身動きの取れなくなったケルベロスは副部長の巨大な雷で消滅した。
ケルベロスを撃退し、安堵していた矢先に僕達の目の前でバルパーの手によって四本のエクスカリバーが一本になった。
だが、事態はそれだけに留まらなかった。四本のエクスカリバーの融合に伴い、バルパーが地面に施していた術式が完成し、間もなくこの駒王町が崩壊するという。
しかも、その術式を解除するためには、あのコカビエルを倒さなくてはいけないと言った。
僕達はコカビエルをなんとかするためには奴に向かおうするが、暗闇から突然現れたフリードが完成したエクスカリバーを手にして対峙してきた。
ゼノヴィアが僕に共闘を持ち掛けてくる。教会から命を受けている彼女は、聖剣の核となっている欠片を回収出来ればいいようだ。
僕達のやり取りをにやけた顔で聞いていたバルパーに僕と聖剣の因縁を話すと、笑って自分の話を始めた。
僕はバルパーの口から語られた真実に唖然とした。
バルパーは自分に聖剣使いの適正がなかったことに絶望し、聖剣使いを人工的に作り出す研究に没頭。聖剣を扱うためには特別な因子が必要であることに気づき、その因子だけを抽出出来ないかと考えた。
つまり、一人一人では聖剣を扱えるだけの力が足りなかったが、その因子を取り出して一つにまとめることで、聖剣を扱える存在を作ろうとした。
この男は同胞達を殺して因子を取り出したのだ。
そうして完成した因子を使って、フリードが聖剣を扱えるようにしたのだ。
その真実を知った瞬間、怒りにうち震えた。
バルパーが興味を失ったように因子の一つを地面に放り投げた。
頬を伝う涙をそのままに地面に転がる因子を拾い上げ、優しく撫でた。この時の感情をどう表現していいのか分からない。
どんなに変わり果てた姿になっても、苦楽を共にしてきた同胞達との再会に溢れる涙を止められなかった。
そのときだった。
僕の手の中の同胞達の命が光輝き、その場を覆ったのは。
何が起こったのか分からずに呆気に取られていると、その光が人の形を形成し始めた。
その姿を見間違えはずはない。いまのいままで一日足りとも忘れたことなどない。
そこには幼き頃を共に過ごした同胞達の姿があり、彼らはとても穏やかな表情をしていた。
僕の涙が地面を濡らしていく。
ずっと思っていたんだ、どうして僕だけが生き残ってしまったのかと、僕だけが平穏な暮らしをしていいのかと。
そんな僕に同胞達は言ってくれた。
もう苦しまなくていいと、幸せになっていいと、自分達のこと忘れないでいてくれてありがとうと。
その瞬間、全てが報われた気がした。
僕は迷い中で生きてきた。悪魔へ転生して新たな名と生きる意味を得た。その一方で苦しみながらこの世を去った同胞達の無念を晴らすために得た力でもあった。
部長への忠誠か同胞達の復讐かで揺れ動くこともあった。
でも、同胞達の言葉で僕は新たな一歩を踏み出すことが出来る。
「僕はリアス・グレモリー眷属の
―〇●〇―
「・・・聖歌」
隣で見ていたアーシアがそう呟いた。その瞳からは涙が流れていた。
彼らと一緒に、木場も涙を流しながら聖歌を口ずさんでいた。
すると、彼らの魂が輝きを放ち、木場を囲んでいく。
彼らは無垢な笑顔で木場に話しかけていた。
一人ではダメだったと、皆が集まれば大丈夫だと、怖くなんかないと、自分達の心は一つだと。
やがて彼らの魂が天に昇っていき、大きな光となって木場に降り注いでいく。まるで結婚式のイベントで行われるライスシャワーのようだ。
『相棒』
木場を祝福するような神々しい光に目を奪われていると、ドライグが語りかけてくる。
『あの
至った?ドライグがなにを言っているのか、俺には理解できなかった。
『
ドライグが楽しそうに笑う。
『――《
―〇●〇―
月灯りで照らされていた部屋から光が失われていく。不思議に思い、窓の外を見ると、先程まで煌々と光を放っていた月が雲に覆われていた。
先程までなにかに魘される度に苦しい表情を浮かべていたが、状態が落ち着いたようで規則正しい寝息を立てている。
椅子に凭れ掛かり、一息ついていると、洗濯機から終了を知らせる機械音が聞こえてきたので立ち上がる。
「うっ・・・」
部屋を出ようとすると、穏やかに眠っていたイリナがまた魘されたように口から声が漏れたので、彼女の側に寄る。
「・・・こ・・こは?」
どうやら意識を取り戻したようで、自分の現状を確認しているようだ。
「目を覚ました?」
俺は再び椅子に座り、彼女の額に乗せていたタオルを外す。まだ意識が朦朧としているようで、視点が定まっていなかった。
「ここは俺の家。公園で倒れていた君を治療するために家に連れてきた、覚えてる?」
俺の顔を見て少し驚いたような反応したが、自分がここにいる経緯を説明すると、僅かに頷いた。
「水を持ってくるから待ってて」
俺は部屋を出てキッチンに向かい、冷蔵庫から水の入ったペットボトルを取り戻す。
(とにかく彼女が目を覚まして良かった)
一時はどうなるかと思ったが、しっかりと会話も出来ていたことや、記憶障害もないようだったので安心した。
「なにをしてるんだ!」
部屋に戻ろうとした時、ドスッとなにかが落ちるような音が聞こえたので、急いで戻ってみるとイリナが床を這って部屋を出ようとしていた。
「わたし・・・いかなきゃ」
まともに身体が動かないというのに、どこへ行こうというのだろうか。だが、彼女の瞳からは確固たる決意が窺えた。
こんな怪我を負ってまで任務を遂行しようとするイリナの忠誠心には舌を巻くが、こんな状態の彼女を行かせるられるはずもなく、強引に彼女を抱き上げてベッドに寝かせる。
「無理をするな。こんな状態で行ったところで命を落とすだけだ」
オカルト研究部の部室で彼女達と話をした時、命懸けで任務に望むと言っていたが、嘘ではなかったようだ。
「このままじゃ、みんな・・・死んじゃう」
衝撃的な一言ではあったが、どこか予感めいたものがあったので、涙を流して訴えるイリナに話を聞く。
兵藤達から聖剣の奪取を手伝いたいと提案があったこと。
彼らが先に標的と接触して交戦していたところに参戦したが、隙を突かれて取り逃がしたこと。
逃亡した敵はフリードとバルパー・ガリレイという、教会の元大司教で今回の事件の首謀者の一人を追っていたが、その過程でゼノヴィアとはぐれてしまったこと。
ゼノヴィアや兵藤達と合流するために探していたところ、運悪く【
意識が遠退き、人目の付かないところで休もうと思っていたところに俺が現れたこと。
「だから、わたしいかな・・・うっ!」
事情は分かったが、そんなにとんでもない話なら尚更、怪我人を行かせる訳には行かない。
俺は彼女の口に無理矢理玉子粥の乗ったレンゲを放り込んだ。
「▲□▼☆◇☆▼□▲」
顔を真っ赤にして必死でなにかを訴えているが、何を言っているのか分からない。
「それを食べて寝てろ」
ペットボトルの水で口の中の玉子粥を流し込むと、呆気に取られたような表情をみせるイリナ。俺は腰に巻いていたエプロンを椅子に脱ぎ捨てる。
「俺が行く」
咳き込む彼女が落ち着くのを待って場所を聞くと、駒王学園だと言っていた。
気配を感じられない話すと、特殊な結界が張られているのではないかと言っていた。
「みんなは必ず連れて帰る。だから、安静にしていろ」
目を大きく見開くイリナの頭を撫でて、部屋を出ていく。
(さて)
玄関を出て悪魔の象徴を背に携えて宙を浮く。
(待ってろ、みんな)
フリード、バルパー・ガリレイ。そしてコカビエル。
巨大な敵が待ち受けていると言うのに心が踊る。これも悪魔になった影響なのかと自嘲する。
学園を目指して翼をはためかせると、一瞬にして大きな家が豆粒のように小さくなった。
その瞬間、雲の切れ間から真円を描いた月が顔を出した。
―〇●〇―
「勝ちなさい!祐斗!過去の因縁に決着をつけるのよ!貴方ならエクスカリバーを越えられる!」
あの日、小さな命の灯火が消えようとしていた。
私はその小さな命に新たな生と名を与えた。
興味本位と言ってしまえば、それまでだったのかもしれない。
眷属を持つことを許され、
でも、今にして思えば、惹かれたのかもしれない。
その強烈な瞳の輝きに・・・
暗く濁った瞳の奥底に、僅かに存在していた強烈な生への渇望に。
(・・・祐斗・・・よくぞここまで)
その時から、今日のこの瞬間をどんなに待ち望んだことか。
(・・・それが貴方の答えなのね・・・)
危機的状況にあるにも関わらず、成長した自慢の
「ほぅ?《
宙に浮く、玉座に座りながら興味を示すコカビエルに一気に現実に引き戻される。少し位は余韻に浸らせてくれてもいいんじゃないかしら、全く無粋な男。
計画の協力者であるフリードが追い詰められていることには目もくれず、祐斗を見ていた。
「―僕は剣になる―」
その言葉と共に祐斗が神々しい光と、その光とは相反する禍々しいオーラを放つと、一本の剣を造り出した。
「―
聖と魔、相反するはずの力の融合。その結晶がこれほど美しいとは思いもしなかった。
朱乃や小猫、そしてアーシアも無意識にそう呟いていた。
フリードが融合したエクスカリバーの力を駆使して対抗するが、禁手を果たした祐斗には通じることなく、苛立ちを募らせる。
「やるな先輩!ならば私も
新たに得た力でフリードに立ち向かう祐斗に触発されたゼノヴィアが真の得物を手にする。
「まさかデュランダル!?」
空間が歪み始めると、ゼノヴィアがその中から取り出したのは、聖剣エクスカリバーと並び称される、かの有名な聖剣デュランダルだった。
その切れ味はエクスカリバーをも凌駕すると言われている。
これには対峙するフリードだけではなく、バルパーまでも驚愕の声をあげていた。
バルパーの話では、人工的にデュランダルを扱える領域まで達した者はおらず、研究も進んでいないようだ。
では、何故ゼノヴィアがそれを扱えるのか?
彼女は生まれながらに聖剣使いの素養があったらしく、そんな天然の聖剣使いであるゼノヴィアが可能にしたのが、エクスカリバーとデュランダルの伝説の聖剣による二刀流という奇跡のコラボレーションだった。
(なんて恐ろしい子なの!)
エクスカリバーだけでも手を焼くというのにデュランダルまで使いこなす者が存在する。その事実に戦慄を覚えた。
今コカビエルを退けることが出来たとしても、今度は彼女が敵として立ちはだかるかもしれない。
それを考えると身の縮む思いだが、この戦いを乗り切るためには、彼女の力が必要不可欠だった。
デュランダルを手にしたゼノヴィアの力は圧倒的であり、よりオリジナルに近づいたはずのエクスカリバーを以てしても力の差は歴然だった。
祐斗の禁手『
コカビエルとバルパーがこの戦いに手を出さないように注意しているが、コカビエルは余裕の笑みを浮かべて見ているのに対して、バルパーの方は錯乱してブツブツと独り言を口にしていた。
「所詮は紛い物か」
ゼノヴィアのデュランダルがフリードのエクスカリバーを真っ二つする。
たった一度の横なぎで。
「終わりね」
フリードの狂気を支えていた殺気が弱まる。
その隙を見逃さずに祐斗が一気に距離を詰める。
態勢を崩したフリードが祐斗の聖魔剣を折れたエクスカリバーで受け止めようとするが、儚い金属音と共に聖剣エクスカリバーが木っ端微塵に砕け散る。
(やったのね、祐斗)
肩口から横腹にかけてバッサリと斬られて、鮮血を滴らせていた。
決着がついた。
天を仰ぎ見る祐斗の表情からは充実感ではなく、なにかを失った喪失感が強いように見えた。
「祐斗・・・まだ終わってないわよ」
永きに渡り追い求めてきたエクスカリバーとの決着をつけたのだから仕方のないことだと思うが、その元凶がまだ残っている。
祐斗は聖魔剣を再び握り直すと、バルパーの下に歩を進めるが、当のバルパーの様子がおかしい。
「聖と魔の融合・・・?反発しあう二つの要素が・・・?あり得ない」
地面に膝をつき、表情を強張らせて狼狽するバルパーに祐斗が聖魔剣を構える。
「覚悟を決めてもらおう。バルパー・ガリレイ」
聖魔剣の切っ先をバルパーに向ける祐斗。そんな危機的状況にも関わらず、天を見つめるバルパー。私はその姿に違和感を覚えた。
「・・・そうか!それならば説明がつく!聖と魔のバランスが崩れているのだ!つまり、魔王だけではなく、神も―」
突然、全てを理解したように叫び始めたバルパー。刹那、バルパーの胸部を光の槍が貫いた。
何が起こったのか理解できなかった。ただ、何かが光ったとしか。
「バルパーよ、おまえは優秀だった。だがな、最初から俺一人で十分なのだ」
宙に浮かぶコカビエルが嘲笑う。その様子を見て、バルパーを殺したのがコカビエルであることを理解した。
「ククク!カァー、ハッハッハハハハハハッ!」
天に向けて高らかに笑うコカビエル。
その姿はまさに威風堂々。凄まじい自信とオーラを纏い、古より聖書にその名を刻み、嘗ての大戦を生き抜いた堕天使が地に降り立った。
第22話更新しました。
原作を遵守して書くよりオリジナルの展開を書いているほうが意欲が増すことに最近気づきました。二次小説を書いているのでバカなことを言っているのは分かるんですが、いちいち原作と照らし合わせて書くのがしんどいです。
内容のほうは木場がメインの章なのにいまいち目立ってない気がします。ドライグの禁手の説明はどうしても入れたかったので無理矢理差し込みました。あとはどの段階で主人公をぶっこむか思案中です。
読んでくださる方、コメントをくれる方、誤字・脱字の修正をしてくれる方ありがとうございます。
ではまた次回。