ハイスクールD×D Yto   作:今日から禁煙

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読みにくかったら言ってください。

第23話です。


第23話

 ……主がいないのですか?

 主は……死んでいる?

 では、私達に与えられる愛は……?

 

 

 ―〇●〇―

 

 

「来るわよみんな!祐斗と小猫は左右に展開して!朱乃は距離を取りなさい!一誠は力を溜めて、いつでも譲渡出来るように!アーシアは後方に待機して!ゼノヴィア!貴方にも協力してもらうわよ!」

 

 敵は先の大戦を生き抜いた強者。まともに戦って勝てる可能性が低いことは分かっている。でも、お兄様に要請した援軍の到着を待っている時間はない以上、ここでコカビエルを止めるしかない。

 

(この街を守る!)

 

 私が駆け出すのに合わせて全員が動き出す。

 

 祐斗が聖魔剣で、ゼノヴィアがエクスカリバーとデュランダルの二刀で、二人同時にコカビエルに斬りかかり、背後から小猫が殴り掛かるが完璧に防がれる。三人がコカビエルから距離を取った瞬間、私の滅びの魔力と朱乃の雷がコカビエルをまともに捉える。勿論、この程度ではダメージを与えられないことはみんな分かっているため、直後に小猫が抉り取った地面をコカビエルに向けて投げつける。砂塵が薄れ、コカビエルの姿を確認すると、再び祐斗とゼノヴィアが斬りかかっていく。

 

 眷属である三人の絶妙なコンビネーションにゼノヴィアが加わり、威力が倍増しているが、期待するほどのダメージは与えられない。

 

 だが、それは全員が理解していた。この攻撃はあくまでも時間稼ぎ。

 

 本命は一誠の赤龍帝からの贈り物(ブーステッド・ギア・ギフト)を最大まで引き上げ、それを譲渡されて放つ私の滅びの魔力。

 

「いいぞ!いいぞ!リアス・グレモリーの眷属達よ!」

 

 ダメージを期待していなかったとはいえ、顔色一つ変えないどころか、嬉々とした表情を浮かべるコカビエル。余裕のつもりなのか、攻勢に出ようとしない。

 

『Explosion!』

 

 ならばそのまま沈めてやるわ! 

 

「一誠!!」

 

 赤龍帝の力が最大まで到達したことを確認すると、一誠に向かって叫ぶ。一誠もそれを理解しており、左腕を私に向かって突き出す。

 

「行きます!部長!」

 

 宝玉の輝きと共に、最大まで引き上げられた赤龍帝の力が私に譲渡される。

 

(すごい!)

 

 私の限界を超えて、魔力が一気に跳ね上がる。

 

(こんな世界があったなんて!)

 

 紅き魔力のオーラが天を穿つ。もしかしたら、これがお兄様の見ている世界なのかもしれないとさえ感じた。

 

 この力ならコカビエルを落とせると確信する。

 

 コカビエルへ両手を向けて、体内で暴れ狂う魔力を必死にコントロールする。

 

「なんて魔力だ!」

 

 そんな私を見てゼノヴィアが驚愕の表情を浮かべる。

 

「すごい」

 

 地面に拳を突き立てながら驚嘆する小猫。

 

「さすが【紅髪の殲殺姫(ルイン・プリンセス)】」

 

 目を見開き、私の冥界での異名を口にする祐斗。

 

「すぐに四散してください!巻き込まれてしまいますわ!」

 

 余裕のない私に代わって、指示を出す朱乃。

 

「やっちゃってください!部長ぉぉぉぉ!」

 

 力を譲渡してくれた一誠が拳を突き上げる。

 

「部長さん!」

 

 アーシアも祈るように声援を送っている。

 

 この瞬間のためにみんなが力を尽くしてくれた。

 

 恐れるものなど何もない。

 

「喰らいなさい!コカビエル!」

 

 絶大な魔力の波動が両手に滞留する。その身に受ければ塵一つ残さないだろう。

 

「すごいぞ!リアス・グレモリー!おまえも兄同様、才に恵まれているようだな!」

 

 心の底から楽しんでいる。その表情は狂喜に満ちていた。

 

「消し飛べぇぇぇぇぇぇっっ!!」

 

 最大級とも言える魔力の塊が轟音とともにコカビエルを襲う。

 

「ぬおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

 コカビエルは両手に堕天使の力の源である光力を展開させて受け止める。

 

 受け止められるはずがない。この一撃は兄である魔王サーゼクス・ルシファーに匹敵する一撃。

 

 これほどまで魔力を放出したことなかったため、その影響で息が苦しくなり、私は膝をつく。

 

 真正面から魔力を受け止めるコカビエルの表情は鬼気迫るものがあった。身に纏うローブは端々が破れ、受け止める両手からも血が噴き出す。もう少しでコカビエルを呑み込める。

 

 なのにどうして? 

 

 私の一撃が徐々に勢いを失い、美しい球体だった魔力が形を崩し始める。

 

「……嘘でしょ?」

 

 魔王クラスの一撃だと信じて疑わなかった。

 

 みんなの想いと怒りの詰まったこの一撃なら、古の強者であるコカビエルさえも消滅させられると確信していた。

 

「ハァッ!」

 

 コカビエルの咆哮と共に巨大な魔力の塊が完全に消滅する。

 

 身に纏っていた衣服はボロボロになり、肩で息をして、身体の至るところから出血しているが、その表情は嬉々としていた。

 

 奥の手とも言える攻撃で、決定的なダメージを与えることが出来なかったことに絶望する。

 

 この一撃が通用しないとなると、この場にいる誰がコカビエルを倒せるというのだろうか? 

 

 禁手を果たした祐斗? 聖剣使いのゼノヴィア? コカビエルと同じ堕天使の力を持つ朱乃? 覚醒前とはいえ、姉に最上級クラスと噂される悪魔がいる小猫? 神滅具を所持する一誠? 

 

 仮に一誠からの譲渡を受けたとしてもコカビエルには届かないだろう。

 

 絶望が心を支配する中で、祐斗とゼノヴィアがコカビエルに向かって斬りかかり、朱乃が雷を落とす。小猫もコカビエルの隙を突いて攻撃を加え、倍加した一誠も立ち向かっていく。

 

(みんな!)

 

 誰一人として諦めてはいない。全員が知っているのだ、ここで諦めてはしまっては自分達の暮らす街がなくなってしまうことを。

 

「部長さん!」

 

 アーシアが私の体力を回復させてくれる。直接、戦いに参加することの出来ない彼女も戦っている。

 

「ありがとう、アーシア」

 

 私も残り少ない魔力を振り絞ってコカビエルに向かっていく。

 

「クックックッ!禁手を果たした騎士(ナイト)にバラキエルの血族である女王(クイーン)。覚醒前である猫又の戦車(ルーク)、更には神滅具(ロンギヌス)を所持する兵士(ボーン)。それに加えてデュランダルを使う教会戦士」

 

 ダメージを受けたにも関わらず、それを感じさせないコカビエルは次々と迎撃していく。

 

「本当に面白い!だが、俺と対峙するのは百年早かったな! 魔王の妹よ!」

 

 コカビエルの眼光が鈍く光ったと同時に一誠が腕を掴まれ、祐斗に投げつけられる。

 

 一誠を受け止めた祐斗も、コカビエルの衝撃波により吹き飛ばされる。

 

「祐斗!一誠!」

 

 一瞬、コカビエルから目を離す。その瞬間、空気が震え、耳鳴りが襲う。

 

「ガッハァ!」

 

 ゼノヴィアの腹部に蹴りが突き刺さる。

 

「まだまだだな!先代の使い手は常軌を逸する強さだったぞ!」

 

 その場に膝をつき、蹲るゼノヴィアに目もくれず、次の得物に視線を移すコカビエル。

 

「うっ!?」

 

 朱乃から放たれる無数の雷を翼で薙ぎ払いながら、距離を詰めて殴り飛ばす。

 

「お前の父の力はこんなものではなかったぞ!」

 

 地面に叩きつけられながらも鋭い眼光をコカビエルに向ける朱乃だったが、吐血して次の行動に移れずにいる。

 

「ぐふっ!」

 

 その隙をついた小猫がコカビエルの背後から拳を突き出すが、コカビエルに察知されてしまい、強烈なカウンターを受け、その勢いで小猫の身体が地面を抉る。

 

「幼いとはいえ猫又だろ!俺を楽しませてみろ!」

 

 余裕の笑みを浮かべ、腕組みをして辺りを見渡すコカビエル。

 

「ゼノヴィア!朱乃!小猫!」

 

 一撃。たった一撃で……。

 

 決してコカビエルを甘く見ていたわけではない。

 

 だからこそ、恥を忍んで冥界に援軍要請をした。

 

 それでも……古の強者が相手でも、援軍が来るまでの時間を稼ぐことは出来ると思っていた。

 

 私一人では無理でも、みんなの力を合わせれば、やれると思っていた。

 

「皆さん!大丈夫ですか!?」

 

 アーシアが横たわるみんなを回復させるために奔走する姿が目に映るが、私はこの怪物に対抗する術を失い、奥歯を噛む。

 

 アーシアの治療を受けて、倒れていた仲間達が立ち上がるが、その表情からは絶望の色が窺える。

 

 躊躇している時間がないことは理解しているが、どうしても足が進んでいかない。

 

 みんなが気づいてしまった。

 

 自分達に目の前の怪物を倒すことが出来ないということを。

 

「フッハッハッ!【聖母の微笑み(トワイライト・ヒーリング)】か!いいぞ!何度でも向かってくるがいい!」

 

 回復を終えたみんなが私を囲むように集まり、コカビエルを睨む。

 

 そんな状況の中、私は一つの決意をする。

 

「一誠。もう一度、赤龍帝の力を私に譲渡して」

 

 全員の連携攻撃でもダメージが与えられない。ならば、再び赤龍帝の力で限界まで高めた魔力をコカビエルに向けて放つしかない。

 

(あとは私の身体が耐えられるか)

 

 アーシアの力で体力は回復したとはいえ、みんなの魔力も底を尽き欠けている。

 

 文字通り、次が最後の一撃になるだろう。

 

 この身に万が一のことが起ころうと、ここでコカビエルを止める。

 

「ダメよ!リアス!貴方の身体だって限界のはずよ!」

 

 やはり、魔力を察知することに優れている朱乃には隠し通すことは出来ない。

 

「あれは消耗が激しすぎます。無茶しないでください」

 

 普段は無表情の小猫が複雑な表情を浮かべている。

 

「くそっ! 僕にもっと力があれば……」

 

 聖魔剣を地面に突き刺して悔しそうな表情を浮かべる祐斗。

 

「部長……俺っ!」

 

 唇を噛み、祐斗同様に悔しさを滲ませる一誠。私は彼に残酷な要求をしているのかもしれない。

 

「ぶ、部長さん」

 

 目に涙を浮かべ、胸元で手を合わせるアーシア。懸命にみんなのサポートをしてくれる彼女にも、疲労の色が見える。

 

 皆が分かっているのだ。もう一度、あの一撃を放てば私の身体が持たないことを。それでも、コカビエルに対して有効な一撃を与えられるのが、あの一撃しかないことを。

 

「みんな、ありがとう……でも、これしかないの」

 

 迷っている時間はない。私の決意がみんなに通じて、それぞれが動き始める。

 

 アーシアも少し離れた所で天を仰ぎ、神に祈りを捧げる。

 

 悪魔である私が神に頼るのはおかしな話だが、もはや神頼みしかないのかもしれない。

 

「いいぞ、来るのがいい!だが、神は応えてはくれんぞ!」

 

 私達の動きに合わせて態勢を整えるコカビエルだったが、その視線は祈りを捧げるアーシアに向いていた。

 

「そうか、お前達は知らないのか?」

 

 コカビエルが何を言わんとしているのか理解出来ない。なのに、何故か全員がその言葉に耳を傾ける。

 

「聖女よ。お前は悪魔を癒して教会を追放されたらしいが、その神器(セイクリッド・ギア)は何故悪魔を癒すことが出来た?」

 

 突如、自分に対しての問いに困惑するアーシア。私もその質問の意図が分からずにいる。何故ならばそんなことを考えたこともなかったからだ。

 

「うむ。ならば騎士(ナイト)に問おう。お前の発現した聖魔剣。聖と魔……本来ならば相反するはずの二つの要素が何故融合出来た?」

 

 アーシアの答えを待たずに、今度は祐斗に問いを投げつけるコカビエル。祐斗もコカビエルから視線を外して、手にしている聖魔剣を見つめる。

 

「何が言いたいのコカビエル!」

 

 意味不明な問答を続けるコカビエルに溜まらず大声で叫ぶ。時間稼ぎをするような男ではない。

 

 つまり、この男は私達の知らない何かを知っている。

 

「フフフッ。勝機のない戦いを健気に続けるお前たちに、この世界の真実を教えてやろう!」

 

 そう言うとコカビエルは両手を大きく広げ、天を仰いだ。

 

「その昔、悪魔・天使・堕天使の三大勢力の間で大きな戦争が起こった。戦争は熾烈を極め、悪魔陣営は多くの純血悪魔を失い、天使陣営も純血の天使を多く失った。もちろん、我々堕天使陣営も多くの同胞を失い、どの勢力も種の存続さえ危ぶまれる事態となった」

 

 何が真実!そんなことはここにいる誰もが知っている。

 

「ふざけんなっ!今さらそんな昔話に興味はねえぇ!」

 

 一誠がコカビエルに向かってくるが、左腕を一振りして生じた衝撃波によって吹き飛ばされる。

 

「悪魔陣営は四大魔王を失い、堕天使陣営も多数の幹部達を失った」

 

 まるで何事もなかったかのように話を続けるコカビエル。吹き飛ばされた一誠も祐斗に支えられて無事だった。

 

「では、天使陣営は何を失ったと思う?」

 

 冷たい汗が背中を伝う。アーシアと祐斗の神器に共通するのは聖と魔。コカビエルが言う真実とは何のことか分からないが、とても嫌な予感がする。

 

 名指しされたアーシアと祐斗も困惑している。他のみんなも不安げな表情をしていた。

 

「天使陣営が失ったもの。それは……神だ」

 

 その日、私達は世界の大いなる真実に触れた。

 

 

 ―〇●〇―

 

 

 リアスと彼女の眷属であるオカルト研究部のメンバーと、教会から派遣されたゼノヴィアという聖剣使いが、グラウンドで【神の子を見張る者(グリゴリ)】の大幹部であるコカビエルとその協力者を相手に死闘を繰り広げている。

 

 私達生徒会のメンバーは、街や一般市民に危険が及ばないよう結界を学園全体に張り、それを維持しながら彼女達の闘いを注視していた。

 

 リアス達の前にはコカビエルの召喚した冥界の番犬と恐れられるケルベロスが姿を現したが、眷属達の見事な連携と遅れて参戦した騎士(ナイト)の木場君の活躍もあり、ケルベロスの撃退に成功した。

 

 しかし、教会の大司教であるバルパー・ガリレイが四本の聖剣エクスカリバーを融合させて、新たな一本の聖剣エクスカリバーを作り出してしまった。

 

 しかも事態はそれだけには留まらず、聖剣融合と同時に仕掛けられていた術式が完成してしまい、まもなくこの街が崩壊してしまう。

 

 仕掛けられていた術式を解除するにはコカビエルを倒すしか方法がない。

 

 その情報を耳にした私達も加勢しようと考えたが、戦闘が更に激化して万が一にも結界が破壊される事態になれば、大変な被害が及ぶことになるので、リアス達を信じて自分達の役割に徹することに決めた。

 

 見ていることしか出来ない歯痒い状況ではあったが、融合した聖剣エクスカリバーを振るう異端の教会戦士であるフリード・ゼルセンを、禁手を果たした木場君が見事に打ち破り、過去の因縁に決着をつけた。

 

 まさかこの土壇場で禁手に至る眷属が現れるとは予想もしていなかった。リアスとは親友であると同時にライバルでもある。

 

 将来レーティングゲームでぶつかることも考えると、少し複雑な気持ちであるが、この状況を退けるためには彼の成長は喜ばしいことだ。

 

 事情を知っていた私の眷属である匙も涙を流しながら喜んでいた。

 

 だが、気掛かりなことがあった。

 

 これだけ戦闘が激化しているにも関わらず、コカビエルが一向に動きを見せないことだ。

 

 自分の協力者が倒れても、宙に留まり続けるコカビエルの姿があまりにも不気味だった。

 

 そのコカビエルが遂にリアス達と対峙する。

 

 この街の命運を懸けた闘いが始まる。

 

 木場君とゼノヴィアさんが同時にコカビエルに斬りかかり、小猫さんが背後を取って三人同時に攻撃を加えるがあっさりと回避されてしまう。直後にリアスと姫島さんから魔力による遠距離攻撃がコカビエルを襲うが、まともなダメージを与えられていない。

 

 さすがは古の強者と言うべきだろうが、私はその一連の攻撃に違和感を感じた。

 

 明らかに何かを狙っている。一人一人の動きにそんな思惑が見て取れた。

 

 何より切り札とも言える兵藤君が、攻撃に参加せずに力を溜めている。

 

 リアスが何をしようとしているのか注視していると、兵藤君の【赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)】の倍加が完了した。

 

 そういうことか。先程までの攻撃は、コカビエルの注意を引くための、いわば囮。

 

 本命は、倍加した兵藤の赤龍帝の力を譲り受けて放つ、貴方の滅びの魔力。

 

 赤龍帝の力がリアスに譲渡されると、リアスから信じられないほどの魔力が溢れ出る。その魔力は天をも焦がす勢いだった。

 

 さすがは若手悪魔の中でも天才と呼ばれるリアスだ。私にはあれだけの魔力をコントロールすることは出来ない。

 

 親友の才能に嫉妬しながらも、いまこの場においてコカビエルに対抗出来るのはリアスのみ。

 

 魔王クラスに迫るほどの魔力を両手に集めると、コカビエルに向けて放つ。自分の許容を越えた魔力を放出したリアスはその場に膝をつく。

 

 リアスの一撃を正面から受け止めるコカビエル。身に付けていた衣服はボロボロになり、身体からおびただしい量の出血が見られる。

 

 あと少し。あともう一押しであのコカビエルを打ち倒すことが出来る。しかし、リアスの限界を越えた一撃は、無情にもコカビエルによって打ち消されてしまった。

 

 その力の差にリアス達は絶望し、為す術なくやられてしまったが、アーシアさんが必死にみんなの治療を行ってサポートするが、消費した魔力までは戻らなかった。

 

 そんな中、コカビエルが衝撃的な真実を口にする。

 

 嘗ての三大勢力の大戦で、悪魔勢力の四大魔王、堕天使勢力の幹部と共に、天使勢力の神も死んだと言うのだ。

 

 信じられない。この世界に神がいないなど。

 

 だが、私達悪魔にとって絶対的な存在である四大魔王が亡くなったことは真実であり、紛れもない事実のため、あり得ないことではないのかもしれない。

 

 しかもコカビエルはその大戦を生き抜き、その終幕を見届けている。

 

 それでも俄には受け入れられるものではない。

 

 現に教会出身であるアーシアさんやゼノヴィアさんはその事実に耐えきれなくなり、意識を朦朧とさせている。

 

 当然リアス達にも動揺が走っており、とても戦闘を継続出来る状態ではなかった。

 

 このままではコカビエルを止められる者がいなくなってしまう。

 

「そーちゃん!」

 

 私が眷属に合図を送り、リアス達に代わってコカビエルと戦うため、結界の中に突入する覚悟を決めたとき、上空から聞き覚えのある声が聞こえので顔を上空に向ける。

 

「……菅原……くん?」

 

 そこには悪魔の翼を背に携えた彼がこちらに急降下してきた。私はその姿に不意に涙が流れた。

 

 もはやどうにもならないと思っていた。だから、決死の覚悟を決めてコカビエルに立ち向かおうとした。せめて最後は戦って散ろうと……。

 

 そんな時、彼が現れた。死を覚悟した私の前に。

 

 あまりにも突然のことだったため、何故涙が流れたのか私にも分からなかった。

 

「そーちゃん、大丈夫?怪我はない?」

 

 目線の高さを合わせて頬に伝う涙を指で拭ってくれる菅原君の表情は、とても穏やかだった。私は恥ずかしくなり視線を下げてしまう。

 

 菅原君から他の生徒会メンバーの安否を問われ、全員の無事を伝えたが、彼から返答がなかった。

 

「すがわ……!?」

 

 そのことが気になり、視線を菅原君に戻すと、私は息を飲んだ。今の今まで穏やかな表情をしていた彼がコメカミに青筋を立てて、鬼の形相で結界の中を睨み付けていた。

 

「ごめん……そーちゃん。悠長に話をしている暇は無さそうだ」

 

 そのあまりの迫力に私は言葉を失ってしまう。以前、リアスの結婚式に乗り込んで来たときもこれほどの怒りを見せただろうか。

 

 菅原君は街に被害が出なかったことにお礼を言うと、結界の中に飛び込んでいった。

 

(お願い、菅原君。この街とリアス達を守って)

 

 この街に遺された最期の希望である彼に一縷の望みを託した。

 

 

 ―〇●〇―

 

 

 あと少し。あと少しであの動乱の時代が戻ってくる。

 

 あの時、振り上げられた拳は結局、最後まで振り下ろされることなく戦争は幕を下ろした。

 

 戦争状態にあった三大勢力はそれぞれ多大な被害を(こうむ)り、二天龍の乱入もあって戦争は一時中断した。

 

 二天龍を封印した後、各勢力に戦争継続の意思はなく、停戦という形が取られた。

 

 冗談ではない。あのとき、戦争を続けていれば俺達が勝っていた。悪魔も天使も全て滅ぼして、俺達堕天使が最も優れた種族であると証明出来たはずだ。その事を願い、命を散らしていった同胞達も、そのことを夢見て死んでいった。

 

 だから俺は戦争を求めた。だが、組織のトップであるアザゼルは何度訴えても首を縦に降ることはなかった。それどころか平和な時代を謳歌しろなどと戯れ言を口にしやがった。

 

 戦争がなくなったのなら再び力ずくで起こしてやる。ミカエルもサーゼクスも無視できぬようにしてやる。

 

 手始めに天使陣営に揺さぶりをかけるため、教会に保管されていた聖剣エクスカリバーを奪ってみたが、腑抜けたミカエルは録に動きも見せなかった。俺はすぐに標的を悪魔陣営に切り替え、魔王サーゼクス・ルシファーとセラフォルー・レヴィアタンの妹達が治めるこの街にやって来た。

 

 魔王の妹達が殺害されたとなれば、さすがに冥界も黙ってはいないだろう。

 

 俺が直接手を降してやってもいいが、丁度良い具合にバルパーの仕掛けた術式が発動する時間だ。

 

 魔王の妹といい、バラキエルの娘といい、俺を満足させてくれそうな女も何人かいて勿体ない気がするが、それも仕方ない。女など後からどうとでもなる。魔王の妻や、天界の熾天使(セラフ)にも極上の女がたくさんいる。

 

 そんなことよりも、ようやく雌伏の時を経て激動の時代が帰ってくるのだ。そう思うと要らぬことまで考えてしまった。

 

「フッハッハッ!リアス・グレモリーとその眷属達よ!楽しかった時間もおしまいだ!間もなくバルパーの仕掛けた術式が発動する!」

 

 神不在の真実に加えて街の崩壊という衝撃に更に動揺する者達。

 

「ふっざけんなぁぁぁぁぁぁ!」

 

 それでも最期の足掻きとばかりに赤龍帝の小僧が禁手化して挑んでくる。だが、聖魔剣の小僧もそうだが、所詮付け焼き刃に過ぎない。昨日今日で新たな力を手に入れた小僧共に、永きに渡り闘い続けてきたこの俺が負けるわけがない。

 

 それが伝説の神滅具や世界の理から外れた力だとしてもだ。

 

 禁手化を果たした赤龍帝の力は相当のものだったが、リミッターの外すことの出来ない宿主を吹き飛ばしたところで地面に施された魔方陣が輝き始めた。

 

「……終わりだ!」

 

 街の崩壊に巻き込まれないように上空よりその様子を眺める。地上には未だにもがき続けるリアス・グレモリーとその眷属達がいた。

 

(……永かった)

 

 天を仰ぎ、その瞬間を待つ。サーゼクスやセラフォルーの絶望する姿が楽しみだ。

 

「残念だが、お前の思い通りにはならない」

 

 その時、第三者の声が俺の耳に届くと同時に術式が発動し、光を放っていた地面から光が失われていく。不思議に思い、グラウンドに目を向けると……

 

 そのグラウンドの中央に聖なる金色のオーラを纏った男が一人、こちらに睨みを利かせて佇んでいた。




第23話更新しました。

皆様、お久しぶりです。
最近の暑さや忙しさですっかり執筆の意欲が減退してしまい、更新が遅れてしまいました。

活動報告にも書きましたが、今後は書き上がったら更新していきたいと思いますのでよろしくお願いします。

内容はコカビエルとの戦闘でしたが、二人の王の視点で書いてみました。同じことを書いていることは分かっていたのですが、書き直すのも苦だったのでそのままにしました。

ようやく主人公が現場に到着したので次回からは原作の要点だけを押さえて自由に書きたいと思います。

読んでくださる方、感想をくれる方、誤字・脱字の修正をしてくれる方ありがとうございます。

ではまた次回。
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