なんだかんだ言って毎日見てました!
第30話です。
命の価値は皆が平等だと貴方は言ったー
万の刻を生きる私には理解出来なかったー
でもその意味は貴方に出逢って理解したー
―●○●―
キッチンに立ち、二人分の夕食を用意をする。
普段は賑やかなキッチンも今日ばかりはリビングのテレビの音声が響く。
最愛の
最近、あの子は携帯電話を持ち歩かない。別段こちらから連絡をすることはないのだが、折角料金を払っているのだから有効に活用してほしいものだ。
「リアスとアーシアは何時頃帰って来るのかな?」
ソファでテレビを見ながらグラスを傾けていた旦那が冷凍庫から氷を取り出しながら少し寂しそうに聞いてくる。
仕事の都合でついさっき家に帰って来た旦那は二人に会えるのを楽しみにしていたのだが、帰りが遅くなることを伝えると、ガッカリした様子で一人お酒を作り始めた。
「もうすぐ帰って来ると思うよ、二人も帰ってくるのを楽しみに待ってたからね」
そう言って簡単なおつまみを用意すると、嬉しそうに笑ってグラスとおつまみを持って再びリビングに戻って行った。
「ニャッ!」
リビングから黒歌の不機嫌そうな鳴き声が聞こえてくる。大方、気分を良くした旦那が気持ちよく寝ている黒歌にちょっかいでも出したのだろう。
(……いつになったら懐くのやら?)
二年前から家族の一員となった黒歌だが、当初は旦那はもちろん息子のユウにさえ心を開くことはなかった。
それでも諦める事なく世話をし続けたユウには今ではベッタリだが、仕事で家を空けることの多かった旦那には全く懐かない。
(最初にあんたを見つけたのはその人なんだよ……)
当時の事を思い出すと今でも胸に込み上げてくるものがある。
「誰か来たね?」
「僕が出るよ!」
まるで長年待ち焦がれた恋人にでも逢いに行くかのように満面の笑みを浮かべてリビングから出て行く旦那の姿に自然と口角が上がる。
肩を並べて共に生きていく事を決意してから四半世紀の
出逢った時から変わることのないその笑顔に何度救われて来ただろうか?
「……珍しいお客様だね」
柄にもなく昔を懐かしんでいると、少し複雑な表情をした旦那の後ろで紅髪の優男と銀髪の淑女が頭を下げていた。
「リアスとアーシアじゃなかったよ」
待ち人でなかったことに肩を落としてソファに戻っていく旦那に苦笑いを浮かべながらリビングの入口で頭を下げたままの二人にソファに座るように促す。
「大した饗しは出来ないよ」
二人が座った事を確認してキッチンへ行き、冷蔵庫から麦茶を取り出して客人用のグラスに注いでリビングに戻る。
旦那の膝の上で目の前の二人を警戒する我が家の飼い猫と初めて膝の上に乗ってくれた事に感動して震えている旦那。
一見すれば何処の家庭にもある飼い主とペットの微笑ましい一幕だが、目の前の二人は目を丸くして息を呑む。
「久しぶりですね……二人共」
「彼此れ十八年振りですか?……元気そうで何よりです」
カランッとグラスの中の氷の心地良い音が部屋に響く。私は麦茶の入ったグラスを二人の前に置き、旦那の隣に腰を下ろす。
「大変……ご無沙汰しております」
異様な光景だね。その力のみで異界の頂点に立ち『超越者』と呼ばれる男が人間に頭を下げるのを見るのは……。
(まあ、特異なのはお互い様だけどね)
グラスの中の琥珀色の液体で喉を潤しながら深く息を吐く。
「今日は突然どうしたんですか?」
二人に頭を上げるように促しながら笑みを浮かべる。
「妹がお世話になっているにも関わらず今日まで挨拶が遅れたことお許しください」
うむ……相変わらず嘘が下手な奴だ。確かに直接の挨拶はなかったが、下宿初日にジオティクスとヴェネラナから大層な贈物と一緒に手紙が届いている。リアスには内緒にしているが、サーゼクスとグレイフィアがそのことを知らないはずがない。
「いえいえ……我々もリアス嬢のおかげで楽しい生活を送れてますよ」
はぐらかしている訳ではない、これがこの人の交渉術。いつ如何なる時でも自分の手の内を見せることはない。
人によってはとぼけていると思う人もいるだろうが相手との距離を常に測っている。
だから私はこの人と一緒にいて心地良い。無論、冷たい訳ではなく、此方が困っていれば隣で静かに話を聞いてくれるし、優しい言葉を掛けてもくれる、それでいて必要以上に相手の心に踏み込んで来ない。
この絶妙な距離感は出逢った頃から何一つ変わってはいない。
本当に不思議な人間だ。
「妹からも大変良くして頂いていると聞いて父や母も安心しております」
サーゼクスの言葉に嬉しそうに笑みを零しながらグラスを傾ける。
「ですが……妹と御子息が共にいることを危険視する声も上がっております」
グラスに入った麦茶を一気に飲み干し、グラスを握りしめるサーゼクス。
そのグラスはいい値がする上に人数分揃ってるんだから割るんじゃないよ。
「知らない……と言うことに恐怖するのは誰でも同じですよ」
目を細め、小さく息を吐いてグラスをテーブルに置く。グラスの内側と外側の温度差で出来た水滴がコースターを濡す。
「ならば未熟な私にご教示頂けませんか?」
そう言って頭を下げるサーゼクスの姿を見て困ったようにコメカミを人差し指で掻く。
「上に立つ者が下の者に簡単に頭を下げてはなりませんよ」
視界に広がる紅い髪を見ながら私は目を細める。
サーゼクス・グレモリーは幼き頃より特別な存在だった。
母ヴェネラナの生家である大王バアル家の『滅びの魔力』を誰よりも色濃く受け継ぎ、父であるジオティクスからは悪魔の枠を越えた存在と言わしめるほどの才を持っていた。それ故、早くから将来を嘱望されていた。
親友の子とあって私も幼いサーゼクスには目を掛けていた。大きすぎる力は自らを滅ぼすことを身を以て知っていた私はサーゼクスにありとあらゆる事を学ばせた。
力を持つ者の責任とその意味、
その甲斐あってサーゼクスは大戦の後、二代目ルシファーとして悪魔の筆頭となり、私の冥界での役目は終わった。
「下などと……私では到底、貴方様には及びません」
サーゼクスは私の期待通りに成長してくれたが、上に立つ者としては少々正直過ぎる。
「……ご冗談を。とはいえ私から貴方にお教え出来ることは何もありませんよ」
グラスに半分以上残っていたアルコールを一気に飲み干すと、残った氷を回して遊んでいる。
一気飲みした影響で頬は薄っすらと赤らんでおり、何だか色っぽい。
「いずれにせよ、賽は投げられたのです」
眼鏡を外し、軽く目元を押さえてからゆっくりと目を開く。
その言葉にサーゼクスとグレイフィアが息を呑み、後に続く言葉を待つ。
「
北欧の老人!今、思い出しただけでも腹が立つ!!あのスケベ爺ィ!!!
「あの老人にとって知らぬということはそれだけで興味の対象になるでしょうから、その内ひょっこりと現れるかもしれませんね」
次に私の前に姿を現してみろ!その時は潰して晒してジャッカルの餌にしてくれる!!
怒りに我を忘れ、不気味な声を洩らす私に三人は顔を引き攣らせる。
態とらしく咳払いをして眼鏡を掛け直し、冷静さを保とうとする旦那。
いかんいかん、こんな顔を子供達に見られては取り返しがつかない。
用心せねば……。
「と、兎に角、私達に出来る事があれば全力を尽くします……それは貴方方グレモリーの為ではなく、愛する息子の為」
深い深い愛の中に僅かに灯る憎しみ。私が生涯を賭けて癒やしてあげると誓った微かな心の傷。
「重々承知しております。ですが、どうか義妹のことは別に考えて頂けませんか?」
『銀髪の
普段、公の場では表立って自分の意見を口にすることはないが、義姉としては義妹の幸せは常に願っているに違いない。
「勿論です、二人のことは当人同士が決めることです。私情を持ち込んだりはしませんのでご心配なく」
その答えを聞いてグレイフィアの表情が柔らかくなる。
「なんにせよ、残る鍵は三つです」
旦那の言葉をサーゼクスの表情が曇る。
「三つ?四つではなく?」
サーゼクスが理解出来ないのは当然だ。あの子が明確に鍵を開けたのは『再生』の一つだけ、でも確実に二つ目の鍵を手にしている。
あとは扉を開けるだけ。
「えぇ……三つです。一つはご存知の通り『再生の
私でさえもアーシアがハリストスの御霊を受け継ぐ存在だとは夢にも思わなかった。
これも旦那の言っていた大いなる意志によるものだろうか?
「二つ目の鍵である『沈黙の
張り詰めた空気が部屋を覆う中、突然リビングのドアが開かれる。
「ただいま帰りました〜!」
そこにはやけにご機嫌で血色の良いリアスと碧の髪の女の子と楽しそうに会話するアーシア、更には紙袋を持って嬉しそうに微笑む朱乃とクレープを美味しそうに頬張る小猫の姿があった。
そしてその後ろに続く息子は全てを悟ったかのように無を体現していた。
「お義母様、聞いてください!ユーが水着を買ってくれたんで……ってお兄様!?」
嬉しそうに紙袋を自慢気に見せて喜ぶリアスだったが、自身の兄と義姉がいることに心底驚いて目を見開く。
こうして賑やかさを取り戻した我が家の夜はまだまだ終わりそうにない。
―●○●―
サーゼクス様とグレイフィア様が学園を後にしたのち、俺とオカルト研究部の女性陣は街に繰り出していた。
「こうして皆さんとお買い物に来るのは初めですね!」
隣で目を輝かせながら嬉しそうに笑うアーシア。俺にしてみれば珍しいことではないが、アーシアのこれまでの境遇を考えればどんな些細なこともお祭りなのだ。
「最近忙しくてこういう時間もなかったものね。でも、これからいくらでもあるわよ」
リアスの返答に「はい!」と元気良く返事をしたアーシア。そんな彼女の手を引き、様々な店舗の説明をするリアス。小猫と朱乃はというと最新のファッション雑誌を手にこれから買いに行く水着の流行をチェックをして二人で意見交換をしていた。
小猫の口から「痴女」だの「露出狂」だのと聞こえて来たが、聞かなかったことにしよう。
そんな具合で盛り上がる四人とは別に最後尾をトボトボと歩く碧の少女。
「ゼノヴィアにとっても友人との買物は初めてだろ?楽しんだらどうだ?」
歩く速度を緩めてゼノヴィアの横に並び、話し掛けてみるがその表情は硬いままだった。
「私は……みんなに付いていくだけだ」
犯してしまった罪の重さを実感して罪悪感に苛まれているのだろう。アーシアの話では転校初日以来ゼノヴィアとの会話は殆どないらしい。兵藤を始めとしたクラスメイトとは積極的に交流し、打ち解けているようだが、自分とは事務的な話ばかりで会話が続かないとアーシアから悩みを相談されたこともある。
こればかりは時間が解決するのを待つしかないため「大丈夫」と当たり障りのないことしか言えなかった自分が情けない。
「もう誰も君を責めたりしてない。アーシアだってそう言っていただろ?あれはお互いの立場でやるべきことをやった結果だ」
「仕方がなかった」と言っても納得しない。おそらくゼノヴィア自身も頭では理解しているが、心が納得していないのだろう。
(分かっている相手に理を説いても無駄だな)
こういう時は兵藤のような存在は非常な有り難い。あいつは頭で話す俺とは違って心で話す。
だからこそあいつの言葉は心に響くし、裏表がないからこそ同類とも言えるゼノヴィアも心を許しているのだろう。
全く参考にはしたくないがな!
「ゼノヴィア」
俺は足を止めて前を歩いているゼノヴィアを呼び止める。
「許されるのを待つな……迷いがあるならそいつを持ったまま進んでみろ」
それでも俺にはこういう言い方しか出来ない。それで彼女が分かるまで訴え続けるしかない。
「……いいのだろか、それで……」
彼女もまた教会に思想や行動を制限されてきた一人、突然与えられた自由に戸惑うこともあるだろう。でもそういう時は仲間を頼れ、ここにいる連中は差し出した手は必ず掴む連中ばかりだ。
頑張れ、ゼノヴィア。
「二人共、着きましたよ!早く行きましょう!」
金の髪を靡かせて、翡翠の瞳を輝かせながら目的地を指差す少女。
「あぁ!今行くよ!」
金の少女の背中を嬉しそうに追い掛ける碧の少女。
俺はその姿に目を細めてた。
「ありがとう……ユー」
気が付くとリアスが隣におり、朱乃と小猫も足を止めて俺に頭を下げていた。
「聞こえてたのか?」
流石は悪魔だと思いつつ、真面目な話を聞かれていたことが恥ずかしくなった。
「本来なら『王』である私がやるべきことなんだけど……立場がね」
少し話しづらそうに苦笑いするリアス。以前、立場がどうのこうの言ったからその影響だろう。
「俺だってゼノヴィアの仲間だ……だから当然だよ」
リアスの頭を軽く撫でて上げると、彼女にも自然と笑顔が戻る。
分け合えることは全て分け合って行けばいい。喜びも悲しみも苦労も……それが仲間だ。
「俺達も行こう。あの二人だけじゃ迷子になるのがオチだ」
四人で目を見合わせて笑いながら店内へ入っていく。
こういう時間もみんなとの大切な時間だ。
店内に入ると、先程の気概は何処へ行ってしまったのかと思うほど絶句している。
目に映るのは色とりどりの女性用の水着。可愛らしい物からスポーティーな物まで様々な形状の水着と目がチカチカするほどの色合い鮮やかな水着ばかり。
「ではここからは別行動にしましょう。気に入った物があったら試着も出来るわよ」
リアスがそう言うと四人はそれぞれ好みの水着を求めて四散して行く。
一人取り残された俺も最新の流行とやらを学ぶためにフロアを進んで行く。
奥に進んでいく途中でスリングショットというセクシーな水着を身に着けたマネキンに目を奪われているところを朱乃に見られてしまい、見事に誤解されてしまった。
誤解を解こうと朱乃を探していると、試着室の中にいたリアスから水着を着るのを手伝ってほしいと言われ、試着室に入ると此方もスリングショットに負けず劣らずのセクシー水着ワンショルダーのモノキニビキニを選ぼうとしていたので試着室という狭い空間で全力で説得していると、その様子を朱乃に見られてさらなる誤解を生んでしまった。
その後、ワンショルダーのモノキニビキニのリアスとスリングショットの朱乃に囲まれ、この世の春を謳歌していたがこのままでは埒が明かないと意を決して二人を説得。
「二人の美しい肌を他の男に見られたくない」
そんなとてつもなく恥ずかしい台詞を口にして二人に理解を求めると、恥じらいながら納得してくれた。
九死に一生を得た俺は二人の元を離れてフロアを歩いていると、小猫が水着の色で悩んでいたので「明るい色のほうが似合う」と伝えてあげると、黄色と白の可愛らしいギンガムチェックの水着を手に取って嬉しそうにしていた。
こうなるとアーシアとゼノヴィアのことも気になる訳で、二人を探していると、此方も小猫同様に水着の形状は決まったが色で悩んでいるゼノヴィアがいたので声を掛けようと思い、近づいて行くと、俺より先にアーシアがゼノヴィアに声を掛けていた。
俺はその様子を少し離れた所から見ていることにした。
「ゼ、ゼノヴィアさんは美しい碧の髪がより栄えるように……あ、明るい色の水着のほうがいいと思います!」
驚いたな。アーシア自身ゼノヴィアから苦手意識を持たれているのを知っているのであまり積極的ではなかったはずだが、ここに来て自分から話しかけるとは。
「そ、そうだろうか?でも、私にこんな明るい色なんて……」
自己評価の低いゼノヴィアに対して必死で明るい色の方が良い理由をプレゼンしていくアーシア。少しでもゼノヴィアと仲良くなりたいと願う彼女の姿がとても愛らしかった。
「ありがとうアーシア。君の言う通り此方の色にするよ」
懸命なプレゼンが見事に実り、嬉しそうに笑うアーシア。すると今度はまだ決まっていないアーシアの水着をゼノヴィアが選ぶため、二人で仲良くフロアを歩き始めた。
そんな二人を見届けて俺はその場を後にしてレジの前でみんなを待つことにした。
少し時間が経ち、それぞれが厳選した水着を持ってレジに現れたので全員から水着を受け取ってレジに向かう。
「これは俺からのプレゼントにさせてくれ……みんなで買物に来た記念に」
俺がそう言うと、自分で支払うと言っていた全員が折れてくれた。
何とか男としての面目を保てた。
嬉しそうに水着の入った紙袋を抱えながら家路を急ぐ。
何故かリアスだけが紙袋を二つ持っていたが、突っ込むと良くないことになりそうなのでスルーすることにした。
今日は全員が家に泊まり、買った水着を着てみるようだ。
黒歌のことは大丈夫かと思い、小猫に視線を送ると何処で買った思うほど大きなクレープを手にしていた。
家の前まで来たところでリアスが俺の隣に来て耳打ちをして急いで家に入っていった。
「あの水着も買ったから楽しみにしててね」
あの水着……ワンショルダーのモノキニビキニか!?
何かこのあととんでもないことが起こる予感しかせず、心を無にして家に入ったのだか、本当にとんでもないことが起きていた。
家の中にはなんと昼間に会ったばかりのサーゼクス様とグレイフィア様が居た。
話しを聞くと、二人はどうやらリアスのことで挨拶に来ていたようだ。
その後は父ちゃんがアーシアとリアスに逢えた喜びを爆発させ、母ちゃんはどんな水着を買って来たのか全員の水着をチェック、リアスのワンショルダーのモノキニビキニを見たグレイフィア様が激怒して麦茶と間違って父ちゃんのウイスキーを一気に飲み干してダウンし、その様子を見ていたサーゼクスが爆笑するまさに地獄絵図のような光景が広がっていた。
―○●○―
「……」
どうしてこうなった?
収拾のつかない状態になったリビングを離れて俺は一人大浴場に向い、一日の疲れを癒やしていた。
やはり一日の最後は風呂に限る。こうして頭からお湯を被ると、スッキリする。
最近同居人が増えて賑やかになってきた我が家だが、何も考えずにゆっくり出来る時間を持てるのは有り難い。
風呂は俺の至福の時間……だったのに何故!?
「お湯加減はどうですか?」
背後から聞こえる鼓膜を溶かすような艶かしい熱の籠もった声に鼻孔を擽るボディソープの清潔感のある香り、そして目の前の鏡に視線を移せば頬を赤らめ、目尻を下げる銀髪の大人の女性。
「とても気持ちいいです」
何を呑気に返事をしているんだ俺は?
「夫以外の男性の肌に触れるのは初めてだけど、ユウ様の背中はとても広くて逞しいのね」
さりげなく俺史上最大の爆弾が投下され、俺の死亡フラグが成立してしまった。
なんせ甲斐甲斐しく俺の背中を流しているのは『魔王』サーゼクス・ルシファーの妻グレイフィア・ルキフグスなのだから!
「もう十分キレイになったので、お先に失礼しますね」
もう限界だ!
既に俺の男の象徴は重力に逆らい、ひとりでに変貌を遂げてしまった。
慣れとは怖いもので無意識に上を向くなんて初めての時以来だ。
「行かないで!」
立ち上がろうとした瞬間に後ろから抱きしめられ、見る者すべてを魅了する彼女の双丘が背中に押し付けられる。
彼女の身体に付着していたボディソープのヌメヌメとした感触と押し付けられた双丘の弾力、その背中を押し返そうとする硬化した双丘の頂上。
その全てが極上であり、彼女が稀有な存在であることを再確認させられる。
「……寂しいの」
寂しい?
俺の肩に額を当てて彼女は少しづつ自分の事を話してくれた。
サーゼクス様と出逢った時のことから始まり、当時の二人の関係、同じ時間を過ごしていく中で変化していく自分の心情、全てを捨てて共に生きると決めた覚悟、それまでの生活とは真逆の環境に対する葛藤、愛する者との間に産まれた愛の結晶、そしてようやく手にした穏やかな日々。
だが、それは彼女に新たな責任を与えたのだろう。
母として我が子を名門グレモリー家の次期当主として立派に育てなければならないという責任と妻として女王として『王』であるサーゼクス・ルシファーを支えなければならないという責任。
では、女としての彼女は何処へ行けばいいのだろうか?
夫であるサーゼクスのことは愛している……それは彼女のこれまでの話から十分伝わった。
グレモリー家のことも愛している……だからこそ我が子を立派に育て、より良くなるように努力している。
しかし不意に考えることがあるのだろう、自分が存在価値を。
そんな時に優しい言葉を掛けてほしい、そっと抱きしめてほしいと思うのは我儘なのだろうか?
無論サーゼクス様が悪い訳ではない。あの方は冥界という大きなものを背負っているのだ。そのことはグレイフィア様も重々承知している。
「グレイフィア様、貴方は十分頑張っておられます……グレモリー家に仕え、サーゼクス様を支えておられる。俺はそんな貴方を尊敬します」
俺なんかの言葉では心に響かないだろうが、どうしても伝えたくなった。
「……寝てしまったか」
気が付くと、後ろから規則正しく、可愛らしい寝息が聞こえていた。
慣れないアルコールを飲み、心に溜め込んでいたものを吐き出して安心したのだろう。
俺はシャワーでグレイフィア様のボディソープを洗い流してバスタオルを掛けて彼女を抱き上げて脱衣場へ向かう。
因みにボディソープを洗い流すのもバスタオルを掛けるのもこうして抱き上げているのも全て不可抗力だ。
疚しい気持ちなど一切ない!
残念ながら男の象徴が怒髪天状態では説得力がないが……
脱衣場の長椅子に横にしたらリアスを呼んで来よう。あとは彼女が何とかしてくれるだろう。
「えっ?」
脱衣場に向けて歩いていると、突然引き戸が開けられて紅い髪の毛が視界に広がる。
「……ユー?……貴方……グレイフィアに何を……?」
その後ろからは駒王学園を代表する美女達が続々と押し寄せていた。
しかも、皆さん全裸で……
あっ……俺、死んだ?
第30話更新しました。
今月はCSAT−XにてアニメハイスクールDD全シーズン一挙放送してます。これで作品の流れを把握することがぐっと楽になりました。でも原作とは少し違う部分もあると思うので今後はその辺を確認して書いていきたいと思います。
内容のほうは徐々にこの人たちについても描いて行こうと思い、さわり程度ですが登場させました。詳しくはもっと後に描こうと思います。グレイフィアのくだりは原作でもありましたが、筆者はそこまで書くつもりはないので今回入れさせて頂きました。人様の妻に手を出す気は無いのですが、ラッキースケベ程度なら大歓迎です。
次回は例のプールの話しになりますがどうしようか模索中です。
ではまた次回。