7話です。
第7話
何不自由のない生活
だけどなにか満たされない
足りないのは・・・
―〇●〇―
アーシアが家に住み始めてからまもなく一か月が経つ。
彼女が家に来てから家の雰囲気がガラリと変わった。
母ちゃんはアーシアを本当の娘のように可愛がり、仕事で家に居ないことが多かった父ちゃんも最近では家に居ることが多い。
アーシアも二人のことをお義父様・お義母様と呼び慕っているのだが、純粋過ぎるが故に二人からのアドバイスを素直に実行してしまう。
アーシアにどうして俺のベットで寝ているのかと聞いたことがある。
「お義母様が、ユウさんは一人で眠れないと仰ったので」
・・・
別の日に、俺が風呂に入っていると黒歌を抱えたアーシアが一糸纏わぬ姿で入ってきたので聞いてみる。
「お義父様が、ユウさんが喜ぶと仰ったので」
・・・・・
まずい、非常にまずい。
このままでは日常生活に支障をきたす。
俺は風呂から飛び出すと、着替えもソコソコにリビングへ駆け込む。
「流石にあれはやり過ぎよ」
正座をしている父ちゃんは頭上から降り注ぐ母ちゃんのお説教にどんどん小さくなっていく。
父ちゃんも反省しているようで、母ちゃんもため息を吐く。
「まずはバスタオルからでしょ?」
・・・・ダメだこの夫婦。
俺が自室に戻ると、入浴を終えたアーシアがベットに座って髪を乾かしていた。
俺は先程の光景を思い出し、彼女を直視出来ない。
大事な部分は黒歌を抱えていたため見えなかったが、白く透き通るような肌は穢れを知らず、女性特有の丸みを帯びた身体は成長途中ではあるが、いずれ母となる時のための準備を進めていた。
「急に出て行かれて何かあったんですか?」
自分の行動に何の疑問も持っていない彼女はキョトンとして可愛らしく首を傾げる。
今後の生活のこともあるため、この日から俺によるアーシア成長計画が幕を開けることになる。
無論、俺一人の手に余るためオカルト研究部の女性陣にも協力をお願いした。
そうして彼女は日常生活に必要な様々な知識を身に付けて行く。
そのため風呂に入って来るなどの行動は滅多になくなったのだが・・・
「アーシア?どうして部屋に居るの?」
しかし、寝るときには必ず黒歌を抱えて俺の部屋に来るのだ。
「前にも言ったけど、男と女が一緒に寝るのは普通じゃないんだよ」
頭の良い彼女は一度覚えたことは直ぐに聞き入れるのだか、これだけは直らない。
「リアスさんと朱乃さんから好きな人と一緒に寝るのは当たり前のことだと教えられたので」
何と男冥利に尽きる一言。
アーシアのような可愛い女の子に言われたら尚更だ。
つまり彼女にとって俺と一緒のベットで寝ることは当たり前のことであり、なんら不思議なことではないのだ。
しかし、それでは俺の身が持たない。
「アーシアの気持ちは嬉しい。でも、それじゃ俺の身が持たないのでせめて週に三日いや二日にしてくれると助かります」
俺は正直に話して頭を下げる。
彼女には俺の言っていることがいまいち理解出来ない。
「アーシアのように可愛い女の子が一緒だと緊張して眠れないので」
何故か敬語で話す俺。
彼女は恥ずかしいのか抱えていた黒歌で顔を隠す。
「ユウさんはズルいです。そういう風に言われたら言うこと聞くしかないです」
顔を赤くしながらオレに黒歌を預けてくると彼女は布団の中に入る。
「今日は良いですね?」
布団の中からチラッと顔を出すアーシアはいつもの可愛い彼女ではなくどこか妖艶な雰囲気を醸し出していた。
余談だが、週二日ほどアーシアの帰りが遅いことがある。
母ちゃんに聞いても
「お友達の所でしょ」
と一言で終わる。
気にはなるがアーシアも女子高生だ。そう言うこともあるだろと詳しくは聞かなかった。
―〇●〇―
アーシア成長計画が順調に進行する中、俺はリアスに呼ばれ、アーシアと一緒にオカルト研究部の部室に来てた。
既に朱乃や小猫に木場と兵藤が揃っていた。
先日、話の途中で俺が席を立ったため、まだ話してないことがあると言われた。
「来てくれてありがとう。今日は最後まで聞いてもらうわよ」
彼女の背中から漆黒の翼が伸びていた。
リアスが話してくれたのは冥界と呼ばれる悪魔の世界のことや自分の一族のことだった。
冥界とは人間界で言うところの地獄を意味していること。
現在は四大魔王と呼ばれる四人の悪魔を中心に統治されていること。
統治と言っても各々の家が領土を所有しており、四大魔王を凌ぐ発言力を持つ家もあること。
それでも四大魔王の影響力は絶大であり、現政府に対して多少の反発はあるものの、概ね平和が保たれていること。
「人間の生活と変わらないな」
紅茶に啜りながら彼女達の生活水準の高さに感心する。
「はっきり言って人間以上ね。次に私の家の話をするわ」
リアスの家は冥界でも元七十二柱に数えられた名門一族であり、慈愛の名を冠する一族であること。
彼女はその名家の次期当主であること。
次期当主として人間界でグレモリー家が所有するこの駒王の街で管理者として経験を積むために来たこと。
冥界でグレモリー家の所有する領土は日本の本州に匹敵するほど広大であること。
「公爵家の姫君ねぇ」
俺の言葉にムッとした表情を見せるリアス。
「そうだけど私は私よ。貴方だってそう言ってくれたじゃない」
どうやら身分で自分を語られることは好きではないらしい。
「気に障ったなら謝るよ、別に変な意味じゃない」
俺の知らない彼女がまだまだいるようだ。
そう思うと自然と笑みが溢れた。
「ユウ君、アーシア。眷属にならないとしてもオカルト研究部には入ってくれないかしら?」
以前、何度も断ったことだがあの時とは状況が違う。
アーシアは俺が入部するのであればと言って此方の様子を伺ってくる。
「バイトのこともあるし、殆んど顔を出すつもりもないけどそれでもいいなら」
アーシアのことを考えれば入部した方がいいだろうと判断した。
彼女が学園に通い始めて一か月が過ぎ、可憐な容姿とその性格の良さで一躍学園の注目の的となったが、それ以上にオカルト研究部の面々の協力が大きかった。
リアスと朱乃は彼女のことを妹分として何かと気に掛けてくれ、小猫も度々彼女の元を訪れては行動を共にしていた。
木場も周りを囲む女子生徒に彼女のことをよろしくと言っていたようだ。
だが一番は兵藤の存在だろう。
同じクラスに編入した自分に非常に良くしてくれるとアーシア自身が話していた。
アイツの場合スケベ心が透けて見えるのが珠に傷だ。
「もちろんそれでもいいわ!」
リアスはとても嬉しそうだ。
「ウフフ、二年越しの想いが通じましたわ」
紅茶を淹れながら笑顔を見せる朱乃。
「これからよろしくお願いします。ユウ先輩、アーシア先輩」
和菓子を食べながら此方を見る小猫。
「賑やかになりそうですね」
どういう意味だ木場。
「よっしゃー!これで部活でもアーシアと一緒だ!」
俺が居ることを忘れるな兵藤。
「じゃあ二人の入部を祝ってパーティーを始めましょう」
リアスが指を鳴らすと、目の前のテーブルに大きなケーキが現れた。
聞けば魔力で出現させたらしい。
「私が作ったの。口に合えば嬉しいわ」
リアスは頬を赤く染め、照れているようだ。
俺がケーキを食べようとフォークを手にすると、口元にケーキが添えられる。
「どうぞユウさん」
アーシアが満面の笑みを浮かべている。
和やかな空気が一瞬にして凍りつく。
「アーシア。今は貴方の入部祝いでもあるのよ」
そう言うとリアスは顔を曳きつらせながらケーキを俺の口元に運んでくる。
「いけませんわアーシアちゃんったら」
朱乃はいつの間にか俺の背後に回り、ティーカップを差し出してくる。
「美味しいです」
小猫はケーキに夢中のようだ。
木場は紅茶を飲みながら苦笑いを浮かべている。
なんとかしろ木場。
「なんで先輩ばっかり!」
パーティーの一芸としてドラゴン波の準備をしていた兵藤は肩を落とし、涙を流している。
お前はいつもそれだな兵藤。
その後もパーティーという名の修羅場は続いた。
―〇●〇―
俺とアーシアがオカルト研究部に入部した翌日、アーシアと一緒に学園の帰りにグランデに来ていた。
俺は体調が良くなったため、バイトを再開しようと挨拶に来たのだ。
「お疲れです」
俺はcloseと書かれた看板を気にすることなく店内に入る。
「ユウとアーシアちゃんじゃねぇか、どうしたんだ?」
料理長が声を掛けてくると、スタッフ達も集まってくる。
「そういやぁ、退院おめでとさん。体調はどうなんだ?」
俺は体調が良くなったため、バイトに復帰したいと話した。
「そりゃ良かった!」
料理長は俺の頭をワシャワシャと撫でてくる。
スタッフ達も俺に声を掛けてくれた。
・・・俺に声を?
(おかしい)
なぜ俺にだけ声を掛けてくるんだ?
退院したばかりの俺を心配してくれるのは分かるが、隣にアーシアが居るんだぞ。
「だが、まだ退院したばかりだろ?今までのように働くのは早いな。週に三日、いや二日だな」
アーシアに夢中だった店の連中に何があった?
「アーシアちゃんも週二日だから丁度良いだろ?」
料理長の話を右から左に聞き流していた俺だったが、料理長の一言に首を傾げる。
「アーシアも週二日?」
アーシアの様子を伺うと、恥ずかしそうに頬を赤く染めている。
「お前聞いてないのか?アーシアは二週間前から店でバイトしてるんだぞ」
料理長の返答に驚愕する。
「えへへ、ユウさんを驚かせたかったので」
天使の微笑とはこの笑顔のことだろう。
アーシアは照れ臭そうに俺を見ていた。
「アーシアちゃんのお陰で店の評判はうなぎ登りなんだが、これを見てみろ」
料理長はPCで店のHPを開くと、そこにはアーシアのことと思われる書き込みが大量に寄せられていた。
「グランデで天使を見た」
「これが最後の晩餐でも構わない」
「今日のパンツは何色?」
その他にも怪しげな書き込みがされていた。
「まだ四回しか店に出てないのにこれだよ」
料理長はやれやれといった表情をしている。
アーシアも書き込みを見るのは始めてだったのか驚いていた。
「だからお前もアーシアちゃんと同じ日に週二日だ」
アーシアをバイト終わりに一人で帰すのは危険だと鼻息を荒くしている。
「ユウさんがお休みしている間は料理長さんが送ってくれたんですよ」
アーシアがそう言うと、料理長は少し照れたように顔を赤くしている。
「ア、アーシアちゃんは娘みたいなもんだからな!」
後ろのスタッフ達が笑っていると、雷が落ちる。
「と、兎に角!当分は週二日だからな!」
そう言い残すと料理長は厨房へ消えて行った。
―〇●〇―
「アルバイトのこと秘密にしててごめんなさい」
グランデから家に帰る道中でアーシアは突然頭を下げる。
「ビックリしたけど、週二日帰りが遅かった理由がわかって良かったよ」
心配してたんだよと言うと、アーシアは俺の手をギュッと握り、額を肩に寄せる。そのため彼女の表情は窺えない。
「なんで秘密にしてたの?」
単純に疑問に思ったので聞いてみた。
「お義母様にその方が面白いと言われたので」
彼女は申し訳なさそうに俯き答えた。
やはりあの人の入れ知恵かと心の中で呆れる。
「怒ってますか?」
彼女は俺を見るが、その表情には不安の色が見て取れる。
「怒ってない。怒ってない」
俺は彼女の不安を取り除くように金色の髪を撫でてあげる。
彼女は目を細め気持ち良さそうにしている。
「これからはバイト先でもアーシアと一緒か。楽しみだね」
目線を合わせて彼女に話しかける。
「はい、ユウさんと一緒なので楽しみです」
夕日に照らされた彼女の笑顔は美しかった。
―〇●〇―
休日、俺とアーシアは街に向かって歩いていた。
朝、リビングに行くと母ちゃんと父ちゃんが大きな紙を広げて俺とアーシアを待っていた。
その紙には【アーシア同居一か月記念】とデカデカと書かれていた。
何のことかわからない俺と彼女は顔を見合わせる。
「この記念すべき日にパーティーを行います」
突如宣言され、財布を渡されると買い出しに行くように言われ、外に出される。
時刻はAM9:00
準備があるので夕方まで帰ってくるなと言われた。
「急なんだよ、いつも」
呆れる俺に流石のアーシアも苦笑いを浮かべる。
「でも嬉しいです。こんな些細なことまでお祝いして頂けて」
彼女の瞳が揺れていた。
教会育ちの彼女にとって自分だけを見てくるような存在が居なかったのだろう。
聖女として担ぎ上げられてからは特別な目で見てくる人は居たが、それは彼女の望む形ではなかった。
俺は彼女が愛おしくなり、頭に触れようとすると近くの公園から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
そこには学園を代表する美女の一人が学園を代表する変態の一人の背中に座っていた。
「リアス部長!一誠さん!おはようございます」
二人を見つけるとアーシアが挨拶する。
オカルト研究部に入部してからアーシアは、リアスのことをリアス部長と呼ぶようになった。
俺は今更なのでリアスのままだ。
「リアスが慈愛の一族の出であることは聞いたが、愛し方は間違えるなよ」
急に立ち上がり、顔を曳き吊らせながらリアスは近付いてくる。
「何を勘違いしてるのか知らないけど、これは一誠のトレーニングよ」
腕立て伏せを続ける兵藤を指差しながら話し始める。
「神器のことは話したわよね」
以前、リアスがそんな事を言っていた事を思い出す。
特定の人間に宿る規格外の力のことで、歴史に名を残した人物の多くが神器の所有者だという。現在でも身体に神器を宿す人物が存在し、世界的に活躍する者達の多くが神器を所有しているらしい。しかし、その大半が人間社会規模でしかないが、稀に悪魔や堕天使といった人外の存在を脅かすほどの神器を宿す者が現れるらしい。
その中でも、兵藤に宿る神器は世に十三種しか存在しない神滅具の一種で【赤龍帝の籠手】と呼ばれる代物らしい。
「私の下僕で神滅具の所有者が弱いなんてことはあってはならないの!」
豊満な胸部を見せつけるようにリアスは胸を張る。
「頑張って下さい、一誠さん」
可愛らしくポーズを取り、アーシアが兵藤にエールを送る。
顔をだらしなく緩ませる兵藤。
「リアス、兵藤はまだ余裕があるようだけど?」
その表情に少しイラッとしたので彼女を焚き付ける。
「じゃあ、基礎トレーニングを十セット追加ね」
顎に指を添えながらリアスが追加のメニューを言い渡す。
「ファ!部長、先輩!そりゃないっすよ!」
奇声を上げる兵藤は涙目であった。
「それで二人はデートかしら?」
兵藤に気合いを入れながら、リアスは俺とアーシアに視線を向ける。
「残念ながらただの買い出し」
手に持っていた買い出しのリストをヒラヒラと揺らしながらアーシアの同意を求めるように視線を向けると、少し沈んだ表情をしていた。
「でも夕方まで戻るなって言われてるし、その後デートしようか?」
そう言うとアーシアの表情が途端に明るくなる。
「良かったわね、アーシア」
頭を撫でながらリアスはアーシアに微笑み掛ける。
その後、俺とアーシアは公園を後にする。
俺とアーシアを笑顔で見送るリアスだったが、二人の姿が見えなくなると、なんとも言えない表情をしていたことを俺は知らなかった。
―〇●〇―
街に着いた俺達は、リストに書かれている物を探しながらデートを楽しんでいた。
お互いの衣服を見立てたり、生活用品のまだ少ないアーシアのために百円ショップやホームセンターへ行き、小物類を揃えたりした。
俺は途中で立ち寄ったアクセサリーショップで彼女に似合いそうなペンダントを内緒で購入した。
昼食の時間になり、グランデに行くと料理長やスタッフ達が笑顔で迎えてくれた。
注文していない品がどんどん運ばれて来て、今日のランチは赤字だねと彼女と笑った。
グランデを後にした俺達は街を一望出来るタワーに登り、興奮する彼女に今度は夜に来ようと約束したり、レイナーレのお墓参りに行ったりして家に戻った。
家に帰るとリビングは所狭しと装飾がされていた。
だが、決して適当に飾られたものではなく全てが絶妙に配置されており、俺とアーシアは驚いた。
流石は鬼才と呼ばれる世界的建築家の父ちゃんだ。
「おかえりー。もうすぐ準備終わるから着替えて来てね」
母ちゃんが料理の盛られた皿をテーブルに置いていく。
―〇●〇―
「アーシアの同居一か月を祝して乾杯~!」
母ちゃんの音頭で宴の幕が上がった。
部屋には父ちゃんの施した渾身の装飾が完成していた。
改めて見ると、とても一日で作ったとは思えないほどの完成度でテーマパークのアトラクションの中に迷い混んだような錯覚を覚えた。
テーブルの上には母ちゃんの作った豪華な食事の数々がこれでもかと並んでおり、グランデで提供される料理と比較しても遜色なかった。
「お義父様、お義母様。本当にありがとうございます。お部屋もとっても素敵でお料理もとっても美味しいです」
彼女の瞳からは涙が溢れていた。
それは彼女の流してきた数々の悲しみの涙ではなく、これから流す多くの暖かい涙であった。
「私はユウさんに出逢えて、お義父様とお義母様に出逢えてとても幸せです」
頬に涙を溢しながら笑う彼女に母ちゃんが目に涙を溜めながら抱き付き、頭を撫でている。父ちゃんも目頭を押さえている。
「これつまらない物なんですが、お世話になっているお二人に」
アーシアが父ちゃんと母ちゃんに綺麗に包装された物を手渡す。
「先日お給料を頂いたので」
恥ずかしそうに笑う彼女に感動している両親二人。
「開けてみてもいいかい?」
嬉しすぎて二人は我慢できないようだ。
包装を綺麗に開けていくと、控え目な刺繍の入ったお揃いのハンカチが入っていた。
母ちゃんはありがとねと何度も言いながら、再び彼女に抱き付いている。
父ちゃんもどさくさ紛れて彼女に抱き付こうとするも母ちゃんによって阻まれていた。
「一生大切にするからね!」
とても心の暖まる一幕だった。
俺のは?などと無粋なことは言わないでおこう。
そこから先はドンチャン騒ぎだった。
酔った母ちゃんが何度もアーシアにキスをしたり、父ちゃんが俺の幼い頃のアルバムを広げると、アーシアが異常に興味を示し、そこに母ちゃんが加わり俺の恥態を赤裸々に教えていた。
なんだこの生き地獄は。
その後、パーティーは俺の幼少時の映像鑑賞会に変わっており、幼少期の俺に彼女は頬を緩ませながらぷるぷると震えていた。
映像鑑賞会が続くに連れ、両親のアルコール摂取量も増えていき大盛り上がり。
そして今・・・
「ユウしゃんかわいいでちゅね~」
何故か完全に出来上がってしまったアーシアが幼少期の俺の写真に話し掛けている。
「母ちゃん、アーシアに何飲ませたの?」
ワインを呷っている母ちゃんに説明を求める。
「なんだい、そんなに険しい顔して。ジンジャエールとブドウジュースを飲んだだけだろ」
シャンパンとワインを飲ませたのか。
「アーシアもこんな状態だし、今日はお開きにしよう」
アーシアをおんぶして部屋に運ぶ。
「まりゃ眠くないれす~」
背中に乗りながらアーシアは足をパタパタと動かす。
「ユウしゃん!」
背中から呼ばれ、そちらを向く。
彼女の唇が俺の唇に触れる。
「ん、んっ」
艶のある声を出しながらアーシアは唇を離そうとはしない。
以前、唇を合わせた時とは違い、ほんのりとアルコールの香りが俺の口内と鼻腔を侵すような深い口付けにアーシアは呼吸が苦しくなり唇を離す。
「ぷぁ~、こにょお料理は格別でしゅ~」
いきなりの展開に動揺し、アーシアを落としてしまいそうになるが、既に気持ち良さそうに寝息を立てている。
彼女の部屋へ入り、ベッドに横にする。
既にラフな格好だったため、このまま寝ても問題ないだろう。
俺は昼間に内緒で購入したペンダントを彼女の首に掛けて上げる。
黒歌は既にアーシアのベッドに入り込んでいる。
「おやすみ。アーシア、黒歌」
俺がリビングに戻ると、父ちゃんと母ちゃんが寝ていた。
ソファーに横になっている父ちゃんに毛布を掛けて上げる。
椅子に突っ伏して寝ている母ちゃんにも毛布を掛けて上げた。
この時期、日中は暖かいが朝夕は冷えるので体調を崩されては大変だ。
散らかっているテーブルを片付け、アルバムやDVDを元あった場所に戻していく。ゴミをキッチンに持っていき、テーブルを拭く。
「装飾は当分はこのままでいいかな」
芸術のように施された装飾を見渡し、時間を確認すると既に日付を跨いでいた。
リビングの電気を消して、風呂に入って自室に戻る。
部屋に入ると、月明かりに照らされたベッドが膨らんでいた。
おそらくアーシアがいつもの様に入り込んだのだろう。帰巣本能とでも言うのだろうか、酔っていてもいつも通りだ。
ため息を吐きながら、俺もベッドに入る。
「遅かったわね、お願いがあるの」
ベットの中には紅の髪を携えた見覚えのある女性が一糸纏わぬ姿で此方を見ていた。
7話を更新しました。
ストーリーが進まないですね。
いろいろ考えてはいるんですが、どう考えてもこの章が短くなりそうなので少しでも長くしようと、日常の風景を書いてみました。
基本的に主人公の視点でしか書かないので、主人公がいない場面は割愛していきます。
場面の切り替わりは原作を参照しました。
閲覧してくださった方、コメントをくれる方、誤字・脱字の修正をしてくださる方ありがとうございます。
では、また次回。バイバイ。