怪狩り ~ 人の絆と怪の決意   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

メデューサを倒して以来、勇気は書斎に行く事をあまり怖がらなくなった。
逃げたとしても、怪奇現象は決して治まる事はないと知っているからだ。
それを知った勇気は、名前の通りの勇気を身に着けるようになる。
こうして今日も見捨里市は平和な日々が続く。
……と、思いきや、見捨里市を巨大な地鳴りが襲うのだった。


2 - 巨大な地鳴り

「昨日のあれ、変だったよな!」

 翌日、6年2組の教室では、昨日の地鳴りが話題になっていた。

「俺、地震だって思ったのにさ」

 びっくりして外に避難したよ」

「私も。後……何だかまだ耳が変な感じ……」

「うちの妹もまだ小さいからさ、昨日はずっと泣いてた。結局何だったんだろう?」

 勇気は、クラスメイトのみんなが話しているのを、自分の席で聞いていた。

(もしかして……また何か怪が……?)

 どう考えても、ただの地震ではなさそうだ。

 勇気が心の中で分析していると、羽心が傍にやってきた。

「珍しいわね。勇気が怖がってないなんて」

 羽心はそう言うと、空いていた隣の席に座った。

「羽心の席はそこじゃないだろ」

「いつでもどこでも、座りたい時に座りたい場所に座る。それが私の信条なのよ」

「どんな信条だよ」

 呆れる勇気の顔を、羽心はジロジロと覗き込むように見つめた。

「僕の顔に何かついてるのか?」

「ううん、なんかちょっと変わったな、って思って。

 よく分からないけど、勇気、ちょっとだけたくましくなった感じがするのよね」

「たくましくなった?」

 以前の勇気なら、謎の地鳴りがしたと聞いただけで怯えていたはずだ。

 しかし、身体が石になるわけでも、頭に毒蛇が生えた怪物が出てきたわけでもない。

(そっか、メデューサとの戦いのおかげで、気持ちが強くなったんだ……)

「羽心、もう、勇気って名前なのに勇気がないなんて言わせないからね!」

 勇気は鼻息荒く宣言する。

 羽心は意味が分からず、きょとんとしていた。

「羽心ちゃん、今いい?」

 ショートヘアの女子、蒲谷亜衣と、長身の男子、志水拓馬が、勇気達の傍にやってきた。

「羽心ちゃん、怪奇現象に詳しいわよね?」

「怪奇現象の事なら、何でも私に聞いてちょうだい!」

 亜衣の言葉に、羽心の耳がピクンと反応した。

 まるで、餌に食いついた魚のようだ。

 すると、亜衣の後ろにいた拓馬が口を開いた。

「昨日の地鳴りの事で、ちょっと気になる事があるんだ」

「どうしたの?」

「あの地鳴り……」

 

「ここから、大きな地鳴りがしたのね」

 ディアーナは、地鳴りがしたというミス池を調査していた。

 町の外れにある公園内の森を抜けた場所にあり、魚がよく釣れるスポットとして有名である。

 水面を見ると、上に十字の割れ目ができていた。

かぜのせいれいよ

 ディアーナは風の精霊シルフを召喚し、十字の割れ目を調査した。

 シルフはくるくると回転すると、十字の割れ目を見て騒ぎ出した。

「何、メデューサと同じ? 大体分かったわ。とりあえず、書斎に行ってみる」

 地鳴りに関する情報を一通り集めたディアーナは、勇気の家の書斎に向かった。

 

 視点は小学校に戻る。

「ミス池……ミス池……。

 なんか、似たような名前の有名な怪奇現象があったような気がするんだけどなぁ」

 羽心は、人差し指で額をトントンと叩いて、記憶を探った。

 これが、彼女の癖である。

(また、羽心が興味持っちゃった)

 石化事件の時と同じで、全く懲りていない。

 勇気はそう思いつつも、羽心が石化事件もメデューサの事も、

 全て忘れてしまっている事を改めて思い出した。

(もー、これじゃあ、どうやって注意すればいいか分からないよ)

 勇気は大きな溜息をついた。

 

「えっ?」

 ふいに、勇気の頰に風が当たった。

 気がつくと、勇気は何故か森の中にいた。

 目の間には大きな湖が広がっている。

「どうして?」

 さっきまで教室にいたはずだ。

 勇気は、湖の傍に立っている看板に目が留まった。

 看板には「Loch Ness」と書かれてある。

「英語? ミス池……じゃないよな?」

 ミス池もそこそこ大きいが、今いる場所はそれの比ではない。

 まるで海のように大きな湖を、鬱蒼とした森が取り囲んでいる。

 勇気は、驚きながら湖を見つめた。

「な、何?」

 突然、大きな音が響き、大地が揺れた。

 音は背後にある森の方からした。

 勇気が振り返ると、木々が激しく揺れ、音を立てながら薙ぎ倒される。

 その木々の後ろに、見た事もない巨大な影が現れた。

グゴオオォォォ!

「わあああ!」

 巨大な影が咆哮し、勇気の方へ向かって突進してきた。

 勇気は慌てて湖の方へ逃げたが、慌てすぎて足が絡まり、転んでしまった。

うわっ、ああ!

 勇気は起き上がろうとする。

 その時、目の前の地面が真っ暗になった。

 荒い鼻息がする。

 恐る恐る顔を上に向けると、あの巨大な影が、勇気の真上にいた。

グゴオオオオオ!

 次の瞬間、巨大な影が、勇気に向かって覆いかぶさってきた。

うわあああ!!!

 

どうしたの、勇気!?

「えっ?」

 突然、誰かが勇気の肩を大きく揺さぶった。

 勇気がハッとすると、肩を揺さぶった手の先を見た。

 そこには、羽心、亜衣、拓馬がいて、勇気の方を見ている。

「ええっと……」

 勇気は、教室の自分の席に座っていた。

「ちょっと、いきなりどうしたのよ?」

「そ、それは」

「ボォーッとしてたわよ」

「ボォーッと……?」

 教室の時計を見ると、先程から5分ぐらい過ぎていた。

(僕、また夢を見てたんだ……)




~次回予告~

地鳴りを起こしていたのは、ネッシーという怪獣の仕業だった。
20世紀に潜む怪獣、それは実在しないと思われていた。
だが、怪奇現象が起きているという事は、ネッシーは確実に、見捨里市に現れようとしていた。
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