怪狩り ~ 人の絆と怪の決意   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

勇気、プーカ、ディアーナ、ジャネット、タケルは、サラマンダーが住む洞窟に忍び込んだ。
洞窟に閉じ込められたタケルの妹・ミヤズを救うべく、
プーカは洞窟に潜入するがあと一歩でサラマンダーに見つかる。
こうして勇気、ディアーナ、ジャネットはサラマンダーと戦い、これを撃破。
勇気は羽心を取り戻す事はできなかったが、彼女が装備していた星のグローブを取り戻す。
羽心は別の場所にいる……そう思った勇気は、羽心を救う事を誓うのだった。


episode6 - Truth of Jaki ~ 不幸を呼ぶ箱
1 - 勇気と先生


 路地裏に戻ってきたディアーナとジャネットは、改めて作戦を考えた。

 ノノ、アプリル、チェイニーだけでなく、麗羅、つるぎ、揚羽、カリオストロも集まっている。

 後の四人はかつて邪鬼に仕えていたが、今は彼を裏切って盗賊として活動している。

 こうして集めるために、ジャネットは相当苦労したとか。

「皆様、よく集まりました。これより『羽心救出作戦』を敢行します」

 真剣な表情でジャネットは集まった者達に言う。

 ジャネットが「敢行」と言ったのは、成功する見込みがないからだ。

「邪鬼が羽心をさらい、海からあの大陸が浮上した、とディアーナは報告しました。

 よって、羽心はあの大陸にいる可能性があります。

 そして、×印状の罅の中に逃げた……という事は、

 羽心、いえ、あの大陸はあの罅の奥にあります」

 単純に考えれば、邪鬼は羽心の力を利用し、あの大陸に行ったのだろう。

 ちなみにジャネット達は分からなかったが、

 知らざる者(アンノウンマン)が羽心の存在を忘れたのも、これが原因だという。

 ふと、ディアーナは浮上した謎の大陸の正体について推測する。

「ねえ、ジャネット。あの大陸って、もしかして海*1?」

「十中八九海でしょう」

 ディアーナが自身の推測をジャネットに話すと、ジャネットは首を縦に振った。

 「海」と言っている理由はノノ達には分からないが、二人には話が通じているようだ。

「たいりくなのに、うみ?」

「隠語だよ」

「なに?」

「ディアーナとジャネットだけに通じる言葉さ。で、俺達はどうするんだ?」

「あなた達は路地裏の奥に行ってください。

 そしてそこの人達は、ノノ達が行った場所とは逆方向に行ってください」

「何故別の場所から行くのじゃ?」

「足止めも考慮してです。いいですか? もう一度言いますよ。

 ノノ、アプリル、チェイニーは路地裏の奥、そこの人達はそこの逆に行ってください」

 ジャネットは何から何まで見通しながら作戦を考えている。

 そんな彼女の作戦を、誰も蹴らないはずがなかった。

「ああ……もちろん、賛成だぜ!」

「邪鬼に一泡吹かせられるんだ、ぶっ飛ばしたいね!」

「ああ……ボク達はキミの傀儡じゃないんだよ」

「アタイ、ぜ~ったいに負けないんだから!」

「世界を救う……なんて大きな事ではないが、私達でできるだけの事はやろう」

「よろしい! では、行ってきなさい」

 ジャネットはノノ、アプリル、チェイニー、麗羅、つるぎ、揚羽、カリオストロを送り出し、

 自らはディアーナと共に出陣した。

 

「さて、ディアーナ、行きますよ」

「凄いじゃない、ジャネット。いい作戦だわ」

「……私はそんなに勉強した事がないので、ジルから教わった事を言っただけですが」

 

 そして、場面は勇気に変わる。

「あの場所に、羽心はいたのかな……?」

 昼休みの小学校。

 勇気は、一人渡り廊下に立っていた。

 手には、『星のグローブ』がある。

 先日、サラマンダーを追って、時を超えた。

 邪鬼と羽心を捜したものの、その場所にはいなかった。

 しかし何故か、星のグローブが落ちていたのだ。

「もしかして、邪鬼が落としていったのかもしれないヨ」

 ふと、プーカが服の胸ポケットから顔を出して言った。

「邪鬼は恐らくあの場所にいたよネ?」

「ああ、多分いたと思う」

 邪鬼がいついたのかは分からない。

 しかし、刀で×印状の罅を作り、サラマンダーの力を利用した事だけは確かだ。

「羽心……」

 羽心はどこにいるのだろう。

 浮上した謎の大陸の事も、連日のようにニュースで報じられている。

(気になるけど、今はそれどころじゃないよね)

「羽心を早く助けないと」

 そう呟くと、勇気は星のグローブをじっと見つめた。

「勇気クン……」

 プーカは胸ポケットから出ると、勇気に満面の笑みを浮かべる。

「羽心チャンはきっと無事ダ。だから、落ち込むなヨ」

「……うん」

「真之、何をしてる?」

 突然、声がした。

 見ると、渡り廊下の入り口に、担任の原末先生が立っていた。

「ええっと」

 勇気は慌てて星のグローブをポケットにしまう。

「プーカも早く脇ポケットに入って……!」

「お、おウ」

 プーカは急いで脇ポケットに隠れた。

「ここで何してたんだ?」

「ええっと、ちょっと考え事をしてて」

「こんなところでか?」

 勇気がいるのは、四階の渡り廊下だ。

 各学年の教室は三階までにしかなく、四階には滅多に人は来ない。

 そのため、勇気は誰にも邪魔されず、羽心の事を考えられると思ったのだ。

 原末先生は、ガラスケースのフタが付いている箱を持っていた。

 箱の中には、いくつもの石が入っている。

 勇気がその石を見ていると、原末先生は「あ~、これはな」と言った。

「次の理科の授業で使うんだよ。砂岩や泥岩と言って、石によって地層の違いが分かるんだ」

 どうやら原末先生は、地層の授業でみんなに見せる石を、

 四階にある理科準備室に取りに行っていたようだ。

「そろそろ昼休みが終わるぞ。教室に戻ろう」

「は、はい」

 勇気は、原末先生と共に、6年2組の教室に戻る事にした。

「真之、この前の理科のテスト、あまり点数が良くなかったな」

「はあ」

「勉強は嫌いか? 先生は真之と同じぐらいの頃は、勉強するのが凄く楽しかったぞ」

「そうなんですか」

 原末先生はいつも勉強の事ばかり言う。

 怒る事も多いので、勇気は原末先生の事があまり好きではなかった。

(今は先生の事なんて考えてる場合じゃないのに)

 勇気は溜息を吐きながら、校舎に入ると、階段を下りようとした。

 

「何かあったら、先生に言うんだぞ」

 不意に、原末先生が言った。

「いやあ、あ、あれだ、人は誰だって悩みの一つや二つはある。

 そういう時は誰かに話した方が楽になるからな」

 どうやら原末先生は、勇気が四階の渡り廊下に一人でいた事を、心配してくれているようだ。

「原末先生……」

(普段は全然そう思わないけど、意外と優しいのかも)

 勇気は原末先生の気持ちを知り、嬉しくなった。

 しかし、すぐに首を小さく横に振る。

(だけど、この悩みは原末先生じゃ解決できないよね)

 羽心の事は、皆、忘れてしまっている。

 怪の事も、邪鬼の事も、どれだけ説明しても理解してもらえないだろう。

「ありがとうございます」

 勇気はお礼を言う事しかできなかった。

「いつでも相談してくれていいからな」

 事情を知らない原末先生は、似合わない笑みを浮かべながら、階段を下り始めた。

 瞬間、原末先生が急に身体のバランスを崩した。

 階段を踏み外したのだ。

うわああ!

 原末先生は、そのまま階段を転げ落ちる。

 ドンッという音と共に、踊り場に倒れた。

「先生!」

「う、ううう」

 勇気は慌てて駆け寄る。

 原木先生は、苦悶の表情を浮かべ、まともに声を出す事もできなくなっていた。

「しっかりして下さい。誰か!」

 勇気は、三階の廊下にいる子供達に助けを求めた。

*1
「遊戯王」のフィールド魔法「伝説の都 アトランティス」は「このカード名はルール上『海』として扱う」とある。




~次回予告~

見捨里市の住民が、次々と不幸に見舞われる事件が発生した。
幸い、ディアーナ達にはこの事象は発生しなかったが、間違いなく怪の仕業であった。
この怪は人々に不幸をもたらす……そのような怪に、勇気達はどう挑むのだろうか。
そして、ジャネットの作戦は成功するのだろうか。
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