勇気、プーカ、ディアーナ、ジャネット、タケルは、サラマンダーが住む洞窟に忍び込んだ。
洞窟に閉じ込められたタケルの妹・ミヤズを救うべく、
プーカは洞窟に潜入するがあと一歩でサラマンダーに見つかる。
こうして勇気、ディアーナ、ジャネットはサラマンダーと戦い、これを撃破。
勇気は羽心を取り戻す事はできなかったが、彼女が装備していた星のグローブを取り戻す。
羽心は別の場所にいる……そう思った勇気は、羽心を救う事を誓うのだった。
1 - 勇気と先生
路地裏に戻ってきたディアーナとジャネットは、改めて作戦を考えた。
ノノ、アプリル、チェイニーだけでなく、麗羅、つるぎ、揚羽、カリオストロも集まっている。
後の四人はかつて邪鬼に仕えていたが、今は彼を裏切って盗賊として活動している。
こうして集めるために、ジャネットは相当苦労したとか。
「皆様、よく集まりました。これより『羽心救出作戦』を敢行します」
真剣な表情でジャネットは集まった者達に言う。
ジャネットが「敢行」と言ったのは、成功する見込みがないからだ。
「邪鬼が羽心をさらい、海からあの大陸が浮上した、とディアーナは報告しました。
よって、羽心はあの大陸にいる可能性があります。
そして、×印状の罅の中に逃げた……という事は、
羽心、いえ、あの大陸はあの罅の奥にあります」
単純に考えれば、邪鬼は羽心の力を利用し、あの大陸に行ったのだろう。
ちなみにジャネット達は分からなかったが、
ふと、ディアーナは浮上した謎の大陸の正体について推測する。
「ねえ、ジャネット。あの大陸って、もしかして海*1?」
「十中八九海でしょう」
ディアーナが自身の推測をジャネットに話すと、ジャネットは首を縦に振った。
「海」と言っている理由はノノ達には分からないが、二人には話が通じているようだ。
「たいりくなのに、うみ?」
「隠語だよ」
「なに?」
「ディアーナとジャネットだけに通じる言葉さ。で、俺達はどうするんだ?」
「あなた達は路地裏の奥に行ってください。
そしてそこの人達は、ノノ達が行った場所とは逆方向に行ってください」
「何故別の場所から行くのじゃ?」
「足止めも考慮してです。いいですか? もう一度言いますよ。
ノノ、アプリル、チェイニーは路地裏の奥、そこの人達はそこの逆に行ってください」
ジャネットは何から何まで見通しながら作戦を考えている。
そんな彼女の作戦を、誰も蹴らないはずがなかった。
「ああ……もちろん、賛成だぜ!」
「邪鬼に一泡吹かせられるんだ、ぶっ飛ばしたいね!」
「ああ……ボク達はキミの傀儡じゃないんだよ」
「アタイ、ぜ~ったいに負けないんだから!」
「世界を救う……なんて大きな事ではないが、私達でできるだけの事はやろう」
「よろしい! では、行ってきなさい」
ジャネットはノノ、アプリル、チェイニー、麗羅、つるぎ、揚羽、カリオストロを送り出し、
自らはディアーナと共に出陣した。
「さて、ディアーナ、行きますよ」
「凄いじゃない、ジャネット。いい作戦だわ」
「……私はそんなに勉強した事がないので、ジルから教わった事を言っただけですが」
そして、場面は勇気に変わる。
「あの場所に、羽心はいたのかな……?」
昼休みの小学校。
勇気は、一人渡り廊下に立っていた。
手には、『星のグローブ』がある。
先日、サラマンダーを追って、時を超えた。
邪鬼と羽心を捜したものの、その場所にはいなかった。
しかし何故か、星のグローブが落ちていたのだ。
「もしかして、邪鬼が落としていったのかもしれないヨ」
ふと、プーカが服の胸ポケットから顔を出して言った。
「邪鬼は恐らくあの場所にいたよネ?」
「ああ、多分いたと思う」
邪鬼がいついたのかは分からない。
しかし、刀で×印状の罅を作り、サラマンダーの力を利用した事だけは確かだ。
「羽心……」
羽心はどこにいるのだろう。
浮上した謎の大陸の事も、連日のようにニュースで報じられている。
(気になるけど、今はそれどころじゃないよね)
「羽心を早く助けないと」
そう呟くと、勇気は星のグローブをじっと見つめた。
「勇気クン……」
プーカは胸ポケットから出ると、勇気に満面の笑みを浮かべる。
「羽心チャンはきっと無事ダ。だから、落ち込むなヨ」
「……うん」
「真之、何をしてる?」
突然、声がした。
見ると、渡り廊下の入り口に、担任の原末先生が立っていた。
「ええっと」
勇気は慌てて星のグローブをポケットにしまう。
「プーカも早く脇ポケットに入って……!」
「お、おウ」
プーカは急いで脇ポケットに隠れた。
「ここで何してたんだ?」
「ええっと、ちょっと考え事をしてて」
「こんなところでか?」
勇気がいるのは、四階の渡り廊下だ。
各学年の教室は三階までにしかなく、四階には滅多に人は来ない。
そのため、勇気は誰にも邪魔されず、羽心の事を考えられると思ったのだ。
原末先生は、ガラスケースのフタが付いている箱を持っていた。
箱の中には、いくつもの石が入っている。
勇気がその石を見ていると、原末先生は「あ~、これはな」と言った。
「次の理科の授業で使うんだよ。砂岩や泥岩と言って、石によって地層の違いが分かるんだ」
どうやら原末先生は、地層の授業でみんなに見せる石を、
四階にある理科準備室に取りに行っていたようだ。
「そろそろ昼休みが終わるぞ。教室に戻ろう」
「は、はい」
勇気は、原末先生と共に、6年2組の教室に戻る事にした。
「真之、この前の理科のテスト、あまり点数が良くなかったな」
「はあ」
「勉強は嫌いか? 先生は真之と同じぐらいの頃は、勉強するのが凄く楽しかったぞ」
「そうなんですか」
原末先生はいつも勉強の事ばかり言う。
怒る事も多いので、勇気は原末先生の事があまり好きではなかった。
(今は先生の事なんて考えてる場合じゃないのに)
勇気は溜息を吐きながら、校舎に入ると、階段を下りようとした。
「何かあったら、先生に言うんだぞ」
不意に、原末先生が言った。
「いやあ、あ、あれだ、人は誰だって悩みの一つや二つはある。
そういう時は誰かに話した方が楽になるからな」
どうやら原末先生は、勇気が四階の渡り廊下に一人でいた事を、心配してくれているようだ。
「原末先生……」
(普段は全然そう思わないけど、意外と優しいのかも)
勇気は原末先生の気持ちを知り、嬉しくなった。
しかし、すぐに首を小さく横に振る。
(だけど、この悩みは原末先生じゃ解決できないよね)
羽心の事は、皆、忘れてしまっている。
怪の事も、邪鬼の事も、どれだけ説明しても理解してもらえないだろう。
「ありがとうございます」
勇気はお礼を言う事しかできなかった。
「いつでも相談してくれていいからな」
事情を知らない原末先生は、似合わない笑みを浮かべながら、階段を下り始めた。
瞬間、原末先生が急に身体のバランスを崩した。
階段を踏み外したのだ。
「うわああ!」
原末先生は、そのまま階段を転げ落ちる。
ドンッという音と共に、踊り場に倒れた。
「先生!」
「う、ううう」
勇気は慌てて駆け寄る。
原木先生は、苦悶の表情を浮かべ、まともに声を出す事もできなくなっていた。
「しっかりして下さい。誰か!」
勇気は、三階の廊下にいる子供達に助けを求めた。
~次回予告~
見捨里市の住民が、次々と不幸に見舞われる事件が発生した。
幸い、ディアーナ達にはこの事象は発生しなかったが、間違いなく怪の仕業であった。
この怪は人々に不幸をもたらす……そのような怪に、勇気達はどう挑むのだろうか。
そして、ジャネットの作戦は成功するのだろうか。