怪狩り ~ 人の絆と怪の決意   作:アヤ・ノア

106 / 135
~前回までのあらすじ~

路地裏に戻ったディアーナ達は、ジャネットの羽心救出作戦に乗る。
ノノ達だけでなく、盗賊である麗羅達も協力する大掛かりな作戦に、
ディアーナはジャネットを信じて彼女と共に出陣する。
一方、勇気は羽心を心配するあまり、授業が頭の中に入らず、担任教師に心配される。
だが、そんな心配も束の間、担任教師が怪我をしてしまった。


2 - 苦しむ人々

 ノノ達に潜入を任せた後、ディアーナとジャネットは見捨里市の調査をしていた。

 どうやら、見捨里市で不幸な出来事が起きているらしい。

かぜのせいれいよ、こえをとどけて

 ディアーナは風の精霊を召喚し、ジャネットは金属音を出しながら辺りを見渡していく。

「ジャネット、大丈夫なの? 重くない?」

「体力にはそれなりに自信がありますから、大丈夫ですよ」

「無茶はしない! ジャネット、サラマンダーを探してた時、疲れてたじゃない」

「……そうでしたね」

 ジャネットは少しふらついている。

 ディアーナは彼女が疲れているのを瞬時に見抜きジャネットに休んでもらうように言ったのだ。

 いつも命令されている側ではない、自分にもきちんとした意志がある。

 それをジャネットに伝えたかったのだ。

「ありがとうございます」

 ジャネットはお礼を言うと、休める場所で休んだ。

 

「……で、集まった情報はというと……」

 風の精霊シルフに教えてもらった情報によれば、以下の通り。

 

 ・この異変を起こしているのは怪物ではない

 

 これだけだった。

 風の精霊シルフの調子が、いつもよりも悪かったせいらしい。

「怪物ではないとはどういう事ですか?」

「文字通りよ。ファフロツキーズとか、霊界通信機とか」

「不幸を呼び、怪物ではない……何を指しているのかは分かりませんが、

 とりあえず、勇気達と合流しましょう」

「そうね」

 

 場面は勇気に戻る。

「先生、大丈夫かな……」

 放課後。

 勇気は一人道路を歩きながら、昼休みの出来事を思い出していた。

 あの後、原末先生は救急車で病院に運ばれた。

 帰りの会で、学年主任の先生は、原末先生が足を骨折し、当分入院する事をみんなに話した。

(僕のせいかも……)

 勇気が渡り廊下になど行かなければ、原末先生も怪我をせずに済んだのかもしれない。

 勇気は、自分を情けなく思い、ガックリと肩を落とした。

 

「おイ。勇気クンの友達がいるゾ」

 服の胸ポケットから顔を出したプーカが、前方を見ながら言った。

「友達?」

 顔を上げると、遊歩道の入り口にクラスメイトの蒲谷亜衣と志水拓馬、それに桐谷花恋がいた。

 何故か皆、オロオロとしている。

「どうしたんだろう?」

 勇気は気になって、傍に駆け寄った。

「ねえ、どうしたの?」

「あっ、勇気君、大変な事が起きたの」

「大変な事?」

 勇気が首を傾げると、花恋は遊歩道の少し先を見つめた。

「さっき遊歩道の前を通りかかったら、犬の散歩をしていたおばさんが倒れて」

「ええ?」

「突然、体調が悪くなったみたいなの」

 花恋の話によると、おばさんは近所の人の車で病院に向かったのだという。

「凄く苦しそうな顔をしてた」

「そうなんだ(また、救急車で運ばれる人が出たなんて)」

 一日の間に、外のところで病院に運ばれる人と出くわすなど、滅多にない。

(ただの偶然、だよね)

 勇気がそう思っていると、亜衣が口を開いた。

「これで、今日病院に運ばれた人は三人目よ」

「どういう事?」

 勇気が戸惑いながら尋ねると、亜衣は真剣な表情で一同を見た。

「朝、隣の家に住んでる高校生のお姉さんが、玄関のドアで指を挟んじゃったの」

 その人は、そのまま病院に向かったのだという。

「原末先生とおばさん、それに近所のお姉さん、いくらなんでも少し変よね?」

 亜衣の言葉に、花恋と拓馬は頷く。

「私、なんか怖い」

「僕も。なんか不気味だよね」

「確かにこれは……」

 単なる偶然とは思えなくなっていた。

 その時、勇気の頬に風が当たった。

 

「あれ?」

 気が付くと、花恋達の姿が消えていた。

「ねえ、みんなどこ?」

 周りを見るが、どこにもいない。

「プーカ、花恋ちゃん達はどこに行ったんだ?」

 勇気はそう言いながら、胸ポケットを見る。

 だが、胸ポケットにプーカの姿はなかった。

「どういう事?」

「うわああ!」

 道路の角から声が聞こえた。

 勇気は慌てて駆け出すと、角を曲がる。

「あっ!」

 そこには、拓馬が倒れていた。

「どうしたの?」

「急に……トラックから荷物が、足の上に落ちてきて」

 拓馬の前には、引越し業者のトラックが止まっていた。

 荷台のドアが開いていて、道路に大きな段ボールが落ちている。

「もしかしてこの荷物にぶつかったの?」

「う、うん、あああっ」

「拓馬君!」

 拓馬は足を押さえながら、苦しむ。

 勇気は助けを呼ぼうと、周りを見た。

「えっ?」

 傍にある小さな公園に、誰かが倒れている。

 花恋と亜衣だ。

「花恋ちゃん! 亜衣ちゃん! 拓馬くん、すぐ戻ってくるからちょっと待ってて!」

 勇気は二人のもとへ駆け寄った。

 花恋達は苦しそうな声を漏らしている。

「お腹が、痛くなって」

「私は、歯が……」

「ううっ」

 花恋達は苦悶の表情を浮かべる。

「しっかりして! 誰か!」

 勇気は焦りながらも声を上げた。

 すると、プーカが飛んできた。

「ゆ、勇気クン……」

「プーカ、助けを呼んできて! みんなが!」

「オ、オイラも、うああ……」

 次の瞬間、プーカはフラフラと彷徨うように宙を舞いながら、地面に落ちた。

「プーカ!」

「カラスに……襲われテ」

「えっ」

「そのカラスも……ブランコの鉄柱に……ぶつかっテ」

 プーカは、ブランコの方を見る。

 ブランコの傍に、一羽のカラスが落ちていた。

「どうなってるの?」

 皆が、何故か急に怪我をしたのだ。

「とにかく、助けを呼ばないと」

 勇気は、プーカを抱きかかえると、人を探そうと公園を出た。

―ゴゴゴゴゴッ

 突然、背後で大きな音がした。

 ハッとして振り返ると、傍に立っていた信号機が鉄柱ごと折れ、勇気の頭上に倒れてきた。

 避ける余裕などない。

 勇気は悲鳴を上げた。

うわあああ!

 

「勇気君、しっかりして」

 目の前に、花恋が立っている。

 傍には、亜衣と拓馬もいる。

 勇気は、おばさんが倒れた遊歩道にいる事に気づいた。

「まさか!」

 服の胸ポケットを確認すると、プーカがいる。

「勇気クン、ボーッとしてたヨ……」

「ボーッと」

 プーカは花恋達に聞こえないように小声で言った。

 勇気はハッとなると、空を見上げた。

「あっ!」

 遊歩道の傍にある雑居ビルとビルの隙間に、黒い物体が見える。

 ×印状の罅だ。

 罅から、黒い煙が漏れ出していた。

「みんな、今すぐ家に帰るんだ!」

 勇気は険しい表情で、花恋達に叫ぶ。

「どうしたの、勇気君?」

「雨でも降ってくるのかい?」

 拓馬は空を見ようとする。

「見なくていいから!」

 そんな拓馬を、勇気は慌てて止めた。

「早く家に帰って! とにかくじっとしてるんだ!」

 勇気は、戸惑う花恋達を半ば強引に説得して、家へと帰らせた。

 

「やっぱり、あなたも気づいたのね!」

「ジャネット、ディアーナ!」

 そこに、ディアーナとジャネットがやってきた。




~次回予告~

災いをもたらす怪の正体は、パンドラの箱だった。
もしも箱が開けば、見捨里市だけでなく世界中が不幸に見舞われてしまう。
勇気、プーカ、ディアーナ、ジャネットは、パンドラの箱に挑むため、時を超える。
そこで出会った人物は、勇気と同じ能力を秘めていた。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。