ディアーナとジャネットは怪奇現象の調査をしていた。
見捨里市の人々が不幸に見舞われる原因は、怪物ではないという事だけは判明した。
勇気も怪奇現象を調査しようとするが、いずれ見捨里市に降りかかる災いを予知夢で見る。
もちろん、放っておけば見捨里市は災いに溢れてしまうだろう。
その後、ディアーナとジャネットは勇気と合流し、怪狩りをしようとするのだった。
「そう、全ては怪の影響よ」
そう言うディアーナの髪が淡く光り輝き、ジャネットの右手が聖遺物になる。
黒い罅があるという事は、邪鬼が怪をこの町に送り込もうとしているという事だ。
その怪がいる時代に行けば、邪鬼がいるかもしれない。
(今度こそ、羽心を助けなきゃ)
勇気は、ポケットに入れていた星のグローブを握りしめた。
ディアーナとジャネットも頷く。
やがて、家へ帰ってきた勇気と、侵入したディアーナとジャネットは、
父親の書斎に駆け込むと、星のグローブを入れたポケットとは反対側のポケットに手を入れた。
そこには、太陽と月のグローブが入っていた。
勇気は二つのグローブを嵌めると、壁の方を見た。
しかし、急に頭を抱えた。
「だけど、一体どんな怪なんだ?」
勇気はそれが全く分からなかった。
原末先生は階段から落ちて怪我をして、おばさんは体調が悪くなり、
亜衣の言っていた近所のお姉さんは、玄関のドアで指を挟んだ。
「夢の中でも、みんなにはバラバラな事が起きて、不幸になっていたよね……」
「不幸になっていタ? そうカ!」
プーカがそれを聞き、胸ポケットから飛び出してきた。
「分かったよ、勇気クン。今回の怪は、恐らく『パンドラの箱』ダ」
「それって」
「分かるわ」
勇気は、本棚に置かれていた『世界の不思議アイテム』と書かれた本を手に取った。
「確か、この本に……あった!」
パンドラの箱とは、神がパンドラという女性に渡した箱の事で、
その箱は絶対に開けてはならないと言われている。
もし箱を開けてしまうと、中に入っていた様々な災いが飛び出し、
人々は不幸な目に遭ってしまうのだという。
(確か、パンドラの箱は、ある一つを除いて災いが解き放たれたのよね……)
「不幸な目……なるほど、だからみんなあんな風になったのか」
「妖精族にも、パンドラの箱はとても怖い箱だという言い伝えがあるんダ」
「だったら、この町に箱が出てくる前に何とかしないと。
だけど、箱なんかとどうやって戦えはいいの?」
全くイメージができない。
勇気が首を捻っていると、プーカがにっこりと笑った。
「パンドラの箱は、開けると様々な災いが飛び出してしまウ。
だったら、開けないようにすればいいんだヨ」
「もしくは、異次元に投げ捨てるか」
「そんな乱暴な……。でも、箱が開けられないようにするためには……あれだ!」
勇気は部屋を出ると、廊下の端にある大工道具などをしまっているクローゼットを開け、
ロープを手に取った。
「これで箱をグルグル巻きにすれば、開ける事ができなくなるよね」
「お~、いいアイデアだと思うゾ」
「後は、私が管理すればいいだけですね」
勇気はロープを持ってプーカと共に書斎に戻ると、壁の前に立った。
「行くよ」
「おウ。羽心チャンを助けるヨ!」
「あたしは負けない、何が何でも!」
「さあ、箱を探しましょう!」
プーカは、勇気の服の胸ポケットに入る。
勇気は、壁に向かって左手をかざすと、呪文を唱えた。
「
次の瞬間、壁に大きな渦の穴ができた。
勇気、ディアーナ、ジャネットは、光の渦の中に飛び込む。
トンネルの先に、茂みが見えてきた。
「わああ!」
「おっと」
―バサッ
勇気とジャネットはトンネルを抜け、上手く着地しようとするが、
茂みにすっぽりと身体が入ってしまった。
ジャネットは鎧で守られたが、動けなくなる。
一方、ディアーナは華麗に着地に成功した。
「いたたた」
「勇気クン、ジャネット、大丈夫カ?」
胸ポケットからいち早く脱出していたプーカが、飛びながら勇気とジャネットに言った。
「流石に出た先が茂みだったら、上手く着地できないよ」
「はあ、だらしないわね」
勇気とジャネットは、這い出るように茂みから出ると、何とか立ち上がった。
「ええっと、ここは……」
どうやら、森の入り口のようだ。
「いつの時代なんだ?」
勇気がそう呟いていると、一人の少女が傍にやって来た。
「あなたは誰ですの?」
キレイな赤いドレスを着た少女だ。
「あ、あの僕は」
「お空から急に落ちてきましたが、まさか盗賊さんですの?」
少女は、近くに落ちていた枝を拾って構えると、勇気達を警戒する。
「いや、違うんだ。僕は盗賊とかじゃなくて」
「そうだヨ。勇気クン達は悪い怪を退治しにきたんだヨ」
「プーカ、君は隠れてないといけないだろ!」
勇気は慌ててプーカを捕まえようとする。
だが少女は、プーカ、ディアーナ、ジャネットを見て構えていた枝を下ろすと笑みを浮かべた。
「まあ、妖精さんが二人に、聖女様ですわね」
「えっ?」
少女はプーカ、ディアーナ、ジャネットを見ても全く驚いていないようだ。
「キミは、妖精を見た事があるのかイ?」
「それに、私を聖女と言いましたね」
「お城にあった書物に、妖精は人間と友達になってくれると書いてあったんですわ。
それに、聖女様は国を救う希望ですもの」
「そうなんだ。って今、城って言った?」
勇気は、周りの景色を眺める。
森と反対側の場所に、真っ白な城が建っていた。
「あら、随分立派だこと」
「わたくしのお家ですわ」
「ええ?」
「名前を言っていませんでしたわね。わたくし、この国の王女・サラと申します」
「王女だったんだ」
「道理でそんな格好だと思ったわ」
どうやら、ヨーロッパの古い時代に来たようだ。
「オイラの名前はプーカ。妖精族の王子だヨ」
「ディアーナよ」
「ジャネットです」
「まあ、それは奇遇ですわね。初めまして、プーカ王子、ディアーナさん、ジャネット様」
サラはそう言いながら、勇気の方を見た。
「勇気さんと言いましたわね? あなたもどこかの国の王子様なんですの?」
「いや、僕はただの小学生だよ」
「小学生?」
「あ、ええっと、普通の子供って事だよ」
「彼は私達の護衛対象です」
「まア、そうなのですね。それなら勇気さんは盗賊などではありませんわね。
妖精さんと仲良くなれるのは、心が清らかな良い人だけですもの」
「は、はあ」
よく分からないが、どうやら誤解は解けたようだ。
「ところで、サラ姫はどうしてこんなところにいたんダ?」
ふと、プーカが尋ねた。
「そう言われれば確かに」
周りには、誰もいない。
いくら城の近くとは言え、王女が一人で森の傍にいるのは奇妙だった。
「散歩でもしてたの?」
「いえ、そうではありませんわ」
サラは急に暗い表情になった。
「お父様の事で悩んでいましたの。それで少し城の外を散歩していて。
……お父様は、あの人が現れてから、様子がおかしくなってしまったんですの」
「あの人?」
「片目を包帯で隠した、黒い服を着た少年ですわ」
「それって! やっぱり、この時代にいたんだ!」
「……!」
ディアーナは、サラに詰め寄った。
「そいつは邪鬼。羽心をあの大陸にさらったわ」
「え? そうなんですの?」
「邪鬼と一緒の女の子はいなかった?」
「女の子? う~ん、わたくしの知る限りいませんでしたわ」
「一緒じゃないのね」
「とにかく邪鬼を捕まえましょう」
邪鬼を捕まえれば、羽心も助ける事ができる。
ジャネットは、サラに邪鬼のところに連れて行ってもらおうと思った。
その時、数人の兵達が勇気達のもとへ走ってきた。
「サラ様! 大変です!」
どうやら、城の兵達のようだ。
「どうしたのです?」
サラが尋ねると、口ひげを生やした兵が答えた。
「王が、『封印の間』の扉を開けると言っているのです」
「なんですって!」
サラは目を大きく見開いた。
「サラさん、どうしたの?」
「勇気さん、大変ですわ。あの部屋には、絶対に使ってはいけない禁断の箱があるのです」
「箱とは」
「人々を不幸にする、『パンドラの箱』ですわ!」
勇気、ディアーナ、ジャネットは、城を見つめる。
「そうか。邪鬼はパンドラの箱を手に入れるために王様に近づいたんだ」
三人はサラの方に顔を向けた。
「サラさん、封印の間に案内して。このままじゃ邪鬼にパンドラの箱を奪われてしまう!」
勇気達はサラ達と共に、城へと走った。
~次回予告~
パンドラの箱の開封を阻止するべく、勇気達は封印の間に向かう。
だが、そこで邪鬼と遭遇し、勇気は地下牢に投獄されてしまう。
さらに、ディアーナとジャネットも封印の間を追放された。
二人は勇気を助け、パンドラの箱を回収する事ができるだろうか。