封印の間に向かった勇気達だったが、パンドラの箱を見つける事はできなかった。
それを持っていたのは国王であり、邪鬼が国王を唆して渡したという。
勇気達は止めようとするが、兵士達に連行されてしまう。
ディアーナとジャネットは怒りに任せて看守を殺し、強制的に勇気達を脱出させる。
そしてパンドラの箱を探そうとするが、兵士達が苦しんでいた。
サラはおらず、兵士達が苦しむ……つまり、パンドラの箱を開けたのは……。
勇気はプーカ、ディアーナ、ジャネットと共に、城のあちこちを捜す。
城の中は、怪我をしていて動けなくなった兵達で溢れていた。
「もう逃げたのかモ」
広間の中を捜しながら、プーカが不安そうに言う。
「もしそうだったら、見捨里市は……」
ここと同じように、大勢の人が怪我をしてしまう。
勇気はそれを想像し、首を大きく横に振った。
「それはあり得ないわよ。だって、あたし達は今まで何度も阻止したじゃない」
その時、音がした。
―コツ……コツ……コツ……
誰かがゆっくりと歩いている音だ。
音は、広間の外の通路から聞こえていた。
「邪鬼だ!」
勇気達が広間を出ると、通路の角を曲がる人影が一瞬見えた。
「待て!」
勇気達はその人物を追い、角を曲がる。
すると、誰かとぶつかった。
「わっ」
勇気はよろけて、尻餅をつく。
「勇気クン!」
「くっ」
「危なっ、もう少しで巻き込まれたじゃない」
勇気は邪鬼だと思い、素早く立ち上がると、身構えた。
だが、目の前に立っていたのは邪鬼ではない。
そこにいたのは、王だった。
「そなた達は……ううっ」
王は苦悶の表情を浮かべる。
よく見ると、王はあちこち怪我をしているようだ。
「まさか、邪鬼がやったんですか?」
勇気は身構えながら、邪鬼の姿を捜す。
だが、邪鬼はどこにもおらず、通路には石像だけが並んでいた。
「王様、邪鬼はどこですか?」
「邪鬼……?」
王は傷ついた腕を押さえながら、勇気の方を見た。
「これは……邪鬼殿がつけたものではない」
「じゃあ一体誰が?」
「それは」
王様は険しい表情で、その名前を言おうとした。
瞬間、傍にあった石像の頭が大きく揺れ動いた。
「えっ?」
「危ない!」
石像の頭が、王の真上に落ちてきた。
勇気はとっさに王に飛びついた。
―ドオォン!
「勇気クン!」
「勇気!」
「勇気さん!」
プーカは、倒れた石像の上を飛びながら必死に勇気に声をかける。
「プーカ……」
すると、勇気の声がした。
王と一緒に、木に転がった石像の頭の陰に倒れている。
寸前のところで、落ちてきた頭を避けたのだ。
「まったく、あなたならできたのよね」
「王様、怪我は?」
勇気は、王を見た。
「な、何故助けた……? 私は、そなた達を捕らえさせたのだぞ?」
「そんなの関係ないです。僕は、誰かが傷つくのを放っておく事なんかできない!」
勇気は、真っ直ぐな瞳で王を見つめながらそう答えた。
「そなたは……もしかして本当に、盗賊ではないのか……?」
王は勇気の行動を見て、自分が間違っていた事に気づいた。
「頼む……パンドラの箱を、閉じてくれ。このままでは……村の人達が」
「どういう事ですか?」
「奪われてしまったのだ……。村へ行かせてはならん。ぐうう」
王は再び苦悶の表情を浮かべると、そのまま気を失ってしまった。
「これは予想以上に悪いですね」
「石像が倒れてきたのは、怪の影響によるものだ。
だったら、まだパンドラの箱はこの時代にあるはずだ」
王は村の人達を心配していた。
邪鬼は、村でパンドラの箱を使おうとしているのだろう。
勇気はプーカ、ディアーナ、ジャネットと共に、村へと向かう事にした。
勇気達は城を出て、村を探した。
だが、村らしい場所はどこにも見えない。
どうやら、村は城から離れた場所にあるようだ。
勇気達は探している内に、最初にいた森の入り口まで戻って来てしまった。
「どこに行けばいいんだ?」
「こうなったら勘で探すしかないゾ」
「そんなのダメだ。間違ってたら間に合わなくなるだろ」
勇気は、森の方を見た。
「じゃあ、あたしが何とかするわ。魂は奈落に近づきつつあるけど……やるしかない!」
ディアーナは植物の精霊を召喚し、森を探索させた。
植物の精霊は、木に人が引っかかっているのを発見した。
「こっちよ!」
「あ、ちょっと!」
勇気も後を追おうとした。
その時、地面のくぼみに足を取られた。
「わっ!」
思わず転びそうになる。
目の前に先が尖った石が落ちている。
「うわっ!」
勇気は、慌てて手をついた。
「あ、危なかった」
手をついていなかったら、尖った石が顔に当たって、大怪我をしていたかもしれない。
「まさか、これも怪のせいなのか?」
「知らないゾ」
プーカとジャネットが上手く渡り、
勇気は戸惑いながら立ち上がると、急いでディアーナを追った。
すると、前方に道が見えてきた。
その道の脇に、一人の兵が倒れている。
「あの人は」
サラを森まで迎えに来た、口ひげを生やした兵だ。
「大丈夫ですか?」
「う、うう、きゅ、急に強い風が、吹いて」
「風?」
勇気はハッとして、周りの木々を見上げた。
数人の兵達が、木の枝に引っかかって気絶していた。
「パンドラの箱のせいだ」
彼らは強い風に襲われ、木にぶつかったり、枝まで飛ばされたりしたのだ。
「村はどこですか?」
勇気は、口ひげを生やした兵に尋ねる。
「この道を、真っ直ぐ……は、早く、止めてくれ」
勇気達は、大きく頷くと、駆け出した。
やがて、遠くにいくつも家が見えてきた。
「勇気クン!」
「ああ!」
「はい!」
村だ。
三人はさらに全力で走る。
すると、村へ向かって歩いている人の姿が見えた。
「邪鬼だ!」
まだ、村へは辿り着いていないようだ。
今なら、村の人達を救う事ができる。
「止まりなさい!」
ジャネットは、その人物の元へ向かおうとした。
その瞬間、大きな影が、勇気達の頭上を覆った。
「えっ?」
見上げると、道の傍に立っていた木が、倒れそうになっていた。
「うわっ」
勇気は慌ててそれを避けようとする。
だが、ジャネットが声を上げた。
「勇気、周りを見なさい!」
「周り? あああ!」
倒れようとしているのは、一本だけではない。
道の両側にあった、数十本の木が、同時に倒れそうになっていたのだ。
―バリバリバリッ、ドオオォォン
次の瞬間、木々が一斉に倒れた。
~次回予告~
苦難の末、ついに勇気達はパンドラの箱を発見する。
だが、いなくなったサラは、パンドラの箱に魅入られてしまった。
このままでは彼女のせいで開封されてしまう。
勇気達はサラを止め、異変を解決できるだろうか。