怪狩り ~ 人の絆と怪の決意   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

封印の間に向かった勇気達だったが、パンドラの箱を見つける事はできなかった。
それを持っていたのは国王であり、邪鬼が国王を唆して渡したという。
勇気達は止めようとするが、兵士達に連行されてしまう。
ディアーナとジャネットは怒りに任せて看守を殺し、強制的に勇気達を脱出させる。
そしてパンドラの箱を探そうとするが、兵士達が苦しんでいた。
サラはおらず、兵士達が苦しむ……つまり、パンドラの箱を開けたのは……。


5 - 村を救え

 勇気はプーカ、ディアーナ、ジャネットと共に、城のあちこちを捜す。

 城の中は、怪我をしていて動けなくなった兵達で溢れていた。

「もう逃げたのかモ」

 広間の中を捜しながら、プーカが不安そうに言う。

「もしそうだったら、見捨里市は……」

 ここと同じように、大勢の人が怪我をしてしまう。

 勇気はそれを想像し、首を大きく横に振った。

「それはあり得ないわよ。だって、あたし達は今まで何度も阻止したじゃない」

 その時、音がした。

―コツ……コツ……コツ……

 誰かがゆっくりと歩いている音だ。

 音は、広間の外の通路から聞こえていた。

「邪鬼だ!」

 勇気達が広間を出ると、通路の角を曲がる人影が一瞬見えた。

「待て!」

 勇気達はその人物を追い、角を曲がる。

 すると、誰かとぶつかった。

「わっ」

 勇気はよろけて、尻餅をつく。

「勇気クン!」

「くっ」

「危なっ、もう少しで巻き込まれたじゃない」

 勇気は邪鬼だと思い、素早く立ち上がると、身構えた。

 だが、目の前に立っていたのは邪鬼ではない。

 そこにいたのは、王だった。

「そなた達は……ううっ」

 王は苦悶の表情を浮かべる。

 よく見ると、王はあちこち怪我をしているようだ。

「まさか、邪鬼がやったんですか?」

 勇気は身構えながら、邪鬼の姿を捜す。

 だが、邪鬼はどこにもおらず、通路には石像だけが並んでいた。

「王様、邪鬼はどこですか?」

「邪鬼……?」

 王は傷ついた腕を押さえながら、勇気の方を見た。

「これは……邪鬼殿がつけたものではない」

「じゃあ一体誰が?」

「それは」

 王様は険しい表情で、その名前を言おうとした。

 瞬間、傍にあった石像の頭が大きく揺れ動いた。

「えっ?」

「危ない!」

 石像の頭が、王の真上に落ちてきた。

 勇気はとっさに王に飛びついた。

―ドオォン!

「勇気クン!」

「勇気!」

「勇気さん!」

 プーカは、倒れた石像の上を飛びながら必死に勇気に声をかける。

「プーカ……」

 すると、勇気の声がした。

 王と一緒に、木に転がった石像の頭の陰に倒れている。

 寸前のところで、落ちてきた頭を避けたのだ。

「まったく、あなたならできたのよね」

「王様、怪我は?」

 勇気は、王を見た。

「な、何故助けた……? 私は、そなた達を捕らえさせたのだぞ?」

「そんなの関係ないです。僕は、誰かが傷つくのを放っておく事なんかできない!」

 勇気は、真っ直ぐな瞳で王を見つめながらそう答えた。

「そなたは……もしかして本当に、盗賊ではないのか……?」

 王は勇気の行動を見て、自分が間違っていた事に気づいた。

「頼む……パンドラの箱を、閉じてくれ。このままでは……村の人達が」

「どういう事ですか?」

「奪われてしまったのだ……。村へ行かせてはならん。ぐうう」

 王は再び苦悶の表情を浮かべると、そのまま気を失ってしまった。

 

「これは予想以上に悪いですね」

「石像が倒れてきたのは、怪の影響によるものだ。

 だったら、まだパンドラの箱はこの時代にあるはずだ」

 王は村の人達を心配していた。

 邪鬼は、村でパンドラの箱を使おうとしているのだろう。

 勇気はプーカ、ディアーナ、ジャネットと共に、村へと向かう事にした。

 

 勇気達は城を出て、村を探した。

 だが、村らしい場所はどこにも見えない。

 どうやら、村は城から離れた場所にあるようだ。

 勇気達は探している内に、最初にいた森の入り口まで戻って来てしまった。

「どこに行けばいいんだ?」

「こうなったら勘で探すしかないゾ」

「そんなのダメだ。間違ってたら間に合わなくなるだろ」

 勇気は、森の方を見た。

「じゃあ、あたしが何とかするわ。魂は奈落に近づきつつあるけど……やるしかない!」

 ディアーナは植物の精霊を召喚し、森を探索させた。

 植物の精霊は、木に人が引っかかっているのを発見した。

「こっちよ!」

「あ、ちょっと!」

 勇気も後を追おうとした。

 その時、地面のくぼみに足を取られた。

「わっ!」

 思わず転びそうになる。

 目の前に先が尖った石が落ちている。

「うわっ!」

 勇気は、慌てて手をついた。

「あ、危なかった」

 手をついていなかったら、尖った石が顔に当たって、大怪我をしていたかもしれない。

「まさか、これも怪のせいなのか?」

「知らないゾ」

 プーカとジャネットが上手く渡り、

 勇気は戸惑いながら立ち上がると、急いでディアーナを追った。

 すると、前方に道が見えてきた。

 その道の脇に、一人の兵が倒れている。

「あの人は」

 サラを森まで迎えに来た、口ひげを生やした兵だ。

「大丈夫ですか?」

「う、うう、きゅ、急に強い風が、吹いて」

「風?」

 勇気はハッとして、周りの木々を見上げた。

 数人の兵達が、木の枝に引っかかって気絶していた。

「パンドラの箱のせいだ」

 彼らは強い風に襲われ、木にぶつかったり、枝まで飛ばされたりしたのだ。

「村はどこですか?」

 勇気は、口ひげを生やした兵に尋ねる。

「この道を、真っ直ぐ……は、早く、止めてくれ」

 勇気達は、大きく頷くと、駆け出した。

 やがて、遠くにいくつも家が見えてきた。

「勇気クン!」

「ああ!」

「はい!」

 村だ。

 三人はさらに全力で走る。

 すると、村へ向かって歩いている人の姿が見えた。

「邪鬼だ!」

 まだ、村へは辿り着いていないようだ。

 今なら、村の人達を救う事ができる。

「止まりなさい!」

 ジャネットは、その人物の元へ向かおうとした。

 その瞬間、大きな影が、勇気達の頭上を覆った。

「えっ?」

 見上げると、道の傍に立っていた木が、倒れそうになっていた。

「うわっ」

 勇気は慌ててそれを避けようとする。

 だが、ジャネットが声を上げた。

「勇気、周りを見なさい!」

「周り? あああ!」

 倒れようとしているのは、一本だけではない。

 道の両側にあった、数十本の木が、同時に倒れそうになっていたのだ。

―バリバリバリッ、ドオオォォン

 

 次の瞬間、木々が一斉に倒れた。




~次回予告~

苦難の末、ついに勇気達はパンドラの箱を発見する。
だが、いなくなったサラは、パンドラの箱に魅入られてしまった。
このままでは彼女のせいで開封されてしまう。
勇気達はサラを止め、異変を解決できるだろうか。
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