見捨里市で、原因不明の巨大な地鳴りが起こった。
ディアーナはその調査をするため、精霊と共に見捨里市を探索する。
一方、勇気も巨大な影が現れる、奇妙な夢を見ていた。
夢に現れる巨大な影の正体は、一体何なのか――
ディアーナは、書斎でネッシーに関する本を読んでいた。
その間に、髪が淡く輝いていた。
1934年の4月。
ある医師が、イギリス・スコットランドのネス湖にやってきた。
早朝、友人と一緒に鳥の写真を撮るために湖畔を歩いていると、
突然、湖の水面に、長い首を伸ばした怪獣の顔が現れたのだという。
医師は慌ててそれを写真に収めた。
そこに写っていたのは、大昔に絶滅したはずの首長竜のようだった。
湖の名前から『ネッシー』と名づけられたその怪獣の写真は、
瞬く間に世界中に広がり、大きな話題になった。
「へぇー、ネッシーかぁ! かっこいいわねぇ」
ネッシーに関する本を、一心不乱に読むディアーナ。
勇気に気づかれないのは、彼女が異世界の住人だからだろうか。
しかし1993年、ある人物が、写真が偽物だったと証言した。
その人物の養父が、世間を騒がせるために、おもちゃの潜水艦に怪獣の首の模型を取り付け、
それを湖に浮かべて写真に撮ったというのだ。
医師がその写真を撮ったように見せかけたのは、社会的に地位のある彼が言えば、
誰も嘘だとは思わないと考えたからだという。
「ネッシーはいなかったのかしら? でも、確かに地鳴りが起こった……う~~~~ん」
ディアーナは唸り声を上げた後、本を本棚に戻すのだった。
学校が終わると、勇気は急いで家へと戻った。
(×印が出たって事は、キユウがいるはず!)
そう思いながら、書斎に向かうと、家のチャイムが鳴った。
チャイムはリズミカルに鳴り続ける。
母親は仕事で、今、家には勇気だけだ。
「はーい、ちょっと待って!」
勇気は開きかけた書斎のドアをそのままに、仕方なく玄関へ向かった。
「もう、一度目のチャイムで出てよね!」
玄関のドアの前に立っていたのは、羽心だ。
その手には、何故か巨大なスコップを持っている。
「何それ?」
「あー、勇気のお家のものを、ちょっと借りようと思って」
「僕の家の?」
そう言えば、自転車置き場の脇にスコップを置いていた。
「もしかして勝手に取ったの?」
「失礼ね。今、貸してって言おうと思ったの。だからチャイム鳴らしたでしょ」
「そ、そっか、ごめん」
普通は借りる前に言うものだが、反論しても、自己中な羽心には勝てそうにない。
「ところで、スコップなんて何に使うんだよ?」
「決まってるでしょ。今から、ミッシーを捕まえに行くのよ!」
「ミッシー?」
羽心はにっこりと笑った。
「拓馬君からミス池の話を聞いて、
私、なんか似たような名前の怪奇現象があったような気がするって言ったでしょ。
それが何だったのか、やっと思い出したの」
「何だったの?」
「それはねえ、怪獣よ!」
「えええ?」
「あらっ、知らないの?
イギリスのネス湖っていうところで、ネッシーっていう怪獣が目撃された事があるの」
「ああ、それなら知ってる! だけど、ネッシーは……」
書斎にあった怪奇現象の本に載っていたため、勇気は本の内容を思い出した。
「……という内容なんだ」
「確かにそうかもね。
だけど、世界には、ネッシーと同じような生き物の目撃情報がたくさんあるのよ。
この国でも、イッシーとかクッシーっていって、湖で怪獣が目撃された事があるんだから」
「そうだったんだ」
勇気は、湖の怪獣についてそこまで詳しく調べていなかった。
「それで、ミッシーっていうのは?」
「あー、私がさっきつけたの。ミス池にいる怪獣だから、ミッシー!」
「ミス池は湖じゃないと思うけど……」
すると、羽心は真剣な表情になった。
「昨日のあの地鳴り、あれはきっと、ミッシーの鳴き声だと思うの」
「……ネッシーの鳴き声……」
「ネッシーじゃなくて、ミッシーね。ほら、拓馬君が池の方から聞こえたって言ってたでしょ。
きっと、池で鳴いてたのよ! で、勇気もどう? 一緒にミッシー探ししない?」
楽しそうにスコップを上げ下げする羽心を見て、勇気はハッとして声を荒らげた。
「駄目だ、危ない! 大体そんなスコップなんかじゃ、どうにもならないだろ!」
「これはファッションの一部よ。冒険の雰囲気作り」
「あのなあ、また怪物に襲われたりでもしたら……」
メデューサに襲われていた羽心の事が脳裏に浮かんだ。
今回も怪が絡んだ事件だとしたら、羽心がまた危険な目に遭ってしまう。
勇気が必死で説得する理由を探していると、羽心が首を横に振った。
「やっぱり、来ないわよね。勇気は勇気ないもんね」
「そ、そうじゃない! とにかく、危険な事は……」
勇気は石化事件の事を話そうと思ったが、それよりも早く、羽心が口を開いた。
「もういい。一応誘ってみただけだから。亜衣ちゃんと拓馬君がついてきてくれるし」
羽心はそう言うと、去って行ってしまった。
「う、羽心……!」
「グゴオオオオオ!」
追いかけようとした、その時だった。
突然、大きな地鳴りがした。
「これって!」
昨日と同じ地鳴りだ。
「このままじゃ、彼女は大変な事になるかもしれないねえ」
「口先だけで何もできないのに」
聞き覚えのある声が、二つした。
「まさか!」
勇気は下を走ると、書斎の前にやってきた。
ドアが開いたままになっていた書斎に、一人の男の子と、長身の女性が立っている。
「キユウ、ディアーナ!」
「やあ」
キユウは微笑み、ディアーナは既に準備をしていた。
~次回予告~
謎の地鳴りの正体は、やはり怪が起こしていたものだった。
その怪は「ネッシー」という、ネス湖に住む巨大な怪獣だった。
このまま放っておいては、町の人々がネッシーに食べられてしまう。
それを阻止するべく、勇気、キユウ、ディアーナは時を超え、イギリスに向かうのだった。