勇気達は邪鬼を追うべく、×印状の罅を通って謎の大陸に辿り着く。
そこで調査隊と出会ったが、彼らは邪鬼に襲われて撤退したのだという。
邪鬼は羽心の力とパンドラの箱を使って、ある事をしようとしているようだ。
見捨里市だけでなく、世界中を不幸にするわけにはいかない。
そう思った勇気達は、調査隊の隊長・フォードと出会った。
「なんだって? 他のメンバーは外に逃げてしまったのか」
勇気は、神殿の外で会った人達の事をフォード博士に話した。
「まったく、情けない。襲われそうになったぐらいで逃げ出してしまうとは」
「そうよねぇ」
フォード博士もディアーナも、邪鬼の事を全く怖ろしく思っていないようだ。
「それで、君達やあの着物の男の子達は何者なんだい?」
「それは、ええっと」
外にいた人達と同様に、説明しても理解してもらえるかどうか怪しい。
勇気がそう思っていると、プーカが「大丈夫だと思うヨ」と言った。
「この人は、オイラを見ても驚かなかっただロ。全部話してもきっと分かってくれるはずだヨ」
「それは、確かにそうかも……」
調査隊のリーダーだけあって、外にいた人達とは違いどこか頼りになりそうな雰囲気があった。
もしかしたら、彼は
勇気は、フォード博士に、キユウとの出会いの事や怪狩りの事、
そして邪鬼の事などを手短に話した。
少年説明中……
「なるほど、そんな事があったのかい」
フォード博士は、戸惑いながらも、強い興味を抱いたようだ。
「それで勇気君。その邪鬼というのが私の仲間を連れ去ったという事なんだね」
「はい。その子が必要だと言って」
「その子と、パンドラの箱を使って、邪鬼はこの神殿で何かしようとしているという事か」
「この神殿は何なんですか?」
「それは分からない。だが、この浮上した大陸が何なのかは分かるよ」
フォード博士は、勇気達をじっと見つめた。
「ここは恐らく、『アトランティス大陸』だ」
「えええ!?」
「やっぱり海だったのね!」
ディアーナは予想通り、という顔をする。
勇気は、怪狩りを行う前から、その言葉を知っていた。
ある意味、最も有名な不可思議なものと言っても言い過ぎではない。
アトランティス大陸は、1万2千年前に存在した大陸の事である。
大陸には、高度な文明があり、そこに住む人々は、
現代よりも遥かに進んだ科学知識を持っていたという。
彼らは世界を支配していたが、ある日大陸が没し、滅んでしまったと言われている。
「私は長年、アトランティス大陸は実在すると思っていた。
まさか急に大陸が浮上するとは思わなかったがね」
フォード博士達は、浮上した大陸にある遺跡の中でも、最も神秘的だった、
この神殿のようなものがあるピラミッド状の建築物から調査する事にしたのだという。
「だけど、その調査を始めた途端、邪鬼に襲われてしまったんだよ」
「なんで?」
「気づかれたら困るかららしいよ」
結果、調査はほとんどできていないのだという。
「それで、邪鬼はどこに行ったんですか?」
神殿の中を捜したが、邪鬼も羽心もいなかった。
フォード博士はそれに答えるかのように、先ほどまで触っていた部屋の壁の方を指差した。
「邪鬼は私達を襲った後、パンドラの箱を持って、君の仲間を連れてこの部屋に入ったんだ。
私は慌てて追いかけたんだが、何故か消えてしまって」
「消えた?」
「私が部屋に入る直前、石が動く大きな音がした。
恐らく、この部屋のどこかに『隠し扉』があるはずだ」
フォード博士は、それを見つけ出そうと、壁を調べていたのだ。
「隠し扉……」
ディアーナは、部屋の壁を見た。
壁は他の部屋と同じように、白く、おかしなところはなさそうだ。
「隠し扉があるとすれば、何か手がかりがあるはずだと思うけど」
「私もそう思うんだが、全く分からなくてねえ」
勇気、ディアーナ、ジャネット、フォード博士は、壁を見回していく。
「う~ン、オイラにはさっぱり分からないゾ」
プーカも飛びながら天井などを探すものの、手がかりを見つける事ができない。
「早く羽心チャンを助けたいのニ」
プーカは、大きく息を吐いた。
「あ! これですね!」
「えっ?」
勇気はジャネットが見ている床を見る。
床の白いタイルの一枚に、うっすらと手形のような紋章が刻まれていた。
「これって、サラさんの城にもあった――」
「『選ばれし者の扉』です」
ジャネットは、フォード博士に手形の仕組みを伝えた。
「なるほど、邪鬼はそこに手をかざして、隠し扉を開けたんだな」
フォード博士は手形に手をかざした。
しかし、何の変化も起きない。
「どういう事だ?」
「扉は、特別な力を持つ者にしか開く事ができないんです」
サラの城の部屋は、サラ達王族の人間しか開ける事ができなかった。
そのため邪鬼は、サラの父である王を騙して、扉を開けさせたのだ。
「特別な力を持つ者か。だが、それなら何故邪鬼は開ける事ができたんだい?」
「それは……」
勇気が首を傾げていると、プーカが「分かっタ」と声を上げた。
「羽心チャンが開けたんだヨ!」
羽心は、特別な力を持っていた。
その力をここで利用するために、邪鬼は連れ去ったのかもしれない。
すると、フォード博士が勇気を見た。
「だったら、君でも開くんじゃないのかい」
「えっ、僕?」
「ああ、君はそのグローブを嵌めて、キユウという幽霊の男の子や、
後ろにいる女の子と、時空を超えて数々の怪狩りをしてきたんだろう。
君にも特別な力があると思うんだ」
「それは、確かにそうかもしれませんけど」
「勇気クン、手をかざしてみるんダ」
「えっ、あ、ああ」
勇気は戸惑いながらも、手形の上に手をかざしてみた。
瞬間……。
―ブウゥウン
光り輝いた。
勇気達の前にある床の一角が、次の瞬間、スーッと板が動くようにスライドし床に穴が開いた。
床の中には、下へと続く階段がある。
「隠し扉ね!」
ディアーナが興奮しながら言う。
「羽心だけじゃなくて、僕にも反応するなんて……」
この神殿は、勇気や羽心の持っている力に、何か関係があるのだろうか?
「勇気クン、ディアーナ、ジャネット、行ってみよウ」
「私も行くよ」
フォード博士が言う。
「この神殿の謎を解き明かしたいんだネ?」
「もちろんそれもある。だが、邪鬼は危険な少年だ。君達だけで行かせるわけにはいかない。
いざとなったら私も戦うよ」
フォード博士は真剣な顔つきで、勇気達にそう言った。
「フォード博士……」
フォード博士は、どことなくキユウに似ている。
勇気は、助けてくれようとしている気持ちを嬉しく思った。
「行こう!」
「はい!」
勇気達は、ゆっくりと階段を下りて行った。
~次回予告~
勇気、プーカ、ディアーナ、ジャネット、フォード博士は、
羽心と邪鬼を追うため、神殿の地下に行こうとする。
フォード博士によれば、ピラミッドではその地下にある部屋の方が重要らしい。
恐らくは地下の部屋こそが邪鬼の目的だという。
そんな地下に向かおうとした勇気達が遭遇したのは、もう一人の狼だった。