怪狩り ~ 人の絆と怪の決意   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

フォードと共に神殿を下りる途中、勇気達はもう一人の人狼と遭遇する。
アプリルの同胞を傷つけられないディアーナは、威嚇程度しかできなかった。
どうやら人狼は、(じゃき)を守ろうとしているらしい。
勇気は何としてでも神殿に辿り着くため、人狼の攻撃をかわしていくのだった。


5 - オベリスク

 勇気、ディアーナ、ジャネット、フォード博士は、懸命に階段を下り続けていた。

 すると、フォード博士が急に立ち止まった。

「狼男に噛まれた傷が痛むんですか?」

「いや、そうじゃない。あれを見るんだ」

 フォード博士は、前方をライトで照らした。

「あっ」

 階段が終わり、床が見える。

「底に着いたんだ!」

「待ってください!」

 勇気達は、一気に階段を駆け下りた。

 ジャネットとディアーナは、後から慎重に降りた。

―ボ、ボボボボ

 突然、底の空間が明るくなった。

 壁に取り付けられていた何本もの松明に火がついたのだ。

「邪鬼か!?」

 勇気は身構える。

 しかし、周りには誰もいなかった。

 穴の底は、真っ白な木が敷き詰められた円形の舞台のようになっていた。

 舞台の上には、いくつか白い柱が立っている。

「この柱は何なんだろう?」

 柱はボロボロになっていて、あちこち崩れている。

 だが、どの柱も何も支えていなかった。

 すると、フォード博士が口を開いた。

「これは、古代のエジプトでもよく作られていた『オベリスク』と同じようなものだろう」

「羽心が持っていたあの鈴はオシリスの鈴*1……あ、その、別に、何も考えていませんよ?

 で、何ですか、それは?」

「記念碑だよ。ここが何か神聖な場所である事を示しているんだろうね」

「神聖な場所……」

 勇気達は、オベリスクをじっと見つめる。

 見た事もない文字のようなものが刻まれている。

「アトランティスの文字だろう。私にも解読はできないが」

「邪鬼と羽心はどこにいるんだ?」

 三人は、改めて周りを見た。

「待ちなさい」

 ジャネットがそう言うと、階段に誰かが立っている。

 それは、狼男だ。

「追ってきたのか?」

 勇気が戸惑っていると、狼男はゆっくりと歩きながら、底の床に足をつけた。

 その目は、つぶったままだ。

 それにも関わらず、何故か勇気達の方に顔を向けた。

「見えてるのカ?」

「いえ……」

「傷つけたくないけど……仕方ない」

 勇気は落ちていたオベリスクの破片を拾うと、それを遠くに投げた。

―コツン

 音が響き、狼男がその方向を見る。

(やっぱり、音に反応した)

 勇気はそう思ったが、狼男はすぐに顔を勇気達の方へ向けた。

―ガルルルッ

 次の瞬間、牙を剥き出しにして吠えると、勇気の方へ向かって来た。

「どうして?」

「狼は、嗅覚が鋭いのよ……!」

 勇気達は慌ててその場から離れる。

 狼男は、立ち止まると、顔を何度か動かした。

「ソコダ」

 次の瞬間、狼男は勇気の方に顔を向けると、再び走って来た。

「待て!!」

 その時、勇気の目の前に四人の人物がやってきた。

 アプリル、ノノ、チェイニー、そして愛衣である。

 彼らはジャネットの作戦で、この大陸に忍び込んだのだ。

「間に合いましたね!」

「ここは俺達が食い止める! お前らは先に行ってろ!」

「……うん!」

 アプリルは狼男の前に仁王立ちする。

 勇気達は頷いた後、大急ぎで先に進んでいった。

 

「ソコダ」

 狼男は高速で行動し、狙いを定め強烈な一撃をアプリルに放とうとした。

「させぬ!」

 チェイニーは血液から盾を生成し、身を挺してアプリルを庇った。

 ここは狭いので、なかなか動けないが、それでもチェイニーは仲間を守る事ができた。

「♪~♪~♪~」

「このクリーチャーを召喚します!」

 ノノは歌声で狼男の動きを鈍らせ、その隙に愛衣は魔物を召喚するが、

 魔物はあらぬ方向に飛んで行ってしまう。

「アプリル様!」

「くそ、かわしやがって!」

 アプリルの爪が、狼男を切り裂く。

 チェイニーは血液からナイフを作り、狼男に投げつけるが、かわされる。

「そうはいきません!」

 しかし、愛衣がカードから魔物を召喚し、飛んできたナイフをキャッチして狼男に突き刺した。

「♪~♪~♪~」

 ノノの歌は狼男には効果がなく、狼男は愛衣に向かって突進する。

 チェイニーは血液で盾を作り、愛衣を庇った。

「無事か、小娘!」

「ああぁ、アプリル様がよかったです……」

 アプリルに守ってもらえず愛衣は泣きそうになる。

 明らかに嘘泣きだったが、アプリルは女性の頼みを放っておくわけにはいかない。

「女の子を傷つける奴ぁ、俺が許さねぇ!」

 そう言って、アプリルは気合を入れ、狼男を思いっきり殴り、戦闘不能にした。

「……同族を殴るのは気分が良くないけどな」

 アプリルが悪態をつくと、突然、彼の身体がぐらつく。

 戦いすぎて、疲れてしまったようだ。

「はぁっ……はぁっ……」

 チェイニー、ノノ、愛衣も疲労から倒れ伏す。

 相手が中ボスで、しかもタフだった事が災いしたのだろうか。

 

「……どうやら、俺達が行けるのはここまでだ」

「後は頼んだぞ……!」

 

「何とか逃げられましたね」

「そうだな。……私はこれがある限り、そう簡単には大怪我はしないからね」

 フォード博士はそう言うと、首から下げていたペンダントを勇気に見せた。

「これは?」

「子供の頃、考古学者をしていた人に貰ったんだ。その人は、世界中を旅していてね。

 私の住んでいた町にもしばらく調査で滞在していて、仲良くなったんだ。

 これは、その人が町を去る時、私にくれたんだ」

 ペンダントは、太陽と月と星のマークが刻まれていた。

「これって!」

「これは『奇跡のペンダント』と言って、

 持ち主に危機が迫った時、奇跡を起こして助けてくれるらしい。

 まあ、本当にそんな力があるとは思っていないがね」

「奇跡のペンダント……」

「勇気クン、どうしてこのマークが?」

「それは分からないけど。フォード博士、これは誰にもらったんですか?」

「私の憧れの考古学者だよ」

 フォード博士はそう言いながら、何かを思い出した。

「そう言えば、君を怪狩りに誘った幽霊の少年はキユウと言ったね。

 私が憧れていたその人も同じ名前だったよ」

「えっ?」

「その人の名は、真之喜優というんだ」

「真之……」

 勇気は、目を大きく見開いた。

「それって、僕と同じ苗字です!」

「何だって?」

「もしかして、勇気クンのお父さんって事かイ?」

 プーカが尋ねると、勇気は首を大きく横に振った。

「お父さんは考古学者だったけど、名前は『力』だよ。

 大体、フォード博士が子供の頃に出会ったのなら、何十年も前って事だよね?」

 勇気は、「う~ん」と唸った。

 そんな勇気を見て、フォード博士は優しい笑みを見せた。

「よく分からないが、どうやらこれは、君が持っていた方がいいようだね」

「は、はい」

 フォード博士は、奇跡のペンダントを勇気に差し出す。

 勇気は戸惑いながらも、それを受け取った。

「喜優と、キユウ……」

 ペンダントをじっと見つめながら、勇気はそう呟いた。

 その時……。

―ブウゥウン

 周りに立っているオベリスクが、光り輝いた。

*1
※「遊戯王」のモンスター「オベリスクの巨神兵」「オシリスの天空竜」「ラーの翼神竜」。




~次回予告~

地下に辿り着いた勇気達を待っていたのは、邪鬼と彼に捕らえられた羽心だった。
どうやら邪鬼は、パンドラの箱と三つのグローブを使ってある事をしようとしているらしい。
そんな事は絶対にさせないと勇気達は決意するが……。
一方、地下には、あの四人の盗賊も潜入していたのだった。
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