フォードと共に神殿を下りる途中、勇気達はもう一人の人狼と遭遇する。
アプリルの同胞を傷つけられないディアーナは、威嚇程度しかできなかった。
どうやら人狼は、
勇気は何としてでも神殿に辿り着くため、人狼の攻撃をかわしていくのだった。
勇気、ディアーナ、ジャネット、フォード博士は、懸命に階段を下り続けていた。
すると、フォード博士が急に立ち止まった。
「狼男に噛まれた傷が痛むんですか?」
「いや、そうじゃない。あれを見るんだ」
フォード博士は、前方をライトで照らした。
「あっ」
階段が終わり、床が見える。
「底に着いたんだ!」
「待ってください!」
勇気達は、一気に階段を駆け下りた。
ジャネットとディアーナは、後から慎重に降りた。
―ボ、ボボボボ
突然、底の空間が明るくなった。
壁に取り付けられていた何本もの松明に火がついたのだ。
「邪鬼か!?」
勇気は身構える。
しかし、周りには誰もいなかった。
穴の底は、真っ白な木が敷き詰められた円形の舞台のようになっていた。
舞台の上には、いくつか白い柱が立っている。
「この柱は何なんだろう?」
柱はボロボロになっていて、あちこち崩れている。
だが、どの柱も何も支えていなかった。
すると、フォード博士が口を開いた。
「これは、古代のエジプトでもよく作られていた『オベリスク』と同じようなものだろう」
「羽心が持っていたあの鈴はオシリスの鈴*1……あ、その、別に、何も考えていませんよ?
で、何ですか、それは?」
「記念碑だよ。ここが何か神聖な場所である事を示しているんだろうね」
「神聖な場所……」
勇気達は、オベリスクをじっと見つめる。
見た事もない文字のようなものが刻まれている。
「アトランティスの文字だろう。私にも解読はできないが」
「邪鬼と羽心はどこにいるんだ?」
三人は、改めて周りを見た。
「待ちなさい」
ジャネットがそう言うと、階段に誰かが立っている。
それは、狼男だ。
「追ってきたのか?」
勇気が戸惑っていると、狼男はゆっくりと歩きながら、底の床に足をつけた。
その目は、つぶったままだ。
それにも関わらず、何故か勇気達の方に顔を向けた。
「見えてるのカ?」
「いえ……」
「傷つけたくないけど……仕方ない」
勇気は落ちていたオベリスクの破片を拾うと、それを遠くに投げた。
―コツン
音が響き、狼男がその方向を見る。
(やっぱり、音に反応した)
勇気はそう思ったが、狼男はすぐに顔を勇気達の方へ向けた。
―ガルルルッ
次の瞬間、牙を剥き出しにして吠えると、勇気の方へ向かって来た。
「どうして?」
「狼は、嗅覚が鋭いのよ……!」
勇気達は慌ててその場から離れる。
狼男は、立ち止まると、顔を何度か動かした。
「ソコダ」
次の瞬間、狼男は勇気の方に顔を向けると、再び走って来た。
「待て!!」
その時、勇気の目の前に四人の人物がやってきた。
アプリル、ノノ、チェイニー、そして愛衣である。
彼らはジャネットの作戦で、この大陸に忍び込んだのだ。
「間に合いましたね!」
「ここは俺達が食い止める! お前らは先に行ってろ!」
「……うん!」
アプリルは狼男の前に仁王立ちする。
勇気達は頷いた後、大急ぎで先に進んでいった。
「ソコダ」
狼男は高速で行動し、狙いを定め強烈な一撃をアプリルに放とうとした。
「させぬ!」
チェイニーは血液から盾を生成し、身を挺してアプリルを庇った。
ここは狭いので、なかなか動けないが、それでもチェイニーは仲間を守る事ができた。
「♪~♪~♪~」
「このクリーチャーを召喚します!」
ノノは歌声で狼男の動きを鈍らせ、その隙に愛衣は魔物を召喚するが、
魔物はあらぬ方向に飛んで行ってしまう。
「アプリル様!」
「くそ、かわしやがって!」
アプリルの爪が、狼男を切り裂く。
チェイニーは血液からナイフを作り、狼男に投げつけるが、かわされる。
「そうはいきません!」
しかし、愛衣がカードから魔物を召喚し、飛んできたナイフをキャッチして狼男に突き刺した。
「♪~♪~♪~」
ノノの歌は狼男には効果がなく、狼男は愛衣に向かって突進する。
チェイニーは血液で盾を作り、愛衣を庇った。
「無事か、小娘!」
「ああぁ、アプリル様がよかったです……」
アプリルに守ってもらえず愛衣は泣きそうになる。
明らかに嘘泣きだったが、アプリルは女性の頼みを放っておくわけにはいかない。
「女の子を傷つける奴ぁ、俺が許さねぇ!」
そう言って、アプリルは気合を入れ、狼男を思いっきり殴り、戦闘不能にした。
「……同族を殴るのは気分が良くないけどな」
アプリルが悪態をつくと、突然、彼の身体がぐらつく。
戦いすぎて、疲れてしまったようだ。
「はぁっ……はぁっ……」
チェイニー、ノノ、愛衣も疲労から倒れ伏す。
相手が中ボスで、しかもタフだった事が災いしたのだろうか。
「……どうやら、俺達が行けるのはここまでだ」
「後は頼んだぞ……!」
「何とか逃げられましたね」
「そうだな。……私はこれがある限り、そう簡単には大怪我はしないからね」
フォード博士はそう言うと、首から下げていたペンダントを勇気に見せた。
「これは?」
「子供の頃、考古学者をしていた人に貰ったんだ。その人は、世界中を旅していてね。
私の住んでいた町にもしばらく調査で滞在していて、仲良くなったんだ。
これは、その人が町を去る時、私にくれたんだ」
ペンダントは、太陽と月と星のマークが刻まれていた。
「これって!」
「これは『奇跡のペンダント』と言って、
持ち主に危機が迫った時、奇跡を起こして助けてくれるらしい。
まあ、本当にそんな力があるとは思っていないがね」
「奇跡のペンダント……」
「勇気クン、どうしてこのマークが?」
「それは分からないけど。フォード博士、これは誰にもらったんですか?」
「私の憧れの考古学者だよ」
フォード博士はそう言いながら、何かを思い出した。
「そう言えば、君を怪狩りに誘った幽霊の少年はキユウと言ったね。
私が憧れていたその人も同じ名前だったよ」
「えっ?」
「その人の名は、真之喜優というんだ」
「真之……」
勇気は、目を大きく見開いた。
「それって、僕と同じ苗字です!」
「何だって?」
「もしかして、勇気クンのお父さんって事かイ?」
プーカが尋ねると、勇気は首を大きく横に振った。
「お父さんは考古学者だったけど、名前は『力』だよ。
大体、フォード博士が子供の頃に出会ったのなら、何十年も前って事だよね?」
勇気は、「う~ん」と唸った。
そんな勇気を見て、フォード博士は優しい笑みを見せた。
「よく分からないが、どうやらこれは、君が持っていた方がいいようだね」
「は、はい」
フォード博士は、奇跡のペンダントを勇気に差し出す。
勇気は戸惑いながらも、それを受け取った。
「喜優と、キユウ……」
ペンダントをじっと見つめながら、勇気はそう呟いた。
その時……。
―ブウゥウン
周りに立っているオベリスクが、光り輝いた。
~次回予告~
地下に辿り着いた勇気達を待っていたのは、邪鬼と彼に捕らえられた羽心だった。
どうやら邪鬼は、パンドラの箱と三つのグローブを使ってある事をしようとしているらしい。
そんな事は絶対にさせないと勇気達は決意するが……。
一方、地下には、あの四人の盗賊も潜入していたのだった。