怪狩り ~ 人の絆と怪の決意   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

羽心はミス池に潜む怪獣「ミッシー」を捕まえるため、スコップを持って公園に向かった。
しかし、羽心に戦う力はなく、このままでは羽心はネッシーに襲われてしまう。
それを阻止するため、勇気は急いで書斎に向かい、キユウとディアーナと合流するのだった。


4 - ネス湖へ

「やっぱり、夢じゃなかったんだ!」

 勇気は短い階段を下りると、書斎の中に駆け込んだ。

 キユウは存在し、ディアーナもいる。

 彼の身体はほんの少しだけ浮いていた。

「キユウ、ディアーナ、今までどこにいたんだよ!」

「僕も色々忙しいからね」

「だけど、この町にまた現れたのよ」

「やっぱり! さっきの地鳴りの事だよね?」

「ああ、あの羽心という子は勘が鋭いようだね。あれは、ネッシーの鳴き声だ」

「ネッシー? それって偽物だったんでしょ?」

「それは、調べたばかりよ」

「勇気も、夢の中で見たはずだよ」

「えっ?」

 勇気は今朝、学校で見た夢を思い出した。

 大きな湖の傍の森で、木々を倒して巨大な影が現れた。

 巨大な影は、グゴオオォォォと咆哮しながら、勇気に襲いかかってきた。

「もしかして、あれが……ネッシー?」

 勇気の言葉に、キユウは小さく頷いた。

「勇気の見る夢には、特別な力があるからね」

「ど、どういう事?」

「それはまあ、いつかちゃんと話すよ。それより、彼女達、大丈夫かな?」

「「あっ」」

 それを聞き、勇気とディアーナは声を上げた。

「羽心達がミス池に行っちゃったよ? ネッシーがいるんだよね?」

「今はまだ、ネッシーはこの町には現れていない。

 だけど、放っておいたら、今夜中にネッシーがこの町へ抜け出してくる可能性が高い。

 罅は、かなり大きくなっているからね」

「それじゃあ、羽心達が!」

「大変な事になるかもって言っただろう。まあ、襲われるだけならまだマシかもね。

 ネッシーは肉食だから、食べられるかもしれないね」

「そんなの絶対駄目だ!」

「当然よ!」

 勇気とディアーナは羽心達を止めるために、部屋を飛び出そうとした。

「彼女達を止めるだけでは、何も解決しないよ――」

「えっ?」

 勇気とディアーナは思わず立ち止まり、キユウの方を見る。

 キユウは真剣な表情をしていた。

「ネッシーがこの町に現れたら、大勢の人達が襲われる事になる。

 だから今、君達がやるべき事は、彼女達を止める事じゃない」

 キユウはそう言うと、グローブを嵌めた左手で棚を指差した。

 そこには、懐中電灯が置かれていた。

「まさか、また……?」

「そう、そのまさかだよ。

 ほらっ、勇気、懐中電灯を持って、右手にグローブを嵌めるんだ」

「お願いね」

「さあ、怪を倒しに行くよ。……怪狩りの時間だ!」

 キユウは、グローブを嵌めた左手を傍の壁の前にかざし、呪文を発した。

時空貫通(カオス・ゲート)

 螺旋状に風が吹き、壁に光が渦巻く。

 その渦が大きくなっていき、激しく輝いた。

 次の瞬間、壁に大きな渦の穴ができた。

「行くぞ。懐中電灯と靴を忘れないようにね」

「ネッシーと戦うわよ! ディアーナ号、出陣!」

 キユウとディアーナが渦の中に飛び込む。

「あ、ちょっと待ってよ!」

 相変わらず、キユウは何でも勝手に決めてしまうし、ディアーナは突っ走る。

「もー、何なんだよ……」

 勇気は文句を言いながらも、グローブを嵌めると、懐中電灯と靴を手に取った。

 勇気が恐る恐る穴に近づくと、吸い込まれるように、穴の中に入った。

 

「わああああ!」

 勇気は、光のトンネルを手足をばたつかせながら飛んでいた。

 ディアーナは風を纏いながら飛んでいる。

「うわああ! うわあ! わあああああ!!」

 やがて、光のトンネルの奥に森が見えてきた。

 勇気は勢いよく地面に倒れ、ディアーナはふわりと着地する。

 地面は緩やかな斜面になっていて、勇気はそのまま傍に立っていた木の根元まで転がる。

 その根元に頭を思いっきり打ち付けた。

「いたたた」

 前回もいきなり地面に落ちて、痛い思いをした。

「もうちょっとマシなところに出口作ってよ!」

 勇気は、目の前で涼しそうな顔で宙に浮いているキユウに文句を言った。

「それは贅沢な注文だね」

「贅沢って、もう少し安全性を……」

「待って」

 勇気はふと、周りが木々に囲まれた森である事に気づいた。

 夜、空には月が見えている。

「ここは……?」

 夢で見たあの湖に似ている。

「ここは、1934年のネス湖だよ」

「えええ??」

 勇気は立ち上がると、ディアーナと共に周りを見た。

 森の向こうに、月明かりに照らされた湖が見える。

「ネス湖って事は、イギリスって事?」

「へえ、よく知ってるじゃないか。タダで海外旅行に来られてよかったね」

「全然よくないよ!」

「というより、1934年に撮られた写真は偽物だったんでしょう?」

「ああ、その可能性が高い。だけど、当時多くの人がネッシーを目撃したと言っているんだ。

 そして、今ここには、あの罅がある」

「罅が? じゃあ近くにネッシー……」

「ネッシーだと?」

 突然、真っ暗な森の奥から声がした。

「だ、誰?」

 勇気は慌てて持っていた懐中電灯をつけると、森の奥を照らした。

 ディアーナには暗視能力があるので、問題ない。

「うわっ、何だ??」

「眩しい! やめろ!!」

 そこに立っていたのは、三人の大人の男達だ。

「おい、やめろって言うのが分からねえのか!」

 大柄な男が勇気とディアーナを睨むと、持っていた猟銃を二人に向かって構えた。

 ディアーナは双剣を抜いて、反撃しようとした。




~次回予告~

イギリスのネス湖で勇気達が出会ったのは、ネッシーを狙うハンターだった。
ネッシーを捕まえれば、大金が手に入るという。
彼らの欲深さを見たディアーナは、ただ、蔑むしかないのであった。
こんな調子で、勇気達はネッシーを倒せるのだろうか……。
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