羽心はミス池に潜む怪獣「ミッシー」を捕まえるため、スコップを持って公園に向かった。
しかし、羽心に戦う力はなく、このままでは羽心はネッシーに襲われてしまう。
それを阻止するため、勇気は急いで書斎に向かい、キユウとディアーナと合流するのだった。
「やっぱり、夢じゃなかったんだ!」
勇気は短い階段を下りると、書斎の中に駆け込んだ。
キユウは存在し、ディアーナもいる。
彼の身体はほんの少しだけ浮いていた。
「キユウ、ディアーナ、今までどこにいたんだよ!」
「僕も色々忙しいからね」
「だけど、この町にまた現れたのよ」
「やっぱり! さっきの地鳴りの事だよね?」
「ああ、あの羽心という子は勘が鋭いようだね。あれは、ネッシーの鳴き声だ」
「ネッシー? それって偽物だったんでしょ?」
「それは、調べたばかりよ」
「勇気も、夢の中で見たはずだよ」
「えっ?」
勇気は今朝、学校で見た夢を思い出した。
大きな湖の傍の森で、木々を倒して巨大な影が現れた。
巨大な影は、グゴオオォォォと咆哮しながら、勇気に襲いかかってきた。
「もしかして、あれが……ネッシー?」
勇気の言葉に、キユウは小さく頷いた。
「勇気の見る夢には、特別な力があるからね」
「ど、どういう事?」
「それはまあ、いつかちゃんと話すよ。それより、彼女達、大丈夫かな?」
「「あっ」」
それを聞き、勇気とディアーナは声を上げた。
「羽心達がミス池に行っちゃったよ? ネッシーがいるんだよね?」
「今はまだ、ネッシーはこの町には現れていない。
だけど、放っておいたら、今夜中にネッシーがこの町へ抜け出してくる可能性が高い。
罅は、かなり大きくなっているからね」
「それじゃあ、羽心達が!」
「大変な事になるかもって言っただろう。まあ、襲われるだけならまだマシかもね。
ネッシーは肉食だから、食べられるかもしれないね」
「そんなの絶対駄目だ!」
「当然よ!」
勇気とディアーナは羽心達を止めるために、部屋を飛び出そうとした。
「彼女達を止めるだけでは、何も解決しないよ――」
「えっ?」
勇気とディアーナは思わず立ち止まり、キユウの方を見る。
キユウは真剣な表情をしていた。
「ネッシーがこの町に現れたら、大勢の人達が襲われる事になる。
だから今、君達がやるべき事は、彼女達を止める事じゃない」
キユウはそう言うと、グローブを嵌めた左手で棚を指差した。
そこには、懐中電灯が置かれていた。
「まさか、また……?」
「そう、そのまさかだよ。
ほらっ、勇気、懐中電灯を持って、右手にグローブを嵌めるんだ」
「お願いね」
「さあ、怪を倒しに行くよ。……怪狩りの時間だ!」
キユウは、グローブを嵌めた左手を傍の壁の前にかざし、呪文を発した。
「
螺旋状に風が吹き、壁に光が渦巻く。
その渦が大きくなっていき、激しく輝いた。
次の瞬間、壁に大きな渦の穴ができた。
「行くぞ。懐中電灯と靴を忘れないようにね」
「ネッシーと戦うわよ! ディアーナ号、出陣!」
キユウとディアーナが渦の中に飛び込む。
「あ、ちょっと待ってよ!」
相変わらず、キユウは何でも勝手に決めてしまうし、ディアーナは突っ走る。
「もー、何なんだよ……」
勇気は文句を言いながらも、グローブを嵌めると、懐中電灯と靴を手に取った。
勇気が恐る恐る穴に近づくと、吸い込まれるように、穴の中に入った。
「わああああ!」
勇気は、光のトンネルを手足をばたつかせながら飛んでいた。
ディアーナは風を纏いながら飛んでいる。
「うわああ! うわあ! わあああああ!!」
やがて、光のトンネルの奥に森が見えてきた。
勇気は勢いよく地面に倒れ、ディアーナはふわりと着地する。
地面は緩やかな斜面になっていて、勇気はそのまま傍に立っていた木の根元まで転がる。
その根元に頭を思いっきり打ち付けた。
「いたたた」
前回もいきなり地面に落ちて、痛い思いをした。
「もうちょっとマシなところに出口作ってよ!」
勇気は、目の前で涼しそうな顔で宙に浮いているキユウに文句を言った。
「それは贅沢な注文だね」
「贅沢って、もう少し安全性を……」
「待って」
勇気はふと、周りが木々に囲まれた森である事に気づいた。
夜、空には月が見えている。
「ここは……?」
夢で見たあの湖に似ている。
「ここは、1934年のネス湖だよ」
「えええ??」
勇気は立ち上がると、ディアーナと共に周りを見た。
森の向こうに、月明かりに照らされた湖が見える。
「ネス湖って事は、イギリスって事?」
「へえ、よく知ってるじゃないか。タダで海外旅行に来られてよかったね」
「全然よくないよ!」
「というより、1934年に撮られた写真は偽物だったんでしょう?」
「ああ、その可能性が高い。だけど、当時多くの人がネッシーを目撃したと言っているんだ。
そして、今ここには、あの罅がある」
「罅が? じゃあ近くにネッシー……」
「ネッシーだと?」
突然、真っ暗な森の奥から声がした。
「だ、誰?」
勇気は慌てて持っていた懐中電灯をつけると、森の奥を照らした。
ディアーナには暗視能力があるので、問題ない。
「うわっ、何だ??」
「眩しい! やめろ!!」
そこに立っていたのは、三人の大人の男達だ。
「おい、やめろって言うのが分からねえのか!」
大柄な男が勇気とディアーナを睨むと、持っていた猟銃を二人に向かって構えた。
ディアーナは双剣を抜いて、反撃しようとした。
~次回予告~
イギリスのネス湖で勇気達が出会ったのは、ネッシーを狙うハンターだった。
ネッシーを捕まえれば、大金が手に入るという。
彼らの欲深さを見たディアーナは、ただ、蔑むしかないのであった。
こんな調子で、勇気達はネッシーを倒せるのだろうか……。