怪狩り ~ 人の絆と怪の決意   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

ディアーナは奇跡のペンダントの力を使い、邪鬼から勇気達を助ける。
その後、勇気達は自宅に帰還するが、今までの出来事は知らざる者(アンノウンマン)は忘れていた。
勇気はその出来事を夢だと思っていたが、書斎でキユウと再会する。
キユウの本名は真之喜優、邪鬼の本名は真之力、
そしてディアーナはジャネット――ジャンヌ・ダルクが召喚したラーの勇者だった。
父が悪に堕ちた理由、羽心が特殊能力を持つ理由……今、全ての謎が、明かされようとしていた。


episode7 - Last Battle ~ 邪鬼を追え!
1 - 聖女と勇者と邪鬼の行方


「ジャンヌ・ダルク……邪鬼は最後に、そう言ってた……。

 ジャネットは、本当にジャンヌ・ダルクなんだね?」

「……とうとうバレてしまいましたね」

 勇気は、父親――真之力の本に、彼女が書いてあったのを思い出す。

 

 ジャンヌ・ダルク(1412~1431)は、フランスのドンレミ村で生まれた羊飼いである。

 14~15世紀、イギリスとフランスで長きに渡る戦争「百年戦争」が行われていた。

 戦争後期、ジャンヌ・ダルクが挙兵し、オルレアンを含め劣勢のフランスを救った。

 だが、イギリスの裏切りにより魔女として火刑にされた。

 後に彼女が聖女として祀られる事になったのは、遠い未来の話である。

 

「ジャネットがそんな素晴らしい人だなんて、全然知らなかったよ。

 それで、話は変わるけど、ラーの勇者って何?」

「妖精族に伝わる伝承を聞いたでしょ? 実は、アレには続きがあったのよね」

 ディアーナは、コティングリーの森で聞いた、あの伝承をもう一度語った。

 

 かつて、「異能」と呼ばれる力を持った人間のある家族が、

 妖精族の王からいくつかのグローブをもらった。

 彼らはそのグローブを嵌め、怪と人間に災いをなす邪悪な者と戦い、

 そしてこの世界を救った。

 

「ここまでは分かるけど、その続きって?」

「えっとね……」

 

 邪悪な者と戦ったのは、家族だけではなかった。

 異世界より降臨せし太陽の加護を受けた勇者も、人間の家族と共に邪悪な者を打ち払った。

 ある者は融合の力、ある者は共鳴の力を使った。

 そして遠い未来、両手に剣と魔法を携えた勇者が、聖女によって降臨するだろう。

 

「その勇者が、邪鬼の言っていた『ラーの勇者』なんだね。

 両手の剣と魔法……ディアーナとそっくりだ」

「現代に召喚される事はあり得ないと思ったけど、あったのよね」

 そのせいで能力は元の世界より落ちたんだけど、とディアーナはぼやいた。

 

「そして……キユウが、僕のおじいちゃんで、邪鬼が、お父さん……」

 勇気はついにキユウと邪鬼の正体を知った。

 そんな事は、信じられなかった。

 もし、父親だとしたら、何故人々を苦しめようとしているのだろうか?

 そこへ、羽心とプーカがやって来た。

 先程、勇気は何かを思い出して突然駆け出した。

 二人はそれが気になって追いかけて来たのだ。

 

「勇気、どうしたの??」

 羽心は呆然としている勇気が気になる。

 と、書斎の窓際に、一人の少年が立っている事に気づいた。

「ええっと、あの人は……」

 赤髪に、鋭い目をした少年。

 羽心は、その少年を見てハッとする。

「もしかして、キユウさん?」

 その問いに、キユウは優しい笑みを浮かべながら、小さく頷いた。

「こうやって会うのは初めてだね。勇気の祖父の真之喜優だよ」

 キユウは、奇跡のペンダントのおかげで復活できた事を羽心に話す。

「そうなのね。よかった……。私、あんな事をして、ずっと悩んでたの」

 羽心は、邪鬼に騙され、幽霊を消滅させる事ができる「オシリスの鈴」を振ってしまった。

 そのせいで、キユウは消えてしまったのだ。

「あれは君のせいじゃない。だから気にしなくていいよ」

「キユウさん……」

 微笑むキユウに、羽心は何だか救われたような気がした。

「流石、勇気のおじいちゃんね。え? おじいちゃん??」

 キユウは、自分の正体が勇気の祖父・真之喜優である事を改めて説明した。

 その言葉の意味にようやく気付いた羽心は、目をパチクリさせる。

 

「つまりキユウさんは、勇気のおじいちゃんの幽霊って事?」

「その通り。まあ、見た目は君達と変わらない少年の姿をしているけどね」

 キユウはそう言いながら、ディアーナの肩の上辺りに目をやった。

「ところで、君は誰なんだい?」

 そこには、プーカが浮かんでいた。

「オイラはプーカ。妖精族の王子だゾ」

「私はジャネット・ディ・アルクと申します」

「キユウがいなくなった後、あたしと同じように勇気の仲間になったの」

 ディアーナは、勇気達に連れられて、様々な時代で怪狩りをした事や、

 邪鬼にパンドラの箱を奪われ、

 自身が海と言ったアトランティス大陸の神殿に行った事などを話した。

 

 上妖精説明中……

 

「そうか、そんな事があったんだね」

「まあ、オイラが大活躍して、何とかなったけどネ」

「私もですよ」

「ありがとう、流石、王子に聖女。とっても頼りになるんだね」

「いやア。えへへ~」

「どういたしまして」

 プーカはキユウに褒められ、嬉しそうに笑った。

 ジャネットはキユウに丁寧にお辞儀をした。

 

「だけど、パンドラの箱が邪鬼の手に渡ってしまったとはね」

「ええ……」

 キユウとジャネットは、苦々しい表情を浮かべた。

「キユウさん、あの箱の事、知ってるの?」

「ああ、あれは危険な物だ。今度こそ取り返さないと。恐らく、今も邪鬼が持っているだろう」

 キユウは、勇気とディアーナを見た。

「勇気、月のグローブを渡すんだ。そして、ディアーナにはこのカードを渡す」

「えっ?」

「早くグローブを」

「え、あ、ああ」

 勇気は戸惑いながらも、ポケットから月のグローブを取り出し、差し出した。

 キユウは、白い渦を巻いた光が描かれた緑のカードをディアーナに渡す。

「これは……?」

「いざという時に役に立つ時が来る。勇気、羽心……君達もグローブを嵌めて。

 靴も用意するんだよ」

 キユウはグローブを左手に嵌めると、傍の壁の前にかざし、呪文を唱えた。

 

「時空貫通(カオス・ゲート)」

 

 壁に光が渦巻き、螺旋状に風が舞う。

 その渦が大きくなって、壁に大きな光り輝く渦ができる。

 時のトンネルだ。

 

「さあ、行こう」

「はい!」

 キユウとジャネットが、光の渦の中に消えた。

「あ、ちょっと!」

 勇気には、訳が分からないようだ。

「どこに行くつもりなんだよ??」

「勇気、よく分からないけど、ここにいても仕方がないわ」

「そうだネ。行くしかないみたいだゾ」

「あたしは勇者だから、前に進むしかないわ」

「あ、ああ」

 勇気と羽心は、靴を用意すると、それぞれ太陽と星のグローブを嵌める。

 ディアーナも、レイピアとダガー、冒険者セットで武装し、

 キユウからもらったカードをベルトポーチにしまった。

 プーカも、羽心の肩にしがみついた。

 四人は、キユウとジャネットを追って、光の渦の中に飛び込んだ。

 

「んんんん!」

 光のトンネルの中を飛んでいく。

 それでも、勇気は耐え続ける。

 目が回り、頭が回り、何度飛んでも慣れる事はない。

 やがて、光のトンネルの奥に、何かが見えてきた。

 

―スタッ

 時のトンネルから出た勇気達は、地面に着地した。

「ここは?」

 周りを木々に囲まれた森の中のようだ。

 森の向こうに、湖が見えている。

「どこかで見たような……」

 勇気がそう思っていると、前方で宙に浮いているキユウが口を開いた。

「ここは、1934年のネス湖だよ」

「えええ??」

 勇気は驚き声を上げる。

 だがそれよりも大きな声を上げたのは、羽心だった。

「ネス湖って、あのネッシー伝説があるところよね!?」

「……うるさいわねぇ」

 羽心は草木を掻き分け、湖を凝視する。

 ディアーナとジャネットは呆れている。

「ネッシーは獰猛な奴だゾ。気を付けるんダ」

「食べられても私は責任を取りませんよ? 何しろ最上級*1ですからね」

 プーカは羽心の肩に強くしがみつき、警戒した。

 ジャネットは自己責任だ、と羽心に警告した。

 そんな羽心達を、キユウは不思議そうに見つめた。

「プーカはともかく、羽心ちゃんまでどうやって時のトンネルを?」

 そう言いながらふと、キユウは羽心の嵌めているグローブを見た。

「それは、もしかして星のグローブじゃ?」

「そっか、さっき話した時、このグローブの事は言ってなかったわね」

「星のグローブは妖精族の王様が作った物で、オイラが持ってたんダ」

 羽心とプーカは、キユウにその事を詳しく話した。

 

 少女&妖精説明中……

 

「なるほど、プーカは妖精だものね。まさか、グローブが三つ揃うなんて」

「キユウ、星のグローブの事も知ってたの?」

「ああ、どこにあるかまでは知らなかったけどね。てっきり邪鬼が持っていると思っていたよ」

 キユウは、星のグローブを見て、笑みを浮かべた。

 

「太陽と月、そして星。三つのグローブと、ラーの勇者の力があれば、

 邪鬼を見つけるだけではなく、倒す事ができる」

 

「久しぶりの赤文字ね」

「え、そうなの?」

「オイラ、そんな事知らないゾ?」

「大昔の事だからね。妖精族の王様は、邪鬼を倒すために三つのグローブを作ったんだ」

「大昔? それってどういう事?」

「あたしがいた時代かしら。

 でも、あたしはまだ、そんなに生きてないし、ジャネットは600年くらい前の人だし……」

 勇気はその言葉に引っかかり、ディアーナは推理する。

 まるで、大昔にも邪鬼がいたような言い方だったのだ。

 だが、キユウはそれについて何も答えなかった。

 代わりに、湖の方に顔を向けると、目を瞑った。

 意識を集中させているようだ。

 やがて、ゆっくりと目を開く。

「ここにはいないようだね」

「いないって、ネッシーの事? それはもう、僕達が倒したよね?」

 勇気はかつてキユウとディアーナと共に、

 時のトンネルを使ってこの場所に来て、ネッシーを倒したのだ。

 すると、キユウは首を横に振った。

「ネッシーじゃないよ。邪鬼だ」

「邪鬼?」

「邪鬼は、奇跡のペンダントの光によって、大きなダメージを受けた。

 その傷を回復するために、怪のいた時代に逃げているんだ。今が倒せるチャンスなんだ」

 キユウは、周りを見回す。

「ここにも邪鬼の気配がかすかに残ってる。だけど、残念ながら既に逃げた後のようだね」

 邪鬼は、傷を回復させながら、様々な時代を移動しているらしい。

 キユウは浮かびながら、近くの木に近づいた。

「次の時代に行こう」

 キユウはグローブを嵌めた左手をかざし、呪文を唱えた。

 空間に、時のトンネルができる。

 光の渦の中に、キユウとジャネットは勢いよく飛び込んだ。

 

「ちょっと、キユウ!」

 聞きたい事が山ほどあるが、キユウは止まってくれない。

 勇気達は再びキユウとジャネットを追うように、時のトンネルに飛び込んだ。

 ディアーナは時のトンネルの中で、キユウが渡したカードを思い出そうとした。

 すると、彼女の頭の中に、何かが浮かび上がった。

 

(もしかして、あのカード……世界で一番上手く融合を使いこなしたとされる、

 あの子が使ったカードじゃ……)

*1:
未界域のネッシーはレベル7モンスター。




~次回予告~

邪鬼を追いかけるため、勇気達は時のトンネルをくぐって様々な時代に向かった。
勇気達が今までに向かった場所を、おさらいのように回る一行。
しかし、邪鬼の姿はどこにも見当たらなかった。
さらに、キユウが邪鬼の本当の正体を勇気達に明かすのだった。
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