怪狩り ~ 人の絆と怪の決意   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

邪鬼の真の正体は、人々の負の感情によって生まれた怪だった。
人間を憎悪する邪鬼は、人間を恐怖に陥れようと勇気の父に取り憑いた。
ツチノコ、ファフロツキーズ、コティングリーの森、
人魚の時にディアーナ達が見た負の感情は、間違いではなかったのだ。
ディアーナはキユウから授かった超融合のカードを使い、邪鬼を止めようとするのだった。
そして、勇気達も彼女と同じように、勇気の父を救うために戦う決意を固めるのだった。


3 - 怪の復讐

「ここで、6つ目の時代かぁ」

 勇気達は、時のトンネルを使って様々な時代に行った。

 しかし、邪鬼は逃げた後だった。

 勇気達はさらに移動し、中世の東ヨーロッパ、ドラキュラ伯爵の城にやって来ていた。

 ここにも、邪鬼の気配がかすかにあった。

 だが、既に違う時代に逃げた後のようだ。

 

「ほんとに、邪鬼は見つかるのかしら?」

「……」

「自己嫌悪、ですね。ディアーナ」

「ちょっと休憩しよう。オイラ、時のトンネルを何度も通ったせいでトンネル酔いしてきたヨ」

「トンネル酔いって」

 勇気はプーカの言葉に呆れながらも、キユウの方を見た。

 ジャネットはディアーナを冷たい目で見ている。

「だけど、怪がいなくても時のトンネルに入れるようになってよかったよ」

 キユウは、かすかでも怪の気配があれば、

その時代に繋がる時のトンネルの入り口を作る事ができるのだ。

「僕は、書斎でしか作る事ができないからね」

 すると、そんな勇気を見て、キユウは優しい表情になった。

「別に君がトンネルを作る必要はないよ。人には役割というものがあるからね。

 僕にだって、できない事はたくさんある。

 例えば、幽霊である僕には、くるみパンを美味しそうに食べる事はできないからね。

 その分、勇者と聖女は何でもできるけど」

「いえ、私は……」

「確かにあたしは勇者なんだけど」

 キユウは、ちらりと横に目をやり、隠れてくるみパンを食べていたプーカを見た。

「い、いやア。腹が減っては戦はできぬっていうだろウ」

「プーカ、さっきもくるみパン食べてたじゃない。これで確か三つ目よね?」

「え、いや、ははは、ついつい美味しくテ」

 反省しながらも、プーカは三つ目のくるみパンの残りを、しっかりと口の中に入れる。

 それを見て、勇気、羽心、ディアーナ、ジャネットは笑った。

「いいチームだね」

 キユウが、ふと呟いた。

「勇気の前から消える時、凄く不安だったんだ。勇気を一人にしてしまうと思ってね。

 だけど、羽心ちゃん、プーカ、ディアーナ、ジャネットがいてくれて、ほんとによかった」

 キユウはホッとして微笑む。

 勇気は、羽心、プーカ、ディアーナ、ジャネットの方を見た。

「僕もそう思うよ。頼もしい仲間が四人もいてくれて凄く心強いもん」

「勇気」

「うんうん、嬉しいゾ」

「ありがとう」

「ありがとうございます。では、次の時代に行きましょう」

「トンネル酔いするから休憩するんだよね?」

「勇気クン、何を言ってるんダ。邪鬼を早く捕まえなきゃいけないだロ」

「まったく」

 プーカはどんな時でもやんちゃで、調子がいい。

 勇気は、そんなプーカに呆れながらも、キユウが作った新しい時のトンネルに入った。

 そして、トンネルを出て、次の時代に到着した。

 瞬間……。

 

「えっ」

 勇気は、全身の毛が逆立つような気配に覆われた。

「うっ……あぁ……!」

 ディアーナとジャネットはその気に当てられ、不調になってしまう。

 そこは、薄暗い洞窟の中だ。

 岩肌には、松明が取り付けられていて、炎が揺らいでいる。

 どす黒い邪悪な空気が、辺りに漂っている。

「これは……」

 勇気が戸惑っていると、時のトンネルから出てきたキユウが口を開いた。

 

「邪鬼の気配だ」

 去った後ではない。

 この洞窟のどこかに、邪鬼がいる。

「ついに見つけたんだね」

 勇気は身構える。

 羽心とプーカも険しい表情に変わった。

「うぅ……」

「確か、ここは」

 勇気は、洞窟を見て、ここがどこかすぐに気づいた。

 ある意味、勇気にとって、最も思い出深い場所と言っても過言ではない。

「ここは、僕が初めて怪狩りでやって来た場所……」

 勇気達は、メデューサがいた洞窟にやって来たのだ。

「メデューサは既にいない。邪鬼は、この洞窟のどこかに隠れているはずだ」

「キユウ、急ごう!」

「そうですね……!」

 逃げられてしまったら、元も子もない。

 勇気達は、邪鬼に気づかれないように、慎重に洞窟の中を進み始めた。

 ディアーナとジャネットは不調ながらも、何とか彼らについていった。

 

「だけど、何もないわね」

 洞窟の中を進みながら、羽心は周りを見回した。

 岩肌には松明が取り付けられているが、他には何もない。

 ディアーナは、暗視があるので時に問題ない。

「メデューサが棲んでたって言うから、もっと恐ろしい場所かと思ったけど」

「倒したからリセットされたんだよ」

 勇気は、メデューサがいた頃の光景を思い出した。

 洞窟の中には、至るところに、鎧を着て剣を持った人達の石像が転がっていた。

 彼らは皆、元は人間で、メデューサと目が合い、石像になってしまっていたのだ。

 あの頃は、その光景に怯えていた。

 しかし、今はそれを見ても逃げ出したりはしないだろう。

 恐怖よりも、怪を倒さなければという使命感の方が強くなっていたのだ。

 

「邪鬼を必ず倒さないと」

 力を助けるため、そして邪鬼の野望を食い止め、人々を救うため。

 勇気は、真っ直ぐ前を向いて、洞窟の中を進んで行った。

 

―ゴトッ

 

「……?」

 その時、背後で音がした。

 ディアーナとジャネットは、それが何なのか分からなかった。

 先頭を歩いていた勇気は、立ち止まると後ろを見た。

 しかし、何もない。

「今、音がしたよね?」

「え、ええ」

 羽心とプーカも後ろを見て警戒する。

 勇気は、身構えながら、音がした方へと近づいた。

「勇気、気をつけるんだよ」

「ああ、分かってる」

 キユウも浮かびながら、勇気の背後に続く。

 プーカ、ディアーナ、ジャネットもそんな二人の後をついていく。

「私も……」

 羽心は緊張しながら、勇気達を追いかけようと思った。

 

―ゴトッ

 

 また音がした。

 聞こえてきたのは、先程とは反対側の場所だ。

「何なの……?」

 それは低くて鋭い小さな音で、一番後ろにいる羽心しか気づかなかったようだ。

 羽心は戸惑いながら、音がした方に顔を向ける。

 すると、地面の真ん中に、レンガぐらいの石が落ちていた。

「あんなの、さっきは落ちてなかったわよね……?」

 地面だけではなく、壁も天井も岩でゴツゴツしている。

 天井から落ちてきたのだろうか?

 羽心は何気なく、天井を見上げる。

「あっ!」

 天井に、大きな物体が張り付いている。

 その物体が、勢いよく地面に着地した。

 

―ドオォォン

「きゃ!」

 羽心は、その物体を避けようと、後ろに下がる。

「羽心!」

 そんな羽心の元に、ディアーナとプーカが慌てて飛んで行った。

「あれは!」

 勇気は、天井から着地した物体を見て、声を上げた。

―ガルルッ

人狼(ワーウルフ)!?」

「海で倒したはずなのに……!?」

 アトランティス大陸の神殿にいた、あの狼男だ。

 その時、周りの壁が大きく揺れた。

 狼男が天井から飛び降りたせいで、壁が崩れ出したのだ。

「勇気!」

―ドドドドォォン

 次の瞬間、勇気、キユウ、ジャネットの傍の壁が崩れ落ち、

 その瓦礫で羽心、プーカ、ディアーナのいる場所が見えなくなってしまった。

 

「羽心、プーカ、ディアーナ!」

 勇気は、瓦礫の向こうにいる羽心達に向かって叫ぶ。

「勇気!」

「オイラ達は無事だゾ」

「心配しないでよね」

 三人は大丈夫なようだ。

 しかし、ガルルルと声がした。

 彼らの前には、狼男がいるのだ。

「勇気、ジャネット、こっちだ!」

 キユウは、通路の曲がり角を指差した。

 勇気とジャネットが羽心達の元へ行くためには、他の道を探すしかない。

「ああ! 羽心、プーカ、すぐに行くから!」

「ラーの勇者よ、今度こそ止めてください!」

 勇気とジャネットは、キユウと共に、通路を駆け出した。

 

 一方、瓦礫の向こう側。

 狼男は、羽心、プーカ、ディアーナを睨みつけた。

「フン 来ル前ニ コイツラヲ倒シテヤル」

 だが、羽心、プーカ、ディアーナはそんな狼男を睨み返した。

 

「私達だけでも、戦えるんだから!」




~次回予告~

勇気と分断された羽心、プーカ、ディアーナは、海で倒されたはずの人狼と対峙する。
ディアーナは不調ながらも、ラーの勇者として、羽心達を助けに行った。
怪を倒すと、黒い煙が現れて消えるらしいが、何故か人狼は黒い煙を纏っていた。
この煙に、何か秘密があるのだろうか。
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