怪狩り ~ 人の絆と怪の決意   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

勇気達は邪鬼を追って様々な時代に飛んでいた。
だが、見つかるのは邪鬼の痕跡ばかりで、邪鬼本人はどこにも見つからなかった。
その時、次に行ったメデューサの洞窟で、勇気達は邪鬼の気配を感じる。
邪鬼を捕まえようとする勇気達の前に現れたのは、海の神殿で倒されたはずの人狼だった。
人狼に分断された勇気達は、何とか羽心達と合流しようとするが……?


4 - 黒い煙

「狼男は、僕達にかなり恨みを持っているはずだ」

「まあ、乱入しましたしね……」

 勇気は通路を走りながら、神殿で戦った際、狼男が逃げた事をキユウに話した。

 ジャネットは、鎧を着ているために動きが鈍く、不調なので遅れて走っていた。

「狼男か。単純な性格だけど、かなり凶暴な怪だね」

「ああ、だけど羽心達なら、きっと戦えるはずだ」

 勇気とジャネットは、全力で洞窟の中を走り続けた。

 

 その頃。

 羽心、プーカ、ディアーナは、狼男と対峙していた。

 先程いた通路から移動し、部屋のような広い空間にいる。

「プーカに聞いたわよ。あなた、この前、逃げ出したんでしょ?」

 羽心は、先程勇気の家を訪れる前、

 プーカからアトランティスの神殿で何があったのか詳しく聞いていた。

 狼男は、邪鬼の役に立ちたいと思い、勇気達を襲った。

 鋭い嗅覚が武器だったが、プーカが納豆を出した事により、

 その強烈な臭いを嗅いで逃げてしまい、さらに、乱入したアプリル達が退けたのだ。

 

「今度も、どうせすぐやられちゃうわよ!」

「そうだゾ。オイラ達を舐めるなヨ!」

「あたしはラーの勇者だから!」

 羽心、プーカ、ディアーナは、強気な態度でそう言った。

 

「ウルサイッ!」

 狼男は、床を叩くように踏む。

 ドンという音が部屋中に響いた。

「俺ハモウ負ケナイ! 今度コソ アノ方ノ 役に立ツンダアア!」

 狼男は、声を荒らげ、周りの壁を殴る。

「そうはいかないわよ!」

 羽心とプーカは慌てて後ろに下がり、

 ディアーナはレイピアで狼男を突き刺した後に素早く後ろに下がった。

 その時、ふと、狼男の方を見た。

 

「えっ」

 狼男の身体から、黒い煙が漏れ出している。

「どういう事?」

 黒い煙は、怪を倒した時に出るものだ。

 狼男は、ディアーナの攻撃こそあれ、まだ体力はそんなに減っていないはずだ。

 

―ガルルルッ

 

 狼男は興奮しながら、口からも黒い煙を出した。

「俺ハモウ 負ケナイ……」

 狼男は、身体のあちこちから黒い煙を出しながら、小刻みに震え始めた。

「一体、彼に何が……?」

「なんか、様子がおかしいわよね」

「よく分からないけど、チャンスかモ」

「先制攻撃よ。かぜのせいれいよ、みえざるしょうげきを! Wind Blast

 ディアーナは呪文を唱え、風の衝撃を狼男に飛ばして攻撃した。

 そしてプーカはポーチを(まさぐ)ると、納豆を出した。

 

「そうか、それがあれば!」

 狼男の弱点は、臭いのキツいものだ。

「私が狼男の注意を引くわ」

「あたしは、後ろから魔法でサポートするわ。その間に、プーカ、納豆の臭いを嗅がせるのよ」

「分かったゾ」

 羽心とディアーナは、狼男の方を見た。

「さあ、私を倒してみせなさいよ!」

「ナニィィ?」

「どうしたの? 怖いの? ほら、私はここよ!」

 羽心は、両手を大きく開いて、狼男を挑発した。

 ディアーナは不調ながらも、彼女の後ろで、呪文を唱える。

「イイダロウ」

 狼男は、黒い煙を出しながら、ゆっくりと羽心に迫る。

Wind Blast

「ウグッ!」

 風の衝撃が命中し、狼男にさらにダメージを与える。

 

「よおし……チャンスだゾ……」

 プーカは、床すれすれを飛びながら、狼男に気づかれないように近づいていた。

「もうちょっと……もうちょっとダ……」

 プーカは羽心とディアーナと目が合う。

 羽心は迫り来る狼男に怯えながらも、その場から離れようとしなかった。

 ディアーナも、呪文を唱えて、羽心とプーカを援護しようとした。

「羽心チャン……もうちょっとの我慢ダ……。オイラがやっつけてやるからネ……」

 プーカは、狼男の傍に辿り着いた。

 狼男は、羽心の方を見ていて、プーカとディアーナには全く気づいていない。

「よおし、くらエ! ええイ!」

 次の瞬間、プーカは納豆を掲げるように突き上げると、狼男の鼻に向かって飛んだ。

「ヌオッ!」

 狼男が、納豆の臭いを嗅ぐ。

「やった!」

 羽心は、作戦が見事成功して喜ぶ。

 だが、プーカとディアーナは何故か怪訝な表情をしていた。

「どうしたの、プーカ、ディアーナ?」

「何だか、変だゾ」

「うん、あたしの魔法しか効かないみたい」

「変?」

 その時、狼男がニヤリと笑った。

 

「ソンナ物 俺にハ効カナイ! ガルルッ!」

 狼男は、納豆を持ったプーカを叩くように払いのけた。

「うわあア!」

「「プーカ!」」

 プーカは納豆を持ったまま、床に叩き落とされる。

「プーカ、しっかりして!」

 羽心は、慌てて駆け寄り、プーカを抱きかかえた。

 ディアーナは彼女の後ろから動かなかった。

「うう~ン、ど、どうして、納豆攻撃ガ……?」

「多分、あの黒い煙のせいじゃないかしら」

 羽心の手の中で戸惑うプーカに向かって、狼男は笑い、ディアーナは理由を説明した。

 

「俺ハ 強クナッタンダァァ! ガアアアアッ」

 

 狼男の全身から大量の黒い煙が漏れ出す。

 その煙が、狼男の身体を包み込んだ。

「何なのこれは??」

「オ前達ヲ 倒ス! ガアアアア!!」

 狼男を覆った黒い煙が徐々に大きくなっていく。

 次の瞬間、煙の中から、巨大な姿になった狼男が現れた。

 

「ガアアアアッ」

 狼男は、羽心達に襲いかかってくる。

「きゃ!」

「おっと!」

 羽心はプーカを抱きしめ、とっさに横に逃げた。

 ディアーナは、何とか狼男の攻撃を横に飛んでかわした。

―ドオオオオン

 地響きと共に、羽心達がいた床に、大きな穴が開く。

 狼男は、先程とは比べ物にならないほどパワーアップしていた。

「ドウダ 人間ドモ! ガアアア アアアア」

 狼男は、歓喜の雄叫びを上げた。

 

 その頃。

 勇気とジャネットは、キユウと共に洞窟の中を走っていた。

 すると、曲がり角の向こうから雄叫びが聞こえた。

「近くにいる!」

 勇気達は、身構える。

 キユウが口を開いた。

「妙だ。さっきの気配とまるで違う」

「まさか、他にも怪が?」

「いや、いるのは狼男だけだ。だけど、この気配は……」

「何ですか?」

 その時、角を曲がった勇気は、広い空間にいる羽心、プーカ、ディアーナの姿を見つけた。

「三人とも、大……」

「勇気、危ない!」

「えっ!?」

 勇気がハッとして横を見ると、巨大な狼男が立っていた。

「来タナ ガアアア!!!」

 狼男は、巨大な腕を、勇気に振り下ろした。




~次回予告~

黒い煙によってパワーアップした人狼は、勇気達を圧倒していた。
さらに凶暴になった人狼は、容赦なく勇気達に襲い掛かる。
まともに戦えるディアーナとジャネットも、邪鬼の気によって不調になっていた。
果たして、勇気達は邪鬼を見つける事はできるのだろうか。
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