怪狩り ~ 人の絆と怪の決意   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

メデューサの洞窟で、勇気と羽心は人狼に分断されてしまった。
羽心、プーカ、ディアーナは三人だけで人狼と戦う羽目になった。
プーカは弱点の納豆の臭いを人狼に嗅がせるが、全く効果はなかった。
それどころか、黒い煙の効果によって、人狼は力を増してしまった。
危機に陥る羽心達だが、人狼を倒せるのだろうか。


5 - 邪鬼と勇気

―ガキィン!

 

 狼男の爪を、ジャネットの鎧が防ぐ。

「ジャネット!」

「鎧、役に立ちましたね」

 微笑むジャネットだが、すぐに真剣な表情になる。

「プーカ、納豆の臭いを嗅がせるんだ!」

 勇気はプーカに向かって叫ぶ。

 だが、羽心に抱きしめられたプーカは、首をブンブンと横に振った。

「それは効かなくなっちゃったんダ」

「何だって!?」

 勇気とジャネットは戸惑いながらも、狼男を避け、羽心達の元へ駆け込んだ。

「どういう事なんだ?」

「分からないゾ」

「急に黒い煙を身体から出して、大きくなったの」

「そんな!」

 勇気は、何故そんな状態になったのか理解できなかった。

 が、キユウは、「黒い煙……」と呟いた。

「まさか、邪鬼が?」

 そう言うと、狼男が吠えた。

 

「全テハ 神ノオカゲダ! アノ方ニ エネルギーヲ与エラレ 俺ハ パワーアップシタンダ!

 ガアアァァ

 

 狼男は身体からゆらゆらと黒い煙を漂わせながら、勇気達に叫ぶ。

「そんなのって」

 羽心は戸惑う。

 プーカも呆然とし、ディアーナとジャネットは歯を食いしばった。

「オ前達ヲ 今度コソ 倒シテヤルッ! ガアアアアアッ

 鼓膜が破れそうな雄叫びが響く。

「うわああ!」

「くっ……!」

 その風圧で勇気達は思わず目を瞑る。

 ディアーナとジャネットは、何とか風圧に耐えた。

「勇気、上を見るんだ!」

「えっ!!」

 勇気は、慌てて目を開けて、顔を上に向けた。

 真上に、巨大な足が見える。

 狼男がジャンプをし、踏み潰そうとしているのだ。

「うわっ!」

「きゃ!」

 勇気とディアーナはとっさに、横に避けた。

 

―ドオオオンッ

 

 攻撃はジャネットの鎧で弾いたが、轟音が響き、床が粉々になって飛び散る。

 床に爆弾でも爆発したかのような大きな穴が空いた。

「勇気、ディアーナ、大丈夫かい?」

「あ、ああ」

「なんて破壊力……食らったらひとたまりもないわ」

 勇気とディアーナは、巨大な穴を見て、ごくりと唾を呑み込んだ。

 以前とはまるでパワーが違う。

 邪鬼によって強くなったのは本当のようだ。

 狼男は、傍にあった岩を掴む。

ガアアアア

 そして、岩を持ち上げると、勇気達に向かって投げつけた。

「うわああ!」

「きゃああ!」

―ドオオオン

 岩が、音を立てて転がる。

 勇気達は何とか避けたものの、まともに喰らったらひとたまりもないだろう。

「ここでは危険だ。狭い通路に逃げるんだ」

「あ、ああ!」

 勇気、羽心、ディアーナ、ジャネットは、キユウと共に通路へと向かう。

 だが、それを見て狼男がジャンプした。

「逃ガスカ!」

―ドンッ

 空間の入り口の前に、巨大な狼男の身体が立ち塞がる。

「このままじゃヤバいゾ!」

「くっ、何とかしないと」

かぜの……」

「全員 ココデ終ワリダッ!」

「きゃ!?」

 ディアーナが呪文を唱える間もなく、狼男が襲いかかってきた。

「散るんだ!」

 キユウの言葉に、羽心、プーカ、ジャネットは頷き、ディアーナはまだ慌てる。

 しかし、勇気は何かを見てハッとした。

 そして、キユウ達に声をかけた。

 

「散っちゃ駄目だ! 僕についてきて!」

 

「勇気、一体どこに?」

「いいから、早くこっちだ!」

 勇気は通路とは反対側に向かって駆け出す。

「勇気!」

「何を考えているのでしょうか……?」

 羽心も、訳が分からなかったものの、プーカを抱えて後に続く。

 ジャネット、ディアーナ、キユウはそんな勇気達に戸惑いながらも慌てて彼らの方へと飛んだ。

「逃ゲテモ 無駄ダ! ガアアア!

 狼男は、巨大になったその身体を震わせ、勇気達を追いかける。

「来たわよ!」

「今度こそ絶対ヤバいゾ!」

「みんな、ここに飛び込むんだ!」

「え……はい!」

 勇気は、前方を見ながら大きくジャンプした。

 羽心とディアーナも同じようにジャンプする。

 ジャネットは鎧を着ていたため、ふらつきながらゆっくりと上がった。

 狼男は、そんな勇気達に襲いかかった。

 

―ドンッ

 

ヌワアアァァ!

 次の瞬間。

 狼男の顔が、何がにぶつかった。

 それは、先ほど狼男が投げた「岩」だ。

 勇気達は、その岩の後ろにとっさに逃げたのだ。

 岩は狼男が投げた衝撃で、上の部分が割れて尖っている。

 狼男は、尖った部分に顔をぶつけ、苦しんでいた。

「なるほど、岩が尖っている事に気づいたんだね」

「散って逃げても、ここは広い空間だろ。

 狼男はあっという間に追いついて、全員襲われると思ったんだ」

 勇気は、少し離れた場所に岩があるのを見つけ、尖っている部分を武器にしようと思ったのだ。

 

「勇気、君はいつの間にか、僕より戦うのが上手になったみたいだね」

「人間なのに、なんて素晴らしいの」

 キユウとディアーナは、自分にはない勇気の判断力に感心する。

 だがその時、羽心が声を上げた。

「見て!」

「グウゥゥウ……」

 狼男はフラフラとしながらも、ゆっくりと勇気達の方に顔を向けた。

「ヨクモ コノ俺ヲ……」

 狼男は、唸り声を上げながら、巨大な狼の身体を勇気達の方に向けた。

「全員 握り潰シテヤル!」

 狼男は、岩を両手で挟むように掴んだ。

 

―グシャ

 

 岩は、狼男の挟む力によって、粉々に砕ける。

「ぬあア! あんな力で挟まれたらひとたまりもないゾ!」

「くっ、ここにいちゃ駄目だ」

 勇気は、安全な避難場所を探す。

 だが、辺りを見回しても、もうどこにもない。

「どうすれば??」

 焦る勇気を、狼男はジロリと睨む。

「終ワリダ!」

 狼男は、勇気を両手で挟もうとした。

 

「そこまでだ」

 

 突然、声がした。

 その声を聞き、狼男はピタリと止まった。

「ここまで辿り着いた事は、褒めてあげるよ」

 声の主はそう言うと、ニヤリと笑う。

 通路へと続く入り口に、一人の少年が立っている。

 勇気達は、その人物を見つめ、険しい表情になった。

 邪鬼だ。

 

「邪鬼……!」

「キユウ、まさか君が復活するとはね」

「お前を倒すために蘇ったんだ」

 ディアーナとキユウは邪鬼を睨む。

 その横に、勇気は立った。

「お父さんを返せ!」

 今までずっと事故で亡くなったと思っていた。

 その父親の身体が、目の前にあるのだ。

 すると、邪鬼が「ふっ」と鼻で笑った。

「その事も知ってるのかい。まあ、知ったところでどうにもならないけどね」

 邪鬼は、指を鳴らす。

 狼男はその音に反応し、大きくジャンプすると、邪鬼の横に着地した。

「どうだい? あれだけ情けなかった狼男も、強くなっただろう?」

「邪鬼! 僕は絶対お前を許さない!」

「たとえ誰であっても、あたしは負けないから」

 勇気とディアーナは、邪鬼の元へ駆け出す。

「勇気!」

「待ちなさい!」

 キユウ達も慌てて追おうとする。

 だが、邪鬼は素早く刀を抜き、その刃の先を勇気に向けた。

 刀から、黒い煙が漏れ出している。

 勇気達は、思わず動けなくなる。

「君達は、弱った僕を倒そうと思ってたんだろ? だけど、残念だったねえ」

 邪鬼の身体からも、黒い煙が漏れ出し、ゆらゆらと揺れ動いた。

 その姿に、キユウはハッとする。

「そうか、狼男が僕達に襲いかかってきたのは、倒す事だけが目的じゃなかったんだ」

 キユウの言葉に、邪鬼は、勝ち誇ったかのような笑みを浮かべた。

 

「その通り。全ては僕の傷が癒えるまでの時間稼ぎさ」

 

「そんな!」

「何ですって!?」

「残念だったね。今度こそ人間を滅ぼしてやるよ」

 邪鬼は、刀で空間を斬った。

 空間に罅が現れ、黒い煙が漏れ出す。

 その罅の中に、邪鬼は入ろうとした。

「逃がすか!」

「させないわ……!」

 勇気とディアーナは、邪鬼を捕まえようとする。

 だが、狼男が行く手を塞いだ。

「彼らを楽しませてやれ」

「分カリ マシタ ガアアアッ

 狼男は、全身に力を入れる。

 そして、素早い動きで高く跳ぶと、勢いよく床に着地した。

 

―ドオォォオオン!!

 

 床が破壊される。

 その衝撃で、洞窟そのものが激しく揺れる。

うわああ!

きゃああ!

 次の瞬間、洞窟が崩れ始めた。

「せいぜい、怪我をしないようにね」

 邪鬼は笑いながら、罅の中に消えて行った。

 狼男もその後に続く。

「邪鬼!」

「待ちなさい!」

 勇気とディアーナは追おうとするが、洞窟がさらに崩れ出した。

「勇気、ディアーナ、外に出ますよ!」

「だけど邪鬼が!」

「このまま埋まってしまったら元も子もありません!」

「そ、それは……」

 勇気とディアーナは奥歯を噛みしめながら、洞窟から脱出する事にした。

 

「あと少しだったのに……」

 森の中。

 勇気達は少し離れた場所に見える、崩壊した洞窟を眺めている。

 何とか無事に洞窟から脱出する事ができた。

 しかし、邪鬼にまた逃げられてしまった。

 しかも、邪鬼は完全に傷が癒え、人間を滅ぼすと宣言した。

 

「あいつ、どこに行ったのかしら?」

「また違う時代に行ったのかモ」

「どうすればいいんだ……」

 勇気達は、邪鬼の行方が分からなくなり、困惑していた。

 すると、キユウがハッとした。

 

「キユウ、何か分かったの?」

 勇気が尋ねると、キユウは真剣な表情で勇気達を見た。

 

「邪鬼は、『見捨里市』に行ったんだ」




~次回予告~

邪鬼を見つける事はできたが、捕まえる事はできなかった。
しかも、邪鬼は見捨里市に行き、人間を滅ぼそうとしているという。
邪鬼はパンドラの箱を使って、自らの野望を叶えようとしていた。
そんな事は絶対にさせないと、勇気達は急いで邪鬼を追う準備をするのだった。
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