邪鬼の力で強力になった人狼が勇気達に襲い掛かった。
武器を持っていないため、勇気達はまともに相手にできず、ただ逃げるしかなかった。
その時、勇気は人狼が投げた岩を使い、人狼に岩をぶつけてダメージを与えた。
キユウとディアーナは成長した勇気を見て感心するが、そうする間もなく、邪鬼が現れる。
邪鬼は人間を滅ぼすと宣言し、見捨里市に逃走してしまった。
全ては、彼の時間稼ぎだったのだ。
1 - 勇気と母
「邪鬼は、町のどこにいるの?」
勇気達は、キユウに連れられ、見捨里市に戻ってきた。
邪鬼は、狼男と共に黒い罅を通って、この町のどこかにいるはずだ。
だが、町は平和そのものだった。
空は晴れていて、雲一つない。
勇気達は、書斎からリビングにやって来て、これからどうするか考える事にした。
「邪鬼は、この町で何をする気なのかしら?」
「人間を滅ぼしてやるって言ってたよネ」
「滅ぼす……」
「まさか、パンドラの箱で……」
勇気とディアーナは、険しい表情になる。
傷が治り回復した邪鬼は、何をしでかすか分からなかった。
「だけど、そう簡単には行動を起こせないはずだ」
「どういう意味ですか?」
キユウがふと、勇気達の方を見た。
「邪鬼が求めていたものは、『パンドラの箱』と『三つのグローブ』だっただろ?
僕達がグローブを持っている限り、邪鬼の野望は果たす事ができないはずだ」
「確かにそれはそうかも。神殿の台も、この町にはないもんね」
邪鬼はアトランティス大陸で、神殿にあった台の上に、
パンドラの箱と三つのグローブを置いていた。
「あれって、あの台の上に置く事も重要だったって事だよね?」
「ああ、恐らく邪鬼の野望を叶えるためには、
箱とグローブを台の上に置く事が必要なんだろうね」
「じゃあ、もう大丈夫って事よね?」
羽心が勇気達にそう言った。
大西洋に浮上したアトランティス大陸は、
神殿で邪鬼と戦っている時に奇跡のペンダントの力で奇跡が起きてリセットされ、
消えてしまったのだ。
「アトランティス大陸が浮上してないって事は、神殿もないって事だもんね」
羽心の言葉に、勇気、プーカ、ディアーナ、ジャネットは頷く。
「そうなると、邪鬼は何のために見捨里市に来たんだろう?」
「とにかく、早く捜し出した方がいいよネ」
すると、キユウが「ああ」と答えた。
「急がないと大変な事になる」
「キユウ、どういう事ですか?」
「邪鬼がどうやって野望を叶えようとしているのかは分からない。
だけど、あれは闇雲にこの町へ向かうような感じじゃなかった」
メデューサの洞窟から移動する際、邪鬼は勝ち誇ったかのような笑みを浮かべていた。
あれは、傷が癒える時間稼ぎに成功したからだけではない。
キユウには、確実に野望を叶えられる自信があるように思えたのだ。
「今すぐ捜しに行こう。この町のどこかにいるはずだ」
その時、母親がリビングにやって来た。
「あ、プーカ、隠れて!」
勇気は、慌てて宙に浮いていたプーカを掴むと、服の中に入れた。
「勇気、今、何か飛んでなかった?」
「あ、あ~、虫がいたみたいだね」
「オイラは虫じゃないゾ!」
プーカが、服の中から訴える。
「え? 虫じゃない??」
「いや、ええっと、今のは羽心が言ったんだよ」
「私? そ、そう。勇気に、無視するのはよくないって言ったの」
「あらあら、無視するなんて、喧嘩でもしてたの?」
「え、うん、だけどもう仲直りしたよ」
「そうそう、私達仲良しだから」
勇気と羽心は無理矢理笑顔になった。
「そう、それならいいけど」
母親は、勇気達の言う事を信じてくれたようだ。
「プーカ、喋ったら駄目だろ」
「ついうっかり。申し訳なイ」
プーカは勇気の服の中でペコリと頭を下げる。
そんななか、母親は勇気をじっと見つめた。
「ねえ、それって」
「えっ!?」
服の中にいるプーカが見つかってしまったのだろうか?
「ええっと、人形だよ。だから気にしないで」
勇気は上手く誤魔化そうと、また作り笑いを浮かべた。
しかし、母親はそんな勇気の返答にキョトンとしていた。
「人形? 私が言ったのは、そのグローブなんだけど」
「えっ!?」
勇気は自分の手を見る。
右手に、太陽のグローブを嵌めていた。
「それ、お父さんの書斎にあったものよね?」
「あ、うん」
勇気の嵌めている太陽のグローブは、元々書斎にある父親の机の引き出しにあったのだ。
「羽心ちゃんがつけてるのも、同じようなものよね? どうして持ってるの」
「ええっと、それは、似たようなのが売ってて。それでいいなあって思って」
「そうなのね」
母親は、羽心のとっさについた嘘を信じてくれたようだ。
「だけど、久しぶりに見たわねえ、そのグローブ。
お父さん、世紀の大発見かもしれないぞって言ってたのよ」
「どういう事?」
「あら、言ってなかった?
そのグローブ、お父さんが考古学の調査をしている時に見つけたのよ」
「え、そうだったんだ」
グローブは大昔、アトランティス大陸に住んでいた人達と妖精族が作ったものである。
恐らく、父・力は、アトランティス大陸について調査をしている時に、
グローブを見つけたのだろう。
勇気がそう思っていると、母親は何かを思い出したようだ。
「そう言えば、あの時、他にも発見したものがあったのよね」
「他にも?」
「ええ、見捨里市立博物館に寄贈しているわ。確か、白い円柱の台だったような……」
「それって!」
アトランティス大陸の神殿で見た台と似ている。
「キユウ!」
勇気は、母親がいるにも関わらず、傍に立っているキユウに声をかけた。
「キユウ? 勇気、どうして亡くなったおじいちゃんの名前を知ってるの?」
「え、あ、ええっと」
勇気は首を大きく横に振った。
「今はそんな事言ってる場合じゃない!」
その言葉に、キユウは大きく頷いた。
「もしかしたら、邪鬼はその台を奪おうとしているのかもしれない。
勇気、ディアーナ、ジャネット、博物館に行こう!」
「「はい!」」
「うん! 羽心!」
「ええ!」
勇気達は慌てて駆け出した。
「ちょっと、勇気、どこに行くの?」
「博物館に行って来るよ! お母さんは、家でじっとしてて」
「どういう事?」
「いいから。外に出るのは危険かもしれないんだ!」
勇気はリビングを出て行こうとした。
だが、グローブに目が留まり、ふと立ち止まった。
勇気は、母親の方を見る。
「……ねえ、お母さんは、もしお父さんが帰ってきたら嬉しい?」
「えっ?」
突然の質問に、母親は戸惑いを覚えたようだ。
しかしすぐに、笑顔になった。
「もちろん、嬉しいわ。大きくなったあなたを、あの人に見てもらいたいもの」
「お母さん……」
勇気は、グローブを強く握り締める。
「行ってきます」
そう言うと、勇気は羽心達と共に、リビングを出て行った。
~次回予告~
邪鬼を追って、勇気達は見捨里博物館に行った。
だが、そこはもぬけの殻であった。
台を探すために博物館を調査する勇気達だったが、保管室には鍵がかかっていた。
そこで、プーカは鍵を探す事になったが……?