怪狩り ~ 人の絆と怪の決意   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

邪鬼を追いかけて見捨里市に戻ってきた勇気達は、これからどうするかを考えていた。
パンドラの箱とグローブの力があれば、邪鬼は人間を滅ぼす事ができるという。
勇気達は邪鬼を倒そうと意気込んだが、その時、勇気の母親が声をかけてくる。
彼女は勇気を心配していたのだ。
勇気は母親に朗報を届けるため、羽心達と共に怪狩りをしようとするのだった。


2 - 誰もいない博物館

「ここに、邪鬼がいるんだね」

 勇気達は、博物館の前にやって来た。

 以前、羽心と『エジプト文明展』を見に来た場所だ。

「まさかお父さんが寄贈した物があるなんて思ってなかったよ」

 あの時は、エジプトの展示品を中心に見て回った。

 全ての展示を見たわけではないので、台のような物があったかどうか思い出せない。

「とにかく、調べなきゃ」

「ああ、みんな用心するんだ」

 キユウの言葉に、勇気達は大きく頷いた。

 

 やがて、勇気達は、邪鬼を用心しながら、入り口までやって来た。

 だが一同は、受付を見て首を傾げる。

「受付に、誰もいない」

 以前来た時は、受付係がいて、横には警備員も立っていた。

「休憩中なのかナ?」

 プーカはそう言うが、それを聞いた羽心は、周りを見ながら首を横に振った。

 

「……受付だけじゃないかも」

 

 受付からは、館内が見える。

 その館内には、人が一人もいなかったのだ。

「邪鬼だ」

 キユウが呟くように言った。

 邪鬼がいるとすれば、館内にいた人々を邪魔だと思い、狼男に襲わせた可能性があるのだ。

 これ以上、人々を襲わせるわけにはいかない。

 勇気達は、緊張しながら、館内に入って行った。

 館内は、人気がなく、静まり返っていた。

 勇気達はなるべく音を立てないように、慎重に館内を進んで行った。

「台はどこにあるのかしら?」

「アトランティス文明コーナーなんて、ないよね?」

 勇気は、壁に貼られた館内の地図を見る。

 しかしどこに展示されているのか全く分からなかった。

 その時、勇気はふと、館の端の方を見た。

 一瞬、端にある柱の裏で、何かが動いたのだ。

 

「人だ!」

 勇気が声を上げる。

「邪鬼がいたの??」

「違う! 女の子だ!」

「女の子? じゃ、いくわ」

 勇気とディアーナは、柱の方へと走った。

 すると、小学1年生ぐらいの女の子が、柱の陰から飛び出して来た。

 

「怖いよ、来ないで!」

 女の子は、震えてパニックになっている。

「大丈夫。僕達は何もしないよ」

 勇気は、女の子に優しく話しかけた。

 女の子はそんな勇気を見て、安心したのか、少しだけ落ち着きを取り戻す。

 ディアーナはあえて黙っていた。

「もう大丈夫よ」

「私もいます」

 羽心とジャネットも傍にやって来て、笑顔を見せた。

「さっきの怖い人の仲間じゃないの?」

「怖い人? それって着物を着て、片目に包帯をした男の子かい?」

 女の子は、勇気の言葉に何度も頷いた。

「やっぱり、邪鬼はここにいるんだ」

 女の子は、家族で博物館に来ていたのだという。

 すると突然、邪鬼と狼男が館内に現れたらしい。

 彼らは、次々と館内にいた人達を襲い、捕まえたというのだ。

「私も捕まりそうになったの。だから柱の後ろに隠れて……」

 女の子は泣きそうな顔で、勇気達を見た。

「ねえ、パパとママはどこに行ったの?」

「それは……」

 邪鬼が、捕まえた人達を放っておくとは考えにくい。

 だがそれでも、勇気は奥歯を噛み締め、「大丈夫」と言った。

「僕達が必ず助けるから」

 女の子は、恐怖を味わった。

 彼女をこれ以上怖がらせる必要はない。

「とにかく、この子を外に逃がさないと」

 勇気は、女の子を博物館の外に連れて行こうと思った。

 

「待っタ~」

 その時、プーカが羽心の後ろから姿を現し、手を挙げた。

「この子は、オイラが安全な場所まで連れて行くゾ」

「プーカが?」

「あア。早く邪鬼を見つけないといけないだロ」

 プーカの言う通り、女の子を博物館の外へ連れて行く余裕はなかった。

 邪鬼に台を奪わせてはならないのだ。

「それに、グローブは三つ揃ってないといけないんだよネ?」

 プーカは、後ろに浮かんでいるキユウに尋ねた。

「そうだね。太陽と月と星。その三つが揃う事によって、邪鬼を倒す事ができるんだ」

「だったら、オイラが女の子を連れて行くヨ。勇気クン達は五人一緒にいないト。

 そこの聖女と勇者もネ」

「……?」

 勇気は、プーカの様子に違和感を抱いた。

 ジャネットとディアーナを名前で呼ぶはずなのに、何故か、聖女と勇者と呼んでいたのだ。

「なんか、プーカの様子がおかしいような……」

「知らないわよ。でもプーカ、たまにはいい事言うわね」

「たまにはじゃなイ。オイラはいつもいい事を言ってるゾ」

 女の子は、目の前で浮かんでいる小さな男の子を見て、目をパチクリさせていた。

「安心していいヨ。オイラは悪い怪じゃないからネ」

「怪??」

「オイラは妖精族の王子なんダ。さあ、一緒に行こウ~」

 プーカは博物館の出入り口の方へと飛んで行く。

「あ、あの」

「君も早く行くんだ。プーカは必ず君を守ってくれるから」

 勇気は、女の子にそう言う。

「う、うん。分かった」

 女の子は戸惑いながらも、プーカについて行った。

 

「じゃ、あたし達は台を探すわよ」

「そうだね」

「だけど、どこに展示してるのかしら?」

 勇気達は、館内の地図が貼られている場所へ戻った。

 もう一度、各部屋の展示品の種類を確認するが、

 アトランティス文明の展示品らしい物は書かれていなかった。

 だがその時、キユウが何かに気づいた。

「もしかしたら、ここかもしれない」

 指差したのは、館内の一番奥……様々な文明の物が展示されているコーナーだった。

「そっか、あのコーナーなら、どの文明の物か分からない物もあるかも」

 勇気達は、急いでその場所へ向かう事にした。

 

「ええっと、台? 台?」

 勇気とディアーナは、展示品を見ていく。

 小さな島々の物など、展示品の種類が少ない物が置かれていた。

 しかし、肝心の白い台はどこにもなかった。

「邪鬼達がもう見つけたのかしら?」

「いや、それはないはずだ」

 勇気は、展示品を見る。

 どれも綺麗に設置されている。

 抜けている部分はなさそうだ。

「もし、邪鬼が台を奪っていたら、見れば分かるはずだからね」

「じゃあ、ここにはないって事?」

「う~ん。他にもう探す場所なんてないわよね……?」

 ディアーナはそう言いながら、キユウの方を見た。

「えっ」

 ディアーナは、目を大きく見開く。

「どうしたんだい?」

「それ」

 ディアーナは、キユウの傍まで歩み寄ると、後ろにあるドアをじっと見つめた。

 ドアには、「関係者以外立ち入り禁止」と書かれたプレートが貼ってある。

「立ち入り禁止? それがどうしたんだい?」

「そこじゃないわ、その上よ」

「上?」

 キユウは、上に貼られたもう1つのプレートを見た。

 

『保管室・入り口』

 

「そういう事か」

「え、どういう事なの?」

「羽心ちゃん、博物館というのは、所有している全ての物を展示しているわけじゃないんだ。

 展示していない物も多くある。そういうのは一般の人が入れない場所に保管しているんだよ」

「なるほど! じゃあ台もそこにあるって事ね」

 羽心は、笑顔で保管室へと続くドアのノブを回した。

 

―ガチャガチャ

 だが、ドアは開かない。

 鍵がかかっているようだ。

「鍵を探さなきゃ」

「勝手にピッキングするわけにはいかないしね」

「そうだ、キユウ、君ならドアの向こうに行けるよね?」

 キユウは幽体なので、物体をすり抜ける事ができるのだ。

「ドアをすり抜けて、鍵を開けて」

「勇気、いいアイデアね!」

 しかし、それを聞いたキユウは、首を横に振った。

「確かにドアはすり抜ける事ができる。だけど、僕は物体に触れる事はできないよ」

 たとえ、ドアの向こうに行ったとしても、キユウには鍵を開けるのは不可能だった。

「そっか、そうだった」

「じゃあどうすればいいの? ピッキングもできないよね?」

 勇気達はその場で頭を抱えてしまった。

 

―パタパタパタ

 

 不意に、羽音が聞こえてきた。

 見ると、プーカが飛びながら勇気達の方に近づいて来る。

「そこにいたのカ」

 プーカは、勇気達の傍までやって来た。

 その顔は何故か、にっこりと笑っていた。

「女の子は?」

「外に避難させたヨ」

「そうか。よかった」

 勇気とディアーナは、ホッとしながら、飛んでいるプーカを見つめた。

「ああ、でも、もしかして、プーカなら」

 ディアーナは、『保管室』と書かれたプレートの横を見る。

 そこには、通気用のダクトがあった。

「プーカ、ダクトを使って、ドアの向こうに行ってくれる?」

「ドアの向こう?」

 ディアーナは、台が保管室の中にある可能性が高く、

 そのためドアの鍵を内側から開けなければならない事を話した。

 

「なるほど~、そんなところにあったのカ」

「プーカ、急いで、今なら邪鬼より早く台を見つけられるわ!」

「ディアーナ、どうしてそんな事が分かるの?」

「ドアの鍵は閉まってるでしょ。つまり、邪鬼はまだ保管室へは行ってないのよ」

「確かにそうかも!」

「よし、じゃあ開けて来るヨ」

 プーカは、通気用のダクトまで飛ぶと、その中に入って行った。

 

「それにしても、邪鬼はどこにいるんだろう?」

 勇気はキユウ達に言った。

 女の子の話だと、狼男もいたはずだ。

「博物館の中に台がないと思って、違う場所に行ったんじゃないの?」

「だけど、台がなければ野望は叶えられないんだよね?」

 邪鬼がどこにいて、何を考えているのかは分からない。

「油断だけは絶対しちゃ駄目だよね」

「ああ、勇気、その通りだ」

 勇気達は辺りを警戒しながら、プーカが到着するのを待った。

 すると、ドアの向こうから音がした。

―ガチャ

 ドアの鍵が開いたのだ。

「やった」

 ディアーナはドアを開ける。

 ドアの向こうに、プーカが飛びながら待っていた。

「プーカ、凄いわ!」

「流石ね!」

「……」

 ディアーナ達はプーカを褒めるが、勇気だけはプーカを警戒していた。

 プーカは「そうかイ」と答えた。

「行きましょう!」

 勇気達は、保管室へと向かった。

 プーカもそれについて行く。

「オイラ、キミ達の力になれて……凄く嬉しいヨ。フフフフ」

 プーカは笑みを浮かべながら、誰に言うでもなくそう呟いた。




~次回予告~

ようやく保管室にやってきた勇気達は、台を探そうとしていた。
その時、プーカが勇気達にある提案を吹っかける。
自分がグローブを預かれば、邪鬼に奪われる事はないらしい。
勇気達はプーカを疑いつつも、彼にグローブを預けるが……。
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