邪鬼を追って見捨里博物館にやってきた勇気達だったが、博物館はもぬけの殻だった。
中を調査していると、逃げ遅れたらしい少女がやってくる。
プーカは少女を助けようとしていたが、何故かプーカはディアーナとジャネットを名前で呼ばなかった。
勇気はそんなプーカに不信感を抱いたのだった。
「ここか」
勇気達は、保管室にやって来た。
棚がいくつも並んでいて、古い壺や美術品などが置かれている。
「台はどこにあるのかしら?」
「神殿にあった物と同じなら、かなり大きいはずだよね」
勇気達は、置かれている物をチェックし始めた。
すると、部屋の奥に布がかけられた大きな物体が並んでいた。
勇気は、その一つの前に立ち、布を取ってみる。
等身大の銅像だった。
羽心は、他の布も取っていく。
どれも、大きな彫刻や銅像ばかりだった。
「台はなさそうね」
「もしかして、保管室には置いてないのかな」
勇気はそう言いながら、一番端の布を取った。
「あっ!」
それは、神殿で見た物と同じ、白い台だ。
あちこち壊れていて、ボロボロになっている。
だが、これこそが勇気達が探し求めていた物だった。
「キユウ、やったよ!」
「ああ、ついに見つけたね!」
邪鬼より先に台を見つける事ができたようだ。
「勇気、台をどこかに移動させるんだ」
「そうだね。ここにあったら見つかるかもしれないよね!」
「あたしも手伝うわ」
勇気は、台を持ち上げようとした。
その時、後ろでそれを見ていたプーカが声を上げた。
「一つ、提案があるんダ」
「提案?」
「勇気クン、キミ達のグローブと、勇者が持ってるカードの事だヨ」
「カード?」
プーカは、勇気達が嵌めているグローブと、ディアーナのポーチを見た。
「そのグローブとカードを邪鬼に取られてしまったラ、元も子もないだろう?」
「それは、そうだけど」
「だったラ、オイラが、ポーチの中に入れておくヨ」
プーカは、にっこりと笑いながら、腰につけていたポーチを勇気達に見せた。
「王様のポーチは、妖精族しか中身を取り出す事ができないんダ。
だから、ポーチにグローブとカードを入れておけば安全だろウ」
「確かに。その方が危険は少ないかもしれません」
ジャネットは頷く。
「そうね。戦う前に捕まったりしちゃったら、グローブとカードを奪われちゃうもんね」
羽心も、プーカのアイデアに賛成のようだ。
「断るわ。このカードは勇者のあたしが使うもの」
しかし、ディアーナは首を横に振り、勇気とキユウは浮かない顔をしていた。
「グローブとカードを預ける、か……」
「なんか、プーカの様子がおかしいような……」
「でも、プーカは頼りになるわ。ね、勇気、キユウ」
「あ、ああ」
「ほら、貸しテ。早く台を運ばなキャ」
プーカは、グローブを預けるように促す。
勇気と羽心は、グローブを外し、プーカに渡した。
「ほら、キユウサンモ」
「あ、ああ、そうだね」
キユウは少し躊躇しながらも、グローブを外すと、プーカに渡した。
「これで完璧ダ。フフフフ」
プーカは笑いながら、三つのグローブをポーチの中に入れた。
「よし、これで後は台を運べば」
勇気は再び台を持ち上げようとした。
―ガルルルッ
突然、保管室の入り口の方から唸り声が響いた。
「この声は!」
勇気達は、一気に顔が険しくなる。
「コンナ トコロニ アッタノカ」
「人狼……しつこいわね」
ドアの前に立っていたのは、狼男だ。
狼男は、勇気達が身構える前に襲いかかって来た。
「くっ」
勇気は、台を持って逃げようとする。
だが、台は重く、僅かしか動かない。
「羽心、ディアーナ、ジャネット、手伝って!」
「ええ!」
「はい!」
羽心、ディアーナ、ジャネットも台を掴むと、勇気と一緒に持ち上げようとした。
「逃ガスカ!」
狼男は、傍の棚に体当たりをする。
―ドオオォォン
衝撃で棚が倒れ、勇気達の行く手をむ。
「三人とも、あっちだ!」
「分かった!」
勇気達は、違う方向へ逃げようとした。
だが、狼男は、また棚に体当たりをした。
―ドオオォォン ドオオォォン
次々と棚が倒れる。
棚にぶつかり、床に置かれていた銅像なども倒れ、勇気達の行く手を阻んだ。
「台を置いて逃げるんだ!」
キユウが叫んだ。
「だけど」
「グローブを手に入れない限り、邪鬼は何もできない。このままじゃ狼男にやられてしまう!」
「ガアアァァ」
狼男の身体から、黒い煙が出る。
その身体がだんだん大きくなっていく。
「くっ、みんな、外に逃げるぞ!」
「こんな狭い場所では、戦えないしね」
博物館から出て、態勢を整えるしかない。
勇気は、台を床に降ろした。
「ソレヲ ヨコセッ!」
大きくなった狼男は、台の方へとジャンプする。
それと同時に、勇気、羽心、ディアーナ、ジャネットは、
散乱している物を避け、ドアへと逃げた。
勇気達はそのまま、保管室から飛び出した。
「あと少しだったのに!」
通路を走りながら、勇気は悔やむ。
結局、台を邪鬼達に奪われてしまったのだ。
「ですが、何故人狼は、保管室に私達がいる事に気づいたのでしょうか」
ふと、ジャネットが言った。
「もしかしたら、後をつけてたのかも」
「だったら、グローブも奪おうとしますよね」
邪鬼は、自身の野望のために、グローブも必要だ。
「隙を突いて奪うチャンスはいくらでもありそうだったのに」
「隙を突いて……」
キユウが飛びながら、勇気と共にハッとした。
「まさか」
キユウが何かを言おうとした時、博物館の出入り口が見えてきた。
勇気、羽心、ディアーナは、走って外に出る。
キユウとジャネットは戸惑いながらも、後に続いた。
「とりあえず、何とかグローブとカードだけは取られずに済んだ……」
博物館の外。
勇気達は、荒く呼吸しながら、博物館の方を見た。
恐らく邪鬼は近くにいるだろう。
ここで戦うしかない。
勇気は、プーカからグローブを返してもらおうと思った。
「あれ?」
だが、どこにもプーカがいない。
「まさか、狼男に捕まったんじゃ?」
―パタパタパタ
勇気達がそう思った瞬間、プーカが、のんびりと飛びながら、博物館から出てきた。
「プーカ、何やってるのよ」
「危ないわよ! 早くこっちへ来て!」
ディアーナと羽心は、必死にプーカに呼びかける。
しかし、プーカはただ暢気に飛んでいるだけだ。
「プーカ、危ないから早く!」
だが、そんなディアーナ達に、勇気とキユウが声を上げた。
「二人とも、気をつけるんだ!」
「僕達は、まんまと騙されてたんだ!」
~次回予告~
勇気達は操られたプーカにグローブを渡してしまった。
その後、邪鬼はグローブとパンドラの箱を使って、様々な世界と見捨里市を繋げてしまう。
邪鬼の号令で空から無数の怪が現れ、一斉に襲い掛かってきた。
果たして、勇気達は邪鬼を倒し、見捨里市を救う事ができるのだろうか。