怪狩り ~ 人の絆と怪の決意   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

勇気達は、博物館の保管室で台を発見した。
邪鬼に奪われる前に回収しようとしていたが、
プーカが勇気達にグローブとカードを預ける提案をした。
ディアーナがカードを渡すのを断ったので、
勇気達はプーカにグローブを預け、勇気達の手元にはカードのみが残った。
だが、人狼はしつこく勇気達を狙い、博物館の中で暴れ回る。
勇気達は何とか博物館を脱出したが……。


4 - 邪鬼の狙い

「騙されてた? 勇気、キユウ、どういう事よ??」

 ディアーナ達が戸惑っていると、プーカがニヤリと笑った。

「プーカを捕まえるんだ!」

「えっ!?」

 その時、一つの影が現れた。

 着物を着て、片目を包帯で隠した少年……邪鬼だ。

 

「邪鬼!」

 勇気、羽心、ディアーナは、邪鬼のもとへ駆け寄ろうとする。

 だが、邪鬼の後ろに狼男が現れ、威嚇した。

「ガアアアッ」

 その手には、白い台がある。

「まったく、保管室に置いてあったなんて、想像していなかったよ。

 だけど、これで全部揃える事ができた」

 邪鬼は、不気味な笑みを浮かべる。

 プーカは、暢気に飛びながら、そんな邪鬼の傍に近寄った。

「プーカ、近づいちゃ駄目よ!」

「早く逃げて!」

 しかし、プーカは勇気達の方を見て首を傾げる。

「逃げル? どうしテ?」

「どうしてって……まさか!」

 ハッとする勇気を見て、邪鬼が笑った。

「ああ、そのまさかだよ」

 そして、それを邪鬼に渡した。

「あああ!」

 

「こいつは、僕が操っていたのさ」

 

 プーカの身体から、僅かに黒い煙が出ている。

 邪鬼はその煙を嬉しそうに見る。

「博物館にいた女の子は、わざと放っておいたんだ。君達が来た時、きっと助けると思ってね。

 あの女の子を守るために、隙ができてグローブを奪いやすくなると考えたのさ」

 しかし、女の子を連れて外に出てきたのは、プーカだった。

 邪鬼は、仕方なくプーカだけを捕まえ、ある事に利用しようと思った。

「こいつを操って、君達からグローブを奪おうと思ったんだ」

 邪鬼は、妖精族しかポーチから物を取り出す事ができない事を知っていた。

 そして、上手く勇気達を騙し、グローブを預かるフリをさせようと考えたのだ。

「それを実行しようと思った時、今度は君達を見張っていた狼男が帰ってきた。

 君達が台のある場所を見つけたって言うんだよ」

 邪鬼は、グローブだけではなく、台とカードも奪おうと考えた。

 結果、カードは手に入らなかったが、グローブと台は手に入れる事ができたのだ。

「こんなに上手く行くとはね。これで全て揃ったよ。こいつはもう必要ない」

 邪鬼は、プーカを叩くように払い除けた。

「うワ!」

「プーカ!」

 勇気は慌てて、プーカの元に駆け込み、キャッチする。

 プーカの身体から、黒い煙が四散した。

「う、ううウ」

 プーカはまるで眠りから覚めたかのような表情で、勇気を見つめた。

「オ、オイラ……一体何ヲ?」

「邪鬼に操られていたんだ」

「そんナ!」

「そいつにはもう用はない。他の怪を呼ぶからね」

「他の?」

 

全ては、見捨里市から始まるんだ!

 

 邪鬼は、狼男に目配せする。

 狼男は、持っていた台を、邪鬼の傍に置いた。

「やめろ!」

 勇気は、邪鬼を止めようとした。

 しかし、それよりも早く、邪鬼は台の上にパンドラの箱を置いた。

 そしてその中に、三つのグローブを入れた。

「残念だったね。もう遅い!」

 瞬間、箱が黒く輝いた。

―ゴオオオオッ

 次の瞬間、パンドラの箱から、黒い煙が飛び出す。

「これは!?」

 勇気とディアーナは近づこうとするが、煙の勢いが強く、近づく事ができない。

 煙は、止まる事なく箱の中から溢れ続ける。

 空は、大量の黒い煙に覆われ、真っ暗になっていった。

「ついに願いが叶った。人間どもは終わりだ!」

 邪鬼は、刀を振るう。

 空の闇に一筋の罅が入った。

―ピキ ピキピキピキピキ

 罅が広がっていく。

「この見捨里市は、君達のような特別な力を持つ者達が住んでいる。それで僕は気づいたんだ。

 この町自体が、かつてのアトランティス大陸のように特別な力を持っている事にね。

 特別な力がある場所は、怪を集めやすくなるんだ」

 邪鬼は、空にできた罅を見つめた。

「僕の願いは、ありとあらゆる怪を呼び寄せる事。

 アトランティス大陸では、その願いは叶わなかったが、やっと実現する事ができたよ」

―アアァア ウウウゥ

 罅の中から、呻き声が聞こえて来る。

「人間どもよ、滅びるがいい!」

―バリンッ

 罅が割れ、空に黒い巨大な穴が現れる。

 その穴から、無数の怪達が飛び出してきた。

「オオオオオッ!!」

 怪達が、町の四方に散らばっていった。

「「こんなのって!」」

 羽心とジャネットが声を上げる。

 邪鬼は、穴から怪達が出て来るのを見て、笑う。

「さあ、やれ!」

 邪鬼は声を上げる。

「せいぜい、そこで絶望を感じていればいい!」

 邪鬼は笑いながら、跳ねるように、狼男と共に町の中へと消えていった。

 

「もう、終わりだわ……」

 羽心は、呆然とその場に立ち尽くす。

「全部、オイラのせいダ……」

 プーカも、勇気の手の中で嘆く。

 だが、勇気、ディアーナ、ジャネットは大きく首を横に振った。

「プーカのせいなんかじゃない。悪いのは、邪鬼だ」

 勇気達は、二人を見つめた。

「羽心、プーカ、絶望している場合ではありません」

「あたし達が戦えるの、忘れたの?」

「町のみんなを助けないと!」

「勇気、ディアーナ、ジャネットの言う通りだ。諦めるのはまだ早い」

 キユウは、勇気達を見た。

「怪を倒せば、その怪が起こした全てはリセットされる。

 どんな状況になっても、邪鬼を倒せば、全てが元に戻るんだ」

「ああ、そうだよね」

 勇気、ディアーナ、ジャネットは、穴から出て来る怪達を睨む。

 羽心もその横に立ち、プーカも羽を震わせ、空中に浮かぶと、同じように怪を見た。

 そんな彼らを見て、ディアーナはこう言った。

「パンドラの箱にはあらゆる災いが詰まっていて、その箱を開けたから世界に災いが飛び散った。

 でも、最後に一つだけ、あるものが残ったの」

「それって」

「『希望』よ」

 伝承では、パンドラの箱を開けたために世界中に災いが飛び散ったが、

 辛うじて箱の中には希望だけが残った。

 いや、厳密には絶望の未来を知る予知能力だが、

 それが飛び出なかったおかげで人類は希望を抱くようになったのだ。

「そうか。僕達は、見捨里市を救う『希望』なんだ」

「その意気よ。だから、ここで折れるわけにはいかないわ」

 勇気達は、ディアーナの言葉で自身が見捨里市を救う希望だという事を理解し、

 自分達が町を守らなければ、と思った。

 キユウはそんな彼らと共に立ち、口を開いた。

 

「さあ、怪を倒しに行くよ。――怪狩りの時間だ!」




~次回予告~

ついに見捨里市にたくさんの怪が襲撃した。
四人の聖職者が怪と渡り合う中、原末先生も怪に襲われてしまった。
見捨里市の人々は戦う力を持たず、ただ怪に蹂躙されていく。
そんな人々と町を救うべく、勇気達は最後の怪狩りをするのだった。
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