操られたプーカは、勇気達から三つのグローブを奪ってしまった。
邪鬼はプーカから奪ったグローブとパンドラの箱を使い、
見捨里市にたくさんの怪を呼び寄せてしまう。
絶望する羽心とプーカだが、勇気、ディアーナ、ジャネットが二人を励ました。
見捨里市を救えるのは、勇気達しかいないのだから。
邪鬼を倒し、見捨里市を救うため、勇気達は最後の怪狩りに臨むのだった。
1 - 町を襲う怪達
「これは悪い夢だ!」
「……だろうな」
教師の原末は、数人の子供達と、四人の聖職者と共に、商店街を走っていた。
日頃、商店街など、人が多いところでは走らないようにと子供達に注意している。
しかし今は、暢気に歩いている場合ではない。
「このままじゃ、あいつらに襲われる!」
―ガタガタガタッ
背後の店の中から物音が響く。
同時に、獣のような呻き声も聞こえてきた。
「オオオァァ シャアァァ」
店の中から、クマのようなバケモノ――灰色熊が出てきた。
後ろには、蛇のような細長いバケモノ――キラー・スネークもいる。
「先生!」
桐谷花恋が、泣きそうな声で叫ぶ。
彼女の横には、蒲谷亜衣と志水拓馬もいる。
皆、原末が担任をしている6年2組の子供達だ。
「せいっ!」
「それっ!」
「やっ」
「×△☆……」
聖職者は鞭を振り、剣を振り、拳と不思議な言葉でバケモノに立ち向かった。
彼女達は、伊達に戦闘訓練を積んでいないのだ。
「あ、あんな女の子が、怪物と戦えるなんて……!」
「先生、あの人達は町を守ってるんです。驚かないでください!」
原末は腰を抜かしかけるが、花恋の一言で何とか立ち直った。
10分ほど前。
原末は休日を利用し、商店街の書店にやって来た。
すると、花恋達もいた。
花恋は、学校の図書委員をするほど、本が好きだ。
そのため、図書室にはない面白い本を、亜衣達に紹介しようと思ったらしい。
原末は、そんな花恋に感心しながら、「気をつけて帰るんだぞ」と言って、別れようとした。
その時、どこかからバケモノが現れたのだ。
原末は花恋達を連れ、慌てて店から飛び出した。
そこに四人の聖職者が現れたというわけだ。
現在。
商店街には、二体のバケモノ達がいる。
多くの人達は逃げ出したが、それと同じぐらいの人達がバケモノに襲われていた。
「こんなの夢だ。現実のわけがない!」
「ええい、臆病者め!」
聖職者は容赦なく、バケモノを鞭で打ち据える。
「アネッサ、ナタリー、ティス、手加減はするなよ!」
「はい!」
四人が何とか食い止めているが、このままでは捕まってしまう。
原末は、花恋達の方を見た。
(何としても、この子達だけでも逃がさないと)
原末はギュッと歯を噛みしめると、その場に立ち止まった。
「先生、何してるんですか!」
「あの人達に任せて、早く逃げなきゃ!」
「先生が時間を稼ぐ。だから、君達は逃げるんだ!」
日頃、怒ってばかりいて、子供達には人気がない。
その事は、自分でもよく分かっていた。
だが、それでも彼らの事が好きだった。
「俺は……世界一素敵な先生になりたいんだ!」
原末は、バケモノの方に顔を向けると、そのまま突進しようとした。
しかし、恐怖のあまり、足が上手く動かない。
両足が絡み合い、そのまま転んでしまった。
「ぬわっ」
「先生!」
「オオオォォ」
灰色熊が、原末に襲いかかる。
「うわああ!」
「まずい!」
聖職者は走って原末を助けようとした。
その時……。
「お前の相手は」
「このあたし!」
男女の声が聞こえた。
目を開けると、少し離れた場所に、一人の少年と上のエルフが立っている。
勇気とディアーナだ。
二人の横には、羽心とジャネットもいて、プーカも飛んでいる。
「し、真之?? それに、あの娘は……」
「よし、私達は別の場所に行こう」
聖職者はその間に、勇気達から離れた。
「さあ、あたしを襲ってみなさい!」
ディアーナは、灰色熊を挑発するかのように、手招きをした。
「オオオオオォォ」
灰色熊は、ディアーナに向かって突進する。
ディアーナは、そんな怪から目を離さず、呪文を詠唱した。
「ほのおのせいれいよ、やとなりてきをつらぬけ! Fire Shoot」
瞬間、炎の矢が怪を打ち据える。
「かぜのせいれいよ、みえざるしょうげきを! Wind Blast」
さらに、ディアーナは呪文を唱え、強風で怪を店の壁にぶつけた。
―ドオォオオン!
怪はその場に崩れ落ちる。
身体から黒い煙が出てきて、四散した。
「あなたはこっちよ!」
「私達が何とかします!」
一方、羽心とジャネットは、キラー・スネークの傍に駆け寄った。
「シャアァァアア」
キラー・スネークは、口を開き、羽心を呑み込もうとする。
「こちらです!」
だが、羽心はジャネットの号令で素早く動き、それを避けた。
キラー・スネークは逃げた羽心の方に頭を向ける。
すると、今度は反対側に、プーカが飛んできた。
「こっちにもいるゾ!」
キラー・スネークはその声に気づき、プーカを呑み込もうと、頭を向け、襲いかかった。
しかし、プーカも素早くそれを避ける。
「ほらっ、こっちよ!」
「こっちだゾ!」
「ついてきなさい!」
羽心とプーカは、交互に声を出し、キラー・スネークを挑発する。
ジャネットは旗を掲げ、羽心とプーカを応援する。
そのたびに、キラー・スネークは二人の方に頭を向け、身体を動かしていった。
ジャネットからは、完全に目を逸らしている。
「シャ ア アア」
やがて、キラー・スネークは頭を動かしすぎたせいで、身体が絡まってしまった。
羽心とプーカは、最初から動けなくするために挑発していたのだ。
「シャアアアァァ」
キラー・スネークから黒い煙が出て、四散する。
勇気達は、見事二体の怪を倒したのだった。
「やったな、みんな!」
「こんなに上手く行くとは思わなかったわね」
「オイラも役に立ったゾ」
「やはり私は聖女でした」
「勇者の名に恥じなかったでしょう」
「ああ、流石妖精族の王子だね」
勇気達は無事怪を倒す事ができて、喜ぶ。
そんな姿を、原末達はキョトンとした表情で見ていた。
「ほ、ほんとに、真之だよな?」
「羽心ちゃん、なんかカッコよかった。その人も、なんか素敵」
花恋の言葉に、ディアーナとプーカが顔を向けた。
「だって、あたしは勇者だから」
「オイラもカッコよかっただロ?」
「ええっと、あなたは」
小さな男の子と背が高い女性を見て、花恋達は目をパチクリさせる。
一方、勇気は、原末に話しかけた。
「先生、どこか安全な場所に避難してて下さい」
「あ、ああ」
何が起きているのか分からないが、勇気達に助けてもらった事だけは理解できる。
「真之、君達も一緒に」
原末はそう言うが、勇気は首を横に大きく振った。
「僕達は、こんな事をした元凶を捕まえないといけないんです」
「……真之」
その時、キユウが飛んで来た。
「勇気、邪鬼のいる場所が分かったよ!」
「ほんとに!? 行こう!」
勇気達は真剣な表情になった。
「お、おい、真之、誰と喋ってるんだ?」
原末は、勇気達と同じように空を見るが、そこには誰もいない。
「ええっと、それは」
「勇気、急ぎましょう!」
「あ、ああ。先生、花恋ちゃん達と一緒に隠れて下さい。みんなを守って!」
「真之……」
原末は、勇気、羽心、ディアーナ、ジャネットの顔をじっと見つめた。
勇気達は、強い決意を固めているようだ。
今更何を言っても、彼らは行ってしまうだろう。
「……分かった、真之、それに白鳥。そこの女も。
君達が何をしようとしているのかは分からない。
だけど、この状況を何とかしようとしているんだろう? 桐谷達の事は先生が絶対守る。
だから、君達も必ず帰って来るんだ。先生は待っているからな!」
「「はい!」」
勇気と羽心は、大きな声で返事をした。
いつもと同じ日常を取り返すためには、邪鬼を倒すしかない。
「羽心!」
「ええ!」
勇気達は、駆け出した。
~次回予告~
邪鬼を倒すため、勇気達は彼を追いかける。
そんな彼は、見捨里タワーで人々が怪に襲われる光景を高みの見物をしていた。
彼の野望を阻止しなければ、見捨里市だけでなく、世界は終わってしまう。
勇気達が邪鬼を追いかけて出会ったのは、かつて出会ったドラキュラの弟・ヴァーニーだった。