怪狩り ~ 人の絆と怪の決意   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

操られたプーカは、勇気達から三つのグローブを奪ってしまった。
邪鬼はプーカから奪ったグローブとパンドラの箱を使い、
見捨里市にたくさんの怪を呼び寄せてしまう。
絶望する羽心とプーカだが、勇気、ディアーナ、ジャネットが二人を励ました。
見捨里市を救えるのは、勇気達しかいないのだから。
邪鬼を倒し、見捨里市を救うため、勇気達は最後の怪狩りに臨むのだった。


episode7 - Last Battle ~ 最後の戦い!
1 - 町を襲う怪達


「これは悪い夢だ!」

「……だろうな」

 教師の原末は、数人の子供達と、四人の聖職者と共に、商店街を走っていた。

 日頃、商店街など、人が多いところでは走らないようにと子供達に注意している。

 しかし今は、暢気に歩いている場合ではない。

「このままじゃ、あいつらに襲われる!」

―ガタガタガタッ

 背後の店の中から物音が響く。

 同時に、獣のような呻き声も聞こえてきた。

「オオオァァ シャアァァ」

 店の中から、クマのようなバケモノ――灰色熊が出てきた。

 後ろには、蛇のような細長いバケモノ――キラー・スネークもいる。

「先生!」

 桐谷花恋が、泣きそうな声で叫ぶ。

 彼女の横には、蒲谷亜衣と志水拓馬もいる。

 皆、原末が担任をしている6年2組の子供達だ。

「せいっ!」

「それっ!」

「やっ」

「×△☆……」

 聖職者は鞭を振り、剣を振り、拳と不思議な言葉でバケモノに立ち向かった。

 彼女達は、伊達に戦闘訓練を積んでいないのだ。

 

「あ、あんな女の子が、怪物と戦えるなんて……!」

「先生、あの人達は町を守ってるんです。驚かないでください!」

 原末は腰を抜かしかけるが、花恋の一言で何とか立ち直った。

 

 10分ほど前。

 原末は休日を利用し、商店街の書店にやって来た。

 すると、花恋達もいた。

 花恋は、学校の図書委員をするほど、本が好きだ。

 そのため、図書室にはない面白い本を、亜衣達に紹介しようと思ったらしい。

 原末は、そんな花恋に感心しながら、「気をつけて帰るんだぞ」と言って、別れようとした。

 その時、どこかからバケモノが現れたのだ。

 原末は花恋達を連れ、慌てて店から飛び出した。

 そこに四人の聖職者が現れたというわけだ。

 

 現在。

 商店街には、二体のバケモノ達がいる。

 多くの人達は逃げ出したが、それと同じぐらいの人達がバケモノに襲われていた。

「こんなの夢だ。現実のわけがない!」

「ええい、臆病者め!」

 聖職者は容赦なく、バケモノを鞭で打ち据える。

「アネッサ、ナタリー、ティス、手加減はするなよ!」

「はい!」

 四人が何とか食い止めているが、このままでは捕まってしまう。

 原末は、花恋達の方を見た。

(何としても、この子達だけでも逃がさないと)

 原末はギュッと歯を噛みしめると、その場に立ち止まった。

「先生、何してるんですか!」

「あの人達に任せて、早く逃げなきゃ!」

 

「先生が時間を稼ぐ。だから、君達は逃げるんだ!」

 

 日頃、怒ってばかりいて、子供達には人気がない。

 その事は、自分でもよく分かっていた。

 だが、それでも彼らの事が好きだった。

「俺は……世界一素敵な先生になりたいんだ!」

 原末は、バケモノの方に顔を向けると、そのまま突進しようとした。

 しかし、恐怖のあまり、足が上手く動かない。

 両足が絡み合い、そのまま転んでしまった。

「ぬわっ」

「先生!」

「オオオォォ」

 灰色熊が、原末に襲いかかる。

「うわああ!」

「まずい!」

 聖職者は走って原末を助けようとした。

 その時……。

 

「お前の相手は」

「このあたし!」

 

 男女の声が聞こえた。

 目を開けると、少し離れた場所に、一人の少年と上のエルフが立っている。

 勇気とディアーナだ。

 二人の横には、羽心とジャネットもいて、プーカも飛んでいる。

「し、真之?? それに、あの娘は……」

「よし、私達は別の場所に行こう」

 聖職者はその間に、勇気達から離れた。

「さあ、あたしを襲ってみなさい!」

 ディアーナは、灰色熊を挑発するかのように、手招きをした。

「オオオオオォォ」

 灰色熊は、ディアーナに向かって突進する。

 ディアーナは、そんな怪から目を離さず、呪文を詠唱した。

「ほのおのせいれいよ、やとなりてきをつらぬけ! Fire Shoot」

 瞬間、炎の矢が怪を打ち据える。

「かぜのせいれいよ、みえざるしょうげきを! Wind Blast」

 さらに、ディアーナは呪文を唱え、強風で怪を店の壁にぶつけた。

―ドオォオオン!

 怪はその場に崩れ落ちる。

 身体から黒い煙が出てきて、四散した。

 

「あなたはこっちよ!」

「私達が何とかします!」

 一方、羽心とジャネットは、キラー・スネークの傍に駆け寄った。

「シャアァァアア」

 キラー・スネークは、口を開き、羽心を呑み込もうとする。

「こちらです!」

 だが、羽心はジャネットの号令で素早く動き、それを避けた。

 キラー・スネークは逃げた羽心の方に頭を向ける。

 すると、今度は反対側に、プーカが飛んできた。

「こっちにもいるゾ!」

 キラー・スネークはその声に気づき、プーカを呑み込もうと、頭を向け、襲いかかった。

 しかし、プーカも素早くそれを避ける。

「ほらっ、こっちよ!」

「こっちだゾ!」

「ついてきなさい!」

 羽心とプーカは、交互に声を出し、キラー・スネークを挑発する。

 ジャネットは旗を掲げ、羽心とプーカを応援する。

 そのたびに、キラー・スネークは二人の方に頭を向け、身体を動かしていった。

 ジャネットからは、完全に目を逸らしている。

「シャ ア アア」

 やがて、キラー・スネークは頭を動かしすぎたせいで、身体が絡まってしまった。

 羽心とプーカは、最初から動けなくするために挑発していたのだ。

「シャアアアァァ」

 キラー・スネークから黒い煙が出て、四散する。

 勇気達は、見事二体の怪を倒したのだった。

 

「やったな、みんな!」

「こんなに上手く行くとは思わなかったわね」

「オイラも役に立ったゾ」

「やはり私は聖女でした」

「勇者の名に恥じなかったでしょう」

「ああ、流石妖精族の王子だね」

 勇気達は無事怪を倒す事ができて、喜ぶ。

 そんな姿を、原末達はキョトンとした表情で見ていた。

「ほ、ほんとに、真之だよな?」

「羽心ちゃん、なんかカッコよかった。その人も、なんか素敵」

 花恋の言葉に、ディアーナとプーカが顔を向けた。

「だって、あたしは勇者だから」

「オイラもカッコよかっただロ?」

「ええっと、あなたは」

 小さな男の子と背が高い女性を見て、花恋達は目をパチクリさせる。

 一方、勇気は、原末に話しかけた。

「先生、どこか安全な場所に避難してて下さい」

「あ、ああ」

 何が起きているのか分からないが、勇気達に助けてもらった事だけは理解できる。

「真之、君達も一緒に」

 原末はそう言うが、勇気は首を横に大きく振った。

「僕達は、こんな事をした元凶を捕まえないといけないんです」

「……真之」

 その時、キユウが飛んで来た。

 

「勇気、邪鬼のいる場所が分かったよ!」

「ほんとに!? 行こう!」

 勇気達は真剣な表情になった。

「お、おい、真之、誰と喋ってるんだ?」

 原末は、勇気達と同じように空を見るが、そこには誰もいない。

「ええっと、それは」

「勇気、急ぎましょう!」

「あ、ああ。先生、花恋ちゃん達と一緒に隠れて下さい。みんなを守って!」

「真之……」

 原末は、勇気、羽心、ディアーナ、ジャネットの顔をじっと見つめた。

 勇気達は、強い決意を固めているようだ。

 今更何を言っても、彼らは行ってしまうだろう。

 

「……分かった、真之、それに白鳥。そこの女も。

 君達が何をしようとしているのかは分からない。

 だけど、この状況を何とかしようとしているんだろう? 桐谷達の事は先生が絶対守る。

 だから、君達も必ず帰って来るんだ。先生は待っているからな!」

「「はい!」」

 勇気と羽心は、大きな声で返事をした。

 いつもと同じ日常を取り返すためには、邪鬼を倒すしかない。

「羽心!」

「ええ!」

 勇気達は、駆け出した。




~次回予告~

邪鬼を倒すため、勇気達は彼を追いかける。
そんな彼は、見捨里タワーで人々が怪に襲われる光景を高みの見物をしていた。
彼の野望を阻止しなければ、見捨里市だけでなく、世界は終わってしまう。
勇気達が邪鬼を追いかけて出会ったのは、かつて出会ったドラキュラの弟・ヴァーニーだった。
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