見捨里市で地鳴りを起こすネッシーを止めるため、勇気達はネス湖に向かっていった。
そこで三人が出会ったのは、同じく三人の男だった。
彼らもまた、ネッシーを探していた、いや、狙っていた。
欲深い男達を前に、勇気達はどう対応するのだろうか。
「ボス! これは、凄くいいライトですよ」
「高級品に違いねぇですぜ」
眼鏡をかけた痩せた男と、背の低い男が、
勇気の懐中電灯を手にしながら、大柄な男の方を見た。
小柄な男には、ディアーナの双剣の跡がついている。
どうやら、大柄な男がリーダーのようだ。
「ったく、子供の癖に、こんないいもん持ってるとは世の中どうなってんだ」
大柄な男はチラリと勇気の方を見た。
勇気は、湖畔で男達に捕らえられていた。
縄で縛られたりしているわけではないが、
彼らは猟銃を持っているため、逃げ出す事などできない。
「ね、ねえ、キユウ、彼らは何者なの……?」
勇気は、傍に浮かんでいるキユウに、小声で話しかけた。
「彼らは、どうやらハンターのようだね。ネッシーを捕まえて、大金を手に入れる気だね」
「いかにも、欲にまみれているわね」
ディアーナは不快な表情になっている。
「ネッシーを捕まえれば、美味いもんいっぱい食べられますよねぇ」
「綺麗な服も買えるし、家だって建てられるぜぇ。なぁ、ボス」
「ああ、有名になって、世界中を回る事だってできる。貧乏とはおさらばだ!」
男達は大笑いし、ディアーナはさらに眉を顰める。
「おい、このライトは貰っておくぜ」
「そんな!」
「これだけ明るく照らす事ができれば、ネッシーも見つけやすいってもんだ」
それを聞き、勇気は焦った表情でキユウとディアーナを見る。
「懐中電灯を奪われちゃったけど、大丈夫なの?」
「うーん、懐中電灯がないと、ネッシーを倒すのは難しいだろうねぇ」
「えええ、そんなに重要なの!?」
「おい、うるせえぞっ!」
大柄な男が怒鳴った。
「さっきから何一人で喋ってるんだ?」
「えっ、あっ、ええっと」
「……やっぱり、彼らにも見えないのね」
男達にはキユウは見えない。
勇気は、男の手にある自分の懐中電灯を見つめた。
「ん、何だ?」
「えっと、できれば、その懐中電灯……ライトを返してほしくて」
「ああん、何だと!?」
「いえ、何でもないです! ただの独り言です!」
勇気は慌てて笑顔を作って誤魔化す。
「まったく、金持ちの子供はこれだから嫌いだぜ」
大柄な男は鼻を鳴らすと、部下達とまた話を始めた。
「もー、滅茶苦茶怖かったよ」
勇気は、さらに小声になって、隣にいるキユウとディアーナにそう報告する。
「あの人達は欲にまみれているわ」
「キユウ、あの人達から懐中電灯を奪い返してよ」
「僕が? 言っただろう、僕は霊体だから物に触れられないって」
「ちょ、やめてってば」
キユウは、手で勇気の顔を掴もうとしながら、何度もすり抜けさせた。
勇気はキユウから一歩離れると、大きな溜息を漏らした。
「ま、結論として……」
「このままじゃ、ネッシーなんか倒せないよ」
「ああ、これは笑えないね」
「笑えないどころの話じゃないよ」
その時、勇気はハッとした。
「羽心はどうなるの?」
今頃、羽心は拓馬と亜衣と共に、ミス池に行っているはずだ。
「それも言っただろう。放っておいたら、今夜中にネッシーは君の町に現れるって」
「じゃあ、羽心は……」
羽心はスコップを持っているが、
当然、そんなものではネッシーとまともに戦う事などできない。
「彼女は、本当は君にも来てほしかったんだろうね」
「えっ? 誘われたけど、それはスコップを借りにきたついででしょ?」
「逆だよ。誘いたいと思ったから、わざわざ借りに来たんだよ」
「どういう事?」
「口先だけだしね……」
勇気はよく分からない。
しかし、羽心が少しでも頼りにしてくれていた事だけは分かった。
「とにかく、懐中電灯を取り返さないと……」
ここでネッシーを倒せば、羽心達は襲われずに済むはずだ。
「懐中電灯は絶対に必要なのよね?」
「ああ。無ければ、ネッシーを退治する事は難しいだろうねぇ」
勇気とディアーナは、大柄な男が持っている懐中電灯を見つめた。
どうにかして取り返さないと……。
「よし、あたしに任せて」
「えっ、どうしたの?」
ディアーナは呪文を唱え、姿を消す。
足音を立てないように忍び寄り、懐中電灯にそっと手を伸ばし、懐中電灯を取った。
あっさりと事が解決したため、勇気はぽかーんとしていた。
そして、そのまま去ろうとした時。
「!?」
突然、湖の方から大きな音が響いた。
水飛沫が上がり、その中に、巨大な影が見えた。
巨大な影が大きな鳴き声を響かせる。
「うわああ!」
「来たわね!」
それは、怪獣ネッシーだった。
~次回予告~
ネス湖で、ついに勇気達は怪獣ネッシーと出会う。
メデューサとは違い、大きく、力もある、純粋に強い怪であるネッシー。
生身の人間がネッシーに勝つ事は極めて難しいだろう。
それでも、勇気達はネッシーに挑む姿勢を取るのだった。