怪狩り ~ 人の絆と怪の決意   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

麗羅達が怪の相手をしている中、勇気達は邪鬼を追って見捨里タワーに向かった。
だが、グローブを持たない以上、どうやって邪鬼を倒すか分からなかった。
そんな勇気達の前に現れたのは、ドラキュラの弟・ヴァーニーだった。
邪鬼の力で強力になったヴァーニーだが、
勇気は知恵と工夫を駆使してヴァーニーを撃退したのだった。


3 - 見捨里タワーの入り口

「もしかしたら、邪鬼を倒せるかもしれない」

「あのカードもあるしね」

 見捨里タワーへ向かいながら、キユウとディアーナが呟くように言った。

 勇気達は走りながら、宙を飛ぶキユウの方を見た。

「僕は今まで、弱点を攻める事によってしか、怪を倒せないと思っていた」

 キユウは、ちらりと勇気を見た。

「だけどさっきの戦いを見て、戦い方はそれだけじゃないと思ったんだ」

 ヴァーニーは、邪鬼からエネルギーを与えられ、パワーアップしていた。

 そのため、弱点である太陽の光やニンニクの臭いが全く効かなくなっていた。

 だが、勇気は機転を利かせ、見事ヴァーニーを動けなくしたのだ。

「うん、ヴァーニーだけじゃないわ。人狼と戦った時も同じよね」

 あの時、キユウは狭い通路へ逃げようとした。

 しかし、勇気は広い空間にあった岩に隠れて、その岩に狼男の顔をぶつけさせたのだ。

「あんな発想、勇者のはずのあたしにはなかったわ」

「そうだね。君はどんな時でも必ず困難を乗り切ろうとするんだ」

 キユウは、「だから」と言葉を続けた。

 

「グローブがなくても、邪鬼を倒せるかもしれない。君達ならそれができると思うんだ」

「キユウ」

「だから、あたしにあのカードを渡したのね?」

 勇気とディアーナはそれを聞き、嬉しく思う。

 キユウはディアーナの言葉を聞いて、頷いた。

 同時に、自信が漲ってきた。

「どう戦えばいいか分からないけど、これだけは言えるよ。

 僕は最後まで絶対に諦めない。諦めなければ、希望が見えて来るはずだ」

「言ってくれるじゃない」

 その言葉に、キユウは頷いた。

「私も……」

「ええ……」

 羽心とジャネットは、勇気の後ろを走りながら思う。

 勇気や、ラーの勇者のようになりたい。

 心からそう願うのだった。

 その時、ふと、羽心はポケットにある物が入っている事を思い出した。

 走りながら、それを手に取る。

 

 オシリスの鈴。

 

 この鈴は、幽霊を消滅させる力を持っている。

「念のために持って来てみたけど」

 もしかしたら、何か役に立つかもしれない。

 羽心は、鈴をギュッと握り締めると、再びポケットにしまった。

 その時、一同は大きな交差点に出た。

「あそこ!」

 勇気が指を差す。

 交差点の右手に見捨里タワーが見えた。

「勇気、羽心ちゃん、プーカ、ディアーナ、ジャネット、覚悟はいいかい?」

「ああ、僕はとっくの昔に覚悟はできてるよ」

「当たり前じゃない! あたしはラーの勇者なんだから」

「オルレアンの乙女は逃げませんよ」

「オイラもダ。何て言ったって、妖精族の王子だからネ」

「私ももちろん、勇気、邪鬼を倒しましょう!」

「ああ!」

 勇気達は、意を決すると、ゆっくりとタワーへ歩いて行った。

 

 タワーの入り口には、受付があった。

 だが、博物館と同じように、人の姿はない。

「逃げ出したのかしら?」

「怪にやられちゃったのかモ」

 周りの建物は、破壊され、車もひっくり返っている。

 人の姿はないが、恐らくこの辺りも怪が襲って来たのだろう。

「だけど、怪達がどこにもいないのはどうしてなんだ?」

 勇気達は辺りを見回した。

 すると突然……。

 

―ドン ドン

 

 と、地響きがした。

 見捨里タワーの傍にある雑居ビルの脇から、大きな影が現れる。

 

「俺ガ 全員 排除シタ」

 

 巨大な狼になった狼男だ。

「他ノ怪ニ オ前達ハ ヤラセナイ 俺ガ 倒スンダ! ガアアアッ」

 狼男は咆哮し、黒い煙が、全身から漏れ出す。

「排除とは、どういう事ですか?」

 ジャネットがそう呟くと、何かがこちらに向かって飛んで来た。

 

「お前にゃ、絶対に許しゃないにゃ!!」

 ヴァーニーだ。

 剣のように伸びていた爪が、10本とも折れている。

 どうやら、塀に刺さった爪を自分で折り、動けるようにしたらしい。

「私は、兄ふぉり優れてりゅんだぁぁ!!」

 ヴァーニーは、折れた牙を剥き出しにして、勇気達に向かって急降下してきた。

邪魔 スルナッ!!

 狼男が、巨大な身体で大きくジャンプした。

 急降下するヴァーニーと同じ高さまで跳ぶ。

 次の瞬間、狼男はヴァーニーを、その大きな前脚で吹き飛ばした。

ひぎゃああああ!

 ヴァーニーは、弾丸のような速さで地面に墜落する。

ドオオオォン

 地面に大きな穴が空き、道路が揺れる。

 穴から黒い煙が出てきて、四散していった。

 

「邪魔スル奴ハ 排除スルッ!!」

 狼男は、地面に着地しながら怒鳴るように言った。

「なんて奴だ」

 勇気は、狼男の凶暴さに戸惑い、ディアーナとジャネットは歯を食いしばる。

 この辺りにいた怪達も、皆、狼男にやられたのだろう。

「オ前ヲ 倒スッ!!」

 狼男の全身から、さらに黒い煙が漏れ出す。

 狼男は咆哮しながら、勇気に襲いかかろうとした。

 だが、勇気の前に、羽心が立った。

 ジャネットもいつの間にか旗を掲げ、真剣な表情をしている。

「待ちなさい」

「相手は勇気だけじゃないでしょ!」

 プーカも、羽心の肩の上に降り立つと、狼男を指差す。

「お前を神殿で撃退したのは、オイラだゾ! ……あの人達もいたんだけどネ」

 羽心達は、勇気、キユウ、ディアーナの方を見た。

 

「早くタワーに行って」

「邪鬼を倒すんダ」

「勇者よ、そのカードを使いなさい」

 

「羽心、プーカ」

「ジャネット」

「今まで、勇気に随分助けられてきたでしょ。今度は私達が助ける番よ」

 羽心は、ただ守られるだけの存在ではない。

 それを、自分自身の手で証明したかったのだ。

「私はあなたを召喚した事を、誇りに思います」

「おい、狼男、でかけりゃいいってもんじゃないゾ!

 本当に強いのは、知恵と勇気を持ってる者なんダ!」

 ジャネットとプーカも、勇気と並ぶほどの勇気をもって、困難に立ち向かおうとしている。

「ガアアア 邪魔ヲ スルナッ!」

 狼男は苛立ち、吠える。

「勇気! 早く!」

「勇者よ……」

 勇気は、キユウを見る。

 キユウは小さく頷いた。

「チャンスは、今しかない」

 それを聞き、勇気とディアーナは頷いた。

「羽心、プーカ、ジャネット、そいつを絶対に倒すんだ!」

「ええ!」

「おう!」

「承知しました」

 勇気とディアーナは、タワーの中に入って行った。

「待テエエ!!」

 狼男は、脚に力を入れて、ジャンプしようとする。

 しかし、そんな狼男を、羽心とプーカが笑った。

「なあに? 私達を飛び越えて、勇気を追いかけようっていうの?」

「情けないなア~。

 オイラ達を倒さないまま、勇気クンを倒しても、邪鬼はガッカリするんじゃないかナ?」

「私は羊飼いだった。けれど、私は祖国を守るために戦った。

 人狼一人くらいに、私は負けません!」

「ナ ン ダ ト!?」

 狼男は、ジャンプをするのをやめ、羽心達を睨んだ。

「オ前ラカラ ボロボロニシテヤルゥゥ!」

 羽心、プーカ、ジャネットは、真剣な表情で身構えると、狼男と対峙した。

 

消エロォォォォォ!!

 狼男は巨大な狼の姿になると、羽心に向かって飛び掛かった。

 いくら羽心が特別な力を持っているとはいえ、あの爪で切り裂かれたらひとたまりもない。

 死を覚悟した羽心だったが、金属音と共に羽心への攻撃が防がれた。

「ジャネットさん!」

「グゥゥゥゥ……」

 鎧で覆われた手で、ジャネットは狼男の腕を掴む。

 ジャネットは狼男を片手で突き飛ばすと、旗を構えて羽心とプーカの前に立った。

「私に続け! 羽心! プーカ!」

「うん!」

「分かったゾ!」

 羽心とプーカはジャネットの鼓舞を受けて、狼男に真っ向から立ち向かった。

 だが、まともな武器を持たない人間と妖精なので、狼男は二人を軽く攻撃しては距離を取った。

 爪が二人を切り裂き、頬にも傷を与えていく。

 ジャネットは全身を鎧で覆っていたので、爪は軽々と弾いていった。

「武器ヲ持タナイ人間ナド 俺の敵デハナイ!」

 狼男の爪が、羽心を切り裂き、プーカをボロボロにする。

 ジャネットの鎧も、狼男の攻撃の余波を受けて、銀色から灰色にくすんでいった。

 だが、羽心、プーカ、ジャネットは、その程度では決して諦めなかった。

 何故なら、戦いに必ず勝つと信じているからだ。

「ドウダ! 人間ドモ! 俺ノ勝チダ!!」

 狼男が自身の勝利を確信したその時。

 その身体からたくさんの黒い煙が漏れ出していき、同時に、身体が徐々に小さくなっていった。

「ナ……何……!?」

「狼男が、小さくなってる……?」

「どういう事ダ……?」

 慢心していた狼男を羽心とジャネットは観察した。

 プーカも縮んでいく狼男を見て怪訝な表情になる。

 やがてジャネットは異変の原因にこう結論付けた。

「……恐らく、もうすぐ時間が切れるのでしょう。力を使えば使うほど、弱まっていく……」

「そっか……そういう事だったのね。じゃあ、時間切れまで耐えればいいのね」

「よっし! オイラ、そういう事なら得意だゾ!」

 ジャネットの助言により、羽心達は狼男の攻撃に必死に耐え続けた。

 いくら強力な攻撃だとしても、倒されなければ決してどうという事はない。

 ジャネットも、旗を構えながら、攻撃に耐える羽心達を応援した。

 すると、狼男はみるみるうちに縮み、羽心と同じくらいの大きさになった。

「今がチャンスだ!」

 羽心、プーカ、ジャネットは、一斉に狼男を攻撃した。

「ヌ……何故ダ……ナ!? 身体ガ……!?」

 狼男は慌てて三人を倒そうとしたが、縮んでしまっていて、素早く動く事ができなかった。

 それでも、狼男は三人を倒そうと、その身体で必死に爪を振るった。

 

「……!?」

 その時、狼男の動きが止まった。

 羽心が狼男をじっと観察すると、

 次の瞬間、狼男の身体から大量の黒い煙が漏れ出し、その場に倒れた。

「グ……アノ方コソガ……神……ナノニ……」

 そして狼男は黒い煙になって、そのまま消滅した。

 

「どういう事かしら……」

「ですが、人狼を倒す事はできました。羽心、プーカ、合流してください!」

「……あア」




~次回予告~

ついに邪鬼と対峙した勇気、キユウ、ディアーナ。
しかし、邪鬼は武器を持たない勇気とキユウを容赦なく攻撃していく。
人間の愚かさを説き、世界中に怪を送る邪鬼の前に、勇気達はなすすべがなかった。
世界中が絶望に覆われる中、彼らが取った行動は……。
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