怪狩り ~ 人の絆と怪の決意   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

見捨里タワーの展望室で、ついに勇気達は邪鬼と対峙する。
だが、邪鬼は刀で容赦なく勇気達を攻撃する。
さらに、邪鬼は人間の愚かさを説いた後、世界中の時代に怪を送り込んだ。
勇気達が絶望しかけると、羽心達が戻ってきた。
羽心達は、人狼を倒したのだ。


5 - 勇気と希望

 羽心、プーカ、ジャネットは、勇気とディアーナの元へ駆け寄る。

 あちこち傷を負っていてボロボロの羽心とプーカに灰色になった鎧を着たジャネット。

 その様子は、激しい戦いがあった事を物語っていた。

 

「勇気、大丈夫??」

「無事でしたか、ラーの勇者」

「勇者が倒れるはずがないわ」

「羽心達こそ、大丈夫なのか?」

「もちろん」

「大丈夫だから、助けに来られたんだゾ」

「私も何とか耐えました」

「だけど、どうやって狼男を?」

「必死に戦い続けた。ただそれだけよ」

 羽心、プーカ、ジャネットは、タワーの入り口で狼男と戦った。

 巨大な狼の姿になった狼男は、素早く動き、羽心達を翻弄した。

 メデューサのいた洞窟の空間よりも広い場所で、

 狼男は思う存分、その力を発揮する事ができたのだ。

「あいつは、私達なんか簡単に倒せる、そう思ったんでしょうね」

「オイラ達を何度も軽く攻撃しては、距離を取って、楽しそうに笑ってたんダ」

「ええ、あれは全力ではありませんでした」

 狼男は、羽心達を完全に弄んでいた。

 傷つき、ボロボロになっていく姿を見て、愉快でたまらなかったらしい。

「ですが、それが大きな失敗でした」

 羽心とジャネットは、狼男の身体から出ている煙が、だんだん多くなっている事に気づいた。

 同時に、その身体が徐々に小さくなっていった。

「邪鬼が与えた黒い煙は、怪を強くするようです。ですが、その代償があるのです」

 狼男は、羽心達を弄ぶのに夢中になっていて、自分の身体の変化に気づいていなかった。

「だから、私達は、狼男の攻撃に必死に耐え続けたの。

 そうしたら、狼男は、私と同じぐらいの大きさになったわ」

 羽心、プーカ、ジャネットは、そんな狼男に向かって、反撃を開始した。

 狼男は自分が小さくなった事に気づき、慌てて三人を倒そうとしたが、

 既に素早く動く事すらできなくなっていた。

 羽心達は、そんな狼男に攻撃を続け、追い詰めていった。

 狼男はそれでも三人を倒そうとしたが、その時、動きが止まったのだという。

 次の瞬間、狼男の身体から大量の黒い煙が漏れ出した。

 狼男はその場に倒れ、黒い煙になって、そのまま消滅したのだという。

 

「強くなれるのには、タイムリミットがあったの」

「強くなる代わりに、命の危険があるという事だネ。

 ええっと、こういうのを人間の言葉で言うト……」

「諸刃の剣」

 ディアーナは静かにそう言い、呪文を唱え始めた。

「羽心ちゃん、プーカ、ジャネット。君達も、僕なんかよりよっぽど勇気と行動力があるよ」

 キユウはふらつきながらも、邪鬼の方を見る。

「さっき、1つだけ気になる事があったんだ」

 邪鬼が何故勇気を怒らせようとしたのか、疑問に思っていたのだ。

「わざわざ、怪に襲われそうになっている色んな時代の人々を見せ、お前は勇気を挑発した。

 いや、今回だけじゃない。お前は出会ったその時から、ずっと僕達を挑発していた」

 キユウは少しずつ邪鬼に遊づく。

「お前は、あのドラキュラ伯爵と同じだ。自ら動こうとせず、怪達ばかりに人間を襲わせた。

 だけど、それにはそうしなければならない理由があったんだ」

「理由だと?」

「ああ、お前は激しく動けば動くほど、その身体を維持する事ができなくなるんだろ?」

 キユウは、邪鬼の目の前に立った。

 邪鬼の肩から、僅かに黒い煙が出ていた。

「あの煙は……」

 勇気の言葉に、キユウは「同じだよ」と答えた。

「狼男がそうだったように、邪鬼も攻撃をすればするほど弱っていくんだ」

「くっ」

 邪鬼は煙を隠すように肩を触ると、跳ねるように後ろに逃げた。

「どうやら当たりのようだね」

「そうですね」

 キユウとジャネットは、邪鬼を見つめる。

「お前は、常に人々の恨みや妬み、嫉みといった負の感情をエネルギーとして得ていないと、

 生きていく事ができないんだ」

「だから、怪に人間を襲わせ、人間達が怪を恨むように仕向けました。

 勇気に怒りに任せて殴らせようとしたのも同じ事です。

 あなたは、人間が怪に怒りを感じるように仕向けているだけです!」

 キユウとジャネットの言葉を聞き、邪鬼は奥歯を噛み締める。

 だがすぐに、フッと笑った。

「君達の言う通りだ。だけど、だからってそれが何だって言うんだい?」

 邪鬼は、肩から漏れる黒い煙を見た。

「確かにこのまま戦い続ければ、さらに煙が漏れ出し、僕は弱ってしまうだろう。

 そうしたら、君達は僕を倒す事ができるかもしれない。

 けど、その前に僕が君達を倒せば何の問題もないだろ?」

 邪鬼は刀を強く握り締めた。

 その瞬間、邪鬼の髪が逆立ち、右目を覆っていた包帯がほどける。

 右目は、黒い煙に覆われていた。

 その目が、どす黒く光った。

 

「今ここで、倒してあげるよ! はあああ!!

 邪鬼は、身体を激しく回転させながら、刀を大きく振り抜いた。

 刀から巨大な閃光が走る。

 閃光が、一瞬でキユウや勇気達に襲いかかった。

Ether Armor

―ドォォオオオン

 展望室の窓が割れ、ガラスが霙のように地面に降り落ちる。

 強い風が展望室の中に吹きつける。

 邪鬼の全身から、黒い煙が溢れ出ている。

 風に揺られた黒い煙は、悪魔の顔のような形になっていた。

「どうだ、これでも僕を倒せると言うのか? 僕が本気を出せば、君達なんて一瞬で倒せるんだ。

 分かったか! 人間が僕に敵うはずないんだ!」

 邪鬼は、高笑いをする。

 だが、風によって黒い煙が外へと流れ、薄らと何かが見えてきた。

 五つの影と、一つの小さな影だ。

 

「ふう……唱えててよかったわ、魔法拡大したエーテルアーマー」

 煙の中から、顔が見えてくる。

 勇気とディアーナだ。

 邪鬼の攻撃は、魔法で完全に防いだのだ。

 その目は、しっかりと前を見つめている。

 隣には、キユウがいる。

 そして、羽心、プーカ、ジャネットもいる。

「バカな!」

 邪鬼は、勇気達が無事だった事に戸惑う。

 勇気は立ち上がると、ゆっくりと邪鬼に近づいた。

「お前は、勘違いをしている。確かに人間は誰かを恨んだり、妬んだりする。

 だけど、それだけじゃない。僕達人間には、勇気と希望があるんだ!

 勇気は、邪鬼に近づきながら、宙に浮いた黒い穴から見える風景を見た。

 

「巳之吉さん、怖いよお」

 江戸時代の長屋。

 子供達が、罅から現れた怪達を見て怯えていた。

 しかし、巳之吉だけは違った。

「みんな、安心しろ。俺が絶対に守ってやるから!」

 巳之吉は、傍にあった棒切れを取ると、怪達を見ながら構えた。

 それを見て、周りの大人達も、武器になりそうな物を手に取る。

「てめえらが何かは知らねえ。だけどな、子供達は襲わせねえ!」

 巳之吉達は、武器を振り上げると、怪達に向かって駆け出した。

 

 アメリカ。

 太った保安官が、怪達と対峙していた。

 後ろには、怯える町の人達がいる。

「俺はどんな相手だろうと、この町の平和を乱す者は絶対に許さん。

 それがたとえ、宇宙人だったとしてもな!

 保安官の証である胸のバッジがキラリと光る。

 保安官は、怪達を前にしても一歩も引かなかった。

 

 19世紀のイギリスの田舎の村では、リサが弓を使って、怪達と戦っていた。

「サーカス団で鍛えた弓の芸が、こんなところで役立つなんてね」

 次々と的確に矢を放つリサに、怪達はたじろぐ。

「この村を守ってみせる! 私はこの村が、みんなが大好きだから!」

 

 森の中。

 エルシーとフランシスは、必死に怪から逃げていた。

「エルシーお姉ちゃん、怖いよぉ」

「止まっちゃ駄目よ、フランシス!」

 二人は必死に走り続ける。

 だが、フランシスはつまずき、転んでしまった。

「きゃ!」

「フランシス!」

 エルシーはフランシスに駆け寄る。

 そこへ、怪が迫ってきた。

 エルシーとフランシスは逃げる事ができず、抱き合って怯える。

 

 するとそこへ、小さな物体が飛んで来た。

 その物体は、エルシーとフランシスの前で止まり、怪から守るように宙に立った。

「この子達に何をするつもりジャ」

 白く綺麗な顎髭を生やした、小さな老人には、羽が生えている。

 妖精族の長老だ。

 次の瞬間、木の陰から、何人もの妖精達が飛んで来る。

 彼らは皆、プーカの仲間だ。

「この子達は森を愛しておル。そんな子達をよくモ。

 皆の者、何があっても、この子達を守るのジャ!」

 長老の言葉に、妖精達は「おオ!」と声を上げる。

 エルシーとフランシスは、そんな妖精達に戸惑いながらも、

 自分達も戦おうと、立ち上がって怪を睨んだ。

 

「「うおおおおおっ!」」

 ドンレミ村では、村人達が鍬などを持って、怪に立ち向かっていた。

 彼らは国を守ったジャネットのために、負けるわけにはいかなかったのだ。

「ジャンヌは国を守るために戦ったんだろ? だから、こんな怪物ぐらいに怯えるわけがない」

「俺達は、ジャンヌのためにも、絶対に怪物に負けるわけにはいかない!」

 

「何ぼさっとしてんだい! 怪が怖いのは、まともに戦えないからだろう!

 アンタ、戦えないのかい!?」

「キミが悲しい顔だと、ボクまで悲しくなっちゃう。キミ達に似合うのは、笑顔だけだよ」

「アタイね、ここまで来てずっと頑張った。だから、アタイ、応援する!」

「私にも魔術師の誇りがある。たとえアウトローでも、私には信念がある」

 かつて邪鬼に仕えた、四人の盗賊。

 

「お前は一人じゃない。私達仲間がいる」

「私達は、あなたを応援しています」

「それくらいで諦めたら、あなたじゃないわよね」

「ティス、どんな時でも、諦めない」

 見捨里市で怪と戦った、四人の聖職者。

 

「ノノ、ぜったいにあきらめない。だって、おわりはじぶんできめることだもん」

「俺達は人間と共存したいんだ。だから、怖がらせるなんてしねぇよ」

「儂はお主らを信じておる。邪鬼を退ける事をな」

「愛衣はアプリル様を愛しています。だからこそ、自分を奮い立たせる事ができるのです」

 見捨里市の路地裏で暮らしていた、四人の怪。

 

 他の穴から見える様々な時代の人達も、盗賊や聖職者や怪も、皆、諦めていなかった。

 勇気は、そんな彼らを見て、やがて、邪鬼の前に辿り着いた。

 

「みんな、勇気を出して戦おうとしてる。お前の野望は叶う事はない!




~次回予告~

ついに邪鬼との戦いが終わろうとしていた。
邪鬼の本当の正体が明かされ、勇気達は全てを終わらせようとしている。
そして、ディアーナは超融合のカードを使い、邪鬼との決着をつけようとした。
果たして、待つのは希望か、絶望か。
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