怪狩り ~ 人の絆と怪の決意   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

見捨里市で起こる異変を解決するため、勇気、キユウ、ディアーナはネス湖に向かった。
そこで、三人はネッシーを狙う三人のハンターと出会う。
一度は懐中電灯をハンターに奪われる勇気だったが、ディアーナの活躍で懐中電灯を取り戻す。
そして、いざ準備しようとした時、湖の中からネッシーが現れるのだった。


6 - ネッシーとの戦い

「「「「出たー!!」」」」

 勇気と三人の男達は、湖の方を見ながら一斉に叫んだ。

グゴオオオオオ!

 ネッシーは咆哮しながら、湖畔に上がってきた。

 体長20mは超えていて、目の前で見ると、まるでビルのようだ。

「ボ、ボス、チャンスですぜ!」

「お、お、おお、分かってる!」

 背の低い男が構一杯強がり、声をかける。

 大柄な男も強がるが、ネッシーのあまりの巨大さに身体が震えていた。

「お、おい、お前がやれ!」

 大柄な男は、背の低い男にそう言う。

「俺ですか?」

「銃には詳しいって言ってただろ?」

「そ、それは……」

 背の低い男は急に泣きそうな顔になった。

「実は俺、銃の種類に詳しいだけで、一度も撃った事ないです!」

「なんだと? だったらお前がやれ!」

 大柄な男は、後ろにいた眼鏡をかけた痩せた男の方を見た。

 だが、痩せた男は地面を見ながらオロオロしていた。

「さっき、ボスとぶつかった時、眼鏡がどこかに行ったみたいで……」

「眼鏡、眼鏡……」

 痩せた男は、必死に地面を探す。

「くうう、このポンコツどもが! こうなったら俺がやってやる!

 これで貧乏とはおさらばだっ!!」

 大柄な男は猟銃を構えると、銃口をネッシーに向けた。

 そして、引き金に掛けた指に力を入れた瞬間、大柄な男が消えた。

 いや、消えたのではない。

 ネッシーが大きく尻尾を振ってぶつけ、大柄な男を吹き飛ばしたのだ。

 湖の方から男が落ちる音がする。

「ボス!!」

 痩せた男達は、湖まで吹き飛ばされた大柄な男の方を見た。

グゴオオオオオ!

「えっ、あ、ひいいい!!」

 ネッシーは、二人の男達にも尻尾を振った。

 二人の男達も、あっという間に湖まで吹き飛ばされた。

 

「そんな!」

「所詮は口だけ……ね」

 勇気はあまりの迫力にたじろぎ、ディアーナは笑っていた。

「まあ、たとえ銃を撃てたとしても、怪を倒す事なんかできなかったと思うけどね」

 キユウが勇気の横で浮かびながら、冷静に分析した。

「じゃ、どうすればいいんだよ?」

「そのために懐中電灯と」

「あたしがいる」

「ディアーナはネッシーに挑め。

 そして勇気、弱ったネッシーの目に、懐中電灯の光を当てるんだ!」

「分かったわ!」

 ディアーナは呪文を唱えて竜巻を起こし、ネッシーを怯ませる。

 その隙に勇気がネッシーの顔に懐中電灯の光を当てると、ネッシーが目を細めた。

ギュウウウゥゥ!

「そっか、光を当てれば倒せるんだね!」

「倒せるわけじゃない」

 勇気はさらに光を当てるが、キユウが冷静に言う。

「ネッシーは夜行性だから光が苦手なはずなんだ。だから、光を当てられたら凄く怒るんだよ」

「怒る?」

「それを先に言いなさいよ……キユウ……」

 ディアーナが呆れると、ネッシーが雄たけびを上げた。

グゴオオオオオオォ!

 大地を震わすような声が、勇気とディアーナの耳を襲った。

 思わず耳を塞いだ勇気とディアーナに、怒り狂ったネッシーがにじり寄ってくる。

「こ、こんなの聞いてないよ!」

「勇気、ディアーナ、走るんだ!」

「何言ってるんだよ!」

「いいから。作戦通りだから。あそこまで行くんだ!」

 キユウは、湖畔の向こうを指差した。

 そこには、崖がある。

「走れ、勇気、ディアーナ!」

「分かったわ!」

「で、でも」

「でも、じゃない! 今すぐ行くんだ!」

「は、はいいいっ!」

 ディアーナと勇気は崖に向かって走り出した。

 

グゴオオオォ!

 月明かりの下、木々が激しく揺れて、次々と薙ぎ倒される。

 ネッシーは狂ったように勇気とディアーナに迫ってくる。

「駄目だ、追いつかれちゃうよ!」

「もっと全力で走りなさい!」

「これが全力だってば!」

 土の地面は走りにくく、勇気は何度も躓きそうになる。

 ディアーナは浮遊しているが、転んだら一巻の終わりだ。

「も、もう駄目だよ」

「諦めないで!」

 崖へと続く坂を走りながら、勇気は泣きそうになる。

 ディアーナは、ただ走り続ける。

「頑張れ、あと少しだ」

 キユウは空中を飛びながら応援する。

「どうして、僕ばっかりこんな目に……」

 メデューサの時といい、あまりにも危険な目に遭いすぎる。

「それは、決まってるだろう。町を救えるのは、君しかいないんだ。あれを見ろ」

 勇気とディアーナは必死に走りながら、キユウの見ている方向に顔を向ける。

 すると、湖の上に、大きな×印状の罅があった。

「どんどん罅が広がってる! 急げ!」

 

 一方、見捨里市では、羽心がミス池を一人眺めていた。

 先ほどまで周りは亜衣や拓馬を含め、たくさんの野次馬で溢れていたが、

 少し前から昨日とは比べ物にならないほど大きな地鳴りが続き、

 ほとんどの人が逃げ帰ってしまった。

 にも関わらず、羽心はあるものに目を奪われ、その場から動けない。

「あ、あれは、何なの……?」

 見つめる池の上には、黒い煙がゆらゆらと揺らめく×印状の罅が浮かんでいた。

「何だか……見た事があるような……」

 羽心の記憶の底で何かが動いたが、結局その正体は分からなかった。

 

「このままだと、ネッシーはすぐに罅に入れるようになってしまうよ」

「そんな……」

 キユウは勇気とディアーナにそう言う。

 ディアーナが何とか食い止めているが、このままでは、羽心達が……。

「羽心!」

 勇気とディアーナは全身に力を入れた。

「そんなの絶対嫌だっ!!」

「あたしは負けないわ……!」

 勇気とディアーナは、全力で崖の上を目指して走った。

 やがて、崖の上に到着した。

 眼下には、剥き出しになった無数の岩肌が広がっている。

グゴオオオオオオォ!

 ネッシーが地哮しながら、坂を上ってくる。

「キユウ、どうすればいいんだよ!」

「あたしの魔力もあと僅かよ……」

 勇気が叫び、ディアーナも疲れを見せると、キユウは月を指差した。

「月に向かって、懐中電灯を投げるんだ!」

「どういう事?」

「いいから、やるんだ! このままじゃネッシーに食われるぞ!」

「そ、そんなの嫌だ! もー、何なんだよー!」

 勇気は無我夢中で、崖の上から懐中電灯を放り投げた。

 懐中電灯が眩しく光りながら、夜空を舞う。

「伏せろ!」

 キユウの言葉より早く、勇気が地面にひれ伏した。

 ディアーナは呪文を唱えて風の盾を作り出し、ネッシーの攻撃を防ぐ。

ガアアアアアアァァ!

 ネッシーは懐中電灯の光を追って、崖の上からジャンプした。

 そしてそのまま、崖の下へ落ちていった。

 ネッシーの身体が岩に叩きつけられると、ネッシーは黒い煙になって、辺りに飛び散った。

 

「た、倒したの……?」

「何とかね」

「罅は……」

 ディアーナが湖の上に浮かんでいた罅を確認すると、

 罅もネッシーと同じように消えてしまっていた。

「怪を倒したから、罅も消滅したんだ」

「そっか、よかった~」

「お疲れ様」

 勇気はその場にへたり込み、ディアーナは彼を労う。

 すると、湖の方から声がした。

「お、おい、どうして俺達こんなところにいるんだ?」

「知りませんよ! ボスの家にいたはずですよ??」

「ねえ、俺の眼鏡知りませんか? 何も見えないです!」

「怪が消えたから、彼らの記憶からも怪の事は消えたみたいだね」

 男達は暴れながら互いにしがみつき、溺れそうになっている。

「助けなきゃ!」

「彼らをかい? 懐中電灯を奪った奴らだぞ」

「それでも助けなきゃ! 今行くよ!」

 勇気は坂を駆け下りていった。

 

「まったく、人がいいんだから」

 キユウは呆れ顔で首を振る。

 しかしふと、一点を見つめ、険しい表情になった。

 そこは、×印状の罅のあった場所だ。

「絶対に、食い止めないと……」

 キユウは、坂を駆け下りる勇気の方を、じっと見つめた。

 そして、誰に言うでもなく呟いた。

 

「勇気なら、あいつを止められるはずだ」

「……キユウ?」

 キユウの声を聞いたのは、ディアーナだけだった。




~次回予告~

初夏を迎えた見捨里市。
プール開きが始まろうとしていた時に、怪奇現象は起こった。
全ての水が凍結する――明らかに、夏に起こるものではなかった。
この怪奇現象を起こしているのは、一体どんな怪なのか。
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