見捨里市で起こる異変を解決するため、勇気、キユウ、ディアーナはネス湖に向かった。
そこで、三人はネッシーを狙う三人のハンターと出会う。
一度は懐中電灯をハンターに奪われる勇気だったが、ディアーナの活躍で懐中電灯を取り戻す。
そして、いざ準備しようとした時、湖の中からネッシーが現れるのだった。
「「「「出たー!!」」」」
勇気と三人の男達は、湖の方を見ながら一斉に叫んだ。
「グゴオオオオオ!」
ネッシーは咆哮しながら、湖畔に上がってきた。
体長20mは超えていて、目の前で見ると、まるでビルのようだ。
「ボ、ボス、チャンスですぜ!」
「お、お、おお、分かってる!」
背の低い男が構一杯強がり、声をかける。
大柄な男も強がるが、ネッシーのあまりの巨大さに身体が震えていた。
「お、おい、お前がやれ!」
大柄な男は、背の低い男にそう言う。
「俺ですか?」
「銃には詳しいって言ってただろ?」
「そ、それは……」
背の低い男は急に泣きそうな顔になった。
「実は俺、銃の種類に詳しいだけで、一度も撃った事ないです!」
「なんだと? だったらお前がやれ!」
大柄な男は、後ろにいた眼鏡をかけた痩せた男の方を見た。
だが、痩せた男は地面を見ながらオロオロしていた。
「さっき、ボスとぶつかった時、眼鏡がどこかに行ったみたいで……」
「眼鏡、眼鏡……」
痩せた男は、必死に地面を探す。
「くうう、このポンコツどもが! こうなったら俺がやってやる!
これで貧乏とはおさらばだっ!!」
大柄な男は猟銃を構えると、銃口をネッシーに向けた。
そして、引き金に掛けた指に力を入れた瞬間、大柄な男が消えた。
いや、消えたのではない。
ネッシーが大きく尻尾を振ってぶつけ、大柄な男を吹き飛ばしたのだ。
湖の方から男が落ちる音がする。
「ボス!!」
痩せた男達は、湖まで吹き飛ばされた大柄な男の方を見た。
「グゴオオオオオ!」
「えっ、あ、ひいいい!!」
ネッシーは、二人の男達にも尻尾を振った。
二人の男達も、あっという間に湖まで吹き飛ばされた。
「そんな!」
「所詮は口だけ……ね」
勇気はあまりの迫力にたじろぎ、ディアーナは笑っていた。
「まあ、たとえ銃を撃てたとしても、怪を倒す事なんかできなかったと思うけどね」
キユウが勇気の横で浮かびながら、冷静に分析した。
「じゃ、どうすればいいんだよ?」
「そのために懐中電灯と」
「あたしがいる」
「ディアーナはネッシーに挑め。
そして勇気、弱ったネッシーの目に、懐中電灯の光を当てるんだ!」
「分かったわ!」
ディアーナは呪文を唱えて竜巻を起こし、ネッシーを怯ませる。
その隙に勇気がネッシーの顔に懐中電灯の光を当てると、ネッシーが目を細めた。
「ギュウウウゥゥ!」
「そっか、光を当てれば倒せるんだね!」
「倒せるわけじゃない」
勇気はさらに光を当てるが、キユウが冷静に言う。
「ネッシーは夜行性だから光が苦手なはずなんだ。だから、光を当てられたら凄く怒るんだよ」
「怒る?」
「それを先に言いなさいよ……キユウ……」
ディアーナが呆れると、ネッシーが雄たけびを上げた。
「グゴオオオオオオォ!」
大地を震わすような声が、勇気とディアーナの耳を襲った。
思わず耳を塞いだ勇気とディアーナに、怒り狂ったネッシーがにじり寄ってくる。
「こ、こんなの聞いてないよ!」
「勇気、ディアーナ、走るんだ!」
「何言ってるんだよ!」
「いいから。作戦通りだから。あそこまで行くんだ!」
キユウは、湖畔の向こうを指差した。
そこには、崖がある。
「走れ、勇気、ディアーナ!」
「分かったわ!」
「で、でも」
「でも、じゃない! 今すぐ行くんだ!」
「は、はいいいっ!」
ディアーナと勇気は崖に向かって走り出した。
「グゴオオオォ!」
月明かりの下、木々が激しく揺れて、次々と薙ぎ倒される。
ネッシーは狂ったように勇気とディアーナに迫ってくる。
「駄目だ、追いつかれちゃうよ!」
「もっと全力で走りなさい!」
「これが全力だってば!」
土の地面は走りにくく、勇気は何度も躓きそうになる。
ディアーナは浮遊しているが、転んだら一巻の終わりだ。
「も、もう駄目だよ」
「諦めないで!」
崖へと続く坂を走りながら、勇気は泣きそうになる。
ディアーナは、ただ走り続ける。
「頑張れ、あと少しだ」
キユウは空中を飛びながら応援する。
「どうして、僕ばっかりこんな目に……」
メデューサの時といい、あまりにも危険な目に遭いすぎる。
「それは、決まってるだろう。町を救えるのは、君しかいないんだ。あれを見ろ」
勇気とディアーナは必死に走りながら、キユウの見ている方向に顔を向ける。
すると、湖の上に、大きな×印状の罅があった。
「どんどん罅が広がってる! 急げ!」
一方、見捨里市では、羽心がミス池を一人眺めていた。
先ほどまで周りは亜衣や拓馬を含め、たくさんの野次馬で溢れていたが、
少し前から昨日とは比べ物にならないほど大きな地鳴りが続き、
ほとんどの人が逃げ帰ってしまった。
にも関わらず、羽心はあるものに目を奪われ、その場から動けない。
「あ、あれは、何なの……?」
見つめる池の上には、黒い煙がゆらゆらと揺らめく×印状の罅が浮かんでいた。
「何だか……見た事があるような……」
羽心の記憶の底で何かが動いたが、結局その正体は分からなかった。
「このままだと、ネッシーはすぐに罅に入れるようになってしまうよ」
「そんな……」
キユウは勇気とディアーナにそう言う。
ディアーナが何とか食い止めているが、このままでは、羽心達が……。
「羽心!」
勇気とディアーナは全身に力を入れた。
「そんなの絶対嫌だっ!!」
「あたしは負けないわ……!」
勇気とディアーナは、全力で崖の上を目指して走った。
やがて、崖の上に到着した。
眼下には、剥き出しになった無数の岩肌が広がっている。
「グゴオオオオオオォ!」
ネッシーが地哮しながら、坂を上ってくる。
「キユウ、どうすればいいんだよ!」
「あたしの魔力もあと僅かよ……」
勇気が叫び、ディアーナも疲れを見せると、キユウは月を指差した。
「月に向かって、懐中電灯を投げるんだ!」
「どういう事?」
「いいから、やるんだ! このままじゃネッシーに食われるぞ!」
「そ、そんなの嫌だ! もー、何なんだよー!」
勇気は無我夢中で、崖の上から懐中電灯を放り投げた。
懐中電灯が眩しく光りながら、夜空を舞う。
「伏せろ!」
キユウの言葉より早く、勇気が地面にひれ伏した。
ディアーナは呪文を唱えて風の盾を作り出し、ネッシーの攻撃を防ぐ。
「ガアアアアアアァァ!」
ネッシーは懐中電灯の光を追って、崖の上からジャンプした。
そしてそのまま、崖の下へ落ちていった。
ネッシーの身体が岩に叩きつけられると、ネッシーは黒い煙になって、辺りに飛び散った。
「た、倒したの……?」
「何とかね」
「罅は……」
ディアーナが湖の上に浮かんでいた罅を確認すると、
罅もネッシーと同じように消えてしまっていた。
「怪を倒したから、罅も消滅したんだ」
「そっか、よかった~」
「お疲れ様」
勇気はその場にへたり込み、ディアーナは彼を労う。
すると、湖の方から声がした。
「お、おい、どうして俺達こんなところにいるんだ?」
「知りませんよ! ボスの家にいたはずですよ??」
「ねえ、俺の眼鏡知りませんか? 何も見えないです!」
「怪が消えたから、彼らの記憶からも怪の事は消えたみたいだね」
男達は暴れながら互いにしがみつき、溺れそうになっている。
「助けなきゃ!」
「彼らをかい? 懐中電灯を奪った奴らだぞ」
「それでも助けなきゃ! 今行くよ!」
勇気は坂を駆け下りていった。
「まったく、人がいいんだから」
キユウは呆れ顔で首を振る。
しかしふと、一点を見つめ、険しい表情になった。
そこは、×印状の罅のあった場所だ。
「絶対に、食い止めないと……」
キユウは、坂を駆け下りる勇気の方を、じっと見つめた。
そして、誰に言うでもなく呟いた。
「勇気なら、あいつを止められるはずだ」
「……キユウ?」
キユウの声を聞いたのは、ディアーナだけだった。
~次回予告~
初夏を迎えた見捨里市。
プール開きが始まろうとしていた時に、怪奇現象は起こった。
全ての水が凍結する――明らかに、夏に起こるものではなかった。
この怪奇現象を起こしているのは、一体どんな怪なのか。