怪狩り ~ 人の絆と怪の決意   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

雪女を探し、怪奇現象を止めるために江戸の町に行った勇気、キユウ、ディアーナ。
江戸の町の広さに驚きつつも、勇気達は煙管屋の巳之吉と出会う。
すると、巳之吉の店で、美しい少女、お雪と出会った。
キユウの姿が見えるという事は、彼女は人間ではないらしいが……。


4 - 勇気とディアーナとお雪

「どうしよう?」

 三人が長屋の木戸を通り抜けると、再び白髪交じりの大家に出会った。

「お雪ちゃんは親戚じゃなかった」

 勇気が伝えると、大家は勇気を可哀想に思い、空き部屋に泊まってもいいと言ってくれた。

 

 夜、勇気、キユウ、ディアーナは畳の上で考え込んでいた。

「それにしても、雪女があんな少女だったとはな……」

「妖精だったからね」

 キユウも意外だったようだ。

「あの子が怪なんだよね。あんな綺麗な子を倒さないといけないんだよね?」

「おい、勇気。まさか好きになったわけじゃないよね」

「え? そんなんじゃないよ」

 キユウに睨まれた勇気は、慌てて手を振った。

「勇気、怪に惑わされちゃダメだ。どんなに美人でも怪は怪だ」

「分かってるよ」

「それなら、どうして直ぐに倒さないの?」

「それは、奇妙に思うところがあるからなんだ」

「奇妙って?」

「生き物を殺すのが雪女だ。普通はプールを凍らせる、という無意味な事はやらない」

「あの子は子供だから悪戯をしたんじゃないの?」

「勇気、惑わされるな。彼女は、子供に見えても雪女だ」

「とにかく、本当に見捨里市のプールを凍らせたのかを調べるわよ」

「でも、どうやって?」

「考えるしかないねぇ」

 話が行き詰まってしまって、勇気は布団に横たわった。

 いつの間にか、夢を見ていた。

 

 夜の山、少年と祖父は吹雪から逃れるために小屋に避難していた。

 囲炉裏を挟んで、二人が寝ている。

 冷たい風が吹き、囲炉裏で赤々と燃えていた火がシュッと消えた。

 勇気と同い年くらいの少年がふと目を覚ます。

 囲炉裏の向こうの祖父を見ると、白い着物の少女が祖父に覆いかぶさっていた。

 少女は祖父の顔に、白い息を吹きかけていた。

 祖父はすっかり凍ってしまい、既に呼吸は止まっている。

「じっちゃんっ!」

 ゾッとした少年の口から声が漏れた。

 白い少女が、少年に近づいて来る。

「あ、あああっ!」

 少年は恐怖のあまり、声にならない悲鳴を上げる。

 少女は、少年に息を吹きかけようとして、不意に動きを止めた。

「よく見ると可愛い子だね。お前の命は取らないでおこう。

 でも、もし今夜の事を一言でも誰かに話したら、その時は、

 私はお前の命を取らないとならない。今夜の事は忘れなさい」

 少女はそう言うとスゥーッと戸に近づき、小屋の外の吹雪の中に出て行った。

 

「うなされてたわよ」

 ディアーナの声で、勇気はハッと目を覚ました。

 上のエルフのディアーナは、休息の時に別の世界に行くため、眠る必要はないらしい。

「夢の中で、白い着物の少女が少年を殺さないで助けたんだ。

 その代わり、この事は誰にも言ってはならないってきつく言ってた。

 多分、あの少女はお雪ちゃんだと思う」

 勇気の言葉にキユウとディアーナが頷く。

「君は巳之吉さんが少年の時に体験した事を夢に見たんだ」

「僕が……?」

「君の見る夢には特別な力があると言っただろ?

 単にボォーッとしてたり、夢を見たりしてるんじゃない」

 ふと、部屋の引き戸の障子を少女の影がよぎっていった。

「お雪ちゃん……?」

「……お雪?」

 勇気とディアーナが呟くと、キユウが再び頷いた。




~次回予告~

お雪は何故、見捨里市に怪奇現象を起こしているのか。
雪女は他人の命を奪わないと生きていけないはずだ。
それなのに、お雪は他人の命を奪った事はほとんどなかった。
理由も分からないまま、見捨里市は凍り付こうとしていた。
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