雪女を探し、怪奇現象を止めるために江戸の町に行った勇気、キユウ、ディアーナ。
江戸の町の広さに驚きつつも、勇気達は煙管屋の巳之吉と出会う。
すると、巳之吉の店で、美しい少女、お雪と出会った。
キユウの姿が見えるという事は、彼女は人間ではないらしいが……。
「どうしよう?」
三人が長屋の木戸を通り抜けると、再び白髪交じりの大家に出会った。
「お雪ちゃんは親戚じゃなかった」
勇気が伝えると、大家は勇気を可哀想に思い、空き部屋に泊まってもいいと言ってくれた。
夜、勇気、キユウ、ディアーナは畳の上で考え込んでいた。
「それにしても、雪女があんな少女だったとはな……」
「妖精だったからね」
キユウも意外だったようだ。
「あの子が怪なんだよね。あんな綺麗な子を倒さないといけないんだよね?」
「おい、勇気。まさか好きになったわけじゃないよね」
「え? そんなんじゃないよ」
キユウに睨まれた勇気は、慌てて手を振った。
「勇気、怪に惑わされちゃダメだ。どんなに美人でも怪は怪だ」
「分かってるよ」
「それなら、どうして直ぐに倒さないの?」
「それは、奇妙に思うところがあるからなんだ」
「奇妙って?」
「生き物を殺すのが雪女だ。普通はプールを凍らせる、という無意味な事はやらない」
「あの子は子供だから悪戯をしたんじゃないの?」
「勇気、惑わされるな。彼女は、子供に見えても雪女だ」
「とにかく、本当に見捨里市のプールを凍らせたのかを調べるわよ」
「でも、どうやって?」
「考えるしかないねぇ」
話が行き詰まってしまって、勇気は布団に横たわった。
いつの間にか、夢を見ていた。
夜の山、少年と祖父は吹雪から逃れるために小屋に避難していた。
囲炉裏を挟んで、二人が寝ている。
冷たい風が吹き、囲炉裏で赤々と燃えていた火がシュッと消えた。
勇気と同い年くらいの少年がふと目を覚ます。
囲炉裏の向こうの祖父を見ると、白い着物の少女が祖父に覆いかぶさっていた。
少女は祖父の顔に、白い息を吹きかけていた。
祖父はすっかり凍ってしまい、既に呼吸は止まっている。
「じっちゃんっ!」
ゾッとした少年の口から声が漏れた。
白い少女が、少年に近づいて来る。
「あ、あああっ!」
少年は恐怖のあまり、声にならない悲鳴を上げる。
少女は、少年に息を吹きかけようとして、不意に動きを止めた。
「よく見ると可愛い子だね。お前の命は取らないでおこう。
でも、もし今夜の事を一言でも誰かに話したら、その時は、
私はお前の命を取らないとならない。今夜の事は忘れなさい」
少女はそう言うとスゥーッと戸に近づき、小屋の外の吹雪の中に出て行った。
「うなされてたわよ」
ディアーナの声で、勇気はハッと目を覚ました。
上のエルフのディアーナは、休息の時に別の世界に行くため、眠る必要はないらしい。
「夢の中で、白い着物の少女が少年を殺さないで助けたんだ。
その代わり、この事は誰にも言ってはならないってきつく言ってた。
多分、あの少女はお雪ちゃんだと思う」
勇気の言葉にキユウとディアーナが頷く。
「君は巳之吉さんが少年の時に体験した事を夢に見たんだ」
「僕が……?」
「君の見る夢には特別な力があると言っただろ?
単にボォーッとしてたり、夢を見たりしてるんじゃない」
ふと、部屋の引き戸の障子を少女の影がよぎっていった。
「お雪ちゃん……?」
「……お雪?」
勇気とディアーナが呟くと、キユウが再び頷いた。
~次回予告~
お雪は何故、見捨里市に怪奇現象を起こしているのか。
雪女は他人の命を奪わないと生きていけないはずだ。
それなのに、お雪は他人の命を奪った事はほとんどなかった。
理由も分からないまま、見捨里市は凍り付こうとしていた。