怪狩り ~ 人の絆と怪の決意   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

江戸の町で、勇気は幼少時代の巳之吉が体験した夢を見ていた。
夢の中、巳之吉の祖父を凍り付かせたお雪は、巳之吉に「今夜の事は忘れろ」と伝える。
そんな恐ろしい雪女……お雪が見捨里市を凍らせる理由は何なのか。
勇気、キユウ、ディアーナは、お雪を追跡するのだった。


5 - 凍りつく見捨里市

 三人は外に出てお雪をそっと追いかける。

 街灯のない時代は、月明かりだけが頼りだ。

 お雪の白一色の着物が闇に浮かんでいて、勇気が夢の中で見たのと同じだった。

 

恐怖を与えないと……私は……

 

 長屋の外れの藪にお雪が入っていく。

 それを物陰から覗く勇気、キユウ、ディアーナ。

 その先には、なんと藪の中に×印があった。

 幸いにも、罅はまだ小さくて、お雪が入れる大きさではない。

 お雪が×印に顔を近づけ、小さな口から冷たい息を吹き込んだ。

 

 現代の夜の見捨里市。

 むし暑い空気に包まれた住宅街のあちこちに、小さな罅が走った。

 その小さな×印から、一斉にモワモワと真っ白な冷気が漏れ出す。

「なんだ、あれ、煙……?」

 帰宅途中だったスーツの男性が、道路を照らすオレンジ色の街灯を見上げた。

 街灯に白い靄がまとわりついている。

 火事だろうか、と首を傾げた瞬間、街灯が凍りついて割れた。

 男性は悲鳴を上げて走って逃げ出した。

 

 別の道、塾帰りの高校生が自動販売機でジュースを買おうとすると、

 その販売機に白い冷気がまとわりついた。

 目の前の自動販売機が真っ白に凍りつき、高校生は腰を抜かした。

ひっ!!

 

 同じ頃、羽心は二階の自室で勉強をしていた。

 音が聞こえて、羽心は窓のカーテンを開ける。

「何?」

 窓外の信じられない光景が目に飛び込んできた。

 駐車場に停めてある車や、周囲の窓などが見る見る凍りついていく。

「え? 何これ?」

 羽心は自分の目が信じられず、目を擦った。

 

 藪の中のお雪が×印の罅にさらに冷気を吹き込み、罅が音を立てる。

 お雪が身を引くと、×印から黒い煙が湧き出て、×印の罅が少しだけ大きくなる。

「この程度の恐怖じゃ、罅が大きくならないのよね。

 生き物を凍らせれば恐怖も大きいから、大きくなるはずだけど……」

 お雪は溜息をついた。

 それを、木々の陰から勇気とディアーナが覗いていた。

 キユウは勇気に囁く。

勇気、エルフ、このままじゃ、見捨里市が凍りつく。急いで倒さないと

「分かってるわ」

「でも……」

「なんだ?」

 木々の間から見えるお雪は、悩んだ表情で藪から出て行った。

 勇気は魅入られたように、ディアーナは真剣な表情でそっと追いかける。

「おい、勇気、エルフ! 何してる」

 お雪の後を、勇気とディアーナは静かにつけていった。

 

 勇気とディアーナは小声で話している。

さっき、お雪が小声で『恐怖を与えないと』って言ったわよね?

 って事は、お雪は恐怖を原動力にしているのかしら?

そうだと思う……

 怪は人々の恐怖を原動力にして動いているらしい。

 人々の希望を原動力にしている妖精とは大違いだ。

 それを知ったディアーナは、「人と怪は共存できない」と嘆いていた。

 勇気は、彼女を見て複雑な表情になった。

 

「やっぱり……怪のお雪ちゃんを倒さなきゃいけないのかな……?」




~次回予告~

見捨里市に雪女の力がさらに強く漏れ出した。
このままでは、見捨里市が雪女の力によって氷の町になってしまう。
しかし、お雪はどうしても生き物を殺したくないという。
お雪が抱く「決意」は、果たして何なのか……。
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