怪狩り ~ 人の絆と怪の決意   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

雪女のお雪は、たった一人で江戸の町を彷徨っていた。
お雪は見捨里市を凍り付かせるべく、彼女の力を見捨里市に送り込む。
次々と物体が凍り付く見捨里市。
どうやら、お雪は恐怖を与えないといけないらしい。
何故、お雪は人々を恐怖させようとしているのか。
彼女が抱く決意は、一体何なのか、勇気は複雑な気持ちになるのだった。


6 - 江戸を彷徨うお雪

 人っ子一人いない江戸の通り。

 周囲の木造の建物を、月明かりが淡く照らしている。

 そこを力なく彷徨うお雪は、まさに幽霊そのものだった。

 勇気とディアーナは物陰に隠れながら、そんなお雪を尾行する。

「いい加減にしろ、勇気! 長屋に戻って怪を倒す方法を考えるんだ!」

 キユウは勇気に、小声だが強い語気で言う。

 

「ミャー」

 不意に、どこかで猫の鳴き声がした。

 お雪は軒下に猫の母子を見つけて覗き込んだ。

 子猫は熱があるのか、小さく震えていた。

 それを心配して母猫が子猫の身体を舐めている。

「ミャー。ミャー」

 母猫が子猫を元気づけるように必死に声をかけ続ける。

 お雪はそんな親子をじっと見つめた。

「物を凍らせるより、生き物を殺した方が恐怖は大きいに決まってるわ。

 試しに、この親子を凍りつかせてみようか……」

 お雪は子猫にそっと近づき、じっと見た。

「ニャー!」

 母猫が不安げにお雪を見上げた。

「二匹同時に殺すよりも、子だけを殺した方がお前の恐怖は大きいんだろうね」

 母猫が異変を感じて身を硬くした。

「私が長屋の子供達にいじめられて殴られた時に、

 巳之吉おとっつぁんもそんな不安な表情をしてたわね」

 警戒心を強めていく母猫を、お雪は冷たく見つめる。

「子猫の事が心配なんだね。だったら、目の前で我が子が凍ったら、さぞかしショックだろうね。

 さぞかし恐怖も大きいだろうね。ふふふっ、ふふふふっ」

 お雪はそう呟くと、熱に浮かされている子猫を睨みつけた。

「ニャー!」

「シャアアアアアァ!」

 猫が一際大きく鳴いた瞬間、お雪が冷たい息を吹き出し、子猫の顔に冷気がかかる。

 母猫は毛を逆立てて、お雪に飛びかかったが、お雪の冷気は治まらない。

 子猫の頭がうっすらと白くなっていく。

「シャーッッ!」

 母猫がお雪にもう一度飛びかかろうとした、その時。

 

「ニャー!」

 子猫が元気に鳴き声を上げた。

 お雪が程よい冷気で熱を下げたのだ。

「ニャァー!」

 母猫が明るく鳴いて、子猫と頬を擦り合わせる。

 その様子を見てお雪が微笑んだ。

「元気に暮らすんだよ」

 お雪は猫の親子に声をかけると、ゆっくりと立ち上がった。

 

「今の私には生き物を殺すなんて出来ない」

 お雪の頬を一筋の涙が流れた。

 

 勇気、キユウ、ディアーナは、その一部始終を見ていた。

「ねえ、僕達は、お雪ちゃんを本当に倒さないといけないの?」

「あたしには、見逃す事しかできないわ」

 歩き去って行くお雪を見つめる勇気の気持ちは、辛くなっていた。

 今の質問はキユウだけでなく、自分への問いかけでもある。

「さっき、×印に冷気を吹き込んで、見捨里市を凍らせていたのを見ただろ?」

「そうだけど……。でも……」

「怪は怪だ」

「キユウ……」

「お雪! お雪!」

 巳之吉の声が背後から響いてきた。

 後ろを見ると、巳之吉の姿が通りの奥から近づいてくる。

 しかし、勇気とディアーナが向き直った時には、お雪の姿は既になかった。

「彼に話を聞こう」

 キユウの耳打ちに従って、勇気は巳之吉の前に出た。

「お願いです。話を聞かせてくれませんか?」

 巳之吉は立ち止まった。




~次回予告~

お雪の正体が雪女であるという真実を、巳之吉は知ろうとしていた。
それを伝えるかどうか、勇気達は迷った。
見捨里市か、巳之吉か……どちらを取るのだろうか……。
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