勇気達は1925年のエジプトで、考古学者、ハワード・カーターと出会った。
エジプトでもまた、ツタンカーメンの呪いに苦しむ者達はいた。
しかも、ツタンカーメンの魂はどこかに逃げ出していた。
大人達が勇気達を信頼しない中、ハワードだけは勇気達を信じていた。
そして、ツタンカーメンの呪いを解くべく、勇気達はハワードと同行するのだった。
少年説明中……
「……というわけなんです」
勇気はキユウに言われ、ハワードにキユウの存在と、人々が倒れた原因を話した。
「幽霊? それに、棺の中から逃げたツタンカーメン?」
「正確には、逃げたのは怪になったツタンカーメンの魂です」
「怪ねぇ。うーん、怪かぁ……」
ハワードは、勇気の事を信用すると言ったものの戸惑っているようだ。
「お雪ちゃんの時も、巳之吉は全然信じてくれなかったわ。なんで?」
「知らない世界の事は、誰だって簡単には受け入れる事ができないものだよ」
「アルカディア*1やどこか*2ではしっかり認知されてるのに……」
「だけどまぁ、ハワードさんの場合は少し違うようだね」
勇気とディアーナがハワードの方を見ると、ハワードは何故か嬉しそうな顔をしていた。
「いやぁ、世の中知らない事ばかりだ。幽霊に怪に、それから妖精。
うーん、凄いねぇ。ロマンを感じるねぇ」
どうやらハワードは、皆の事を心配しながらも、どこかワクワクしているようだ。
「考古学者というものは、知らないものを知る事に喜びを感じる人達だからね」
「そうなんだ……」
勇気はふと、10年前に死んだ父親の事を思い出した。
ハワードを見ていると、父親もこんな風に好奇心旺盛で純粋だったのかもと思えた。
「それで勇気君、キユウ君、ディアーナ君、ノノ君。
ツタンカーメンが潜んでいそうな場所を知らないかって話だよね?」
「そうです。多分、見つかりにくい場所にいると思うんです」
これだけ人がいて、怪を見た人がいないとは、恐らく、どこかに隠れているのだろう。
「もしかしたら、あそこかも」
「どこですか?」
「谷の外れに、最近小さな穴が見つかってね。
あまりにも小さいから、作っている途中で破棄された墓だと思って、誰も調査してないんだ」
誰も調査していないとは、潜むには絶好の場所だ。
「みんな……」
「ああ!」
「ええ!」
「ハワードさん、今すぐ案内してください!」
勇気達は、谷の外れにやってきた。
予想通り、発掘の作業員や見学をしている人達も全くいない。
しんと静まり返っていて、乾いた風だけがかすかに吹いていた。
「ここだ……」
ハワードは、ある壁の前で立ち止まった。
そこには、屈めば人が一人入れるぐらいの小さな穴が開いていた。
「2mも進めば、突き当たりになってしまうんだけどね」
「そんなにせまいの? ノノ、みたい」
そんなところに怪が潜んでいるだろうか。
ノノは身を屈めると、とりあえず穴を覗いてみた。
「えっ?」
穴の中に、奥まで続く通路が見える。
「ハワードおじさん、みちがあるよ!」
「何だって?」
ハワードは身を屈めて中を確認した。
「本当だ! こんなもの、いつの間に?」
「ツタンカーメンがやったんだろうね」
キユウが、ハワードの横で穴を覗きながら言った。
「小さな穴なんだからみんな調査をしなかったけど、隠し通路があったんだな」
「じゃあ、ツタンカーメンはこの中に……?」
ノノは、ハワードの方を見た。
「ハワードおじさんはここでまってて! ノノたちがなんとかするよ!」
「待った! 私も手伝うよ!」
ノノ、勇気、キユウ、ディアーナが中に入ろうとすると、ハワードがノノの肩を掴んだ。
「ハワードおじさん、ツタンカーメンおにいちゃんは、ジャネットおねえちゃんとおなじだよ?」
「だからだよ。元はと言えば、私がツタンカーメンの棺を開けてしまったせいだろう?」
「ハワードおじさんは、しらなかったんだよね?」
「知らないからって許されるわけじゃない。そのせいで、みんなが苦しんでいるんだ。
それに、女子供だけで危険な事をさせるなんて、英国紳士として放っておけないからね」
「ハワードおじさん……」
ハワードは好奇心旺盛なだけではなく、優しく、勇気もある。
「翼ある者、どうせなら彼にも手伝ってもらおう」
「ゆうきおにいちゃん、おねがい!」
「ハワードさん、キユウも『手伝ってもらおう』って言っています!」
「よし勇気君、キユウ君、ディアーナ君、ノノ君、行くぞ!」
「分かったわ。……ジャネット、大丈夫よね」
ハワードは、先陣を切って中に入って行った。
「くらいなぁ……」
中は真っ暗で、通路は狭く、あちこち曲がりくねっている。
緩やかな坂になっていて、少しずつ下っているようだ。
「こんな事なら、ランプを持ってくるんだったねぇ」
「そうね」
先頭を歩くハワードが今更ながらに言う。
ディアーナには暗視能力があるので、問題なかったが。
「ハワードさん、この道はどこまで続いているんですか?」
「うーん。分からないねぇ。どの王の墓の構造とも違うようだ。
まるで、何かを隠すために、これだけ曲がりくねった通路にしているような気がするねぇ」
「何かを?」
勇気はハワードの背中を見ながら、ごくりと唾を飲み込む。
その時、前方にうっすらと明かりが見えた。
勇気、ディアーナ、ノノ、ハワードは同時に身構えた。
「みんな、油断するな」
「分かってる……」
キユウが浮かびながら注意する。
勇気は観光ガイド、ディアーナは双剣を強く握りながら、
ハワードと共に部屋に足を踏み入れた。
「ここは……?」
そこは、10m四方ほどの空間だった。
壁に松明が取り付けられていて、部屋の中をぼんやりと照らしている。
細かい文字が壁にも天井にもびっしりと刻まれていた。
「これって確か……ヒエログリフ、だよね?」
ヒエログリフは、博物館で見た象形文字だ。
だが、肝心のツタンカーメンはどこにもいなかった。
「何なんだ、この部屋は? こんな部屋、見た事ないぞ」
「結構荘厳な部屋ね」
「わーい、すごいねー!」
ハワード、ディアーナ、ノノは未知の部屋を前にして、戸惑いながらも興奮しているようだ。
一方、キユウは壁に刻まれたヒエログリフをじっと見つめていた。
「なるほど、この部屋にはそういう意味があるのか」
「キユウ、もしかしてヒエログリフを読めるの?」
「ああ。どうやら、ツタンカーメンは潜むためにこの部屋に入ったわけじゃない。
元々、この部屋に来る事が目的だったんだ」
「どういう事?」
「ここは、王の復活後の玉座の間らしい」
「復活後の玉座の間……?」
勇気、ディアーナ、ノノは戸惑いながら部屋を見回した。
「ツタンカーメンは、18歳の時、暗殺されて死んだんだ。
そして、彼が信仰していたものが異端だと見なされて、
後世の王によって、その存在も消されてしまったと言われているんだ」
「ちょっと! それじゃ、無辜の怪物*3になるじゃない。そんな訳ないでしょ!」
「……この世界ではそうなんだ」
暗殺された挙句、存在そのものも忘れ去られてしまった。
人間に強い怨みを抱くようになるのも無理がないのかもしれない。
唯一、ディアーナだけはそれを否定していたが、
それは彼女の性善説を表しているのかもしれない。
「ところで、話は変わるけど、この部屋は何なの?」
「恐らくこの部屋は、ツタンカーメンの死後、彼の信者が復活を信じて作った部屋なんだろう」
「でも……こんな薄暗い場所が玉座の間なんて……?」
その時、勇気は奥の壁にあるものを見つけた。
ヒエログリフの中に、大きな『太陽』と『月』のマークが刻まれていたのだ。
「これって!」
勇気は、右手に嵌めたグローブを見る。
壁に刻まれた二つのマークは、グローブの羅針盤にあるマークとそっくりだった。
「キユウ、どうしてこのマークがここに?」
「マークだって? まさか!」
キユウはハッとすると、勇気、ディアーナ、ノノを見た。
「今すぐこの部屋を出るんだ!」
「え?」
「きゃあ!」
次の瞬間、部屋中のヒエログリフが輝いた。
壁に刻まれた太陽と月のマークも、激しく光り輝く。
次の瞬間、勇気達はその光に飲み込まれた。
「「「うわあああああ!!!」」」
「「きゃあああああ!!!」」
~次回予告~
時空を繋ぐ穴を抜け、ピラミッドの外にやってきた勇気達。
そこで四人はついに、無辜の怪、ツタンカーメンと出会う。
人間を憎むツタンカーメンを倒し、見捨里市とエジプトに平和を取り戻せるのだろうか。