怪狩り ~ 人の絆と怪の決意   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

勇気達は1925年のエジプトで、考古学者、ハワード・カーターと出会った。
エジプトでもまた、ツタンカーメンの呪いに苦しむ者達はいた。
しかも、ツタンカーメンの魂はどこかに逃げ出していた。
大人達が勇気達を信頼しない中、ハワードだけは勇気達を信じていた。
そして、ツタンカーメンの呪いを解くべく、勇気達はハワードと同行するのだった。


5 - 秘密の部屋

 少年説明中……

 

「……というわけなんです」

 勇気はキユウに言われ、ハワードにキユウの存在と、人々が倒れた原因を話した。

「幽霊? それに、棺の中から逃げたツタンカーメン?」

「正確には、逃げたのは怪になったツタンカーメンの魂です」

「怪ねぇ。うーん、怪かぁ……」

 ハワードは、勇気の事を信用すると言ったものの戸惑っているようだ。

「お雪ちゃんの時も、巳之吉は全然信じてくれなかったわ。なんで?」

「知らない世界の事は、誰だって簡単には受け入れる事ができないものだよ」

「アルカディア*1やどこか*2ではしっかり認知されてるのに……」

「だけどまぁ、ハワードさんの場合は少し違うようだね」

 勇気とディアーナがハワードの方を見ると、ハワードは何故か嬉しそうな顔をしていた。

「いやぁ、世の中知らない事ばかりだ。幽霊に怪に、それから妖精。

 うーん、凄いねぇ。ロマンを感じるねぇ」

 どうやらハワードは、皆の事を心配しながらも、どこかワクワクしているようだ。

「考古学者というものは、知らないものを知る事に喜びを感じる人達だからね」

「そうなんだ……」

 勇気はふと、10年前に死んだ父親の事を思い出した。

 ハワードを見ていると、父親もこんな風に好奇心旺盛で純粋だったのかもと思えた。

「それで勇気君、キユウ君、ディアーナ君、ノノ君。

 ツタンカーメンが潜んでいそうな場所を知らないかって話だよね?」

「そうです。多分、見つかりにくい場所にいると思うんです」

 これだけ人がいて、怪を見た人がいないとは、恐らく、どこかに隠れているのだろう。

「もしかしたら、あそこかも」

「どこですか?」

「谷の外れに、最近小さな穴が見つかってね。

 あまりにも小さいから、作っている途中で破棄された墓だと思って、誰も調査してないんだ」

 誰も調査していないとは、潜むには絶好の場所だ。

「みんな……」

「ああ!」

「ええ!」

「ハワードさん、今すぐ案内してください!」

 

 勇気達は、谷の外れにやってきた。

 予想通り、発掘の作業員や見学をしている人達も全くいない。

 しんと静まり返っていて、乾いた風だけがかすかに吹いていた。

「ここだ……」

 ハワードは、ある壁の前で立ち止まった。

 そこには、屈めば人が一人入れるぐらいの小さな穴が開いていた。

「2mも進めば、突き当たりになってしまうんだけどね」

「そんなにせまいの? ノノ、みたい」

 そんなところに怪が潜んでいるだろうか。

 ノノは身を屈めると、とりあえず穴を覗いてみた。

「えっ?」

 穴の中に、奥まで続く通路が見える。

「ハワードおじさん、みちがあるよ!」

「何だって?」

 ハワードは身を屈めて中を確認した。

「本当だ! こんなもの、いつの間に?」

「ツタンカーメンがやったんだろうね」

 キユウが、ハワードの横で穴を覗きながら言った。

「小さな穴なんだからみんな調査をしなかったけど、隠し通路があったんだな」

「じゃあ、ツタンカーメンはこの中に……?」

 ノノは、ハワードの方を見た。

「ハワードおじさんはここでまってて! ノノたちがなんとかするよ!」

「待った! 私も手伝うよ!」

 ノノ、勇気、キユウ、ディアーナが中に入ろうとすると、ハワードがノノの肩を掴んだ。

「ハワードおじさん、ツタンカーメンおにいちゃんは、ジャネットおねえちゃんとおなじだよ?」

「だからだよ。元はと言えば、私がツタンカーメンの棺を開けてしまったせいだろう?」

「ハワードおじさんは、しらなかったんだよね?」

「知らないからって許されるわけじゃない。そのせいで、みんなが苦しんでいるんだ。

 それに、女子供だけで危険な事をさせるなんて、英国紳士として放っておけないからね」

「ハワードおじさん……」

 ハワードは好奇心旺盛なだけではなく、優しく、勇気もある。

「翼ある者、どうせなら彼にも手伝ってもらおう」

「ゆうきおにいちゃん、おねがい!」

「ハワードさん、キユウも『手伝ってもらおう』って言っています!」

「よし勇気君、キユウ君、ディアーナ君、ノノ君、行くぞ!」

「分かったわ。……ジャネット、大丈夫よね」

 ハワードは、先陣を切って中に入って行った。

 

「くらいなぁ……」

 中は真っ暗で、通路は狭く、あちこち曲がりくねっている。

 緩やかな坂になっていて、少しずつ下っているようだ。

「こんな事なら、ランプを持ってくるんだったねぇ」

「そうね」

 先頭を歩くハワードが今更ながらに言う。

 ディアーナには暗視能力があるので、問題なかったが。

「ハワードさん、この道はどこまで続いているんですか?」

「うーん。分からないねぇ。どの王の墓の構造とも違うようだ。

 まるで、何かを隠すために、これだけ曲がりくねった通路にしているような気がするねぇ」

「何かを?」

 勇気はハワードの背中を見ながら、ごくりと唾を飲み込む。

 その時、前方にうっすらと明かりが見えた。

 勇気、ディアーナ、ノノ、ハワードは同時に身構えた。

「みんな、油断するな」

「分かってる……」

 キユウが浮かびながら注意する。

 勇気は観光ガイド、ディアーナは双剣を強く握りながら、

 ハワードと共に部屋に足を踏み入れた。

 

「ここは……?」

 そこは、10m四方ほどの空間だった。

 壁に松明が取り付けられていて、部屋の中をぼんやりと照らしている。

 細かい文字が壁にも天井にもびっしりと刻まれていた。

「これって確か……ヒエログリフ、だよね?」

 ヒエログリフは、博物館で見た象形文字だ。

 だが、肝心のツタンカーメンはどこにもいなかった。

「何なんだ、この部屋は? こんな部屋、見た事ないぞ」

「結構荘厳な部屋ね」

「わーい、すごいねー!」

 ハワード、ディアーナ、ノノは未知の部屋を前にして、戸惑いながらも興奮しているようだ。

 一方、キユウは壁に刻まれたヒエログリフをじっと見つめていた。

「なるほど、この部屋にはそういう意味があるのか」

「キユウ、もしかしてヒエログリフを読めるの?」

「ああ。どうやら、ツタンカーメンは潜むためにこの部屋に入ったわけじゃない。

 元々、この部屋に来る事が目的だったんだ」

「どういう事?」

「ここは、王の復活後の玉座の間らしい」

「復活後の玉座の間……?」

 勇気、ディアーナ、ノノは戸惑いながら部屋を見回した。

「ツタンカーメンは、18歳の時、暗殺されて死んだんだ。

 そして、彼が信仰していたものが異端だと見なされて、

 後世の王によって、その存在も消されてしまったと言われているんだ」

「ちょっと! それじゃ、無辜の怪物*3になるじゃない。そんな訳ないでしょ!」

「……この世界ではそうなんだ」

 暗殺された挙句、存在そのものも忘れ去られてしまった。

 人間に強い怨みを抱くようになるのも無理がないのかもしれない。

 唯一、ディアーナだけはそれを否定していたが、

 それは彼女の性善説を表しているのかもしれない。

「ところで、話は変わるけど、この部屋は何なの?」

「恐らくこの部屋は、ツタンカーメンの死後、彼の信者が復活を信じて作った部屋なんだろう」

「でも……こんな薄暗い場所が玉座の間なんて……?」

 その時、勇気は奥の壁にあるものを見つけた。

 ヒエログリフの中に、大きな『太陽』と『月』のマークが刻まれていたのだ。

「これって!」

 勇気は、右手に嵌めたグローブを見る。

 壁に刻まれた二つのマークは、グローブの羅針盤にあるマークとそっくりだった。

「キユウ、どうしてこのマークがここに?」

「マークだって? まさか!」

 キユウはハッとすると、勇気、ディアーナ、ノノを見た。

「今すぐこの部屋を出るんだ!」

「え?」

「きゃあ!」

 次の瞬間、部屋中のヒエログリフが輝いた。

 壁に刻まれた太陽と月のマークも、激しく光り輝く。

 次の瞬間、勇気達はその光に飲み込まれた。

 

「「「うわあああああ!!!」」」

「「きゃあああああ!!!」」

*1
ディアーナの故郷。剣と魔法のファンタジー世界。

*2
『東方Project』の舞台、幻想郷。

*3
『Fate』のスキル。後世のイメージで能力や姿が変わる。




~次回予告~

時空を繋ぐ穴を抜け、ピラミッドの外にやってきた勇気達。
そこで四人はついに、無辜の怪、ツタンカーメンと出会う。
人間を憎むツタンカーメンを倒し、見捨里市とエジプトに平和を取り戻せるのだろうか。
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