突然、人間と小鳥が見捨里市から消えた。
原因となる怪を狩るため、1975年の日本に辿り着いた勇気、キユウ、ディアーナ、ノノ。
そこに住む人々はどうやら、ツチノコを捕まえようとしているらしい。
彼らに捕獲されては面倒な事になるため、四人は山の中でツチノコを探しに行くのだった。
山の中は、鬱蒼とした木々が生いていた。
勇気とディアーナはキユウと共に歩き続け、ノノは羽が周囲を舞いながら、空を飛んでいる。
もう1時間近く経った。
山道はなくなり、勇気は方向もよく分からないままに、茂みの中を進んでいた。
「ねぇ、キユウおにいちゃん、ツチノコはどこにいるの?」
ノノは、前方をプカプカと浮かぶキユウに尋ねる。
「うーん、もう少し奥かもしれないね」
「ほんと?」
「あれだけ人が来たんだ。怖くて奥へ逃げたんだよ。ツチノコは本来、気が弱い怪だからね」
「もじがあかい。ほんとのこと?」
キユウの言葉に、ノノは何か引っかかった。
突然、茂みが激しく揺れた。
「うわあっ!」
「きゃあ!」
勇気は怪が現れたのだと思い、とっさにガス缶を構える。
ディアーナもレイピアに手をかける。
しかし、そこにいたのは、ジーンズ姿の男性二人と女性一人だった。
三人は皆、虫取り網を持っている。
ツチノコのイベントに参加している人達のようだ。
「ねぇ、君、この辺りで、眼鏡をかけた男性を見なかったかな?」
長髪の男性が、ディアーナに尋ねる。
「え? 見てないわよ」
森に入った直後は、ツチノコを探す人達を何人も見かけたが、
奥へと進むにつれて、誰も見かけなくなっていた。
「ちょっと、隆志君、どうするのよ?」
「お前が奥まで行ってみようって言ったせいだぞ!」
赤いヘアピンをつけた女性と、体格のいい男性が、隆志という名の長髪の男性に怒る。
「とにかく、正太郎を探さなきゃ」
「探す? あの、一体どうしたんですか?」
勇気は、隆志達から話を聞く事にした。
彼らは、この山の近くにある大学に通う大学生だった。
以前から、山ではツチノコらしい生き物がたびたび目撃されていたらしい。
そこで、町を挙げてイベントが行われる事になり、彼らも参加する事にしたのだが、
いくら探しても、ツチノコは見つからなかった。
そこで、隆志が森の奥へ行ってみようと言い出し、みんなでここまでやって来たと言う。
「だけど、一番後ろを歩いていた正太郎が、気づいたらいなくなってて」
「迷子になったって事か」
(いや、違うわね……)
隆志は、困惑した表情を浮かべながら言った。
しかし、ディアーナは気付いていた――正太郎は怪奇現象に巻き込まれた事に。
勇気とディアーナは周りの茂みを見る。
山道がないので、今自分がどこにいるのかもよく分からない。
途中で皆とはぐれたら、迷子になってしまうだろう。
「じゃあ、電話をしてみたらいいんじゃないですか?」
勇気はそう提案したが、それを聞いた隆志達はキョトンとしていた。
「こんなところで、どうやって電話なんかするんだよ?」
「それはもちろんスマホで」
「スマホ?」
隆志達はさらにキョトンとした顔になった。
「この時代にはスマホなんてないよ」
浮かびながら話を聞いていたキユウが口を挟む。
また、時代の壁が立ち塞がった。
昔は携帯機がなく、誰かと電話で話す時は、取り付けられた固定電話を使っていたのだ。
「40年以上前って、やっぱり凄い昔だよねぇ」
「アルカディアには時代の壁なんてなかったのに……」
「ノノたちは、おはなしできるけど……」
勇気は改めて昭和50年という時代にショックを受け、ディアーナとノノは溜息をついた。
一方、キユウは顎に手を当てて、隆志達をじっと見ていた。
「迷子か……」
キユウは何かを思うと、勇気の方を見た。
「彼らに、正太郎さんがいなくなった場所に連れて行ってもらうんだ」
「正太郎さんを探すって事?」
今は、ツチノコを探す方が先決ではないだろうか?
だが、正太郎の事も心配だ。
「キユウって優しいところもあるんだね!」
キユウの意外な一面を知り、勇気は嬉しくなる。
勇気、ディアーナ、ノノは早速、隆志達にその場に連れて行ってもらう事にした。
「ここだよ」
勇気、ディアーナ、ノノは、隆志達と共に、5分ほど歩いた場所にやって来た。
茂みと木々だらけで、他とあまり変わらない場所だが、近くに大きな岩がある。
「ちょうど、あの岩で休憩しようと思ったら、正太郎がいなくなってたんだ」
隆志がそう言うと、女性が話を続けた。
「私、休憩する1分ぐらい前まで、正太郎君と話をしてたのよ。
ほんの一瞬目を離した隙にいなくなっちゃったの」
どうやら、正太郎は突然消えるようにいなくなったらしい。
「勇気、この辺りをくまなく調べるんだ。エルフと翼ある者も、だぞ」
「わかった!」
「嫌だわ」
勇気とノノはとりあえず、隆志達と辺りを調べる事にした。
「正太郎さ~ん、いますか~? 返事をしてくださ~い!」
「しょうたろうさ~ん!!」
勇気とノノは辺りを歩きながら、正太郎に呼びかけ続けた。
隆志達もそれぞれ少しずつ離れ、同じように名前を呼んでいた。
しかし、返事はなく、勇気達の声は、鬱蒼と生い茂る木々の中に空しく響くだけだった。
「もしかして、一人で山を下りたのかも」
迷子になったのなら、それも考えられるだろう。
隆志は隣にいる体格のいい男性と、山を下りるかどうか相談し始めた。
「ねぇ、これ!」
「それって正太郎の!」
突然、少し離れた場所にいた女性が、黒縁眼鏡を持って声を上げた。
隆志と体格のいい男性が女性の元へ走り、勇気も慌ててディアーナと共に駆け寄った。
「ここに落ちてたの!」
女性は地面を指差すが、勇気はその地面を見て首を傾げた。
山の中はどこも雑草が生い茂っているが、女性が指差した地面だけは、
まるで雑草が抜かれたように、茶色い土が剥き出しになっていたのだ。
「やはりそうか……」
「どういう事なの?」
勇気はキユウに原因を聞こうとした。
その瞬間、音と共に、女性が突然、目の前から消えた。
~次回予告~
突然、音と共に消滅した真美。
さらに、近くにあった植物が次々と消えていき、ついには隆志も――
このままでは勇気達も同じ運命を辿ってしまう。
ツチノコを止めなければ、と勇気達は勇気を振り絞ってツチノコに挑むのであった。