怪狩り ~ 人の絆と怪の決意   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

消えた大学生を助けるべく、勇気達はツチノコを追いかける。
山の奥に行くと、勇気達はとうとうツチノコと遭遇する。
だが、ツチノコの何でも吸い込む能力の前に勇気は太刀打ちできなかった。
ディアーナとノノの攻撃も、有効打にはならなかった。
勇気が持っている武器は、ヘリウムガス入りの缶のみ。
果たして、勇気、ディアーナ、ノノは、ツチノコを倒す事ができるのだろうか。


6 - 立ち向かえ

 勇気とディアーナは森の中を必死に走り、ノノは空を飛ぶ。

 ツチノコは、ピョンピョンと跳ねながら三人を追いかけていた。

 思った以上にスピードが速い。

(このままじゃ、僕達は……)

 男性達はかなり離れた場所にいたにも関わらず、ツチノコに吸われて飲み込まれてしまった。

 あんな小さな身体なのに、恐ろしい消化力があるらしい。

 このままでは、同じように飲み込まれてしまう。

 勇気は恐怖を感じ、みるみる顔が青ざめていった。

 ディアーナとノノの表情が険しくなる。

「来るぞ!」

 キユウが横を飛びながら声を上げた。

 後ろを見ると、ツチノコがピョンピョンと跳ねながら口を大きく開けている。

「やばい!」

「あたし達に任せて!」

 ツチノコが口を開けてディアーナを吸い込もうとすると、

 ノノが翼を羽ばたかせてツチノコを吹き飛ばす。

「でいやぁぁぁぁぁあぁぁぁぁ!!」

 ディアーナが飛び上がり、風を纏った双剣を勢いよくツチノコに振り下ろす。

 ツチノコの身体は真っ二つになった。

「やった!」

「……まだ油断は禁物よ!」

 真っ二つになったツチノコの身体が再生する。

 そして再び、ツチノコは襲い掛かってきた。

 ツチノコは、闇雲に勇気達を追っているわけではなさそうだ。

 狙いを定めて、飲み込むチャンスを伺っているのだ。

 後ろで、ツチノコが空気を吸う音が響く。

 すると、勇気の目にあるものが映った。

 それは、大きな岩だった。

 勇気達は気づかないうちに、先ほど隆志達といた場所に戻って来ていたのだ。

「そうだ、あそこなら!」

 勇気は慌てて岩の陰に隠れた。

「ちょっと、何隠れてるのよ!」

「だから、僕は君達と違って、まともに戦う力なんてないんだよ!」

 

「それにしても、ツチノコがあんなに凶暴になるとは予想外だよ」

「ふ、普段はあんなんじゃないの?」

「ああ、元々は気が弱い怪だ。だけど、人間が捕まえようとしたから怒ってるんだろう」

「そんな……」

 このままでは、勇気が飲み込まれるのも時間の問題だ。

「なあに、大丈夫よ。あたしの剣捌き、見た?」

「う、うん……」

 鳥に変身したノノが翼をはためかせる。

 ディアーナとノノの派手な戦いに、勇気は感心した。

 しかし、強いとはいえ、女性二人だけでは心許ないと勇気は思った。

「そうだ! ツチノコを倒す方法を、キユウが思いついたわよ!」

「勇気、これを」

 キユウは、勇気が持っているヘリウムガスの缶を見た。

「これでどうやって……?」

「ツチノコは、一度吸い込んだものを吐き出せない。

 だから最初はヘリウムガスを吸わせれば、ツチノコを上空へ飛ばして倒せると思ったんだ」

「だけど、ツチノコは木とか人とかも吸ってたよ?」

「僕の思っていた以上にツチノコの胃袋は異次元に大きいようだ。

 エルフと翼ある者の攻撃もツチノコにはあまり効果がなかったし、

 ヘリウムガスでとどめを刺すのは不可能だろう。全く笑えないね」

「えええ? 笑えないのはこっちだよ! それじゃあ、どうするんだよ?」

「勇気、人生なんて常に予想外なものだ。だけど、諦めなければ道は開ける。

 今回はラッキーだったよ。その缶があるからね」

「ヘリウムガスじゃ倒せないんでしょ? じゃあ、何? 缶で殴って倒すとでも言うの?」

「あたしじゃないんだから」

「違うよ、その缶をツチノコに飲み込ませるんだ」

「飲み込ませる……?」

 勇気は、キユウの言っている事が全く理解できなかった。

 そんな勇気に、キユウは話を続けた。

「ツチノコは、眼鏡やヘアピンやベルトを飲み込まなかったし、あのエルフの剣は効果的だった。

 それは、どうしてだと思う?」

「どうしてって、それは、ええっと……」

「恐らく、ツチノコは金属を消化できないんだよ。つまり、金属が弱点という事だ」

「あっ!」

 勇気は持っている缶を見つめた。

 まさに、缶は金属の塊だ。

「チャンスはたった一度だ。失敗したら、君はツチノコに飲み込まれてしまうだろう」

「たった一度? 僕、そういうの凄く弱いんだけど!」

「あなた、一般人だしね」

「弱いとか強いとかの問題じゃない。これは、勇気、君にしかできない事だ!」

「僕にしか、できない……」

 勇気は唾を飲み込む。

 缶をツチノコに飲み込ませる事ができるのは、今この場に一人しかいない。

「わ、分かった。僕、やるよ」

 勇気は意を決し、ゆっくりと立ち上がると、茂みの方を見た。

 

「ツチノコ! 僕はここだ!」

 勇気は恐怖を押し殺しながら、岩の前に立った。

 ヘリウムガスの缶は、身体の後ろに隠している。

 ツチノコがピョンピョンと跳ねながら近づいてくる。

 そして、勇気の前に着地した。

「チー、チー」

 ツチノコが勇気を睨む。

 勇気は恐怖を感じながらも、目を逸らすまいと、ツチノコを睨み返した。

 風が勇気とツチノコの間を吹き抜ける。

 草が宙を舞い、ツチノコを見つめる勇気の視線を一瞬邪魔した。

 その瞬間、ツチノコが口を大きく開けた。

「うあっ!」

 勇気は避けるのが僅かに遅れ、物凄い勢いで身体を引っ張られた。

「ああっ、勇気!」

 キユウは失敗したのだと思い、叫ぶ。

 だが、勇気はバランスを崩しそうになりながらも、

 必死に目を大きく見開き、ツチノコを見ていた。

 

僕は……僕は、真之勇気だ!!

 勇気は持っていたヘリウムガスの缶を、ツチノコに向かって投げつけた。

 ツチノコの口の中に缶が飲み込まれる。

 勇気は、転がりながらも岩にしがみつく。

 

「勇気!」

「ツチノコは?」

 キユウが傍に飛んできた。

 勇気は、あちこちすり傷だらけの身体を起こして、ツチノコの方を見た。

「チイチイイイイイイイ!」

 ツチノコはもがいていた。

 腹を見せてひっくり返ると、バタバタとのたうち回る。

 金属を飲み込んでしまい、苦しんでいたのだ。

「チチー、チー、チイイイイ!」

 ツチノコの弱々しい鳴き声が響き、やがて動かなくなった。

 黒い煙が辺りに飛び散り、ツチノコは消えてしまった。




~次回予告~

ツチノコを倒し、怪奇現象は無かった事になった。
見捨里市で失踪した高橋と小鳥も、元の場所に戻ってくるだろう。
そして、勇気達は大切なものを知る事になる……。
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