ツチノコを倒し、怪奇現象を無かった事にした勇気達。
気が弱かったツチノコが暴れた原因は、人々がツチノコを捕まえようとしたからだった。
どんな時でも相手の気持ちを考える事。
それを勇気は、キユウから教わるのだった。
黒マントの紳士と聖少女
「ねぇ、ジャネット! 次に出てくる怪は誰?」
路地裏の建物の中で、ディアーナはジャネットに次の怪について聞こうとしていた。
すると、ジャネットはいつになく真剣な表情になり、じっとディアーナの顔を見つめた。
そして、ディアーナに向かって静かにこう言った。
「あなたは留守番をしてください」
「え? ど、どうして?」
「その怪と遭遇した時、あなたは他人に迷惑をかける事でしょう。何も悪い事は言いません。
今日はノノ一人だけで行きなさい」
「ジャネットおねえちゃん! ノノひとりは、こわくていやだよ!」
ノノは泣きながらジャネットに抱き着く。
ジャネットは優しく、ノノの頭を撫でた。
「あたしが迷惑をかけるって、どういう事?」
「その怪は……あなたの心を乱すから……」
「……?」
ディアーナには訳が分からなかった。
だが、ジャネットはディアーナを行かせたがらないようだ。
ディアーナは納得がいかず、ジャネットに言った。
「なんでよ! なんで、あたしだけ行っちゃいけないのよ!
それに、ノノ一人じゃ彼女が可哀想よ! あたしも一緒に行くわ!」
「……分かりました。ただし、絶対に落ち着いてくださいね」
「はーい」
ジャネットは渋々、ディアーナとノノを調査に向かわせるのだった。
そして……。
「キィキィ! キ、キィ、キィー!」
石造りの天井の隅の暗がりで、蝙蝠が鳴いている。
ランプと蝋燭、そして壁に作り付けられた暖炉の炎に照らされた大広間。
ここは西洋の大きな城の中だ。
片目を包帯で隠した少年が、ここの城主を訪ねてきていた。
少年を描き入れた城主が奥に引っ込んだのは数分前だった。
全身黒ずくめの、オールバックが特徴的な男が戻ってきた。
羽織った黒マントの裾が広がり、まるで大きな蝙蝠のようだ。
少年は椅子からすっと立ち上がった。
鋭い眼光で堂々と歩き、少年の顔のテーブルに、何かを置くために手を伸ばした。
しかしその手も顔も、血の気のない死人のように青白かった。
「君の相談を受けてから、これが必要だろうと思ってね」
テーブルに置かれたのは、黒い鈴である。
少年は目を見張った。
「これは、初めて見ました」
「私は君の何百倍も生きている。何しろ私は伯爵だ。手に入らないものはない」
「はい。ですから、協力をお願いしたのです」
伯爵は奇妙な表情で、少年の片方だけの目をじっと覗き込んだ。
「……なんとも不思議だ」
「何がですか?」
「君の賢さは少年とは思えない」
「とんでもないです。あなたを尊敬する単なる少年です」
少年は畏まって頭を垂れた。
少年の自分への敬意に、紳士は満足して微笑んだ。
「とにかく、私に任せたまえ」
紳士はマントを軽く翻すと、
テーブルの端に置かれた赤い液体の入っている純金の杯を手にした。
「勇気という子と一緒にいる幽霊を、私が抹殺する。間違いなく約束するよ」
「お願いします」
前祝いといわんばかりに、乾杯の要領で純金の杯を頭上に掲げる。
少年は再び頭を下げた。
「心配するな」
紳士は頷くと、赤い液体をグイと一気に飲み干した。
「君のおかげで、こんなものより新鮮で美味しいものが幾らでも飲めるようになる」
喜びがこみ上げ、微笑みは高らかな笑いとなった。
「はははっ、はははははっ!」
地獄から響くような笑い声が大広間にこだまする。
赤く染まった伯爵の口から牙が見えた。
頭を下げたままの少年は、そんな伯爵をチラリと見る。
「期待してますよ。怪の伯爵さん」
そう呟くと、冷たい笑みを口元に浮かべた。
~次回予告~
勇気は、見捨里小学校である手伝いをする事になった。
そこで出会った少女の穏やかな性格に、勇気は次第に惹かれていった。
だが、そんな平和なはずの見捨里市に、怪が来ないわけがなく――