アメリカの町に着いた勇気、キユウ、アプリル(勇気は連れていかれた)。
保安官は頑固だったが、町を守るという心は勇気達と変わらず、
全く話が通じない人物ではなかった。
意外と楽しく過ごしていたが、肝心の怪を狩る方法が思い浮かばない。
勇気達が考えようとすると、突然、地震が起きるのだった。
「地震よ!」
「違う! ただの地震じゃない」
ナンシーが叫ぶと、キユウが首を横に振った。
「な、な、なんだと?」
「これはただの地震じゃないってキユウが言ってる」
「まさか? これがさっき言っていたラジオの故障と地震……?」
勇気が保安官に声をかけると、保安官はおろおろとした。
「行くぞ!」
「ああ!」
キユウとアプリルはドアの方へと飛んで行った。
「ちょっと待って!」
勇気も慌てて後を追おうとするが、そんな勇気の肩を保安官が掴んだ。
「君、どこに行く気だ!」
「地震だったら外に出るのは危ないわ。カウンターの下に隠れて」
ナンシーがカウンターの傍に立って勇気を呼ぶ。
勇気は保安官の手を振り払った。
「これはただの地震じゃない!」
「これが君の言うモンスターの仕業なのか?」
保安官のその言葉を聞いたキユウは勇気に向いた。
「そうだ! でも勇気の夢の通りなら、
フラットウッズ・モンスターは僕が知っているよりも恐ろしい怪だ!」
キユウの声は勇気とアプリル以外には聞こえない。
勇気は保安官に絶対に信じて欲しいと願って言う。
「キユウが知っているよりも恐ろしい怪なんです。ここの町が燃えちゃうんです!」
「なんだと? 燃えるってどういう事だ?」
保安官は勇気をまだ信じ切れなかった。
「説明は後です! 絶対に倒さないと!」
勇気は、そのまま外へと飛び出した。
「燃えるってどういう事なの?」
「君のバニーちゃんは空想だったんだろ? でも、あの子の話は空想じゃないのかもしれない」
ナンシーは怯えながら、保安官の方を見る。
保安官は勇気が出ていったドアの外を見て、唇を噛んだ。
「急がなくっちゃ!」
「だな!」
勇気は、キユウと、アプリルと共に、怪がいるであろう丘へ向かった。
すると前方から、一人の女性が走ってきた。
「助けて!」
「どうしたんだ?」
サンダルを左右逆に履いているため、余程慌てて出てきたのだろう。
アプリルが声をかけると、女性は来た道を指差した。
「家の裏にある森の上に、変な光が落ちたのが見えたの!」
彼女の家は、丘の上にあるらしい。
「どうやら、この人が最初の目撃者らしいね」
キユウが女性を見ながら言う。
「光って、まさかもう火の玉が、か? おい、避難しろ!」
やがて前方に、丘の上にぽつんと建っている一軒家が見えてきた。
家の向こうには、森が広がっている。
「さっきの人の家のようだね」
「怪は、あの森の中にいるんだよな?」
勇気は、テンプラステルンを強く握り締めると、意を決して森の中へ入った。
アプリルも、後に続いた。
森の中は、梟の声だけが静かに聞こえていた。
明かりはなく、真っ暗だ。
「懐中電灯を持ってきたらよかった……」
「だよなあ」
勇気とアプリルは、足場を確かめるように、慎重に前へと進んで行く。
「ねぇ、怪はどこなの?」
「さあ、この辺りだと思うけど」
「どこにいるんだよ……」
三人は周りを見るが、それらしき気配はなく、火球の光も全く見当たらない。
「もしかして、もう町の方へ行ったのかも……」
「おい、不安になるな!」
勇気は最悪の事態を想像して、唾をごくりと飲み込んだ。
アプリルはそんな彼を勇気づけようとすると、地面がまた大きく揺れた。
「うわ!」
「!?」
次の瞬間、上空から押し付けるような強い風が吹いた。
周りの木々が激しく揺れる。
勇気が驚いて顔を上に向けると、夜空に眩い光が現れた。
それは、大きな丸く赤い物体だ。
「あれって!」
「「UFO(じゃねぇか)!!」」
勇気が読んだ怪奇現象の本に載っていたイメージイラストとそっくりだった。
「どうやら、僕達の立っているこの場所に着陸するようだね。
僕は幽体だから平気だけど、君達はこのままだと押し潰されちゃうよ」
「はあ?」
勇気とアプリルは逃げようとするが、押し付ける風が強くて上手く走れない。
二人はバランスを崩し、地面に転んでしまった。
UFOが迫ってくる。
「あああ!」
「ちっ……!」
アプリルは舌打ちして、立ち上がった後に身構えた。
勇気は何とか立ち上がったものの、またバランスを崩してよろけてしまう。
「勇気、それは流石に笑えないよ!」
「分かってるってば! ああ、あああ!」
UFOが今まさに着地しようとする。
瞬間、誰かが勇気の腕を強く引っ張った。
轟音と共に木々が押し倒され、UFOが森に着陸した。
同時に、揺れが収まった。
「勇気! アプリル!」
キユウは浮かびながら二人の姿を捜すが、どこにも見当たらない。
「そんな! 勇気! アプリル!」
「こ、ここだよ……」
「俺は平気だぜっ」
声のした方を見ると、勇気とアプリルはUFOの傍にある草むらに隠れていた。
「無事だったんだね!」
「ああ、保安官が助けてくれたんだぜ」
二人の後ろでは、荒い息をついた保安官が地面に伏せていた。
彼がとっさに勇気の腕を掴んで、UFOの着陸を避けたのだ。
「君の話を信じるしかない。いや、君達と背後のキユウ君を信じるよ」
保安官は起き上がりながらUFOを見て、目をパチクリさせた。
「でも、これは、信じられない!」
「僕だって、数ヶ月前まで信じられなかったけど、怪は本当に存在してるんです!」
「ああ……この世界とは常識が違うんだな」
勇気は立ち上がると、UFOの方を見た。
すると、UFOの機体の底の一部が、ゆっくりと開いた。
「隠れるんだ!」
「人間はそうだろうが、俺は逃げも隠れもしない。さあ、かかってこい!」
「……」
キユウの言葉に息を呑んだ勇気は、
保安官を連れて近くの岩の隣に慌てて隠れ、岩の背後からそっと覗く。
アプリルは狼の姿に変身し、咆哮して前に立つ。
UFOは、学校の教室の一番後ろから黒板を見たくらいの位置にあった。
機体から開いた部分は、幅の広い滑りのようなスロープになった。
そこに緑のスカートのような下半身が下りてくる。
腰の両側には異常に長い手の指が見えてきて、骸骨のような細い腕と肩も見え始めた。
大きな襟がついた分厚い鎧のような緑の上半身が露わになってくる。
そして、一番上には玉葱のような頭に、大きな梟のような目があった。
「あ、あれが……!」
「あれが!」
「あれが?」
勇気もアプリルも保安官も同時に呟き、アプリル以外、慌てて口を塞いだ。
その得体の知れない存在は、奇妙な音を発して大きな目を怪しく白く尖らせた。
今まで戦った怪とはまるで違う。
3m近くある、異形の物体。
勇気達が戸惑っていると、キユウが口を開いた。
「あれが、フラットウッズ・モンスターだ!!」
~次回予告~
ついにフラットウッズ・モンスターと遭遇した勇気、キユウ、アプリル、保安官。
宇宙人という異質な存在に勇気は恐怖するが、保安官とアプリルは物怖じせずに立ち向かう。
しかし、フラットウッズ・モンスターに通常の攻撃は通用しなかった。
勇気が持ってきた武器は「テンプラステルン」のみ。
果たして、これを使ってフラットウッズ・モンスターを倒す事ができるだろうか。