怪狩り ~ 人の絆と怪の決意   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

アメリカの町に辿り着いた勇気達は、
フラットウッズ・モンスターを倒すための作戦を練っていた。
しかし、普通の人間にキユウは認識できないため、どう伝えればいいか分からなかった。
すると突然、原因不明の地震が起きた。
勇気達が外に出ると、UFOが空から現れ、中から「3メートルの宇宙人」が現れる。
ついに、勇気達はフラットウッズ・モンスターと遭遇するのだった。


6 - 保安官の決断

「ったく、フラットウッズ・モンスターめ……」

 奇妙な音を響かせるフラットウッズ・モンスターは、周囲を伺っている。

 勇気達は岩の陰でなおさら身を縮め、アプリルは愚痴を吐いている。

 その時、勇気は気付いた。

 保安官の頭は岩の隣に隠れているが、大きなお尻がはみ出ている。

「保安官さん、お尻を引っ込めて!」

「無理を言うな! この岩が小さすぎるんだ!」

「これぞ頭隠して尻隠さず、ってか」

 その時、フラットウッズ・モンスターが急に動きを止めた。

 目を点滅させながら、こちらに向いてくる。

「勇気達に気付いたのか?」

「しっ! そうじゃない。何かしようとしてるんだ」

 キユウが勇気に囁いた。

 すると、フラットウッズ・モンスターの顔が小刻みに揺れ、目の下に口が現れた。

 その口が大きく開いた瞬間、口から液体が放出された。

 アプリルは攻撃をかわして、フラットウッズ・モンスターを爪で切り裂くが、

 フラットウッズ・モンスターはすぐに再生する。

 また、液体は岩まで飛んで来る事はなかったが、勇気は強烈な臭いに鼻と口を塞いだ。

「これって!」

 教室に漂ってきた臭いだが、あの時よりも、もっと強烈だ。

「なんだ、この臭いは!」

「頭が痛いぜ……」

 強烈な臭いに保安官もゴホゴホとむせ、アプリルは頭がクラクラする。

 フラットウッズ・モンスターは、不気味な音を立てながら、森の中を動き始めた。

 その音を聞いた勇気は、校外学習で自動車部品工場に行った時を思い出した。

 部品を造る工作ロボットがこんな音を立てていた。

 今まで見た怪とはまるで違うと感じたのは、生き物ではなかったからだ。

「よりによって、どうしてこんな町に攻めてくるんだ」

 保安官は、腰につけたホルダーから、ピストルを取り出した。

「何するつもりですか?」

「決まってるだろ! あれを倒すんだ!」

「ああ、頼りになるぜ、保安官さんよぉ! ……っくぅ」

 保安官は、岩から出ると、ピストルを構えて狙いを定めた。

「一発で仕留めてやる!」

 保安官は引き金をしっかりと引く。

 ピストルの反動が保安官の腕を小さく跳ね上げ、

 銃弾が辺りを見回していたフラットウッズ・モンスターの身体に直撃する。

 だが、まるで水滴が弾かれるかのように、銃弾がその場に落ちた。

 フラットウッズ・モンスターの身体には、傷一つ付いていないようだ。

「そんな馬鹿な?」

「ちっ……」

 保安官が唖然となり、アプリルが舌打ちする。

 キユウはその様子を見て、小さく首を横に振った。

「やはり歯が立たないか……」

 フラットウッズ・モンスターがゆっくりこちらを向き始めた。

「やばいよ! どうやって倒すんだよ!」

 勇気がそう言うと、キユウは勇気の顔を見た。

「だから、あれを持ってきたんだ」

「ああっ! テンプラステルン!」

「それをモンスターの口に投げつけるんだ!

 一週間後の9月12日にフラットウッズ・モンスターに出会った家族や近所の子供達は

 オイルを撒き散らしていたと証言してるんだ。ヤツが口から出しているのは油の一種のはずだ」

「なるほど! これで固めるって事か!」

 勇気は、持っていたテンプラステルンの箱を開けた。

 いくつかのビニール製小袋に白い粉が入っていた。

 この小麦粉のような白い粉末がテンプラステルンで、ビニールの封を開けないと意味がない。

 勇気は小袋の先端を切って、モンスターに向かって投げつけたが、

 粉末は空に飛散して、全くモンスターに届かない。

「駄目だ! 粉だから届かないよ!」

「うあっ!」

 フラットウッズ・モンスターが、口からオイルを放出しながら、ゆっくりと近づいて来る。

「勇気はひとまず逃げろ! 俺は引きつけるからな!」

 アプリルの提案を保安官に告げた勇気は、走り出した。

 保安官もそれを追って走る。

 

さあ、来い! フラットウッズ・モンスター!!

 

 勇気は走りながら考える。

「この粉を何かに付けて投げないとあいつには届かないよ」

 すると、脇でゼイゼイと走っていた保安官が顔を向けた。

「要はそのテンプラなんとかをアイツの口に放り込めればいいんだろ?」

「そうですけど……!」

「俺の好物を思い出せ!」

「あ、そうか!」

 勇気は保安官がホットドッグにたっぷり砂糖を挟んでいたのを思い出した。

 切り込みを入れたホットドッグのパンにこのテンプラステルンを挟めば、

 モンスターの口に投げ入れられるかもしれない。

「ナンシーの店に取りに行くんだ!」

 保安官は立ち止まると、近づいてくるフラットウッズ・モンスターに向いた。

 アプリルの攻撃により、フラットウッズ・モンスターはボロボロだ。

「早く行け!」

 保安官は、再びピストルを構えた。

「保安官! ピストルは効かないよ!」

「分かってるさ。でも、君に言っただろ」

 保安官は銃口の狙いを定めてから言葉を続ける。

 

「どんな相手だろうと、この町の平和を乱す者は絶対に許さん、と」

 

 そう言うとピストルの引き金を絞り、三発続けて弾丸が発射された。

 三発とも、緑の不気味な胴体が跳ね返した。

 しかし、フラットウッズ・モンスターの気を保安官に惹きつけるには充分だった。

 その後、アプリルは爪でフラットウッズ・モンスターを切り裂く。

「保安官!」

「早く、ナンシーの店に行け!」

 保安官は自分の巨体、アプリルは自身の肉体を、勇気とは逆方向に走らせた。

「勇気、走るんだ! 保安官とアプリルは囮になってくれてるんだ。

 彼らの勇気を無駄にするんじゃない!!」

「……わ、分かった! 保安官、アプリルさん、待ってて! すぐ持って来るから!」

 キユウが勇気に怒鳴ると、勇気は叫んで駆け出した。




~次回予告~

フラットウッズ・モンスターとの戦いは、激闘を極めていた。
保安官とアプリルは町を守るという決意のもと、フラットウッズ・モンスターと戦う。
勇気は彼らを信じながら、とどめを刺すためにテンプラステルンを使った武器を持っていった。
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