怪狩り ~ 人の絆と怪の決意   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

ファフロツキーズを止めるべくイギリスの村にやってきた勇気達だが、
村人に「呪われ人」と呼ばれ、襲われた。
さらに、勇気のミスによってスリングショットを失ってしまう。
窮地を救ってくれたのは、元サーカス団のリサ。
彼女は勇気達に新たな武器として、サーカス団に所属していた時に使った弓矢を授ける。
これさえあれば、ファフロツキーズを倒す事ができるだろう。
しかし、勇気達の危機は、まだ去っていなかった――


4 - 戦う女達

「開けろ! いるのは分かってるぞ!」

 外から男の声が響く。

 ディアーナはレイピアとダガーを構え、睨みつけている。

 リサは戸惑いながら、ドアの傍にやって来ると鍵を開けた。

 すると、外から男の手が勢いよくドアをこじ開け、身体を強引にねじ込んだ。

「みんな見ろ! 俺の言った通り、ここにいたぞ!」

 鍬を振り上げて襲いかかろうとしてきた恰幅のいい男だ。

 彼の後ろには、農機具を持った村の人達が大勢集まっていた。

 皆、勇気達を見て、怯えながらも、怒りに満ちた表情を浮かべている。

「ちょっと、勝手に入らないでよ!」

「五月蠅い! まさか、新しい呪われ人を呼ぶとはな!」

 男達は農機具を構えたまま、家に乗り込んできた。

 

「きゃ!」

「リサ!」

 ディアーナはリサの傍に駆け寄る。

 リサは男達を睨みつけた。

「何度言ったら分かってくれるの!

 私もお父さんも、それにこの子達だって、呪いの雲とは何の関係もないの!」

「ふん、そんな事信じられるか!」

「そうだ! あんた達が来たせいで、この村は呪われたんだ!」

「余所者を村に住まわせるんじゃなかったわ!」

「みんな! こいつらを倒せば呪いの雲も消えるはずだ!」

「おおお!」

 男達は、持っていた農機具を大きく振り上げた。

 ディアーナは仕方がない……とレイピアを抜こうとした。

 だがその時、外から一人の男の子が家の中へ駆け込んで来た。

「おじさん、大変だ!」

 男の子は恰幅のいい男の元へ走った。

「呪われ雲がまた現れたんだ! だけど、ハリー達がまだ川の方にいて!」

「何だって!?」

 男は急に狼狽える。

 どうやら、ハリー達はまだ小さい男の子らしい。

「さあ行くわよ、リサ!」

「ま、待て! 逃がすと思ってるのか! この呪われ人が!」

 ディアーナはリサに声をかけると、家を出ようとした。

 男が慌ててドアの前に立ち、ディアーナ達を捕まえようとする。

 しかし、ディアーナはそんな男の手を振り払い、睨むように見つめた。

「あなた達、そんな事を言ってる場合じゃないでしょ!

 このままじゃ、ハリー達が死んじゃうかもしれないのよ!」

「ハ、ハリー……」

 その言葉に、男は動けなくなる。

 男は、最悪の事態を想像し、青ざめていた。

「あたしもリサも、この村のために戦おうとしてるのよ!

 だから、みんなはここで避難しなさい!

 あの呪いの雲は、あたし達が絶対に倒すわ! リサ、行くわよ!」

「ええ!」

 ディアーナとリサは、外へと飛び出した。

 

 その頃、勇気、キユウ、アプリルの三人は……。

「大丈夫かな、ディアーナ?」

「信じろよ、勇気、キユウ。俺達は仲間だろ?」

「仲間……」

 アプリルは笑顔で、勇気の肩に手を置く。

 キユウの肩にも手を置こうとしたが、幽霊である以上、触る事はできない。

「うん。ディアーナとリサさんは、僕の……いや、僕達の仲間だ。

 二人を信じられないなんて、僕には、できないよ」

「そうだ。自分を信じるだけじゃなくて、他人を信じる事も大事だよ。

 あの二人なら、必ず、ファフロツキーズを倒す事ができる……」

 三人は戦う女達を信じ、家の中で帰りを待っていた。

 

 その頃、見捨里市では、羽心、花恋、ノノが、パンダ公園の前までやって来ていた。

「羽心ちゃん、大丈夫かな?」

「わからないよ……」

 羽心は、花恋とノノと共にファフロツキーズの動画を撮った女性に会ったものの、

 彼女は動画に録画されていた以上の情報は知らなかった。

 そのため、公園に行き、詳しく調べようと思ったのだ。

「何か危ない事が起きたら、すぐに逃げるから。花恋ちゃんは入り口で待っててもいいわよ」

「そんな。羽心ちゃんだけ行かせるなんてできないよ!」

「ノノも、うららおねえちゃんと、かれんおねえちゃんといっしょにいく!」

 花恋とノノは少し怯えながらも、一緒に付いて行く気のようだ。

「ありがとう。ちゃんと私が守るからね」

 羽心は、そんな花恋とノノに笑みを見せ、公園の中に足を踏み入れた。

 すると、三つ並んだパンダの前に人だかりができていた。

「おい、凄いぞ!」

「わあ~、綺麗!」

「誰かが落としたのか? これだけあれば一つぐらい持って帰ってもバレないよな?」

 人々の前には、いくつもの宝石が落ちていた。

「ちょっと、危ないですよ!」

 羽心は慌てて傍に駆け寄ると、彼らをその場から離れさせようとした。

「おい、何するんだ?」

「邪魔しないでよ!」

 しかし、彼らは宝石を拾うのに夢中で、全く離れようとしなかった。

 

「羽心ちゃん、どうしよう……」

「このままじゃ危険よね」

「うん……」

 本当にファフロツキーズだとしたら、宝石以外にも色々降ってくる可能性がある。

 

「えっ?」

 瞬間、羽心の全身がゾクリとした。

 上空に何かの気配を感じ、羽心は慌てて空を見た。

 すると、上空に×印状の罅が浮かんでいた。

「あれは!」

 その形状を見た瞬間、羽心の頭の中に、洪水のように記憶が雪崩(なだ)れ込んだ。

 窓の下から呼ぶ声、×印状の罅、そして、襲い来るドラキュラの牙……。

 羽心はハッとして目を見開いた。

 

「……そうだ、私、ドラキュラに襲われたんだ」

 夢などではない、現実の出来事だ。

「え……何?」

「おねえちゃん……? おもいだしたの……?」

 花恋とノノは羽心の方を見て首を傾げる。

「ノノちゃん、花恋ちゃん、みんなも……隠れなきゃ! 早く!」

 羽心はそう言うと、花恋とノノの手を取った。

 また、ドラキュラが罅から出てきて襲ってくるかもしれないのだ。

「おねえちゃん! どうしたの!?」

「空に罅があるでしょ! あそこからドラキュラが出て来るのよ!」

「罅? きゃ! 何あれ?」

 花恋は手を引っ張られながら、空を見た。

 その声に驚き、宝石を拾っていた人々は空を見上げた。

「何だよ、あの罅!」

「黒い煙が出てるわよ!」

「みんなも逃げて! このままだと怪物に襲われちゃうから! ノノも、公園からすぐに出て!」

「いや! ノノ、にげたくない! ノノ、みんなをまもる!!」

 ノノは鳥に変身し、羽心の前に立った。




~次回予告~

19世紀のイギリスの村に現れたファフロツキーズ。
それは、ただ物が降ってくるだけでなく、人々を恐怖に陥れ、疑心暗鬼にさせるものでもあった。
魔女狩りのように、悲劇を生み出してはいけない。
呪われ人と呼ばれながらも、ディアーナとリサは弓を持ち、
ファフロツキーズに立ち向かおうとしているのだった。
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