怪狩り ~ 人の絆と怪の決意   作:アヤ・ノア

52 / 135
~前回までのあらすじ~

19世紀のイギリスの村で、勇気達は村人に「呪われ人」と呼ばれていた。
ファフロツキーズに恐怖するあまり、村人は狂ってしまったからだ。
リサはそんな勇気達を匿っていたが、とうとう五人は村人に見つかってしまう。
ディアーナとリサは彼らを落ち着かせるべく、ファフロツキーズを倒す事にした。
呪いの雲は必ず倒す――その決意が、ディアーナとリサを動かしていた。
その頃、見捨里市では、羽心が今までに忘れていた怪奇現象についての出来事を思い出した。
勇気とキユウと仲間達がいない見捨里市でも、羽心は見捨里市を守るために「戦う」のだった。


5 - 奇跡の弓矢

「よし、これで大丈夫ね」

 数分後、二人は何とか町の人達を全員避難させる。

 そして、ファフロツキーズに挑む体勢を取った。

「ノノちゃん、そっちに飛んで!」

「♪~~♪♪~♪♪~」

 ノノは羽心の指示のもと、ファフロツキーズが落としてきたレンガを歌声で撃ち落とす。

 羽心は非力だが、自分のために何かできないかと考え、ノノを後方支援する事にした。

「きゃっ!」

「♪~~~~~~♪~~~~」

 ファフロツキーズは石をたくさん落として羽心を攻撃する。

 石が命中して傷を負った羽心の前にノノが現れ、歌を歌って羽心の傷を癒す。

 すると、怒った(?)ファフロツキーズはレンガをノノ目掛けて落とし、

 空を飛んでいたノノを撃ち落とした。

「ノノちゃん!!」

 羽心は傷ついたノノに近付き、手当てしようとした。

 しかし、ノノは「気にしないで」と言うように飛び上がり、身体を光らせて自らの傷を癒した。

 彼女の戦いを見た羽心は、真剣な表情で頷いた。

「ノノちゃんも……町を守りたいのね。

 ……そうよ。町を守りたいという気持ちは、私だって同じよ!

 勇気がいなくても見捨里市を守れる事を、証明しなくちゃね!」

 

 一方その頃、19世紀のイギリスの村では、ディアーナとリサが走っていた。

 山の方には、×印状の罅が浮かんでいた。

「リサ、雲は山の方にいるみたいよ!」

「山? ハリー君達は川の方にいるって言ってたわよ?」

「ほら、空に罅があるでしょ?」

「えっ? きゃ、何なの、あの罅?」

 リサ達はファフロツキーズに恐怖し、今まで罅の存在には気づいていなかったらしい。

「雲は、あの近くにいるはずよ!」

 ディアーナはそう言うと、山道を駆け上がった。

「助けて!」

 坂の上から声がした。

 数人の子供達がいる。

ハリー!

 ディアーナが大きな声で呼ぶと、赤毛の男の子が顔を向けた。

「助けて! 呪われ雲が追いかけて来るんだ!」

 どうやら、ファフロツキーズから逃げようとしたものの、逃げ切れず山の方へ来たらしい。

「結果的に好都合ね。この高さからなら、目玉を射貫けるはずよ」

「来たわ!」

 木々の上をゆっくりと、ファフロツキーズが動いている。

 赤い目が、ジロリとディアーナ達の方を睨んだ。

「みんなは木の陰に隠れて!」

 ディアーナはハリー達にそう言うと、彼らが避難するのを見届け、リサの横で身構えた。

「リサ、頼むわよ!」

「ええ」

 リサは、ファフロツキーズに向けて弓を構える。

 ディアーナはその姿を固唾を呑んで見守る。

 だが、ファフロツキーズが二人の真上にやって来て、雲の中が赤く光った。

 次の瞬間、無数のレンガが、二人の頭の上に降り落ちた。

「きゃっ!」

 ディアーナとリサは素早く避ける。

 しかし、互いの身体がぶつかり、リサが転んでしまった。

 そんなリサの目の前にレンガが降って来た。

「リサ!」

「きゃ!」

 レンガはリサの目の前の地面に落ちた。

 幸い、怪我はしていないが、レンガが落ちた拍子に舞い上がった砂が、リサの目に入った。

「め、目が……」

「リサ、しっかり!」

 ディアーナはリサの手を掴み、起き上がらせたが、目は上手く開かないようだ。

「これじゃあ、呪いの雲が見えないわ……」

「ううっ……」

 ファフロツキーズは赤い目で睨み、さらに何かを落とそうとしていた。

 ディアーナは意を決して、リサの方を見た。

「リサ、あたしが目になるわ」

「お願いよ、ディアーナさん!」

 ディアーナはそう言うと、リサの背中に身体を寄せ、後ろから弓を持った。

 リサは目を瞑り、ディアーナに委ねながら、ゆっくりと弓を構えた。

かぜのせいれいよ、このやをみちびきたまえ

 ディアーナは呪文を唱えながら、ファフロツキーズの赤い目に狙いを定める。

 ファフロツキーズは赤い目を大きく見開き、雲の中に赤い光が走る。

 ディアーナは矢を赤い目に向けた。

 

Shoot Arrow

 ディアーナが叫んだ瞬間、リサがファフロツキーズに向かって矢を放った。

 それは、一瞬の出来事だった。

 空に、風を纏った一筋の閃光が走った。

 追うように顔を動かしたディアーナは、閃光の行方を見てハッとした。

 ファフロツキーズの赤い目の真ん中に、見事に矢が刺さっていたのだ。

「よし、命中したわ!」

 ディアーナは笑顔でリサに声をかける。

 だがその時、ファフロツキーズが大きく揺れ動き、レンガを落として来た。

「危ないっ!」

 ディアーナはリサの身体を掴むと、その場から離れた。

 彼女達が立っていた地面に、次々とレンガがめり込む。

 ディアーナはリサを掴んでそれを避ける。

 ファフロツキーズはさらに激しく揺れ動いていた。

 雲の中に赤い光が何本も走る。

 光は交差し、インクの染みのように赤い雲をさらに赤く染めていく。

 ファフロツキーズの目が、黒い煙となって飛び散り、そして消えた。

 雲も消滅し、空には青空が広がった。

 

「さあ、勇気とキユウとアプリルに報告しなくちゃ!」

 ディアーナはそう言って、リサと共に勇気達を迎えに行った。




~次回予告~

ディアーナとリサの活躍により、イギリスの村から呪いの雲は完全に消滅した。
村人達の恐怖の記憶は消え、リサの誤解も解ける。
これでイギリスと見捨里市は平和になった――はずだった。
勇気が見る奇妙な夢、それは羽心が関わっていた。
怪奇現象は治まったため、彼女が襲われる事はないはずだが――
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。