ディアーナとリサはファフロツキーズを撃退し、イギリスの村と見捨里市に平和を取り戻した。
だが、ディアーナ達が戦っている途中で、勇気は羽心が現れる夢を見る。
怪は倒れたため、羽心が巻き込まれる事はないはずだった。
だが、キユウだけは浮かない表情をしていた。
まるで、自らに迫る危機を感じ取ったかのように。
1 - 奇妙な動物
「勇気君、もうすぐ到着するよ」
勇気と羽心は、クラスメイトの
ディアーナ、ノノ、アプリルも、調査目的で彼らに同行していた。
「へえ~、この辺りって住宅地になってたんだ……」
勇気は辺りを見回す。
六人は今、隣町にやって来ていた。
30分ほど前、勇気は学校の授業を終えて、家へ帰ろうとしていた。
すると、羽心が誠と喋っている声が聞こえて来た。
「二階堂君って、あの天才少年の?」
「そう。僕、同じ塾に通ってて、最近友達になったんだ」
二階堂とは、隣町の小学校に通っている
父親は有名な生物学の大学教授で、母親も大きな病院に勤務している有名な医者だった。
本人も頭が良く、天才少年として新聞やテレビに何度も出た事がある有名人だ。
誠の話によると、そんな二階堂から昨日、ある話を聞いたという。
「二階堂君、今まで誰も見た事のない動物を作ったんだって」
「動物を作る?」
「なんだ、そりゃ」
勇気は、その不思議な言葉に疑問を持ち、誠達の下へ行った。
「ねぇ、作るってどういう事?」
「それは、僕にもよく分からないけど」
「珍しい動物を飼ってる、っていうわけじゃなさそうね……」
羽心はそう言うと、誠の方を見た。
「ねぇ、二階堂君に会えるかな?」
「羽心、何言ってんだよ」
また、羽心の好奇心が出たようだ。
勇気は呆れるが、羽心の顔は何故か険しかった。
「羽心……?」
「何か隠してるのか?」
勇気がその顔を見て首を傾げていると、誠が口を開いた。
「だったら今から行ってみる? 二階堂君、いつでも見に来ていいよって言ってたんだ」
「そうなの? じゃあ、行きましょ」
「勇気君も行くだろ?」
「えっ、僕も?」
勇気は誠の方を見た。
羽心は既に帰る準備を始め、早く行きたがっているようだ。
「ええっと、僕は、あの、その……」
勇気は、「行くよ」と答えるしかなかった。
ディアーナ、ノノ、アプリルは、もちろん、頷いた。
勇気は道路を歩きながら、前方を歩く羽心を見つめた。
羽心が行くと言っているのに、自分だけ帰るわけにはいかない。
(だけど、動物を作るってどういう事なんだろう……)
いくら考えてもさっぱり分からなかった。
その時、勇気は、道路にできた水たまりに足を踏み入れてしまった。
ディアーナとアプリルの服に、汚れがつく。
「ああ、まったくも~」
「あたしの服が汚れたじゃない」
昨日の夜、突然大雨が降り出し、雷が鳴り響いた。
そのせいで水たまりができたのだろう。
季節は秋で、台風シーズンだ。
勇気は濡れた靴を振ると、水たまりに注意しながら、再び道路を歩き出そうとした。
「ねぇ、あれ」
ふと、羽心が前方の道路を指差した。
見ると、花恋が道路の隅にしゃがみ込み、何かを見ていた。
「何してるんだ?」
どうして隣町に花恋がいるのだろう?
勇気は不思議に思いながら、羽心、ノノと共に花恋の傍に歩み寄った。
「かれんちゃん、どうしたの?」
「あっ、勇気君、羽心ちゃん、ノノちゃん」
花恋は、目の前にある家と家の間の狭い隙間の方を指差した。
「あそこに、変な動物がいるの」
「変な動物?」
「多分、犬なんだけど……だけど、何だか変なの」
「えっ?」
勇気、羽心、ノノは、隙間を覗き込む。
隙間の奥に、一匹の犬が蹲っていた。
毛は薄汚れていて、死んだような目をしている。
捨て犬だろうか?
だが、何かがおかしい。
なんと、犬の身体に『羽』が生えていたのだ。
「何だよあれ?」
「きもちわるい……」
勇気が驚き、ノノが顔を青ざめると、塀の上から鳴き声がした。
「ニャアアアァァ」
ハッとして顔を上げると、塀の上に猫がいる。
犬と同じように薄汚れ、死んだような目をしているその猫にも、羽が生えていた。
「どうなってるんだよ」
勇気が狼狽えながら横を見ると、羽心が空を見たまま呆然となっていた。
「勇気、あれ……」
羽心は怯えた表情で空を指差す。
勇気は訳が分からないまま、空を見た。
「ああ!」
空に、羽を生やした無数の犬や猫が飛んでいた。
「ウウウゥゥ、ワン!」
隙間にいた犬が、勇気達に向かって吠えた。
次の瞬間、塀の上にいた猫や、空を飛んでいた犬猫達が、一斉に勇気達の方へ飛んで来た。
「きゃあ!」
「勇気、どうにかして!」
「どうにかって、そんな事言われても!」
勇気の顔目掛けて、羽の生えた犬猫が襲いかかって来る。
「やめろ! うわ! うわあ! 助けてえええ!」
「……ゆうきおにいちゃん!」
「えっ?」
突然耳元で声が響き、勇気は顔を上げる。
横に、ノノが立っている。
「羽の生えた犬と猫は?」
勇気は身構えて空を見るが、誰もいない。
五人のいる場所は、隣町の住宅地だ。
花恋もどこにもおらず、代わりに、前方に誠の姿が見える。
「ええっと……」
「おにいちゃん、ボォーッとしてたよ?」
「ボォーッと……」
道路には水たまりがある。
どうやら、水たまりに嵌って再び歩き出そうとした直後から、夢を見ていたようだ。
勇気には不思議な力があり、起きるかもしれない光景を夢で見る事ができる。
襲って来た犬や猫は、あり得ない姿をしていた。
(あれって、怪、だよね……?)
しかし、勇気はすぐに首を捻った。
(だけど、あんな怪、いたかな?)
書斎で読んだ怪奇現象の本の中には、羽の生えた犬や猫の怪などいなかったのだ。
その時、勇気はハッとした。
(もしかして、二階堂君の言ってた、今まで誰も見た事のない動物って……)
あの犬や猫は、二階堂が作った動物なのかもしれない。
(それって、二階堂君が怪を作ったって事?)
意味が分からないが、何だか胸騒ぎがする。
「ねぇ、大丈夫かな……」
ふと、羽心がそう言った。
何故か不安そうな顔をしている。
「大丈夫って、何が?」
「二階堂君の家に行くの。……もしかして、変な怪物とかに襲われたりしないかしら?」
「怪物?」
怪の事だろうか?
だが、怪を倒せば、怪の起こした全ての事はリセットされる。
羽心がその存在を覚えているはずがないが、
ノノは、ファフロツキーズの件で思い出した事を知っていた。
「うららおねえちゃんはね……」
それを勇気に伝えようとすると、羽心が頭を振った。
「変な事言っちゃったわね。気にしないで」
羽心は無理に笑うと、再び歩き始めた。
(羽心が怪の事を覚えてるなんて、あり得ないよね……?)
(ちがうよ、ゆうきおにいちゃん。うららおねえちゃんは、おもいだしたんだよ)
考えすぎだろう。
勇気はそう思うと、羽心を追うように後に続いた。
ノノの思いは、届かないまま……。
~次回予告~
勇気達は服部誠に誘われ、隣町の二階堂の家に着く。
そこにいたのは、複数の動物の特徴を持った奇妙な動物だった。
怪の力に飲み込まれつつある二階堂に、勇気達は不安になる。
そして、怪を狩るために、勇気達は書斎に向かおうとしていた。