怪狩り ~ 人の絆と怪の決意   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

ディアーナとリサはファフロツキーズを撃退し、イギリスの村と見捨里市に平和を取り戻した。
だが、ディアーナ達が戦っている途中で、勇気は羽心が現れる夢を見る。
怪は倒れたため、羽心が巻き込まれる事はないはずだった。
だが、キユウだけは浮かない表情をしていた。
まるで、自らに迫る危機を感じ取ったかのように。


episode3 - Bonds Sun and Moon ~ 動く死体
1 - 奇妙な動物


「勇気君、もうすぐ到着するよ」

 勇気と羽心は、クラスメイトの服部誠(はっとりまこと)と共に、道路を歩いていた。

 ディアーナ、ノノ、アプリルも、調査目的で彼らに同行していた。

「へえ~、この辺りって住宅地になってたんだ……」

 勇気は辺りを見回す。

 六人は今、隣町にやって来ていた。

 

 30分ほど前、勇気は学校の授業を終えて、家へ帰ろうとしていた。

 すると、羽心が誠と喋っている声が聞こえて来た。

「二階堂君って、あの天才少年の?」

「そう。僕、同じ塾に通ってて、最近友達になったんだ」

 二階堂とは、隣町の小学校に通っている二階堂健太郎(にかいどうけんたろう)の事である。

 父親は有名な生物学の大学教授で、母親も大きな病院に勤務している有名な医者だった。

 本人も頭が良く、天才少年として新聞やテレビに何度も出た事がある有名人だ。

 誠の話によると、そんな二階堂から昨日、ある話を聞いたという。

「二階堂君、今まで誰も見た事のない動物を作ったんだって」

「動物を作る?」

「なんだ、そりゃ」

 勇気は、その不思議な言葉に疑問を持ち、誠達の下へ行った。

 

「ねぇ、作るってどういう事?」

「それは、僕にもよく分からないけど」

「珍しい動物を飼ってる、っていうわけじゃなさそうね……」

 羽心はそう言うと、誠の方を見た。

「ねぇ、二階堂君に会えるかな?」

「羽心、何言ってんだよ」

 また、羽心の好奇心が出たようだ。

 勇気は呆れるが、羽心の顔は何故か険しかった。

「羽心……?」

「何か隠してるのか?」

 勇気がその顔を見て首を傾げていると、誠が口を開いた。

「だったら今から行ってみる? 二階堂君、いつでも見に来ていいよって言ってたんだ」

「そうなの? じゃあ、行きましょ」

「勇気君も行くだろ?」

「えっ、僕も?」

 勇気は誠の方を見た。

 羽心は既に帰る準備を始め、早く行きたがっているようだ。

「ええっと、僕は、あの、その……」

 勇気は、「行くよ」と答えるしかなかった。

 ディアーナ、ノノ、アプリルは、もちろん、頷いた。

 

 勇気は道路を歩きながら、前方を歩く羽心を見つめた。

 羽心が行くと言っているのに、自分だけ帰るわけにはいかない。

(だけど、動物を作るってどういう事なんだろう……)

 いくら考えてもさっぱり分からなかった。

 その時、勇気は、道路にできた水たまりに足を踏み入れてしまった。

 ディアーナとアプリルの服に、汚れがつく。

「ああ、まったくも~」

「あたしの服が汚れたじゃない」

 昨日の夜、突然大雨が降り出し、雷が鳴り響いた。

 そのせいで水たまりができたのだろう。

 季節は秋で、台風シーズンだ。

 勇気は濡れた靴を振ると、水たまりに注意しながら、再び道路を歩き出そうとした。

 

「ねぇ、あれ」

 ふと、羽心が前方の道路を指差した。

 見ると、花恋が道路の隅にしゃがみ込み、何かを見ていた。

「何してるんだ?」

 どうして隣町に花恋がいるのだろう?

 勇気は不思議に思いながら、羽心、ノノと共に花恋の傍に歩み寄った。

「かれんちゃん、どうしたの?」

「あっ、勇気君、羽心ちゃん、ノノちゃん」

 花恋は、目の前にある家と家の間の狭い隙間の方を指差した。

「あそこに、変な動物がいるの」

「変な動物?」

「多分、犬なんだけど……だけど、何だか変なの」

「えっ?」

 勇気、羽心、ノノは、隙間を覗き込む。

 隙間の奥に、一匹の犬が蹲っていた。

 毛は薄汚れていて、死んだような目をしている。

 捨て犬だろうか?

 だが、何かがおかしい。

 なんと、犬の身体に『羽』が生えていたのだ。

「何だよあれ?」

「きもちわるい……」

 勇気が驚き、ノノが顔を青ざめると、塀の上から鳴き声がした。

「ニャアアアァァ」

 ハッとして顔を上げると、塀の上に猫がいる。

 犬と同じように薄汚れ、死んだような目をしているその猫にも、羽が生えていた。

「どうなってるんだよ」

 勇気が狼狽えながら横を見ると、羽心が空を見たまま呆然となっていた。

「勇気、あれ……」

 羽心は怯えた表情で空を指差す。

 勇気は訳が分からないまま、空を見た。

「ああ!」

 空に、羽を生やした無数の犬や猫が飛んでいた。

「ウウウゥゥ、ワン!」

 隙間にいた犬が、勇気達に向かって吠えた。

 次の瞬間、塀の上にいた猫や、空を飛んでいた犬猫達が、一斉に勇気達の方へ飛んで来た。

「きゃあ!」

「勇気、どうにかして!」

「どうにかって、そんな事言われても!」

 勇気の顔目掛けて、羽の生えた犬猫が襲いかかって来る。

「やめろ! うわ! うわあ! 助けてえええ!」

 

「……ゆうきおにいちゃん!」

「えっ?」

 突然耳元で声が響き、勇気は顔を上げる。

 横に、ノノが立っている。

「羽の生えた犬と猫は?」

 勇気は身構えて空を見るが、誰もいない。

 五人のいる場所は、隣町の住宅地だ。

 花恋もどこにもおらず、代わりに、前方に誠の姿が見える。

「ええっと……」

「おにいちゃん、ボォーッとしてたよ?」

「ボォーッと……」

 道路には水たまりがある。

 どうやら、水たまりに嵌って再び歩き出そうとした直後から、夢を見ていたようだ。

 勇気には不思議な力があり、起きるかもしれない光景を夢で見る事ができる。

 襲って来た犬や猫は、あり得ない姿をしていた。

(あれって、怪、だよね……?)

 しかし、勇気はすぐに首を捻った。

(だけど、あんな怪、いたかな?)

 書斎で読んだ怪奇現象の本の中には、羽の生えた犬や猫の怪などいなかったのだ。

 その時、勇気はハッとした。

(もしかして、二階堂君の言ってた、今まで誰も見た事のない動物って……)

 あの犬や猫は、二階堂が作った動物なのかもしれない。

(それって、二階堂君が怪を作ったって事?)

 意味が分からないが、何だか胸騒ぎがする。

「ねぇ、大丈夫かな……」

 ふと、羽心がそう言った。

 何故か不安そうな顔をしている。

「大丈夫って、何が?」

「二階堂君の家に行くの。……もしかして、変な怪物とかに襲われたりしないかしら?」

「怪物?」

 怪の事だろうか?

 だが、怪を倒せば、怪の起こした全ての事はリセットされる。

 羽心がその存在を覚えているはずがないが、

 ノノは、ファフロツキーズの件で思い出した事を知っていた。

「うららおねえちゃんはね……」

 それを勇気に伝えようとすると、羽心が頭を振った。

「変な事言っちゃったわね。気にしないで」

 羽心は無理に笑うと、再び歩き始めた。

 

(羽心が怪の事を覚えてるなんて、あり得ないよね……?)

(ちがうよ、ゆうきおにいちゃん。うららおねえちゃんは、おもいだしたんだよ)

 考えすぎだろう。

 勇気はそう思うと、羽心を追うように後に続いた。

 ノノの思いは、届かないまま……。




~次回予告~

勇気達は服部誠に誘われ、隣町の二階堂の家に着く。
そこにいたのは、複数の動物の特徴を持った奇妙な動物だった。
怪の力に飲み込まれつつある二階堂に、勇気達は不安になる。
そして、怪を狩るために、勇気達は書斎に向かおうとしていた。
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