怪狩り ~ 人の絆と怪の決意   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

ヴィクター・フランケンシュタインを倒した事で、人々から怪奇現象の記憶は消えた。
覚えているのは、勇気などの一部の人物だけだった。
かつて人間だったヴィクター・フランケンシュタインとの戦いに、勇気は複雑な気持ちになる。
全ての元凶は、邪鬼という少年――彼を倒さなければ、真の平和を取り戻す事はできないのだ。
勇気とキユウは絆を誓い、怪狩りを続けていこうと思ったが……。


episode3 - Bonds Sun and Moon ~ ターニングポイント
キユウ


「二階堂君、大丈夫かな」

「彼ならきっと大丈夫だよ。誠君を家に誘っただろう」

 夜の小学校に、勇気、キユウ、ディアーナ、ノノ、アプリルがいた。

 怪を倒した事により、記憶がリセットされ、何事もなかった事になったのだ。

 二階堂と誠は、何故自分達が小学校にいるのかも分からないまま、帰って行った。

 

「そう言えば……」

 先ほど、二階堂は帰りながら、誠に家がすぐ近くにある事を話した。

「僕、二階堂君と色々話をして、友達になりたいんだ。今度遊びに行きたいな」

「えっ?」

 二階堂は誠のその言葉に驚いたような表情になったが、すぐに笑みが零れた。

「あ、うん。いいよ。遊びに来て」

 二階堂はそう言うと、嬉しそうに誠と一緒に去って行った。

 

「多分、二人はこれから本当の友達になれるよね」

「ええ」

 勇気が二階堂の家の方を見る。

 ディアーナは小さく頷いた。

「それにしても、君は本当に勇敢になった」

 キユウは勇気をじっと見つめた。

「たとえ武器がなくても、知恵と勇気があれば、怪はきっと倒せる。

 知恵はまあ、まだまだだけど、勇気、君は誰よりも勇気を持っている」

「キユウ……」

 何だか照れるが、キユウに褒められると嬉しい。

 勇気は、これからもキユウと、後、三人の仲間*1と共に怪狩りを続けて行きたいと思った。

「僕、頑張るよ」

「ああ、期待してるよ」

 勇気とキユウは微笑むと、家へ帰る事にした。

 

「随分仲が良いじゃねぇか」

「こんなのが人間に認識できないなんて、訳が分からないわね」

「???」

 ディアーナ、ノノ、アプリルは、そんな二人を見守っていた。

 

「待って!」

 ディアーナが歩みを止めると、突然、鈴の音が響いた。

「えっ?」

 勇気は、鈴の音がした方を見る。

 すると、オシリスの鈴を持った羽心が立っていた。

「羽心、それは!」

「勇気、私が助けてあげるからね!」

 羽心は激しくオシリスの鈴を鳴らした。

「ぐあっ!」

 キユウが苦しみ出し、その場に膝をつく。

「「「キユウ!」」」

「キユウおにいちゃん!」

「勇気、そこに悪霊がいるのね!」

 羽心はさらに激しくオシリスの鈴を振った。

「やめろ!」

 勇気は慌てて羽心を止めた。

「なんで、そんな事をするんだよ!」

「勇気を救うためなのよ!」

「何言ってんだよ!」

 戸惑いながらも、勇気はキユウの傍に駆け寄った。

「キユウ、しっかりして!」

「おにいちゃん! おねえちゃん!」

 キユウの身体からは黒い煙が出ている。

「邪鬼……まさか……彼女を騙して……利用したのか……」

 キユウはそう言うと、羽心の後ろを睨んだ。

 そこには、邪鬼が立っていた。

「ど、どうしてあの子が鈴を使えてるの!?」

「言ってなかったようだね。白鳥羽心にも、特殊能力がある。それが、彼女が鈴を使えた理由さ」

「お前が、邪鬼……」

 勇気とアプリルは怒りの表情、ディアーナとノノは戸惑いの表情で邪鬼を見つめた。

 羽心は状況が理解できず、オシリスの鈴を持って、勇気を見ながら身体を震わせていた。

 勇気がファフロツキーズ異変で見た夢の光景そのものだ。

 邪鬼は不気味に微笑みながら、羽心の前に一瞬手をかざすと、羽心がその場に倒れた。

「おい、彼女に何をした!」

「安心していいよ。この子はただ気絶させただけだ。

 それにしても、こんなに上手くいくとはねぇ。これで、邪魔者はいなくなる」

 邪鬼はキユウを見る。

 キユウの身体からさらに黒い煙が出ている。

「ゆ、勇気……」

「キユウおにいちゃん、しっかり!」

「諦めろ。そいつはもうおしまいだよ。残念だねぇ」

 勇気の中で、何かが弾け飛んだ。

うああああ!

ふざけんなあああ!

「勇気、アプリル、やめなさい!」

 感情に任せて勇気とアプリルは邪鬼に殴りかかる。

 しかし、邪鬼はひらりと避け、嘲笑いながら刀を抜く。

「君達もここでおしまいにするかい?」

 そう言って、邪鬼は刀を振りかぶり、勇気とアプリルを斬ろうとした。

「がっ!」

 瞬間、キユウが間に飛び込み、刀が命中する。

 斬られた場所から、黒い煙が漏れ出すように流れる。

「「キユウ!」」

「ゆ、勇気……」

 キユウは、最後の力を振り絞り、グローブを嵌めた左手を邪鬼の方へかざした。

 すると、邪鬼が逃げるように後ろへ飛び、距離を取った。

「真之勇気、ディアーナ、ノノ・オーガスタ、アプリル・フェルナンデス、命拾いしたようだね。

 だが、君達だけじゃどうする事もできない。見捨里市は、もう終わりだよ――」

「そうはいかないわ!」

 邪鬼は刀を空間に振るい、罅を作る。

 その時、飛んできたナイフが邪鬼の右腕を掠めた。

 そのナイフを投げたのは、ディアーナだった。

「く……っ!」

「これはあたしからの手土産よ。いい? 見捨里市は終わらないわ。

 絶対に、あなたの好きにはさせない!」

「……攻撃を許してしまったか。でも、君は絶対に許さないよ……!」

 邪鬼は顔を歪ませてディアーナを睨みつけるも、ディアーナは全く怯まなかった。

 そして、邪鬼が悔しそうに罅の中に飛び込むと、罅は消えてしまった。

 

「……」

「キユウ……」

「……おにいちゃん……」

 キユウはその場に崩れるように倒れる。

「キユウ!」

 勇気はキユウを支えようとするが、すり抜けて掴む事ができない。

 キユウは黒い煙を出しながらも、勇気をじっと見つめ、僅かに口を動かした。

「ゆ、勇気……君が……ディアーナ達と……一緒に……この町を……守る……んだ……」

 次の瞬間、キユウが煙のように消えた。

 

「そんな! キユウ! キユウ!」

うそだっ!!

 勇気とノノが共に叫ぶ。

 地面に、キユウが嵌めていた漆黒のレザーグローブだけがぽつんと落ちている。

 

キユウ! 僕達は二人で一つだろ!!

 勇気はそう叫ぶと、その場で泣き崩れた。

*1
ディアーナ、ノノ、アプリル。




~次回予告~

羽心がオシリスの鈴を振ったためにキユウが消えてしまい、悲しみに暮れる勇気。
ディアーナ達は真実を知り、羽心は自分がした事の意味を知る。
だが、見捨里市には容赦なく怪の力が漏れ出てくる。
助けてくれるキユウはもういない。
勇気は、ディアーナ達と共に、怪に立ち向かえるのだろうか――
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