ヴィクター・フランケンシュタインを倒した事で、人々から怪奇現象の記憶は消えた。
覚えているのは、勇気などの一部の人物だけだった。
かつて人間だったヴィクター・フランケンシュタインとの戦いに、勇気は複雑な気持ちになる。
全ての元凶は、邪鬼という少年――彼を倒さなければ、真の平和を取り戻す事はできないのだ。
勇気とキユウは絆を誓い、怪狩りを続けていこうと思ったが……。
キユウ
「二階堂君、大丈夫かな」
「彼ならきっと大丈夫だよ。誠君を家に誘っただろう」
夜の小学校に、勇気、キユウ、ディアーナ、ノノ、アプリルがいた。
怪を倒した事により、記憶がリセットされ、何事もなかった事になったのだ。
二階堂と誠は、何故自分達が小学校にいるのかも分からないまま、帰って行った。
「そう言えば……」
先ほど、二階堂は帰りながら、誠に家がすぐ近くにある事を話した。
「僕、二階堂君と色々話をして、友達になりたいんだ。今度遊びに行きたいな」
「えっ?」
二階堂は誠のその言葉に驚いたような表情になったが、すぐに笑みが零れた。
「あ、うん。いいよ。遊びに来て」
二階堂はそう言うと、嬉しそうに誠と一緒に去って行った。
「多分、二人はこれから本当の友達になれるよね」
「ええ」
勇気が二階堂の家の方を見る。
ディアーナは小さく頷いた。
「それにしても、君は本当に勇敢になった」
キユウは勇気をじっと見つめた。
「たとえ武器がなくても、知恵と勇気があれば、怪はきっと倒せる。
知恵はまあ、まだまだだけど、勇気、君は誰よりも勇気を持っている」
「キユウ……」
何だか照れるが、キユウに褒められると嬉しい。
勇気は、これからもキユウと、後、三人の仲間*1と共に怪狩りを続けて行きたいと思った。
「僕、頑張るよ」
「ああ、期待してるよ」
勇気とキユウは微笑むと、家へ帰る事にした。
「随分仲が良いじゃねぇか」
「こんなのが人間に認識できないなんて、訳が分からないわね」
「???」
ディアーナ、ノノ、アプリルは、そんな二人を見守っていた。
「待って!」
ディアーナが歩みを止めると、突然、鈴の音が響いた。
「えっ?」
勇気は、鈴の音がした方を見る。
すると、オシリスの鈴を持った羽心が立っていた。
「羽心、それは!」
「勇気、私が助けてあげるからね!」
羽心は激しくオシリスの鈴を鳴らした。
「ぐあっ!」
キユウが苦しみ出し、その場に膝をつく。
「「「キユウ!」」」
「キユウおにいちゃん!」
「勇気、そこに悪霊がいるのね!」
羽心はさらに激しくオシリスの鈴を振った。
「やめろ!」
勇気は慌てて羽心を止めた。
「なんで、そんな事をするんだよ!」
「勇気を救うためなのよ!」
「何言ってんだよ!」
戸惑いながらも、勇気はキユウの傍に駆け寄った。
「キユウ、しっかりして!」
「おにいちゃん! おねえちゃん!」
キユウの身体からは黒い煙が出ている。
「邪鬼……まさか……彼女を騙して……利用したのか……」
キユウはそう言うと、羽心の後ろを睨んだ。
そこには、邪鬼が立っていた。
「ど、どうしてあの子が鈴を使えてるの!?」
「言ってなかったようだね。白鳥羽心にも、特殊能力がある。それが、彼女が鈴を使えた理由さ」
「お前が、邪鬼……」
勇気とアプリルは怒りの表情、ディアーナとノノは戸惑いの表情で邪鬼を見つめた。
羽心は状況が理解できず、オシリスの鈴を持って、勇気を見ながら身体を震わせていた。
勇気がファフロツキーズ異変で見た夢の光景そのものだ。
邪鬼は不気味に微笑みながら、羽心の前に一瞬手をかざすと、羽心がその場に倒れた。
「おい、彼女に何をした!」
「安心していいよ。この子はただ気絶させただけだ。
それにしても、こんなに上手くいくとはねぇ。これで、邪魔者はいなくなる」
邪鬼はキユウを見る。
キユウの身体からさらに黒い煙が出ている。
「ゆ、勇気……」
「キユウおにいちゃん、しっかり!」
「諦めろ。そいつはもうおしまいだよ。残念だねぇ」
勇気の中で、何かが弾け飛んだ。
「うああああ!」
「ふざけんなあああ!」
「勇気、アプリル、やめなさい!」
感情に任せて勇気とアプリルは邪鬼に殴りかかる。
しかし、邪鬼はひらりと避け、嘲笑いながら刀を抜く。
「君達もここでおしまいにするかい?」
そう言って、邪鬼は刀を振りかぶり、勇気とアプリルを斬ろうとした。
「がっ!」
瞬間、キユウが間に飛び込み、刀が命中する。
斬られた場所から、黒い煙が漏れ出すように流れる。
「「キユウ!」」
「ゆ、勇気……」
キユウは、最後の力を振り絞り、グローブを嵌めた左手を邪鬼の方へかざした。
すると、邪鬼が逃げるように後ろへ飛び、距離を取った。
「真之勇気、ディアーナ、ノノ・オーガスタ、アプリル・フェルナンデス、命拾いしたようだね。
だが、君達だけじゃどうする事もできない。見捨里市は、もう終わりだよ――」
「そうはいかないわ!」
邪鬼は刀を空間に振るい、罅を作る。
その時、飛んできたナイフが邪鬼の右腕を掠めた。
そのナイフを投げたのは、ディアーナだった。
「く……っ!」
「これはあたしからの手土産よ。いい? 見捨里市は終わらないわ。
絶対に、あなたの好きにはさせない!」
「……攻撃を許してしまったか。でも、君は絶対に許さないよ……!」
邪鬼は顔を歪ませてディアーナを睨みつけるも、ディアーナは全く怯まなかった。
そして、邪鬼が悔しそうに罅の中に飛び込むと、罅は消えてしまった。
「……」
「キユウ……」
「……おにいちゃん……」
キユウはその場に崩れるように倒れる。
「キユウ!」
勇気はキユウを支えようとするが、すり抜けて掴む事ができない。
キユウは黒い煙を出しながらも、勇気をじっと見つめ、僅かに口を動かした。
「ゆ、勇気……君が……ディアーナ達と……一緒に……この町を……守る……んだ……」
次の瞬間、キユウが煙のように消えた。
「そんな! キユウ! キユウ!」
「うそだっ!!」
勇気とノノが共に叫ぶ。
地面に、キユウが嵌めていた漆黒のレザーグローブだけがぽつんと落ちている。
「キユウ! 僕達は二人で一つだろ!!」
勇気はそう叫ぶと、その場で泣き崩れた。
~次回予告~
羽心がオシリスの鈴を振ったためにキユウが消えてしまい、悲しみに暮れる勇気。
ディアーナ達は真実を知り、羽心は自分がした事の意味を知る。
だが、見捨里市には容赦なく怪の力が漏れ出てくる。
助けてくれるキユウはもういない。
勇気は、ディアーナ達と共に、怪に立ち向かえるのだろうか――