勇気のライバルとして作ったオリジナルキャラクターが主役です。
時系列としては、本編の1年前、四人が邪鬼を裏切った後となります。
盗賊達のスープ作り
見捨里市のどこかに、四人の怪が集まる。
紫のショートヘアに同色の瞳、小柄な身体とは裏腹に大きな尻尾を持つ、
セミロングの黒髪を持つ、腰に片手剣を携えている剣の付喪神、つるぎ。
背中に蝶の羽、頭に触覚が生えた蝶の妖蟲、揚羽。
金髪碧眼の、男性とも女性ともつかない中性的な美貌の魔術師、カリオストロ。
どうやら、彼らは怪とはまた違う、あるものに触れようとしているのだ。
「どうやら、南瓜がなかなか割れないみたいだね」
「それは、こんな南瓜なのかい?」
そう言って、つるぎは巨大な南瓜を引っ張り出してきた。
その大きさは彼と比べると一目瞭然であり、高さも5m程はあるだろう。
「よし、割るよ!」
麗羅は硬い南瓜に向けてナイフを投げつけた。
だが、ただのナイフであるため、硬い南瓜には弾かれた。
「ちっ!」
「えいっ!」
「爆炎符!」
麗羅がナイフを回収した後、カリオストロは炎の術式が刻まれた符を取り出して
硬い南瓜に投げるが、明後日の方向に飛んだ。
だが、炎で風が舞い、揚羽が呼び出した鱗粉は硬い南瓜にかかった。
「でやぁぁぁぁっ!」
そして、つるぎが本体の剣で硬い南瓜に斬りかかると、南瓜はどこかに飛んでいってしまった。
「はぁ……どうしてくれるんだろうねぇ。せっかく、この南瓜でスープを作ろうと思ったのに」
「え……なんでそんな事を今更言うの? そんなの聞いてなかったよ~!」
「南瓜は調理に不可欠だからな」
慌てている揚羽とは対照的に、カリオストロは冷静だ。
「アタイはやだな~、だって面倒くさいし」
「そうしたら、ご飯抜きになっちゃうけど、それでいいのかな?」
「え? ご飯抜き? やだやだ!」
「だったら探すしかないようだね。よし、行くよ! みんな!」
「「おーっ!」」
「……おーっ」
こうして、四人は南瓜の行方と、スープの材料探しをする事になった。
麗羅の大きな尻尾が、風に揺れていた。
「あっちの方に、南瓜が飛んでいったみたいだね」
どうやら、南瓜は南の方へと飛んでいったようだ。
かなりの距離を飛んでいったようで、探すなら、もう少し念入りに探す必要がある。
「とりあえず、人間のふりをしなくちゃね。アンタはカリオストロの服の中に隠れてるんだよ」
「はーい」
揚羽はカリオストロのローブのポケットに隠れ、麗羅は変装道具を取り出して人間に変装した。
ただ、流石に大きな尻尾は隠せないようだ。
「お前、人間なのになんで尻尾が生えてるんだ?」
「まさか、怪物なの? やだ、怖い!」
「……つるぎ」
「ああ……。南瓜はどこに行ったのか分かるかい?」
つるぎは爽やかな笑みを浮かべて、見捨里商店街の人達に聞き込む。
その結果、謎の飛来物が、見捨里商店街からさらに南に行ったところに落ちたという。
「南瓜の位置は分かったから、早く行こうか」
「待ちな、つるぎ。ここ最近、ゴブリンとやらが色んな物を盗んで困っているみたいだ。
盗賊としてウチは許せないね! つるぎ、アンタにこれをやるよ」
そう言って麗羅が渡したのは、試作品の強力な宝石だ。
これはゴブリンにのみ効果がある宝石であり、どこかから麗羅が盗んできたものらしい。
「剣が得意なアンタなら使えるはずだろう? 遠慮なく貰っておくれ!」
「ああ、ありがとう」
南瓜の位置が分かったので、次に、四人はスープに合う具材を盗みに行った。
麗羅は音を立てずに忍び寄り、いい出汁が取れる魚を盗む。
「ギャアアアアアアアアアアアアアア!!」
「ちょっと五月蠅いなぁ……!」
揚羽が畑に行って人参を盗もうとすると、気を失うかのような奇声を発した。
だが、揚羽は何とか耐える事ができたようだ。
最後に高級チーズを盗もうとすると、ゴブリンに襲われ、逆に盗まれてしまった。
「はっ!」
「くっ!」
「しまった!」
つるぎが一体を仕留めて高級チーズを手に入れたが、
残ったゴブリンは南の見捨里公園に逃げていった。
四人が見捨里公園へと向かうと、そこには地面にめり込んだ巨大南瓜があった。
「うわぁ……」
「ここに南瓜があったのか……」
麗羅とつるぎは唖然としている。
カリオストロのポケットから出てきた揚羽も、あまりの南瓜の大きさにぽかーんとしていた。
すると、南瓜の上から声が聞こえる。
「ご苦労だったね、盗賊達」
声の主は、包帯で片目を隠した着物姿の少年、邪鬼だった。
麗羅はナイフを構え、つるぎも剣を抜こうとしている。
「アンタ、こんなところにウチらを呼んで何をしようとするんだい?」
「決まっている、君達をここで終わらせるためさ!」
邪鬼が南瓜を刀で斬りつけると、辺りの景色が変わっていき、異界へと変貌していく。
すると突然、南瓜の蔓が急成長し、絡みつき、四本足になった。
南瓜は足で身体を地面から引っこ抜くと、ハロウィンの南瓜のような顔を作り出し、
麗羅達に襲いかかってきた。
「さあ、南瓜の餌になるんだね」
「あ、待ちなさい!」
邪鬼は刀で×印状の罅を作り出すと、その中に逃げていった。
「逃がさないんだから!」
揚羽が追いかけようとすると、先ほど逃がした二体のゴブリンと、
邪鬼が呼んだと思われる下級雪精と鬼が立ち塞がる。
「あぁ~ん! どうして邪魔するの~!」
「今は南瓜をどうにかするのが先だろ!」
「ケケケ!」
「キキキ!」
二体のゴブリンはカリオストロと麗羅に石を投げつけてくる。
二人は器用に攻撃をかわした。
すると、オバケ南瓜は蔓を伸ばして麗羅を縛ろうとする。
「こんなもの……ぎゃっ!?」
麗羅は柔軟な身体で一本の蔓をかわすが、残りの蔓が彼女の身体に絡みつき、締め付けた。
蔓はギリギリと麗羅の身体を締め付けていく。
「このやろっ、放せ!」
麗羅はナイフを操って必死で蔓を解こうとする。
数分後、戦闘不能ギリギリで何とか蔓から解放された。
「はぁ、はぁ、はぁ……っ」
麗羅は青い顔をしながら下級雪精にナイフを投げたが、弱っていたため攻撃は当たらなかった。
「よくも私に術を当てたな。許さんぞ」
「アタイの攻撃も当たらないよ!」
揚羽が放った鱗粉も、ゴブリンはかわす。
麗羅はカリオストロに口をパクパクさせながら「た す け て」と言う。
それを読み取ったカリオストロは麗羅に近付き、治癒魔術を使う。
「そこか!」
その時、つるぎがカリオストロと鬼の間に割って入り、剣で鬼の棍棒を受け止める。
つるぎはすぐさま標的をゴブリンに切り替え、斬りつけた。
オバケ南瓜は再び麗羅に蔓を伸ばしたが、麗羅は隠し持っていた煙玉を投げ、
目晦ましをして攻撃をかわした。
「まったく、うざったいねぇ!」
「キャーッ!!」
「ケケケ!!」
ゴブリンは揚羽に石を投げつけて攻撃する。
オバケ南瓜は巨大化して蔓を伸ばし、つるぎ、揚羽、カリオストロを縛ろうとしたが、
三人は何とか攻撃をかわした。
麗羅は薬を服用して体力を回復した後、下級雪精に向けてナイフを投げる。
「剣が、力を貸すだろう!」
さらに、麗羅の攻撃はつるぎの技によって強化され、下級雪精の身体を易々と貫いた。
すると、下級雪精は雪を降らせ、ゴブリンの体力を回復した。
「お願いだよ、動かないで!」
揚羽は羽を羽ばたかせ、毒を纏った鱗粉をオバケ南瓜にかけ、毒を浴びせた。
「ブラインド!」
カリオストロは魔術でゴブリンに目晦ましをかけ、つるぎがゴブリンを切り裂く。
オバケ南瓜はつるぎを蔓で縛ろうとするが、本体の剣には当たらなかったため、
ダメージは受けず、さらにオバケ南瓜は毒で弱っていった。
「ケケケ!」
「キキキ!」
「くっ!」
ゴブリンはつるぎに連続で石を投げつける。
「キャーッ!!」
オバケ南瓜は巨大な蔓で揚羽を連続で打ち据える。
先程自身に毒を浴びせたのか、攻撃は非常に激しかった。
「せいっ!」
麗羅が下級雪精の急所にナイフを突き刺し、下級雪精は黒い煙になって消滅した。
揚羽は自身に応急丸薬を使って体力を回復した後、鱗粉でゴブリンを弱らせ、直後に麗羅がナイフを投げてとどめを刺した。
「今度こそ……仕留める!」
カリオストロは護符に術式を刻み、オバケ南瓜に向かって投げつける。
魔力を纏った符が弾丸となってオバケ南瓜を貫き、オバケ南瓜の動きを制限する。
「そんな攻撃、当たらないよ!」
麗羅は鬼の攻撃を煙玉で回避し、ナイフを投げて反撃する。
オバケ南瓜は徐々に毒の効果で弱くなっていくが、攻撃は逆に激しくなった。
続けて麗羅は鬼にナイフを投げ、その攻撃はつるぎの技で強化された。
「アタイだって、みんなの役に立つ!」
揚羽は空を飛びながら鱗粉をばら撒いていく。
カリオストロも魔術でオバケ南瓜を攻撃し、オバケ南瓜の体力は残り僅かになった。
今がチャンス、とつるぎは剣に力を込める。
「とどめだ!」
「こっちだよ!」
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
麗羅の援護のおかげで、つるぎの攻撃はオバケ南瓜に命中。
剣により真っ二つに切り裂かれ、オバケ南瓜は一際大きな叫び声を上げた。
オバケ南瓜の身体から黒い煙が現れ、黒い煙は空の彼方に消えていった。
これで、戦いは終わったのだ。
「……ようやく、終わった、か……」
オバケ南瓜を討ち果たし、オバケ南瓜は元の巨大南瓜に戻った。
ただ、先程の戦闘のおかげか、南瓜は真っ二つに砕けていた。
これならば、料理しやすいだろう――揚羽が入れた毒があるが。
「で、毒はどうするんだ?」
「私が抜こう、美味しい南瓜スープができるぞ」
どうやら、毒抜きはカリオストロがやってくれるようだ。
世界一の魔術師である彼(?)なら、南瓜に入った毒も抜けるだろう。
麗羅、つるぎ、揚羽は頷いて、カリオストロの提案を承諾した。
その後、麗羅達は持ち帰った南瓜と集めた材料で南瓜のスープを作るのだった。
同時に、邪鬼に対する怒りも増すのだった。
次回は12月24日に、クリスマス関連の外伝を投稿します。
エピソード4「希望の星」はもう少し先になります……。