原作ではオカルトホラーですが、外伝ではギャグです。
ここは、見捨里市のどこかの路地裏。
今日は12月24日、クリスマスイヴ。
明日のクリスマス会をやるために、日中から準備で慌ただしい。
部屋は綺麗に飾り付けられ、クリスマスツリーも綺麗に飾り付けられている。
机を繋げた長テーブルには、チキン、美味しそうな料理、シャンパン、
大きなホールケーキなどがたくさん置かれている。
「さあ、明日のクリスマスパーティーに向けて、準備するよ!」
「おーっ!」
「つまみ食いはするんじゃないよ」
「食べ過ぎもな」
栗鼠の獣人、麗羅と蝶の妖怪、揚羽の女性の怪は主に飾り付けを担当する。
料理を担当するのは、つるぎとカリオストロの男性の怪なのだ(カリオストロは性別不明だが)。
つるぎとカリオストロは、最年少の揚羽に注意をしていた。
「ん? なんだい?」
四人が思い思いに楽しんでいると、突然、窓にベシャッと何かが張り付いた。
よく見るとそれは、パイ投げ用のパイだった。
「一体どこから飛んできたんだろう?」
空中にいる揚羽がパイを見ていると、今度はテーブルがガタガタと揺れ始める。
「な、何!?」
「揚羽君、キミは下がってくれ」
「こ、怖いぃぃぃぃ! アタイ、パイに襲われちゃうの!?」
「その心配はなさそうだが、念のため、油断大敵だ」
カリオストロが念のため、護符を何枚か持って身構える。
揺れがピタリと止むと、テーブルの上のケーキからいきなり不気味な足がいくつも飛び出し、
ケーキのスポンジ部分は大きく裂ける。
「キシャァァァァァ!!」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ケーキは奇声を上げ、揚羽は驚いてつるぎの後ろに隠れる。
それを合図のように、扉からも窓からも、奇声を上げるケーキが侵入し、四人に襲い掛かった。
「こ、これって怪だよね!? 怖いよ、怖いよ!」
「揚羽! アンタは後ろで援護しな! どうやら、ヤツらはウチらに敵意があるみたいだね!
こうなったら、戦うしかないみたいだよ!」
そう言って、麗羅は何本かナイフを取り出す。
「怖いけど、アタイも戦う!」
つるぎも身構えたのを見た揚羽は、みんなで怪になったケーキと戦った。
「ヤツは術に弱いみたいだよ!」
麗羅はパイケーキ・怪の特徴を一瞬で見破る。
「ウチは術が使えないから、これで我慢だけどね!」
麗羅のナイフが、パイケーキ・怪に刺さる。
揚羽は空を飛んで、パイケーキ・怪の頭上に鱗粉をばら撒く。
「せい! ……固いね」
つるぎの剣は、パイケーキ・怪には届かなかった。
パイケーキ・怪は意外に頑丈な身体をしている。
「爆符」
カリオストロは魔力を込めた護符を投げ、パイケーキ・怪にぶつけて小さな爆発を起こす。
麗羅の言う通り、パイケーキ・怪に術攻撃は効果的なようだ。
「ガァァァァァァァ!」
「そんなへなちょこ、効かないよ!」
麗羅は高く飛び上がり、ショコラケーキ・怪のチョコ攻撃をかわす。
「ぐっ!」
つるぎはショコラケーキ・怪のチョコマシンガンを何とか剣で防御する。
だが、防御しきれない分はそのままつるぎが食らった。
「ひゃっ!?」
「危ないっ!」
パイケーキ・怪が大量の砂糖爆弾を麗羅に飛ばしてくる。
つるぎは麗羅を庇い、代わりに攻撃を受ける。
「ぐっ! うっ! うあっ!」
砂糖爆弾の攻撃を食らったつるぎの身体が苦痛に歪む。
いくら頑丈な付喪神でも、こればかりは耐えられないようだ。
「……つるぎ……。……あまり許したくはないね」
つるぎの苦しそうな様子を見た麗羅は真剣な表情になり、ショコラケーキ・怪を睨みつける。
「どうやら、このショコラケーキは近付いて攻めた方がいいみたいだね」
麗羅は素早くショコラケーキ・怪に接近し、ナイフで切りつける。
「これで、おしまーい!」
揚羽は弱っているパイケーキ・怪に鱗粉をかけ、無力化した。
つるぎはショコラケーキ・怪を剣で斬りつけ、
カリオストロが魔力のこもった符を投げて爆発させる。
ショコラケーキ・怪はチョコを麗羅とつるぎに飛ばすが、
麗羅は攻撃をかわし、つるぎは剣で防ぐ。
「守れ」
パイケーキ・怪の体当たりをカリオストロは防御魔法で防ぎ、
衝撃波を放ってパイケーキ・怪を吹き飛ばした。
「こいつ、なっかなか攻撃が届かないねぇ!」
麗羅はショコラケーキ・怪をナイフで斬りつけるが、スポンジの効果で攻撃が届かない。
揚羽はパイケーキ・怪に鱗粉をかける。
「確かに、このケーキは堅いな」
つるぎの剣も、ショコラケーキ・怪のスポンジの効果で届かない。
揚羽はパイケーキ・怪に鱗粉をかける。
「確かに、このケーキは堅いな」
「術を使うべきだな」
つるぎの剣も、ショコラケーキ・怪のスポンジの効果で届かない。
カリオストロは薬を飲んで体力を回復した後、
呪文を書き込んだ符をパイケーキ・怪に投げ、符から電撃が放たれる。
ショコラケーキ・怪は大量のチョコレートを麗羅、つるぎ、揚羽に飛ばす。
「うわぁぁ!」
「きゃぁぁ!」
「ぐっ……!」
攻撃は全員に命中した。
麗羅は煙玉と柔軟な身体で避けようとしたものの、あまりに量が多くて避けられなかった。
「あぁぁっ!」
さらに、パイケーキ・怪は刺激的なタックルでつるぎを吹っ飛ばした。
その衝撃で、つるぎが剣の姿に戻ってしまう。
(た、助けてくれ、麗羅……)
「しょうがないねぇ! 剣ってものは、使われてこそ剣だからさ!」
剣に戻ったつるぎを、麗羅が手に取る。
麗羅は鋭い目でショコラケーキ・怪の弱点を見極め、狙いを定めてショコラケーキ・怪を突く。
「とどめだ」
カリオストロがたくさんの符をパイケーキ・怪に投げつけると、
パイケーキ・怪は符に飲み込まれて消えた。
ショコラケーキ・怪は反撃のために麗羅とカリオストロを襲うが、
麗羅はつるぎを上手く操り、ダメージを受けてもらう。
「揚羽、頼むよ!」
「おーけー!」
「いくよ、つるぎ!」
「やぁーっ!」
揚羽はショコラケーキ・怪に鱗粉を振り撒き、動きを止める。
麗羅は光の速度で動いてショコラケーキ・怪に斬りかかり、ショコラケーキ・怪を吹き飛ばす。
そして、残りのショコラケーキ・怪も麗羅とつるぎの連続攻撃で倒されるのだった。
「ふぅ……ようやく終わったみたいだね」
襲ってきたケーキ達は麗羅達に倒され、ただのケーキになった。
しかし、外から阿鼻叫喚が聞こえている。
どうやら、騒ぎは見捨里市全体に及んでいるようだ。
四人は異変を解決するため、クリスマスを無事に過ごすため、見捨里市へ繰り出した。
「な、なんだいこれは!?」
「クリームまみれだねぇ」
四人が目にしたのは、自走するケーキ達の群れに襲われ、
クリームまみれとなった街の住人達だった。
その光景を見た麗羅は、思わずゲラゲラと笑う。
「面白い光景だね! このままでいいんじゃないかい?
怪とはいえ、こんな面白い被害も出すんだしさ!」
「……いや、これ以上被害を出すべきではない」
カリオストロの言う通り、怪現象を治めなければ見捨里市は大変な事になる。
「仕方ないねぇ! ほら、つるぎ! 一緒に調査するよ!」
「ああ」
つるぎは人間の姿に戻り、この怪現象の調査を始めた。
「それで、キミはどんな事をされたんだい?」
「顔面にパイをぶつけられたんだ」
つるぎの調査により、原因が分かった。
甘味を身体にぶつけられるという行為が、無差別に行われているようだ。
ただ、子供への攻撃はしていないようであり、呪いの類とも取れるだろう。
「なるほど、そういう事だったのか」
ケーキ達はどんどん増殖しているが、知性はほとんどなく、恐らく母体となるのがいるという。
母体さえ倒せばこの騒ぎは治まるだろう。
「その前に、怪になったショコラケーキとフルーツタルトを倒しておかないとね」
つるぎは剣の付喪神の本能なのか、はたまた自分の意思なのか、
ショコラケーキ・怪とフルーツタルト・怪を倒したがった。
カリオストロから許可をもらい、つるぎはショコラケーキ・怪とフルーツタルト・怪を倒した。
そして、情報収集を再開して、母体の居場所が分かった。
どうやら、この異変の母体は見捨里公園に陣取っているようだ。
今から向かえば捕まえられるかもしれない。
「場所は見捨里公園だよ! 邪鬼って奴をとっちめないとね!」
「そうだね、麗羅。キミに判断を任せるよ」
「あま~いクリスマスパーティーを楽しみたいな~!」
「私もこの戦い、負けるわけにはいかない」
麗羅達は、母体ケーキが隠れている見捨里公園へと足を踏み入れた。
すると、周囲の景色が一変し、見える景色全てがお菓子に変わっていく。
その奥に鎮座する、高さは10m以上の巨大なケーキに、少年――邪鬼が立っていた。
「やはり来たみたいだね」
「アンタ、また騒ぎを起こしたみたいだね」
麗羅はたくさんのナイフを構えている。
邪鬼に対する敵意は強い。
「どうだ? 僕の最高傑作の式神は。
これでクリスマスに浮かれている人間どもを恐怖に陥れてやるよ」
「グゴアアアアアアアアアアアア!!」
そう言うと、邪鬼は怪のケーキに命令した。
すると、巨大なケーキは巨大な足で地面を踏み鳴らし、
大きな口で咆哮を上げながら四人に襲い掛かった。
「楽しいクリスマスを、邪魔されてはたまらない。この異変、スマートに解決させてもらうよ」
「遠距離攻撃に弱いみたいだよ!」
麗羅は獣の瞳で、巨大ケーキの弱点を見破る。
すぐに麗羅は巨大ケーキにナイフを投げるが、巨大ケーキはスポンジの力で攻撃を防いだ。
巨大ケーキは高く飛び上がり、麗羅、つるぎ、カリオストロを押し潰す。
「ぐへぇ!」
クリームのせいで、麗羅達は動きが鈍った。
「身体が動かない」
つるぎは剣を振ったが、身体が麻痺しているためまともに攻撃は通らなかった。
「も~う! 許さな~い!」
巨大ケーキの攻撃から逃れた揚羽は空高く飛び、鱗粉を巨大ケーキにばら撒いて動きを止める。
だが、巨大ケーキはスポンジの力で揚羽の攻撃を防いだ。
スポンジでできているため、巨大ケーキには炎が効果的なのだ。
「うわっ、やるねぇ!」
弱点を突かれて起こった巨大ケーキが、カラメルの弾丸を麗羅に乱射する。
麗羅は腕を十字にして攻撃を防いだ後、丸薬を飲んで体力を回復し、
ナイフを投げたが、巨大ケーキはスポンジで彼女の攻撃を防いだ。
「むっ、攻撃か!」
「わわっ、カリオストロちゃん、危ないよ!」
揚羽は背中の羽を羽ばたかせてカラメルの弾丸を吹き飛ばす。
直後に鱗粉をばら撒いて、巨大ケーキを弱らせた。
「カリオストロちゃんは脆いから、アタイが守らないと!」
「そうだね」
本当は揚羽も脆いのだが、失礼だと思ったつるぎは口に出さなかった。
「呪縛符!」
「銘刀の魂よ、ここに」
「そら!」
カリオストロは呪文を書き込んだ護符を巨大ケーキに張りつけ、巨大ケーキを束縛する。
麗羅はつるぎの援護を受け、巨大ケーキにナイフを投げる。
「とどめだよ! いっけぇーーーーー!!」
そして、揚羽がばら撒いた鱗粉が、巨大ケーキに全てかかる。
それが、致命傷になり――
「グゴアアアアアアアアアアアア!!」
巨大なケーキは巨大な咆哮を上げ、地に倒れ伏し、ただのケーキの塊になった。
気が付くと、邪鬼の姿は無く、また逃げられてしまったようだが、
辺りの景色が元の見捨里公園に戻っていく。
空はすっかり暗くなり、優しい月が辺りを照らしている。
ふと、空から白いものがふわりと降ってくる。
どうやら、ホワイトクリスマスになりそうだ。
その舞い散るものが、甘くなければ……。
「あ、あははははは……;」
空から雪のように舞い散る粉砂糖。
遠くのビルによじ登り、未だ奇声を上げている巨大ケーキ。
四人のクリスマスは、まだまだ先になりそうだ。
次回は、エピソード4「希望の星」を予約投稿いたします。
キユウが消えた今、勇気は何を考える……?