久しぶりに学校に来た勇気だったが、まだ心の整理はできていなかった。
しかしそんな勇気の気持ちを知る由もなく、見捨里小学校に、謎の金の粉が降り注いだ。
勇気は町中の物品が宙を舞い、見捨里市を襲う夢を見る。
その中で勇気は、いないはずのキユウの名前を呼ぶのだった。
「こらっ、真之!」
突然、声が響き、勇気はハッとした。
目前に、原末先生が立っていた。
勇気は椅子に座っている。
6年2組の教室だ。
「真之、お前はどこにいるか分かるか?」
「それは……」
勇気の額には、今見た怖ろしい光景のせいで汗が噴き出していた。
それを袖で拭うと、周囲を見た。
窓の外は平和そのものだ。
ガスタンクも静かに町の中にある。
そして教室のクラスメイト達が、勇気を見てクスクスと笑っていた。
「学校の6年2組の教室です」
「そうだ。『助けて、キユウ』とはなんだ?」
「あの、それは……」
「三日も休んで、すっかり気が抜けてしまったんじゃないのか?」
クラスメイト達がどっと笑う。
その中に一人だけ、笑わずに勇気を見つめる少女……羽心がいる。
原末先生の問いに答える事はなかったが、その視線は感じ取っていた。
チャイムが鳴り、休憩時間になった。
勇気は早退しようかと悩んだ。
見捨里市がメチャメチャになる夢を見たのだ。
放っておけば現実になるだろう。
しかし、肝心のキユウはいないのだ。
キユウが嵌めていたグローブを嵌めれば、自分が『時のトンネル』を作れるのだろうか?
それに、たとえトンネルを作れたとしても、どこに行けばいいのか?
見捨里市を破壊するのが、どんな『怪』なのか全く見当が付かない。
勇気は自分の机で頭を抱えた。
「ねぇ、勇気」
「え?」
勇気が顔を上げると、羽心が話しかけてきていた。
「あのさ、さっきはキユウさんの夢を見てたんでしょ?」
羽心が『キユウさん』と『さん』付けをしてきた事に、勇気はちょっと驚いた。
だが、羽心なりに最大限に気を遣っているのだろう。
「羽心には関係ない事だよ……」
勇気は羽心から視線を外して答えるが、それでも羽心は臆せず話しかけてくる。
「あのさ、勇気にちょっと話したい事があるんだ」
勇気は羽心を見ずに再び答える。
「あの『黒い鈴』なら適当に捨ててよ。ごめん、僕、ちょっとトイレに行きたいから」
自分を助けてくれようとしたけど、キユウを消してしまった要因を作ったのは羽心だ。
彼女を責めるべきでないのは、分かっている。
だが、こんな辛い気持ちをコントロールする方法は大人になっても分からないだろう。
勇気はそそくさと教室から廊下に出た。
休み時間を賑やかに過ごす男子や女子の間を縫って勇気はトイレに向かう。
それを羽心が背後から追いかけてきた。
「勇気! ちょっと待ってよ! 『黒い鈴』の事じゃないの! 違う話なの!」
「僕は何も聞きたくないんだ!」
勇気は吐き捨てるように言うと、小走りになった。
慌てた羽心は、勇気の背中に怒鳴った。
「私、昨日、金色の粉が降るのを見たの!」
周囲の生徒が驚いて羽心を見たが、最も驚いたのは勇気だった。
「え?」
勇気が振り向くと、羽心が近寄ってきた。
「ねぇ、さっきの授業中に夢を見たんでしょ? そこに金色の粉が出てこなかった?」
「え? なんでそんな事を?」
「だって、前から変な夢を見るって言ってたでしょ?」
勇気はそれに答えるよりも、もっと大事な事を尋ねる事にした。
「その金色の粉はどこで見たの?」
「昨日の夜、寝ようと思ったら、外から変な声みたいな音がしたのよ」
「どんな音?」
「キャキャキャっていう笑い声みたいなの」
勇気は先程の夢の中で聞いた声を思い出して生唾を飲んだ。
「それで?」
「窓を開けて外を見たら金粉みたいなものが降ってたの。
空をよく見たら、×印状の小さな罅みたいのが見えた気がして……」
「小さな罅が……?」
「その罅は雲に隠れて見えなくなったけど……。私、とても怖くなって……」
勇気はじっと考えてから羽心に提案をする事にした。
「今日、学校が終わったらうちに来てくれない?」
羽心のそれまでの不安げな表情がぱっと明るくなる。
「もちろんよ」
~次回予告~
金色の粉と小さな声、それはコティングリーの妖精によって起きた現象だった。
ディアーナも高位の妖精であるため、この異変を解決しようと決意する。
だが、その異変はただの異変ではないようで……。