怪狩り ~ 人の絆と怪の決意   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

邪鬼によって邪悪になっていた妖精は、勇気達の活躍により正気に戻った。
コティングリー妖精事件解決後、勇気はプーカから新たなグローブを受け取る。
それは、星の羅針盤が描かれたグローブだった。
そして、勇気はプーカから真実を知る。
太陽のグローブ、月のグローブ、そして星のグローブは、妖精が作ったものだったのだ。
勇気は消えたキユウに代わる新たな仲間として、プーカを迎え入れるのだった。


episode4 - Star of Hope ~ 地底の王国
1 - 三つ目のグローブ


 コティングリー妖精事件が解決してから数日後。

 路地裏の建物で、ジャネットは何かを呟いていた。

「……ああ、地上以外が騒がしい。これはどういう異変なのだろうか」

 その独り言は、ノノとチェイニーには聞こえなかったが、

 聴力が良いディアーナとアプリルには聞こえていた。

「ここ以外で異変が起こってるって事か?」

「そうです」

「地上以外って事は……安直だけど、地下だろうな」

「そうです」

「そうかよ」

 どうやら、次の異変は地下で起きているようだ。

 元いた世界(アルカディア)にも地下世界はあるしね、とディアーナは呟く。

「地下は地上よりも危険です。空気が薄く、定期的に酸素を供給しなければなりません。

 さらに、地下に潜む者もこちらの命を狙ってくるでしょう。

 私は地上でしか戦っていなかったので、地下はこのようなイメージしかありませんが」

 ジャネットから地下世界の説明を聞くディアーナ。

 そして、仕事に行くのは誰なのかとジャネットに聞く。

「今日もあたしとチェイニーが行くの?」

「あなたと助っ人が行かなくて、どうしてあの少年を助けるのですか。

 いいですか、拒否権はありませんよ。必ず、あの少年を助けてください」

「分かったわよ」

「この役目、引き受けさせてもらおう」

 ディアーナは渋々依頼を受け、チェイニーはやる気満々で依頼を引き受けた。

 

「プーカ、ちゃんと説明をしてくれ!」

 その時、勇気は家の書斎にいた。

 部屋の中には、小さな妖精・プーカが飛んでいる。

 プーカは、何故か太陽や月のマークのグローブとそっくりなグローブを持っていた。

 星のマークのグローブ。

 勇気はそれが何なのか聞くために、プーカを見捨里市に連れて来た。

 プーカが飛びながら勇気を見ると、ふと視線をドアの方へ向けた。

「話すのは別にいいけど、彼女は一体誰なんだイ?」

 プーカは書斎の入り口に立っている人物を見た。

 羽心である。

 勇気と一緒に時空を超えようと思ったものの、それができず、

 戻って来るのを待っていたというのだ。

 流石に追い出す事はできない。

「彼女は白鳥羽心、僕の幼馴染だよ」

 そんな羽心が、ふと口を開いた。

「プーカ、あなたは妖精なんでしょ? どうしてグローブを持ってるの?」

 勇気が知りたいように、羽心もその事を知りたいようだ。

 プーカはそんな羽心をじろじろと見ると、小さく頷いた。

「キミは人間の中ではまだマシな方だねェ」

「マシって……」

 羽心はどう答えればいいのか困惑する。

 プーカはそれを見て微笑むと、腰につけたポーチの中からグローブを取り出した。

 羽心は、それを食い入るように見つめた。

「本当に星のマークがついてる。っていうか、そんな小さなポーチにどうやって入れてたの?」

 どう折り畳んでも、小さなポーチの中にグローブは入らなそうだ。

 疑問に思う羽心を、プーカはフッと鼻で笑った。

 

「これは『王様のポーチ』と言って、

 どれだけ入れてもいっぱいにならない不思議なポーチなんダ。

 簡単に言うとよj……なんとかってヤツだ。

 オイラは妖精族の王子だからネ。代々王家に伝わる宝物を持っていて当たり前だろウ」

「妖精族の王子?」

「プーカが?」

 勇気と羽心は、プーカを見ながら目をパチクリさせた。

「おいおい、何だいその驚き方ハ? これだから人間は見る目がなくて困るんダ」

 プーカは呆れた様子で息を吐いた。

「でも、あの長老の方が偉そうだったよ」

「仕方ないヨ、長老はオイラより何百年も長く生きてる偉い妖精だからネ」

 プーカにはプライドの高さが感じられた。

「そんな事より、そのグローブは何なんだ?」

 王様のポーチや王子という説も興味深いが、知りたいのはそれではない。

 勇気は太陽のグローブと月のグローブをポケットから取り出すと、星のグローブと見比べた。

 やはり太陽と月のマークのグローブと同じで、違うのは、羅針盤のマークだけのようだ。

「これは右手用か……」

 他にもグローブがあるなど、キユウは何も言っていなかった。

「どうして君がこれを持っているんだよ?」

「そりゃあオイラが妖精族の王子だからサ」

「それはさっき聞いたよ。

 僕が知りたいのは、どうして王子だったらこれを持っているのかっていう事だよ」

「どうして? そのグローブは妖精族の王様が作った物だからに決まっているじゃないカ」

「えええ?」

 真実の赤文字を見て、勇気は驚きの声を上げる。

 一方、羽心がプーカに語りかけた。

「じゃあ、そのグローブはあなたが作ったわけじゃないって事?」

「オイラにはこんな物を作れる才能はないヨ。グローブを作ったのは先祖の王様サ。

 大昔の事だから、どれだけの数を作ったのかは分からないけど、

 特別な力を持った人間のある家族だけが、そのグローブを嵌めて時空を超える事ができたんダ」

「特別な力って……」

 また、プーカが赤文字で言った。

 それは、勇気や羽心の持っている力の事なのだろうか?

「だけど家族って、私と勇気は家族じゃないわよ?」

「キユウだって家族じゃないし、そもそも幽霊だったよ?」

 勇気と羽心に血縁関係はない。

 キユウも、グローブを嵌めて時空を超える事ができたのだ。

「そんな事、オイラに聞かれても分かるわけないだロ」

 プーカは星のマークのグローブを持って飛びながら、机の上に降り立った。

「古い古い言い伝えだから、オイラはグローブについてこれ以上の事は分からないヨ。

 だけど、妖精族にはこんな伝説があるんダ」

 

 かつて、「異能」と呼ばれる力を持った人間のある家族が、

 妖精族の王からいくつかのグローブをもらった。

 彼らはそのグローブを嵌め、怪と人間に災いをなす邪悪な者と戦い、そしてこの世界を救った。

 

「ただの昔話だと思ってたけド、まさかホントに、他にもグローブが存在しているなんてネ」

 プーカは勇気が持っている二つのグローブをまじまじと見つめた。

怪と人間に災いをなす邪悪な者は、この世界では『邪鬼』と呼ばれている

 羽心は青文字で呟く。

「だけど、怪にも災いをなすってどういう事なの?」

 羽心が首を傾げると、勇気が口を開いた。

「邪鬼は妖精達を凶暴にして、僕に襲いかからせた。

 あいつは人間に災いをなす邪悪な者であると同時に、

 怪にとっても邪悪な者なのかもしれない……」

 その言葉に、プーカが頷く。

 勇気は、コティングリーの村で起きた出来事を羽心に話した。

 すると、羽心の表情が一気に曇った。

「そんなのって酷過ぎる……」

 羽心は邪鬼のやった事を知り、ショックを受けたようだ。

「邪鬼……。あいつの目的は何なんだ……?」

 何者なのか、何故見捨里市を狙うのか、全く分からない。

 こういう時こそ、キユウが必要だった。

 だが、彼はもういない。

「くっ……」

 勇気は歯がゆい気持ちになる。

 一方、羽心はそんな勇気を見ていた。

勇気……

 誰にも聞こえないように、かすかに呟く。

 羽心は、プーカが持っている星のグローブを、ただじっと見つめた。




~次回予告~

いつものように見捨里小学校に通う勇気と羽心……とプーカ。
学校に行くための道で、勇気達は担任教師の原末兼太と出会う。
彼によれば、見捨山でなんと、温泉が湧き出たというのだ。
いつもなら湧き出ないはずの温泉だが……。
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