温泉が湧き出ないはずの見捨山で突如、温泉が湧き出た。
それを調査しようとした勇気と羽心だったが、大人達に阻まれる。
そこで、プーカが二人の代わりに調査に行く事になった。
彼なら身体は小さいため、気付かれにくいからだ。
相変わらずやんちゃなプーカだったが、勇気と羽心は彼を信じて見守るのだった。
「はぁ、はぁ、着いた! こ、これが温泉?」
「じゃが、少々障害が見受けられるのぅ」
ようやく、ディアーナとチェイニーは見捨山に着き、勇気達と合流した。
確かにチェイニーの言う通り、見捨山で温泉が湧き出ていたが、大人達が立ち塞がっていた。
ディアーナはまず、勇気に事情を聞こうとする。
「勇気、何があったか説明してくれない?」
「うん、分かった」
少年説明中……
「普段は温泉が湧かない場所で、いきなり温泉が湧いた。どこかで聞いた事があるわね」
ディアーナは勇気の説明を聞いて、ある場所で起きたある異変*1と重ね合わせた。
「それで、今、何をしてるところなの?」
「今、プーカが調査に行ってるよ」
「ええ! 見守りましょうか! 妖精として!」
「……静かにして、ディアーナ」
プーカは、葉っぱの傘で身を隠しながら、
少しずつ山道を塞いでいる警察の方へ近づいた。
皆、温泉を見たくて、空中に浮かぶ葉っぱの傘と、
そこから出ている足には気づいていないようだ。
プーカは人々の間を抜け、そのまま温泉があるであろう方向へ向かって行った。
突然、何かが足に当たった。
プーカが傘から顔を僅かに出して確認すると、
そこにはツルツルとした石のような物体があった。
「何だこれハ……?」
プーカはその物体を指先でツンツンとつついてみる。
すると、物体が大きく揺れ動いた。
それは、野次馬の中にいたおじいさんの頭だ。
「どうして葉っぱが宙に?」
おじいさんは宙に浮かぶ葉っぱを見て、目をパチクリさせていた。
「やばイ!」
プーカは慌てて葉っぱで身を隠したまま逃げ出す。
だが、今度はおじいさんの近くにいた原末先生の顔が迫ってきた。
「うわッ!」
「ぬおぉお!」
プーカは原末先生の頭を踏み台にして、さらに逃げる。
原末先生は驚きながらも宙に浮かぶ葉っぱを目で追うが、
プーカは既に野次馬の中に紛れ込んでしまっていた。
「な、何だったんだ、今のは……?」
おじいさんと原末先生は、キョトンとした表情でプーカが飛んで行った方向を眺めていた。
「……!」
その時、勇気、羽心、ディアーナ、チェイニーの鼻にツンとする刺激が走った。
硫黄の臭いが急に強くなったのだ。
ディアーナはこの場にアプリルがいなくてよかった*2、と思った。
「風のせいかな?」
勇気はそう思うが、風は全く吹いていない。
「おおお、これはどういう事だ?」
「原末先生、どうしたんですか?」
すると、野次馬の中で動画を撮っていた原末先生が声を上げた。
勇気、羽心、ディアーナ、チェイニーは傍に歩み寄る。
「あそこを見ろ! アイドルの月村レーナちゃんがいるぞ!」
「誰?」
月村レーナというのは、大人気のアイドルグループのメンバーだ。
勇気と羽心は、何故そんなアイドルがここにいるのか不思議に思いながら、
原末先生が見ている方向を見た。
ディアーナとチェイニーは全く知らないため、ぽかーんとしていた。
だが、そこには、普通のおばさんが立っているだけだ。
勇気達は周りを見るが、月村レーナなどどこにもいなかった。
「先生、レーナちゃんなんかいないわよ」
「大体、アイドルがこんなところにいるわけないですよ」
勇気達がそう言うと、原末先生が顔を向けた。
「んん? ここにも月村レーナちゃんがいるじゃないか!」
原末先生は、何故かディアーナを見てそう言った。
「ちょっと、あたしは、その、月村なんとかじゃないわよ!」
「何言ってるんだい。どう見ても月村レーナちゃんじゃないか!」
「どうなってるんだ?」
勇気が戸惑っていると、野次馬の中にいた制服姿の女子高生が傍に駆け寄ってきた。
「あの、菊山淳司君ですよね?」
「へっ?」
菊山淳司というのは、今一番人気のある若手俳優の名前だ。
「私、ファンなんです! 握手してください!」
「ほへっ、あの、その?」
女子高生は勇気と握手をしようとする。
勇気は戸惑いながら、女子高生から離れた。
見ると、周りの人達もおかしな事を喋っていた。
「俺、君の歌、毎日聞いてるんだ!」
「私、あなたの映画見に行きました!」
「きゃ~、憧れのあなたにこんなところで会えるなんてびっくりだわ!」
人々は周りにいる人達を見て、興奮しているようだ。
「何なのじゃ、これは……」
「分からない。だけどこれは普通じゃない!」
勇気達はますます戸惑う。
すると、そんな四人の下にプーカが戻ってきた。
「大変だゾ!」
プーカは葉っぱの傘で身を隠すのも忘れて、勇気達の方へ一直線に飛んできた。
「プーカ、みんなにバレちゃうだろ!」
「そんな事言ってる場合じゃなイ!」
「どういう事?」
「温泉の傍に、罅があったんダ! あの×印状の罅が!」
それは、邪鬼が作り出した罅だ。
「……そうか」
チェイニーの顔が険しくなる。
羽心は原末先生達を見た。
「勇気、臭いのせいよ。先生達がおかしくなったのは臭いが原因なのよ!」
硫黄のような臭いが強くなった直後、原末先生達は、
周りの人々がアイドルや憧れの人物に見えるようになった。
紛れもなく、これは怪現象の影響だ。
このままでは大変な事になる。
「急がなきゃ、間に合わなくなる!」
「ゆくぞ!」
勇気とチェイニーは、慌てて駆け出した。
「かぜのせいれいよ、わがこえにおうじ、このものたちをあくむよりときはなちたまえ! Breeze Care」
ディアーナは風の精霊を呼び出し、優しい風を吹かせて硫黄を吹き飛ばす。
これで何とか幻覚は治まったが、もちろん、これだけでは解決しない事は知っていた。
ディアーナは双剣に手をかけ、素早く駆け出した。
「おい、どこに行くんダ?」
「家の書斎よ。怪狩りに行くつもりなのよ!」
羽心はそう言いながら、ふと何かを思うと、プーカの方を見た。
「プーカ、あなたにお願いがあるの!」
「お願イ?」
羽心は真剣な表情になると、プーカが提げている王様のポーチを見つめた。
~次回予告~
見捨里市が硫黄による幻覚により崩壊する未来は止めなくてはならない。
勇気、ディアーナ、チェイニーは仕事にかかるが、羽心はある決断をする。
それは、今までできなかった、勇気と共に行う怪狩りだった。
もう守られるだけの自分ではない。
羽心は星のグローブを装備して、戦いたいと思うのだった。