怪狩り ~ 人の絆と怪の決意   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

温泉が湧き出る見捨山を調査していたプーカは、山の中に邪鬼が作った×印状の罅を発見する。
やはり、これは邪鬼によって起きた異変だったのだ。
勇気達は大急ぎで書斎に戻り、怪を狩る準備をするのだが、
その道中で、羽心はプーカにある「お願い」をした。
それは、羽心にとって、非常に重要な事であった。


4 - 羽心の決断

 家へ帰ってきた勇気と、ディアーナ、チェイニーは、書斎に駆け込んだ。

 勇気は太陽と月のグローブを両手に嵌めると、壁に近づき、時のトンネルを開こうとした。

 すると、羽心が部屋に駆け込んできた。

「ちょっと待って!」

「羽心。だから君は――」

「私も行くわ! 私もこの町を守りたいの。

 この部屋で勇気の事を待っているだけなのはもう嫌なの!」

 羽心は勇気をじっと見ている。

「だけど……」

 勇気は、羽心を危険な目には遭わせたくない。

 何より、二人は少しずつ仲の良さが戻ってきていたが、それでもぎこちなさは残っていた。

「どうして、あの子を連れて行きたくないの?」

「だって、羽心はキユウじゃないから、足手まといになるかもしれないんだよ!

 確かに羽心は怪奇現象に詳しいけど、キユウの方が……」

「キユウキユウと、五月蠅いわね。

 いい加減にしなさい! あの子の代わりになれるのは、羽心しかいないのよ!

「羽心は、キユウの代わりになんかなれないよ!」

 勇気とディアーナは言い争っている。

 羽心とプーカはその様子を見て、少し呆れていた。

時空(カオス)……」

 勇気は壁に向かって手をかざして、呪文を唱えようとした。

 だが、羽心が駆け寄り、後ろから勇気の肩を掴んだ。

「待って!」

「羽心は連れて行かないってば! ここで待ってて!」

「そうじゃなくて、今回の怪現象をどんな怪が起こしたのか分かってるの?」

「え?」

「そう言われれば、そうじゃな」

 勇気はその事をすっかり忘れていた。

 怪現象を起こした怪が分からなければ、時空を超える事はできない。

「ええっと、今回の怪は……」

 硫黄のような臭いによって、今見ている人が別人の姿に見える怪現象を起こす怪。

 そんなものは全く分からなかった。

「くっ、ボォーッとして夢を見たら分かるかもしれないのに」

「えっ、そうなの?」

「じゃあ、今すぐボォーッとしなさいよ!」

「今から?」

「早くしないと大変な事になっちゃうでしょ!」

 放っておいたら、町中がパニックになってしまう。

「わ、分かったよ。ええい、こうなったら――!」

 勇気は夢を見るために、ボォーッとしてみる事にした。

「ボォーッ~」

 口を開け、全身の力を抜く。

「ボォーッ~、ボォーッ~」

 さらに脱力する。

 だが、意識すればするほど逆にボォーッとなどする事ができなかった。

「ううう、やっぱり無理だよ!」

「当然じゃろう。意識して無意識になる事など、不可能じゃからな。

 儂も予知ができれば、勇気の力になれたのじゃが……」

 チェイニーの言う通りだ。

 彼は予知能力を持っていたようだが、今は力をほとんど使えないようだ。

 このままでは、怪の手がかりを得る事ができない。

「どうしよう……」

 勇気は頭を抱えてしまった。

 そんな勇気と羽心の前を、プーカが飛んでいる。

「情けないねェ。キミ達、どんな怪なのか分からないのかイ?」

「ああ、だから困ってるんだろ」

 勇気の言葉に、プーカはにやりと笑った。

「オイラはねぇ、今回の怪現象が、どんな怪が起こしたものなのか分かるヨ」

「えっ?」

「プーカ、ホントに分かるの?」

「ああ、オイラは妖精族の中で一番怪に詳しいからネ」

「ふーん。で、どんな怪なの?」

「――これは恐らく『地底人』の仕業ダ」

「知ってるわ。それって、地底に住んでるあの地底人って事よね?」

「ああ、あいつらは人を捕まえては食べる凶暴な奴らダ」

「人を食べる? そんなのって!」

 勇気は思わずゾッとして、プーカからさらに話を聞こうとした。

 一方、羽心は何を思ったか、部屋を見回した。

 そして、傍にあったリュックを手に取ると、部屋に置かれていた物を次々に入れていった。

「羽心、何してるんだよ?」

「さぁ、行くわよ!」

「行くって?」

「さっきも言ったでしょ。私も怪狩りに行くわ!」

 羽心は隠し持っていた靴を見せた。

「だから、羽心は連れて行かないってば! そもそもグローブは渡すつもりはないから!」

 グローブを装備するか、異次元の旅人でなければ、時のトンネルを潜る事はできない。

 勇気は、グローブを守るかのように両手を後ろに隠した。

 

「そんな事しなくても、それは奪わないわよ」

 羽心は微笑むと、ポケットの中からある物を出した。

 それは、星のグローブだ。

「どうしてそれを?」

 星のグローブは、プーカが王様のポーチにしまっていたはずだ。

 勇気はプーカの方を見た。

「いやぁ、羽心チャンに貸してくれって頼まれてね」

「貸しちゃ駄目だよ!」

「どうして?」

「だって、羽心を巻き込みたくないんだもん!」

「勇気クン、彼女にも手伝ってもらった方がいいゾ。

 キミは少しは勇気があるみたいだけど、今いち頼りないからねェ」

「頼りないって……」

「何よりも羽心はやる気満々だもの。やっと一緒に戦えるんだもの!

 そうじゃなかったら、羽心は勇気のところに来ないわよ!」

 そんな事ない、と勇気は言おうとしたが、

 前回、キユウがいない状態で怪狩りを行い、散々な目に遭った。

 それを思い出すと、否定する事ができなくなってしまう。

「勇気、これはあなただけの問題じゃないの。

 私にも特殊能力がある、って邪鬼が赤文字で言っていたわ。

 それはつまり、私にもこの町を守る使命があるって事よ」

「どんな能力なのかは分からないけど、役に立つ事は確かだと思うから!」

「それに……直接ではないとはいえ、私はキユウさんを消してしまった。

 だから、私……ディアーナさんが言ってたみたいに、キユウさんの代わりになりたいから」

「それは……」

 羽心はどうしても、キユウを消した責任を取りたいようだ。

 ディアーナとチェイニーが許したとはいえ、それでもまだ心残りがあるようだ。

 女性二人の迫力に、勇気は言葉が詰まる。

「ここまで来たら連れて行くしかないと思うネ」

 プーカはそう言いながら、勇気の傍に飛んできた。

「まあ、安心しロ。オイラも付いて行ってあげるかラ」

「お主の幼馴染がこれだけ真剣に頼んだのじゃ。断る理由など、存在せぬ」

「プーカ、チェイニー……」

「ちなみに、王様のポーチはグローブと同じ素材だから、

 オイラはグローブがなくても時のトンネルを潜れるヨ。じゃあ、よろしク」

 プーカはそう言うと、勇気の胸ポケットに入った。

 

「仕方ない……」

 羽心の決意は、本気だった。

 こうなったら、同行させる以外に選択肢はない。

「僕から離れちゃ駄目だからな!」

「分かってるわよっ!」

 勇気は諦めると、壁に近づき、左手をかざして呪文を唱える事にした。

時空貫通(カオス・ゲート)

 次の瞬間、壁に大きな渦の穴ができた。

「行くよ!」

 勇気、ディアーナ、チェイニーは、光の渦の中に飛び込む。

「よおし、私も……」

 羽心は星のグローブを嵌めようとした。

 だが、意気込みとは裏腹に、手が震え、なかなかグローブを嵌める事ができなかった。

 相手は凶暴な地底人だ。

 正直、行くのは怖い。

 だけど。

 

「ああもー!」

 羽心は震える手の甲をもう一方の手で叩いた。

「私だって、できるんだから!」

 そう言うと、羽心は星のグローブを嵌めた。

 次の瞬間、勇気を振り絞って、渦の中に飛び込んだ。

 

きゃああああああ!

 羽心は、光のトンネルを足をばたつかせながら飛んでいた。

 目が回り、頭が回る。

 スカイダイビングなんてやった事はないが、もしやったらこんな感じかもしれない。

 羽心は混乱しながらも、そんな事を考える。

 

「きゃああ! 何なのよ~!!」

 やがて、光のトンネルの奥に、岩場が見えてきた。

 羽心は勢いよく地面に尻もちをついた。

「あいたた……」

 そんな羽心の傍に、勇気、ディアーナ、チェイニーがやって来た。

「最初はやっぱりそうなるわよね」

「なんか、スカイダイビングをやったみたいだったんだけど」

「ああ。僕も最初はそう思った。まあそのうち慣れるよ」

 勇気が先輩風を吹かす。

 羽心はそんな勇気に少しイラっとしたが、それよりも周りの景色が気になった。

「ここは、どこなの……?」

 周りは岩だらけだ。

 四人は、どこかの岩場の一角にいるようだ。

 すると、勇気の胸ポケットから顔を出していたプーカが答えた。

「ここは、数万年前のとある山の中だネ」

「数万年前? えええ!!




~次回予告~

ついに、羽心は勇気と共に戦う事になった。
だが、初めての本格的な戦いに、怪奇現象に詳しい羽心も困惑する。
それでも、勇気の力になるために、羽心は星のグローブを装備し、
ディアーナ、チェイニー、プーカと共に時を超えるのだった。
次の目的地は地底国、果たして勇気達は怪を倒す事はできるのだろうか。
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