勇気達は鵺を倒すために平安時代の日本に行き、源頼政と猪早太と出会った。
勇気は単独で、鵺を倒すための作戦を考えていたのだが、
その様子を見たディアーナは怒りを抑えられず、勇気に平手打ちして説教する。
その後、あまりにも臆病な頼政を見た勇気は昔の自身を照らし合わせ、頼政を叱咤激励する。
実は猪も同じように怖がっていたのだが、頼政を支えるために勇気を出していた。
頼政も猪も、鵺と戦う気持ちは勇気達と全く変わらないのだ。
そして、ついに勇気達は鵺と遭遇し、戦いを挑むのだった。
「いきなり消えたですって?」
「あやつらは何を考えておるのじゃ……?」
「そんな事、僕にも分からないよ!」
「なんでこんな事になるのよ……」
「おいおい、これは本気でやばいゾ!」
羽心、勇気、ディアーナ、チェイニーは、予想外の展開にパニックになっていた。
プーカは飛びながら焦る。
「そんな事、分かってるわよ!」
「そうだよ! 一体どうやって倒せば――」
猿の顔が、勇気達の方をじろりと睨む。
蛇の尻尾もうねうねと動き、顔をこちらに向けて、舌を出して威嚇した。
瞬間、勇気と羽心は急に寒気を感じた。
「これって!」
「ああ、このままじゃ僕達も病気になる!」
「ここは、この魔法を使うわ。かぜのせいれいよ、やさしきかぜでかのものたちをやまいよりまもりたまえ。Air Screen」
ディアーナは風の精霊を召喚し、風の膜を張って勇気達を病から守った。
これで鵺が勇気達を病にする事はできなくなった。
「鵺は空を舞う以上、倒すためには、動きを止めるしかないのう」
「ええ!」
「ヒョー ヒョー」
鵺が雷を纏って勇気達の方へと襲いかかってきた。
体当たりが命中すれば大ダメージは避けられない。
勇気達は同時に動いた。
チェイニーは血液のメイスを持ち、勇気とプーカは素手で、蛇の尻尾の方へ。
羽心はバナナ、ディアーナは双剣を持って、猿の頭の方へと走る。
猿の顔と、蛇の尻尾がそれにそれぞれ反応した。
「ヒョー!」
「きゃ!」
猿の頭が声を上げながら、羽心が持っているバナナを食べようとする。
羽心はその迫力にたじろぎながらも、必死に距離を取る。
「シルフィードエッジ!」
ディアーナは、双剣に風を纏わせて振り下ろし、衝撃波で鵺を攻撃した。
一方、蛇の尻尾は空中でうねうねと動きながら、勇気を睨んだ。
「ほらっ、これが欲しいんだろ!」
勇気は仔ウサギの置物を見せる。
蛇の尻尾はそれに反応し、細い舌を出した。
だが次の瞬間、蛇の尻尾は顔を背けた。
「どうして?」
「どうやら本物だと思ってないようだネ。オイラに任せロ!」
プーカは羽を震わせ、鱗粉を仔ウサギの置物に振り撒いた。
刹那、仔ウサギが身震いした。
プーカの力で生き物のようになったのだ。
「どうだイ。これで鵺も興味を持つだロ!」
「うん、プーカ、凄いよ!」
喜ぶ勇気を見て、プーカは鼻高々な表情になる。
しかし次の瞬間、仔ウサギはぴょんぴょんと跳ねると、茂みの中に消えてしまった。
蛇の尻尾は顔を背けたままで全く気づいていない。
「あちゃ~、これはますますピンチだねエ」
「そんな! どうするんだよ!」
一方、猿の顔は怒ったような表情になり、鋭い牙を剥き出しにして声を出す。
「ちょっと、猿ってこんな牙があったの?」
羽心は恐怖を感じながらも逃げ続け、ちらりと勇気達の方を見た。
「あっ!」
何故か、尻尾の蛇が羽心の方を見ている。
「やはり、鵺には通用しなかったか……」
チェイニーは自身の悪い予感が的中し、頭に手を当てた。
「羽心!」
「せいやっ!」
このままでは鵺の動きを止められないどころか、羽心が襲われてしまう。
ディアーナは前に立って、鵺に風の刃を放って引き付けている。
「蛇の注意をこっちに……!」
勇気は仔ウサギの置物の代わりになるものを探すが、そんなものどこにもなさそうだった。
さらに、鵺が雷を落として勇気を攻撃してくる。
「うわっ、わわっ!」
勇気は何とか攻撃をかわすが、このままでは鵺を倒す事ができない。
「もしかしたら……!」
その時、勇気は空中を見て、目を大きく見開いた。
目の前に、プーカが浮かんでいたのだ。
「プーカって、妖精族の王子なんだよね?」
「ああ、キミ達より偉い存在だゾ」
「それって頼りになる存在って事でもあるよね?」
「ああ、もちろン。キミ達よりずっと頼りになル」
プーカが胸を張って答えると、勇気は顔をヌッと近づけた。
「だったら、このピンチを救えるのは君しかいない!」
「ヘッ?」
「プーカ、君に蛇の頭の気を引いてほしいんだ!」
「気を引ク? お、おい、それってオイラが囮になるって事カ?」
「さっき、プーカのせいで仔ウサギの置物がどこかに行っちゃったでしょ」
「そ、それは。オイラはよかれと思っテ……」
「プーカ、ううん、プーカ王子、お願い! 君にしかできない事なんだ!」
「オイラにしかできなイ……?」
プーカは急に嬉しそうな笑みを浮かべた。
瞬蔵、蛇の尻尾が勇気達の方を見た。
すると、プーカが蛇を睨み返した。
「ふん、妖精族の王子がお前なんかにびびるとでも思っているのカ!
仔ウサギを逃がしたのも作戦の内だゾ!」
とても作戦の内とは思えないが、プーカは蛇の尻尾に向かって勢いよく飛んでいった。
「羽心、今だ!」
勇気が叫ぶ。
羽心はそれを聞き、とっさに持っていたバナナを自分の後ろへ投げた。
猿の頭が虎の身体を大きく動かす。
その身体が、羽心に勢いよくぶつかろうとした。
「危ない!」
チェイニーがギリギリで羽心を庇い、倒れる。
「まだじゃ、まだ諦めぬ!」
「チェイニー!」
勇気は羽心とチェイニーの下へ駆けようとするが、その時、「あっ」と声を出した。
羽心がバナナを投げたおかげで、猿の頭が動き、蛇の尻尾が勇気達に届かなくなったのだ。
蛇の尻尾は宙を飛ぶプーカを呑み込もうとしている。
猿の頭は地面に落ちたバナナを拾おうとしている。
それぞれ反対方向に動こうとして、鵺の動きは完全に止まったのだ。
「よくやったぞ、子供達よ!」
突然、池の方から声が聞こえた。
見ると、池の傍にある大きな松の木の上に、頼政と猪がいる。
「あんなところに逃げてたのか?」
「違うと思うわ……」
勇気がそう言うと、羽心がよろよろと顔を上げて言った。
チェイニーも、ゆっくりと身体を上げる。
ディアーナも勇気達に合流した。
「あれは、逃げたのではない……。弓で射るために、高い場所に登ったのじゃ」
猪は木を登る頼政の足を押さえ、落ちないように補助していた。
頼政はそんな猪に支えられ、枝の上に立った。
「鵺よ! 我が矢を喰らうがよい!」
頼政は鵺を睨むと、弓を構え、そして矢を放った。
毒が塗られた矢が、鵺の虎の身体に突き刺さる。
「ヒョー!」
猿の頭と、蛇の尻尾が暴れ回る。
鵺の全身から黒い煙が漏れ出す。
猿の顔と、蛇の尻尾はさらに暴れるが、だんだん動きが鈍くなっていった。
黒い煙は四散し、やがて鵺が消えた。
同時に、空中に浮かんでいた罅も消えた。
勇気達は、見事、鵺を倒す事ができたのだ。
翌朝。
京の都に朝日が昇った。
勇気、羽心、ディアーナ、チェイニー、そしてプーカは、
町の一角から都の人々の姿を見ていた。
皆、何事もなかったかのように、平和な一日の始まりを迎えている。
その中には、頼政と猪の姿もあった。
「早太、わしはだな、朝から無性に弓の稽古をしたくなったぞ」
「本当ですか! 頼政様がそんな事を言うなんて、わしは嬉しいです!」
勇気達の前を、二人が通り過ぎる。
鵺に関する記憶は二人の記憶から消えていたものの、その姿は、仲のいい親友そのものだった。
「ま、一時はどうなる事かと思ったけど」
「何とか倒せてよかった……」
ディアーナと勇気は鵺を倒せてホッとしていた。
「オイラの活躍があってこそだけどネ」
プーカは仔ウサギを逃がした事はまるでなかったかのように、
宙に浮かびながら自信満々の様子で髪をかき上げた。
「まぁ、結果的には確かにその通りかも。プーカは僕達のヒーローだよ」
「ヒーロー? お、おう、いつでも頼りにしていいゾ」
「仕事は成功に終わったようじゃな」
プーカは妙に照れながらも、笑顔になった。
チェイニーも一仕事を終えて、安心したようだ。
「……勇気……」
羽心は、そんな勇気達をじっと見ていた。
彼女はずっと思っていた事を話そうと思い、ゆっくりと口を開く。
するとそれよりも早く、勇気が喋った。
「ねぇ、羽心。お願いがあるんだ」
「お願い?」
「ああ、星のグローブは、羽心にずっと持っておいてほしいんだ」
「私が、グローブを?」
戸惑う羽心を、勇気はじっと見つめる。
「僕、地底人を倒してから、一人でも怪狩りができると思ってた。
だけど、ディアーナのおかげで仲間の大切さがやっと分かったんだ。
ディアーナ、君が与えた痛みとありがたみは、忘れないよ。本当にありがとう」
「あ、あの時は、ただ思った事をそのまま言っただけよ」
ディアーナは顔が赤くなって、プイっと向こうを向く。
「そして、羽心……」
「勇気?」
「僕と君は同等だよ。だから、僕と一緒にこれからも戦おう!」
それは、羽心がずっと言いたかった事だ。
羽心は見捨里市を守りたかった。
それと同じぐらい、勇気に仲間として認めてほしかったのだ。
「あ、当たり前でしょ。
勇気は最近ちょっとは頼りになるようになったけど、やっぱりまだまだ心配だからね!」
羽心もプーカと同じように妙に照れながら、笑顔になった。
勇気もそんな羽心を見て苦笑いを浮かべた。
「さあ、帰ろう」
勇気はそう言うと、ゆっくりと歩き始めた。
その時――
「……?」
勇気は、自分が森の中にいる事に気づいた。
「どうして?」
先程まで京の都にいたはずだ。
周りを見るが、羽心、ディアーナ、チェイニー、プーカがいない。
ふと、前方の開けた場所を見ると、そこには大きな物体があった。
石を積み上げて造った、ピラミッドのような建築物である。
だが、エジプトにあるピラミッドとは形が全く違っていた。
中央に、大きな階段があり、頂上に神殿のようなものがある。
その神殿の前に、一人の人物が立っていた。
「あれは……」
勇気は目を凝らして、その人物を見た。
そして、目を大きく見開いた。
神殿の前に立っていたのは、赤髪に鋭い目をした少年……。
「キユウ!!」
勇気は思わず叫んだ。
キユウはそんな勇気に気づいたのか、顔を向けた。
その口元がゆっくりと開き、勇気に向かって何かを言おうとした。
「――勇気!」
勇気がハッとして我に返ると、目の前に羽心、ディアーナ、チェイニー、プーカの姿があった。
「ここは……?」
「何言ってるのよ、京の都よ」
「勇気クン、どうしたんだい、急にボォーッとしテ」
「ボォーッと……?」
今、勇気が見たのは、夢だった。
だが、ただの夢ではない。
「あそこに行けば、もしかして……」
勇気はポケットの中から、月のグローブを取り出した。
あのピラミッドのような場所に行けば、キユウと会う事ができるのかもしれない。
キユウは、消えてなどいなかったのだ。
「キユウ!」
勇気は目に嬉し涙を溜めながら、月のグローブを強く抱きしめた。
~次回予告~
勇気は仲間の大切さを知り、キユウに頼ってばかりいた弱さから脱却した。
羽心も、ようやく自分を認めてくれた勇気に対し、嬉しくなってきた。
その後、一度は消えたキユウが、夢の中の神殿に現れる。
果たして、キユウが夢で伝えようとしている事は、一体何なのだろうか……。