怪狩り ~ 人の絆と怪の決意   作:アヤ・ノア

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麗羅達が邪鬼を裏切る前の話です。
時系列はエピソード1よりもずっと前です。


裏切りの忍び達

 それは、麗羅達がまだ、邪鬼に従っていた時の話である。

 

「ふっふっふ。今回、君達はこの怪の力を見捨里市に呼び込んでほしいんだ」

 麗羅達は、邪鬼から依頼を受けていた。

 彼が見捨里市に送ろうとしている怪は、古代中国の四凶の一柱「饕餮(とうてつ)」である。

 饕餮とは、牛の身体、人の顔、虎の牙を持つ魔神であり、胎児のような鳴き声を発するという。

 魔神だが、その姿を彫り込んだプレートは「厄を食う」という意味で魔除け効果を持つとか。

「……饕餮、ねぇ。ヤツは凶暴だよ? アンタだけで何とかなるのかい?」

「そんな事を言わなくても、僕には『力』がある」

「饕餮を従わせる力かい?」

「まぁ、そういう事になるね。君達は恐怖をばら撒いて、見捨里市を混乱させるんだよ」

「ああ、分かっているさ」

 そう言って、麗羅はナイフを構えて敬礼した。

 つるぎ、揚羽、カリオストロも彼女と同じように敬礼する。

 邪鬼は「いい駒だ」と思っていたが、まだ四人は知る由もなかった。

 

 その後、麗羅達は見捨里市を混乱させるため、×印の罅を広げる作業を行った。

 揚羽とカリオストロが撹乱し、麗羅とつるぎが物理的手段で脅迫に及んでいる。

 おかげで×印の罅は大きく広がっていった。

 饕餮が見捨里市に現れる準備ができていた。

 

 ここで、饕餮によって起きた小さな異変を見てみよう。

 人間が突然意識不明で倒れ、病院に運ばれるという事件が相次いだ。

 仕組みとしては、饕餮が意識を食い、昏睡状態に陥らせるのだ。

 医者は生命活動に異常がないため、手の施しようがないという、恐怖を広めるのに最適だった。

 

 そして、とうとう饕餮が見捨里市に現れた。

 その時――

 

「君達、ご苦労だったね」

 刀を持った邪鬼が、麗羅達の前に現れた。

 カリオストロは護符を何枚か所持しており、つるぎは自身の剣を握り締めている。

「ボク達は饕餮を呼んだ。これから見捨里市は暗き闇に落ちるだろう。それでいいのかい?」

「ああ、それでいいんだ。……怪を呼んでくれてありがとう。君達は、もう用済みだよ」

 そう言って、邪鬼は刀を抜き、つるぎに振り下ろそうとした。

 すると、つるぎは剣の姿に変化し、カリオストロの手に渡って邪鬼の刀とぶつかった。

「待て、用済みとはどういう事だ?」

「文字通り、見捨里市を混乱させた時、君達は必要ないって事さ」

「何……!」

 騙されていた事を知り、歯を食いしばるカリオストロ。

 邪鬼とカリオストロは鍔迫り合いを続けている。

「……そういう事だったんだね」

 麗羅はナイフを取ると、邪鬼に向かって投げつけた。

 邪鬼は鍔迫り合いを解き、ナイフの柄を握り、麗羅が投げたナイフを地面に捨てる。

 麗羅は舌打ちし、再びナイフを構え直す。

「ウチらは元々捨て駒だったのかい、だったら殺すしかないようだね」

 怒りの表情になった麗羅は、邪鬼に対し殺意を向ける。

 揚羽も「許せない!」といった表情をしていた。

 四人は邪鬼に敵意を向けていた。

 すると、邪鬼は刀を持っていない左手を掲げて、この場に饕餮を呼び出した。

「君達は饕餮の餌になるがいいさ!」

「待って!」

 邪鬼はそう言った後、刀を振って×印の罅を作り出し、その中に逃げ去った。

 揚羽は追いかけようとしたが、×印の罅はすぐに消えてしまった。

 

ウオオオオオオオオオオオオオオ!!

 饕餮は唸り声を上げて、麗羅達に襲い掛かろうとした。

 怪現象を止めるために、この怪を麗羅達が倒さなければならない。

「責任を押し付けてさよならするなんて、卑怯だね」

「もう! 逃げないでよー!」

「愚痴を吐く暇があったら、コイツを倒すんだよ!」

「は、はーい!」

 

ウオオオオオオオオオオオオオオ!!

「うっ……」

 饕餮は揚羽に突っ込んでいき、彼女を「食う」。

 揚羽は重圧を受け、魔力が流れ出る感覚を感じる。

「そらっ!」

 揚羽は何とか空を飛んで、饕餮に鱗粉を振り撒いて防御を弱める。

 麗羅は饕餮の防御が薄い部分を見極め、そこに向かってナイフを投げつける。

「ゆくぞ、爆炎符!」

 カリオストロが投げた護符が饕餮に命中するが、饕餮は暴れ回って護符を振り払う。

 護符は地面に落ち、そこから爆発した。

ウオオオオオオオオオオオオオオ!!

「この程度……」

 饕餮がカリオストロを「食う」。

 カリオストロは護符を使って攻撃を防いだ。

「つるぎ! あそこが弱点だよ!」

「この攻撃、受け切れるかい?」

ウオオオオオオオオオオオオオオ!!

 麗羅が饕餮の弱点を指摘し、つるぎがそこを剣で突くと、饕餮は苦しそうな叫び声を上げた。

 そして、黒い弾をばら撒いて麗羅、つるぎ、揚羽にダメージを与えた。

「この程度でウチを殺そうってのかい。甘いね!」

「怪は力ある怪の攻撃でも倒せるんだよ!」

 麗羅は丸薬を飲んで体力を回復した後、ナイフを投げ、揚羽は毒の鱗粉をばら撒く。

 カリオストロは揚羽に治療符を投げて傷を癒した後、魔力を込めた符を投げつけ、束縛する。

「キミには倒れてもらわないと困るんでね」

 つるぎは剣で饕餮を一閃、返す刀でもう一度斬りつけた。

 饕餮はつるぎを食おうとしたが、つるぎが剣を使って攻撃を防ぐ。

「えーい!」

「そこだね!」

 揚羽が羽を羽ばたかせて饕餮に鱗粉を撒いた後、

 麗羅は揚羽の鱗粉がたくさんかかった部分をナイフで突き刺す。

「爆炎符」

「さぁ、もうそろそろ終わりにしてもらうよ」

 カリオストロは炎の術式を込めた符を饕餮に投げて燃やし、つるぎが剣で饕餮を切り裂く。

 

ウオオオオオオオオオオオオオオ!!

「わっ!」

「きゃぁ!」

「これは痛いね……」

 追い詰められた饕餮は『発狂』し、一時的に能力を大きく強化した。

 そして不意打ちで麗羅、つるぎ、揚羽を「食い」、一時的に能力を減退させる。

 だが、ここまで攻撃が強くなったという事は、饕餮の体力も残り僅かになったという証だ。

「キミの刃に幸あれ」

 つるぎは剣の付喪神として、銘刀の魂を麗羅に分け与え、麗羅のナイフの威力を強化する。

「そこだ!」

ウオオオオオオオオオオオオオオ!!

 麗羅が両手に装備したナイフが、饕餮の急所に突き刺さる。

 とどめを刺すならば、今がチャンスだ。

「生まれ変わる時は、良き者に生まれ変わるんだよ」

 つるぎは本体である剣を鞘に納めた後、一瞬で抜き、饕餮を切り裂いた。

 彼の決意がこもった刃は、凶悪な怪すらも、真っ二つにした。

ウオオオオオオオオオオオオオオ!!

 そして、饕餮は黒い煙になって、この世界から消滅した。

 

「邪鬼君……彼は美しくなかったね」

「美しくなかったって?」

「怪は人を恐れさせるようなものではない。それを、邪鬼君は無理矢理恐れの存在に変えた。

 饕餮も、邪鬼君そのものである『悪意』を食う事だってあるからね」

 饕餮は何でも食う怪だが、それは悪しきものも食うという意味でもある。

 怪というのは、少し不思議なものだというのが、つるぎの考えなのだ。

 そして、つるぎは真剣な表情で言った。

「麗羅君、逃げよう。彼と関わったら、こっちまで悪に染まってしまう」

「逃げる……そうだね、ウチはそれが得意だからね。よし、みんなで逃げよう!」

 

 こうして、麗羅、つるぎ、揚羽、カリオストロは邪鬼を裏切り、

 見捨里市で盗賊に身をやつすようになった。

 怪が人間社会で暮らすためには、隠れて過ごすのが怪の「常識」だからだ。

 当然、邪鬼は彼らを裏切り者として殺そうとしているようだが……それはまた別の話である。




邪鬼はクズ。とにかくクズ。
だのに、原作のジャンルが“こわい話(ホラー)”だから、味方側が無双したらそうではなくなる。
だから麗羅達には離反させました。
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