怪狩り ~ 人の絆と怪の決意   作:アヤ・ノア

81 / 135
『恐怖コレクター』と『怪狩り』のコラボ短編です。
オリジナルキャラクター、ディアーナの一人称視点となっています。

ディアーナが見る、謎の夢の正体は?


Wonder Dream
前編


「ひと時の夢に癒されてみませんか?

 町の暮らしの日常を離れて、たまには気分転換に素敵な夢はいかがでしょうか。

 私は、どこかの夢の中であなたと出会った事があります。

 夢というのは、ここではない地の記憶を写し取ったものです。

 夢の中での出来事は、夢から覚めた時に全て無かった事になります。

 夢の中で何をしても、元の世界に影響を与える事はありません」

 

 ――オープニングフェイズ1 (かみ)のエルフは夢を見る――

 

「ふわぁああ……」

「ディアーナおねえちゃん、あさからおっきなあくびしてるね。どうしたの?」

「眠れないのよ」

 最近、あたしは寝付けないでいる。

 理由は、ここ最近、同じ夢ばかり見ているからだ。

「ノノは? 寝付けない事、ある?」

「ううん」

「アプリルとジャネットはどうなの?」

「変な夢なんて、見ないなぁ」

「私も、変わった夢は見ませんよ」

 ノノに聞いてみると、彼女は首を横に振った。

 アプリルと、リーダーのジャネットも首を横に振る。

 どうやら、奇妙な夢を見ているのは、あたしだけのようだ。

 早めに対策を立てなければ、寝不足で調査に支障が出てしまう。

 そこで、あたしは未来予知ができる彼に相談する事にした。

 

「チェイニー、あなたに相談があるの。ここ最近、あたしは変な夢を見るのよ。

 白い影とか、チャーリーゲームとか、不幸になる、とか」

 あたしは原因を調べるため、チェイニーに夢の詳細について聞いた。

 すると、ふむ、とチェイニーは顎に手を置いた。

「それは、間違いなく怪奇現象じゃな。儂が見た映像の中にも、お主の夢は無かったぞ」

「え……?」

 チェイニーの予知が届いていない?

 これはどういう事なのだろうか、とあたしは話を続けた。

 すると、チェイニーは神妙な面持ちでこう言った。

「お主の夢について、もう一度、具体的に聞かせてくれぬか?」

「え、ええ」

 あたしはチェイニーに、夢の内容を具体的に話した。

 

「……どうやらお主の夢は、何者かに干渉を受けているようじゃな」

 チェイニーは、夢がどんなものなのかをあたしに言った。

 つまり、これはただの夢ではない、という意味だ。

 一体、誰がそんな事をしたのか、あたしは知りたくてたまらなかった。

 

「……じゃあ、直接夢を見に行きます」

 ここであたしができる事は、一つ。

 あたし自身が夢の中に入って、異変を解決する事だった。

「うむ、よく言った。では、これを授けよう」

 チェイニーは、あたしに魔法の睡眠薬を渡した。

 これを飲むと、夢の世界に入る事ができる。

 夢の途中で起きれば意味がないので、これを飲んで犯人を捜しに行くのだ。

 

「では、健闘を祈るぞ、ディアーナよ!」

「……はい!」

 あたしは覚悟を決めて、魔法の睡眠薬を飲んだ。

 まどろみの中で、ぐるぐるぐるぐると何かが渦巻いていく。

 何が渦巻いているのかは、あたしにも分からなかった。

 でも、これだけは分かる。

 これからあたしは、夢の世界に行こうとしているのだ――

 

 ――オープニングフェイズ2 闇医者は夢を見る――

 

 オレの名はレイモンド、通称「レイ」。

 都市伝説に苦しむ者を救済している闇医者で、

 どんな患者でも詮索せずに面倒を見るのがオレの理念だ。

 しかしその名は知られておらず架空の人物と言われている。

 まぁ、実在するかどうか分からない都市伝説を専門としているし、何よりも無免許医だからな。

 

 町に患者の姿はどこにもない。

 都市伝説は、粗方なくなったという事だろう。

 いや、あの赤いフードの男が、都市伝説と戦っているのかもしれん。

 オレはまともに顔を見た事がないが、黒いフードの女と姿は似ていたようだ。

 もしかすると、関係者なのかもしれないな。

 

「ん? あれは……蝶か?」

 ふと、大きな蝶が空を舞っているのを見た。

 モルフォチョウでもないし、アレキサンドラトリバネアゲハともまた違う。

 オレがその蝶を見ると、急に眠くなってきた。

 

「あぁ、なんだろうな、眠い、眠い、ね、む、い……」

 そして、オレは抵抗できずに、眠りに落ちた。

 

「ひと時の夢を、楽しんでください」

 

 ――ミドルフェイズ1 そして、夢の中――

 

「うぁ……。ここは……どこ?」

 どうやら、あたしは夢の世界に来てしまったみたいね。

 頭がぼやーっとして、集中できない。

「えーっと……夢の中で変な声が聞こえてきて、

 誰かが夢に干渉しているってチェイニーが言ってて……」

 あたしはこれまでの出来事を思い出す。

 誰かのせいで、あたしは同じ夢ばかり見させられている。

 でも、誰が夢に干渉しているのかは分からない。

 だから、チェイニーが作った薬を使って、あたしは夢の中に入る事を決めたの。

 そしたら、あたしが来たのは、夢の中の見捨里市だった。

 誰があたしの夢に干渉しているのか知りたかった。

 

「ん?」

 見捨里市を歩いていくと、あたしは黒い服を着た男と出会った。

 とても有名な漫画に出てきそうな人だったわ。

「あなたは誰なの?」

「名前は自分から名乗るものだ」

「……あたしはディアーナよ」

 あたしが男に自分の名前を名乗ると、

 男は頷いて「レイモンド」と名乗った(通称は「レイ」っていうんだって)。

 どうやら、彼は医師免許を持たない……要するに非正規の医者らしい。

 何となく胡散臭いけど、あたしも放浪の身だし、偉そうな事は言えないわ。

「あたし、今朝から同じ夢ばかり見ているの。だから、夢の中に入って解決したいのよ」

「そうか……オレも、旅先で奇妙な蝶を見て、この夢を見たんだ」

「はっ!?」

 レイまで同じ夢を見たの!?

 これはただ事じゃないわね。

 早く、夢を見せている奴を倒しに行かなきゃ!

 ドラキュラとかネッシーとか、そんな奴に並ぶほど強い『怪』って、どこにいるのかしら?

「レイ、早く調査に行くわよ!」

「待て、早まるな。冷静になれ。勢いのままに突き進んだら異変は解決できないぞ?」

「……そうね」

 レイの言う事は、正論だ。

 あたしは仕方なく、情報収集のために彼と共に見捨里市を歩くのだった。

 

「ねえねえ、公園にいた変な生き物、あれ何だったのかな?」

 不意に、少女の話し声があたしの耳に届いた。

 見ると、傍にあるファストフード店の前に、制服を着た女子高生がいた。

 ケースに入ったテニスのラケットを持っていて、部活帰りのようだ。

「あたし、襲われるかと思った」

「私も。『ナーデーヤー』って不気味な声で鳴いてたもんね」

「「ナーデーヤー?」」

 そんな鳴き声をする生き物は、あたしもレイも全く知らなかった。

 でも、あたしには確信がある――あたしは彼女達に駆け寄った。

「その公園ってどこなの!?」

 聞いた事のない鳴き声。

 そして、人間に襲いかかろうとした。

 考えられる可能性は一つ――この夢を見せている、怪だ。

 あたしは少女達からどの公園で見たのかを聞くと、慌てて駆け出した。

 逆に、レイは冷静に、ゆっくりと歩いた。

 

 怪は邪鬼という少年によって、とある地球にある見捨里市にやって来る。

 怪がもたらす現象は変な鳴き声、奇妙な音や臭い等、大抵は小さな異変から始まる。

(もしかしたら、怪のせいであたしは変な夢を見ているかもしれないわ)

 多分、あたしが見る夢に干渉してるのは、怪だと思う。

 人を不幸にする力を持った怪かしら?

 だけど、あたしがする事はただ一つ。

 

(この夢の謎を解いて、脱出する事よ!)

 

 あたしは拳を強く握り締め、レイと一緒に町外れにあるパンダ公園にやってきた。

 女子高生達は、ここで怪を見たらしい。

 すると、あたしとレイは茶髪に緑の瞳の少年、勇気と出会った。

勇気! あなたに話があるの! この夢を見せてるのは、誰!?

な、なななな何!?

 いきなり話しかけられた勇気が、驚いて尻餅をついた。

 あたしは悪い事をしてしまったから、謝り、そして勇気に落ち着いて事情を話した。

 

「なるほど……君達もこのおかしな夢を見たんだね。あれ? そこにいるおじさんは、誰?」

「オレはまだ26歳だから、おじさんじゃないぞ」

 レイは勇気に「おじさん」と言われてちょっと傷ついたようだ。

 そりゃそうよ、レイはまだ若いもの。

「オレの名前はレイモンド、レイと呼んでくれ」

「改めて、僕は真之勇気といいます」

 レイと勇気は互いに自己紹介をした。

 夢の中だけど、勇気とレイって、小学生と無免許医だから、水と油……なのかしらね。

 

「まったくもう、怪はどこにいるのよ?」

 あたし達は辺りを見渡したけど、どこにも怪らしきものはいなかったわ。

 幸い、公園にはあたし達以外には誰もいない。

 あたし達は、女子高生達が怪がいたと言っていた、水道のところまでやって来た。

 怪は、ここで水を飲んでいたらしい。

 でも、水道の傍の茂みを探しても、それらしき生き物はいなかった。

「もう、どこかに移動したのか?」

「そう言えば、どんな姿をしているんだろう……」

 先ほど女子高生から聞いたのは、公園で怪らしき生き物の鳴き声がした事と、

 その生き物が水を飲んでいたという事だけだ。

「ちゃんと聞いておけばよかったわ……」

 もう少し、きちんと調査するべきだったわ。

 あたし達は、周囲を見回しながら公園を出た。

 その時、ブレーキ音とホーンが響いて、あたし達の目の前に『車』が迫ってきた。

「きゃっ!」

 怪を探すのに夢中になって、赤信号なのに、道を渡ろうとしてしまったのだ。

 あたしは風の魔法を使って一瞬だけ宙に浮き、レイを連れてすぐさま退避した。

 でも、勇気には届かない……!

 夢の中とはいえ、死んだらもう戻れなくなるかもしれない……!

 

勇気、逃げて!!

 

 あたしは勇気に向かってそう叫んだ。

 その時、誰かが勇気の腕を引いた。

 勇気が歩道に引き戻され、尻餅をついたその時、目の前を車が通過していった。

 どうやら、間一髪で誰かが助けてくれたのだ。

「まさか、あいつは……」

 助けてくれた相手は、レイが知ってる相手らしい。

「あ、あの、ありがとうございます!」

 勇気が礼を言うと、赤いフードの背中が立ち止まった。

 レイが知ってるって事は、レイと同じ世界に住んでる子かしら。

 早く夢を見せてる怪を探さなきゃ。

 

「ちょっと待ちなさい」

 あたしは少年の前に回り込んだ。

「あたし、夢の中に潜む怪を探しているの。

 この変な夢を見せてるのは、もしかしたら怪じゃないのかって」

「怪って?」

 その少年は、中学生の姿をしていた。

 どうも冷たそうな雰囲気で、親しみやすそうには見えなかったわ。

 もっと、こう、熱い感じだと思ったのに。

「怪というのは何だ?」

「あっ、えっと」

 赤いフードの少年が、あたしに質問を繰り返してきた。

 まぁ、無理もないわよね。

 この世界の一般人に『怪』と言っても通じるわけがないんだから。

 すると、少年はあたしをじっと見つめて、ふと小さく笑った。

 

「……怪、か。君は、怪というものを追っているんだね」

「そうよ。で、あなたは何を追ってるの?」

「僕が追っているのは、『都市伝説』だ」

「都市伝説?」

 出会った事はないけど、町で噂されている不可思議な現象や怪物、怪人の事だと本にあったわ。

 怪は昔から伝わるもの、都市伝説は現代人の噂から生まれたもの。

 だから、都市伝説は怪と似ているけど、全く別物なのよ。

「話に割り込ませてもらってすまないが、オレはそいつに傷つけられた奴を治している」

 なるほど、だからレイは無免許なのね。

 都市伝説を専門とする医者なんて、そうそういないものね。

「でも、都市伝説は単なる噂でしょ?」

 あたしは疑問を投げかけたが、少年はそれには答えない。

「僕は都市伝説の呪いを回収するために、町から町へと旅をしている」

「回収?」

 あたしには、その言葉の意味がピンと来なかった。

 でもそれは、あたしが怪を『狩っている』のと同じだろうと思ったわ。

 どうやら、彼はまた何かの理由があって都市伝説を『回収』しているようね。

 レイは難しい顔をしていたみたいだけど、今は気にしないでおきましょう。

「あなたにとっての都市伝説は、あたしにとっての怪。一緒に探しましょう」

 あたしは笑みを見せて、少年に手を差し出した。

「その必要はない」

「へっ?」

 少年は、あたしと握手をする事なく歩き出した。

「ちょ、ちょっと! 力がないと一人は危険よ!」

「危険なんかじゃない」

「だけど、仲間がいた方がいいわよ!」

「君とは知り合ったばかりだ」

「ま、あなたはあたし達の事、よく知らないもんね。あっ、あたしはディアーナよ。

 こっちはレイモンド、通称レイ。こっちの子は真之勇気よ」

「僕がいつ名前を聞いた?」

「冷たいわね」

 あたしはそう吐き捨てながら、レイ達と共に少年を追った。

 レイは少年を見て険しい顔をしながらこう呟いた。

「お前が人を助けるより呪いの回収を優先するから、オレの仕事が増えるんだ。

 オレはもう、二度と仕事はしたくないのに……」

「仕事はしたくないって、どういう事?」

 あたしが首を傾げていると、勇気が声をかけた。

「……あの、僕の出番は?」

「今回はあたしが主役よ?」




恐コレも怪狩りも、明るいというか感情の起伏が激しいキャラがあまりいないので、
ディアーナが目立ってしまったかもしれません。

レイが仕事をしたくない理由は、彼の職業を考えれば分かりますよ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。